第11話 役不足
「ば、化け物めっ!」
「魔族か、ちくしょう!?」
仲間を置き去りにして逃げだす2人。だが逃がす訳には行かない。
「サスケ、掴まえろ」
ボクの影となったサスケの一部が伸びて2人に襲い掛かる。
ボクは足首に巻き付き吊るし上げる指示をイメージした。
シュルル!
すると、2本の影は2人の足首に巻き付き持ち上げる。
そして、もう1本影を伸ばして、男が抱えてた大きな袋を受け止めた。
(思うだけでちゃんと意図を伝える事が出来てるな)
ギャーギャーと喚く2人を地面に叩きつけて気絶させ、腕を切られた男も・・・。
(豆、お願い・・・)
眠らせる事を頭の中で指示すると、腕を押さえて呻いていた男が強制的に眠りに突いた。
【大丈夫ですか?ご主人】
「サスケのお蔭でね」
ボクは豆に縄を出して貰うと、サスケと一緒に3人を縛り上げ、男の腕を治した。
どさっ・・・。
全てが終って、ボクはその場に座り込んだ。
「は~~~・・・・・・」
長い息を吐いて、緊張を解きほぐす。
「やっぱり、こういうのは慣れない・・・ボクには役不足だよ」
基本的には平和な現代日本の中学生に、生死を掛ける様なマネはめちゃくちゃキツイ。心臓に悪過ぎる。一人称が『ボク』に戻るくらいに。
「いえ、冷静な対応でした」
サスケはそう言って、労ってくれるがまだまだなのはボクが一番理解している。
【そうですね。『役不足』と言うくらいには余裕だったのでは?】
「・・・どう云う事?」
【この程度の事、何でもないと言ったのでは?】
「俺には荷が重いって言ったんだけど」
え!?なに?この間。
【ご主人。役不足という言葉はその役が自分には物足りない、という意味ですよ】
「え!?」
【良く間違えて使われる人が居ますが、役に対して力量が足りないのでは無く。自分の実力に対して役が足りない。という意味です】
「ええ~!?」
恥ずかしくて顔を覆う。
【まぁ、良く有る間違いですよ。これで正しい意味を知って良かったじゃないですか?】
「確かにそうだけどさ~」
暫く恥ずかしさに悶えてたが、なんとか折り合いを付けて気を取り直す。
「さて」
ボクは男達の担いでいた袋に手を掛けその口を開けて凄く驚いた。
「・・・・・・大丈夫かな?」
【気絶しているだけですから、何処か落ち着ける場所で休ませて上げましょう】
始めて来た町で知っている落ち着ける場所なんて、たかが知れている。
ボク達は、途中で出会った冒険者達に男達を任せ、この女の子を影の中に入れてその場を離れた。
この町で目立つ建物の1つ、教会に着くと事情を話してベッドを借りて捕まっていた女の子を介抱していた。
と、言っても出来る事なんて限られていて、豆に回復魔法を掛けて貰い、塗れたタオルで顔を拭いてやるくらいだ。
お布施を奮発したお蔭か、暫くして年配のシスターが小さなお鍋にスープを作って持って来てくれた。
「お加減はどうですか?」
「はい、落ち着いてるので直ぐに目が覚めると思います」
「そうですか、それは良かったですね。どうぞ貴方も召し上がって下さい」
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