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悪役令嬢リリーは穏やかな愛に包まれたい

作者: 茜カナコ

「余命、一ヶ月ですって!?」

 私に告げられたのは、残酷な言葉だった。

「もう、腫瘍は取り除けません。緩和ケアを受けられますか?」

「ええ。お願いします」

 母親は泣きはらした目で、お医者様に言った。


 私は新しい部屋に移されると、特にやることもなかったのでゲームをすることにした。

 乙女ゲーム「麗しのローズ」。美男美女がてんこ盛りで、ロマンティックなこのゲームは私のお気に入りだ。

「もし転生できるなら、主人公のアルマみたいな金髪碧眼の美少女になって、色々な人から愛されたいなあ……」

 そんなことを考えながらゲームをしていたある日、私はとうとう目を覚ますことがなくなった。


 ***


「スノー様、朝ですよ。起きてくださいませ」

「え!?」

 私は目を覚ました。そこは王宮のように豪華な部屋の、ベッドの中だった。

 でも、この風景は見覚えがある。乙女ゲーム「麗しのローズ」の舞台と一緒なのだ。

 私は慌ててメイドに声をかけた。


「今は何時?」

「はい、もう朝食の時間ですが、何かありましたか? スノー様」

 スノーと呼ばれて、私は冷や汗が流れるのを感じた。

 だって、スノーというのはゲームの中でアルマをいじめ抜く悪役令嬢の名前だったから。

「今日はユーク様とジュリアス様がお迎えに来るはずですよ」


「え?」

「アルマ様に悪さをしないよう、見張るのだとおっしゃっていましたよ」

「まあ、そうですか……」

 私はアルマと仲良くなることに決めた。

 なぜならゲームの中では、ユークには悪事をバラされ侯爵家を追放されてしまうし、ジュリアスには食事の毒味をさせられ、スノーの入れた毒で死にかけるストーリーになっていたからだ。


「そろそろ食事をとらないと学校に遅れますわ」

「分かりました。ありがとう」

 私がメイドにお礼を言うと、メイドはきょとんとしてから私の額に手を当てた。

「スノー様がお礼を言うなんて、病気ではありませんか?」

「失礼ね、メイドのくせに」

 私がそう言うと、メイドはホッとした顔で笑った。


「スノー様らしい言葉で安心致しました」

 ちょっと、それ、どういうこと? と聞く前に、外から私を呼ぶ声がする。

「スノー様、一緒に学校に参りませんか?」

「ええ、少しお待ちくださいませ」

 私は窓から、下を見た。人の姿が三人見えた。両脇にユークとジュリアスを従えて真ん中に立って笑顔で手を振っていたのは、アルマだった。

 スノーはゲームの中で断罪され、死刑に処されてしまう。だから私は、ゲームのストーリーをなぞらないように決心して、外に出た。


「私は絶対、生き残りますわ」

 こうして、私のサバイバルゲームが始まった。

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