3度目の15歳の誕生日②
降り出した雨は次第に激しさを増し、嵐と言っても差し支えないものになっていた。
すでにヒカリの亡骸はこの場にはない。
到着した警察と救急車によってすでに運ばれたからだ。
「この場にいた野次馬どものヒカリに関する携帯電話やカメラの画像データを全て消してくれ。すでに送信されたものを含めて。」
『善行ポイントヲ5000ポイント消費シマス。ヨロシイデスカ?』
「ああ、構わない。」
ヒカリを助けようともせず、面白半分に倒れているヒカリの姿を写真に撮っているようなクズどもだ。
そんな奴らにヒカリの画像を利用されてたまるか。
ヒカリを助けるために必要だったポイントは10000ポイント。
俺は今日のために10500ポイント貯めていた。
これだけ集めるのにも5年かかった。
あの女を助けるために1000ポイント使ったのは仕方がない。
そうしなければ助けられなかった。
もし助けなければ悪行として1000ポイント以上のマイナスになっていただろう。
予想外だったのはあの女に100ポイントしか価値がなかったことだ。
もちろん100ポイントもらえたということは彼女は悪い人間ではなかったのだろう。
悪人を助ければ善行ポイントは逆に減る。
だが俺にとっては害悪でしかなかった。
そんなことを考えていると、ヒカリを轢いたと思われる車から男が引きずり降ろされた。
どうやら今まで車の中に籠城していたようだ。
「俺は悪くない。あの娘がいきなり飛び出してきたんだ。」
男は自分が悪くない、ヒカリが悪いと言っている。
だが俺は知っている。
あの男は携帯電話でゲームをしながら運転していたことを。
そのせいで赤信号に気付かず、歩行者にも気づいていなかったことを。
前の回も同じことを言っていたのだから。
「おいっ。あの男を殺せ。」
俺の声を聞いた周りの人間が驚いた顔をする。
しかしそんなことはどうでもよかった。
『善行ポイントガ足リマセン。』
そんなことは知っている。
特定の人間を殺すには善行ポイントガ100万ポイント必要らしい。
前も同じことを頼んだからな。
だが何度繰り返そうが、俺はあの男を許さない。
何度でも同じことを願う。
俺は怒りで気が狂いそうになりながら、ただ目から涙を流すことしかできなかった。