入学式の日⑨
生徒会室に入ると、椎名は俺を席に案内してお茶を出してくれた。
今、俺と椎名は向かい合う形で座っていた。
「この学校について何か聞きたいこととかないかな?」
椎名の質問はごくありふれたものだった。
正直な話、俺は椎名よりもこの学校について知っている自信がある。
しかし期待の目をこちらに向けてくる椎名。
ならばこちらも少し踏み込んだことを聞いてみるか。
「そういえば先輩が生徒会長だなんて驚きました。どうして生徒会長になろうと思ったんですか?」
俺はどうやって椎名が竹田を押しのけて生徒会長になることができたのかがずっと気になっていた。
椎名は俺の質問が想像と全く違うものだったのか、少しキョトンとした表情になる。
そしてその顔は少し言いづらそうな表情に変化していった。
「ああ。それは私がこの学校の理事長の娘だから・・・。周囲から半ば無理やり任されたんだよ。」
なるほど、竹田の上位互換ということか。
「もしかして生徒会に興味があるのかな? 役員は揃ってるけど、今からでも追加で入れる役職はあるよ。」
椎名はどこか期待するような表情でこちらを見ている。
どうやら椎名は俺を生徒会に誘うために、生徒会室を最後に案内して室内に招き入れたようだ。
だが俺の答えは決まっている。
「すみません。お誘いは嬉しいのですが、自分には少しやらなければならないことがあって。なので生徒会には入るつもりはありません。」
生徒会の仕事なんてのは結局教師の下請けでしかない。
教師でなくてもできる仕事、例えば学校内外の清掃活動や各部活の活動実態の調査、全校集会の設営や生徒からの不満の緩衝材などがあげられる。
清掃活動など一部は善行ポイントになるが、多くの仕事はポイントにならないので時間の無駄でしかない。
漫画やアニメの世界のように生徒会が絶大な権力を持っていれば話は別だが、そんなことあり得るはずがない。
少なくともこの学校では、生徒会にそんな権力はない。
俺が生徒会に入ることあり得ないだろう。
「んー、そっか。ちなみにそのやらなければならないことって何かな?」
少し残念そうにしていたが、すぐに興味をそちらに移したようだ。
だがそれは俺にとっても好都合だった。
椎名に校内を案内されているときに少しだけ考えた作戦を試してみようと思う。
「実はそのことについて生徒会長の椎名先輩にお願いしたいことが。」
俺は善行ポイントを集めるための最初の一手を打つのであった。




