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3度目の15歳の誕生日①


お久しぶりの方、初めましての方もこんにちは。

作者のネムタイです。


この作品は舞台が現実世界のやりなおし転生?タイムリープものです。


それではよろしくお願いします。



今日は俺の15の誕生日。

今日こそアイツを、ヒカリを助けてみせる。



俺は学校の授業が終わるとすぐに家に向かって走り出した。

今ヒカリは商店街にいる。

それを俺は知っていた(・・・・・)


直接商店街に向かいたい気持ちを押し殺し、一度家に帰って着替えてから出直さなければならない。

万が一にでも、学校の先生や警察官に補導されて時間をロスするわけにはいかないからだ。




帰宅した俺は息も絶え絶えに自室に駆け込み、制服を脱ぎ捨てると事前に用意していた外行きの服に着替える。


今家には誰もいない。

父親は仕事で母親は買い物に出かけている。

着替えた俺は玄関から出る前に、誰もいない静かな家の中を見つめた。


「必ず連れて帰ってくるから。」


そう呟くと今度こそ俺は外に出るのであった。




商店街に向かった俺は、ひっそりとした裏道の特に狭い道を選んで走っていた。

この道は他人に出会うことなく商店街に向かうため、事前に調べておいた道だ。


こんなところでヒカリを救うためのポイント(・・・・)を使うわけにはいかない。


狭い道を駆け抜けると少し開けた道に出た。

商店街まであと少しだ。


これなら間に合う。


そう俺が思ったとき、少し離れたところから男女の声が聞こえてくる。


「い、いや。やめてください。」

「おいおい。ちょっと俺たちとドライブしようって頼んでるだけだろ。」

「それはお断りしましたっ。」


そんな不穏な声が聞こえる方へと顔を向けると、女子高生の腕を掴むホスト風の男の姿が見えた。


「はあっ?お前ちょっと可愛いからって調子乗ってんのか?」

「お願いします。放してください。」

「うぜえ。おい、お前ら。ちょっと手伝え。」


男がそう言うと、車の中から更に別の男が2人降りてくる。


彼らはあろうことか女子高生の口を塞ぎ、無理やり車に乗せようとし始めた。


その様子を見ていた俺は絶望する。


「ぐっ、くそぉぉぉっ。」


俺はヒカリを助けなければいけないんだ。

しかし今の俺には男に絡まれている女子高生を見捨てることはできなかった。

それをすれば確実にヒカリを助けることはできなくなる。

見捨てればポイント(・・・・)が減ってしまうからだ。


「善行ポイントを1000使う。力を寄越せ。」

『受理シマシタ。善行ポイントヲ1000ポイント使用シテ、身体能力ヲ強化シマス。』


脳の中に無機質な声が流れると俺の身体は光り輝く。

俺は走り出すと、女子高生を押さえつける男たちに近づいた。


男たちは女子高生を押さえつけることに必死になっているので、俺の接近に気付かない。


女子高生を羽交い締めにしている男を殴る。


「ぐへぇっ」


身体強化した力で殴った男は吹っ飛び、地面に転がる。


「な、なんだ?」


他の男たちは、いきなり仲間が吹き飛んだことに驚き、原因を探そうとする。


だがすでに俺はそこにはいない。

素早くもう一人の男の背後に回ると後頭部を殴りつける。


男は前方に吹き飛ぶと、地面に顔面からダイブしていった。


そして最後の一人。

その男はようやく俺の存在に気付く。


「な、なんなんだ、お前は? ・・・へぶぅ。」


時間のない俺はわざわざ答えたりはしない。

しかし怒りを込めてその顔を思いっきり殴った。




地面に転がる男たちに近づく。

3人が気を失っていることを確認すると、頭の中にあの声が響く。


『困ッテイル人間ヲ助ケマシタ。善行ポイントヲ100ポイント獲得シマシタ。』


「そ、そんなっ。」


たった100ポイント。

1000ポイント使ってこの女を助けたのに。

これでは足りない。ヒカリを助けられない。

俺は崩れ落ちそうになりながらも踏みとどまり、ヒカリが今いるであろう場所へと向かおうとする。



そんな俺の前に女子高生が目の前に立ちふさがる。

その顔はなぜか赤らんでいた。


なんだ、その顔はっ!

俺は目の前の女に怒りが込み上げてきた。


「あ、あの。ありが・・・」

「どけぇっ!」

「ひっ。ご、ごめんなさい。」


俺は女子高生を怒鳴りつけた。

コイツさえ、コイツさえいなければ。

俺は目の前に立つ女子高生を呪い殺す思いで睨みつけた。


『悪行ガ行ワレマシタ。善行ポイントガ50ポイント減少シマシタ。』


脳内でまた声が響くがそんなことにはもう興味がなかった。

だってポイントはもう足りないのだから。


いまだ目の前に立つ女子高生を押しのけると、ヒカリのいるところへと向かう。

たとえ救えなくても、大切な妹の最期を看取らなければならないからだ。




商店街の前にある道路には人だかりができていた。


その様子を見て俺は確信する。

ああ。また助けられなかった。


携帯で写真を撮っている野次馬どもを押しのけ、道路の中心へと向かう。

道路には前がひしゃげた車と、地面に倒れる10歳の女の子の姿があった。


俺は女の子のもとへと向かう。


「ヒ、ヒカリ」


地面に膝をついた俺は、頭から血を流す妹に声をかけた。


「お、にいちゃん?」


痛みで顔を歪めていた妹は俺の声に気付くと、苦しそうに笑顔を作った。



「これ、たんじょうび、プレゼント。あ、あれ? つぶれちゃってる。」


ポケットから小さな箱を取り出すヒカリ。

しかしその箱がつぶれていることに気付いた妹は、悲しそうな顔をした。


その様子を見て俺は涙をこらえて、一生懸命に笑顔を作る。


「ありがとうなヒカリ。お兄ちゃんとっても嬉しいよ。」


俺はその箱ごと妹の手を握る。


「そっか。よかった。」


ヒカリは俺に笑顔を見せてくれる。




「善行ポイントをすべて使う。妹を助けてくれ。」


俺は自分の持つスキルに声をかける。


『善行ポイントガ足リマセン』


「俺はこれからなんだってする。いくらでも善行を積むから、妹を助けてくれ。」


『善行ポイントガ足リマセン』


「頼むよ。お願いだから。」


『善行ポイントガ足リマセン』


「お願いだから、ヒカリを助けてください」


『善行ポイントガ足リマセン』




「ごめ、んね。おに、い、ちゃん。」

「ヒカリ? ダメだ、待ってくれ。お兄ちゃんが助けてやるから。だから、逝かないでくれ。」



俺は必死に声をかける。

それしかできなかった。


ヒカリは微笑むと、その瞳から光を失っていった。


ちょうどそのとき、ポツポツと雨が降り始めた。

空が、世界がヒカリの死を悲しむように。




そして俺の3回目の15歳の誕生日は終わった。




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