第8話 巻き添え
【何故その様なことに?】
自身が召喚された巻き添えって・・・。
その、私、異世界召喚は不慣れで・・・。あ、異世界転生は得意なんですよ。転生は!
ふん!と得意げに言っているが、問題は異世界転移を失敗したことだ。
【では、さっさとご主人を元に戻して下さい!】
目が泳ぐ。
【女神様?】
だらだらと冷や汗を流して、遂には後ろを向いてしまった。
【女神様、まさか・・・!?】
ごめんなさい!元には戻せません!
【どうするんですか!?】
どうにも出来ません!
【素直!でも胸を張るな!】
へなへなと力が抜け、どうするんですか!と女神を問い詰めた。
その、ですからご主人さんには貴方と一緒に異世界に行って貰うしかなくてですね。
【その世界は危険なのではないのですか?】
・・・・・・危険、です。
【どうするんですか!?僕だけなら兎も角ご主人を巻き込むなんて!】
ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!
ですから、その、貴方には特別に加護とスキルを多く与えますから。その、貴方が側で守って上げると言うのは・・・。
【僕にでは無く、ご主人に与えて下さい!】
それは出来ないんです!
【何故です!?】
彼はただ巻き込まれただけで、その素質や資格が無いんです~。
【可愛く言うな!】
これが世に言う駄女神か・・・。
コーギーの子犬に平謝り状態の異界の女神様。ここで豆太郎に断られたら困るので、ぎりぎりの申し出を打ち出してきた。
その・・・。
【はい・・・!?】
声が冷たい。
完全に怒っている豆太郎にビク突いている。
貴方が得る事の出来るスキルの1つを彼に与えます。それでなんとか納得してくれませんか?
【それは、どんなスキルですか?】
言葉は普通だが、今にも唸って仕舞いそうだ。
全て調べましたが、彼が唯一習得出来るのは『全言語理解』だけです。
【全言語理解?】
はい、全ての言葉と文字を理解し話せ、読み書きの出来るというスキルです。
【それではご主人が身を守る事が出来ないではないですか!?】
そこは、貴方が守るとか、護衛を付けるとか、ね?
【そんな事で、『女神様っ!』の『ミスッ!』で、異世界に連れて来られて、生きて行かないといけなくなったご主人に対しての謝罪になると?】
豆太郎の言葉の矢が刺さる。
うっ!?そ、そこは豆太郎さんが素早く使命をクリアすれば、元の世界に帰れますから・・・。
【はい!?今何と?】
使命をクリア?
【その後です】
元の世界に帰れますから?
【帰れないと言いましたよね?】
今、元に戻すのは無理ですが、使命を果たせば帰れますよ?
【なんでそこ疑問形なんですか!】
使命さえ果たせば帰れるのは確実です!
は~・・・。
豆太郎は全身脱力して、首だけ女神に向けた。
【で、その使命とは何なんです?】
完全に厄介者を見る目だった。
今、豆太郎さんに行って貰いたい異世界は破滅に向かってます。
【破滅ですか】
はい、今はまだその予兆、小競り合い程度ですがこのまま放置すると人間族と魔族の全面戦争になります。
そして、その戦争は大陸全土を巻き込み多くの種族や動物まで深刻な被害が出ます。
【深刻な被害とは?】
将来的には絶滅ですね。自然破壊も有りますから、その回復には何千年掛かる事か・・・。
そこで、豆太郎さんには異世界の破滅を防ぎ平穏を取り戻して欲しいのです。
【平穏ですか?】
そうです、世界の平穏です。
【人間や魔族を滅ぼせ。では無いのですね】
はい。では、お願いしますね。
使命を果たした暁には必ず元の世界にお帰ししますので。
どうか、異世界『アルカディア』をよろしくお願いします。
深々と頭を下げた女神の周りに光りが溢れ、気が付いたらこの世界に居ました。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
ブックマーク、ご意見ご感想、アドバイス等有りましたら気軽にお書き下さい。
作者が喜びます。
一応一章が終わった『アストラル・ライフ』も、よろしければ読んでやって下さい。
ほんの少しでも
・面白かった
・続きが気になる
と思って頂けましたらブックマークや評価をお願いします。
評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をタップで出来るそうです。
※無断転載・無断翻訳を禁止します。