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ラジオからおばあちゃんの声

作者: 大海原敏彦

もうすぐおしまい。

僕の人生ももうすぐおしまい。

楽しかったなあ。嬉しかったなあ。

でもそれももうすぐおしまい。


僕、中神達雄は17歳、高校2年生。

「しっかりとね」

ラジオが喋るよ。

「天国で待っているからー」


僕が6歳の頃に両親が離婚。

母に着いたが、母はそれからアル中になった。


僕は中学1年の頃からいじめられるようになった。

金を要求されて、

殴られたり、蹴られたり、散々だった。

ずっと、今まで。


疲れる。賢くもない。

悪い?正しい?


でもそんな人生も今日でおしまい。

手首から血がさらさらと流れ落ちる。

浴槽に張った水が少しずつ赤く染まっていく。


ラジオから物憂げな音楽が流れている。


いい感じだ。

少しずつ意識がぼんやりしてくる。


その時だ。

ラジオからおばあちゃんの声がした。

おばあちゃんだと思う。いや、確かにそうだ。


「達雄、達雄、まだだめ。まだこっちに来ちゃダメ」

「未来の達雄を殺しちゃだめなの」

「生きるの。生きるの。達雄。お願い」

あれ、おばあちゃんがなんか言ってるなあ。

面倒くさいなあ。


達雄は119番に電話して、住所だけ告げた。それが精いっぱいだった。




病院の一室、達雄は眼を覚ました。

あれ、ここどこだろう。


看護婦さんが達雄の動きに気付く。

「あ、眼が覚めたのね、先生を呼ぼうね」


それから、白衣の男の人が来て、何か言ってったけど、全部忘れた。

いくつかの袋からチューブが出て、達雄の腕に刺さっている。

左手首は包帯でぐるぐる巻きになっている。


達雄はまたまどろみ始める。


遠くでおばあちゃんの声が聞こえた。

「達雄、良かったね。良かったね。達雄、頑張るのよ」



おしまい。


お読みいただきありがとうございました。

達雄の心象風景、私のとそっくりです。

前に投稿したのがバッドエンドばかりだったので、

たまにはベターエンドをと投稿しました。

それでは、良い夕暮れ時を。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い小説です。 大きくないけど含蓄のある小説です! [気になる点] 読んでいるとき、悲しい気持ちがでした。 達雄さんが死ぬかもや生きるかもと思いました。 ついに嬉しいでし…
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