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04

 俺が前世を自覚し訓練をし続けて早七年が経った。

 この世界には冒険者という仕事がある。

 仕事は討伐から採取、工事手伝い、探し物などなど、所謂何でも屋。

 そんな冒険者だが、この世界は十五歳になり成人した人間なら誰でもなれる。

 もちろん俺も成人すると同時に登録、そして今依頼を受けている。


 時は夕暮れ、薄暗い空間、木や草が生い茂る森を俺は気配を断ち進んでいた。

 はじめての実践、俺は緊張し心臓がバクバクしている

 森を徘徊しおよそ一時間

 未だ依頼のターゲットを探して歩き続けていた。

 

カサッ


 俺はその音が聞こえた瞬間その場に身をかがめる。

 心臓が飛び出るほどに鳴り響くのを我慢しながら周囲を確認、気配を探る。

 

 「ガイヤイア」

 「アイアオ!」

 「イガウ!」


 俺はその声の正体がわかった時、一気に緊張感が増していった。

 相手はゴブリン3体、うち一体は体が大きい。

 なんでボブゴブリンがいるんだよ。 

 ボブゴブリンはゴブリンの上位種で通常のゴブリンよりも一回り大きく、そして力も成人した男性とほぼ同じ、警戒心が強く、常に手下を従えている。

 俺が受けた依頼はゴブリン三体の討伐。

 こいつらを倒せば依頼達成。

 しかし、今の状況は難易度が違う。

 ボブゴブリンの討伐ランクは単体はEランクだがDランクよりで、さらに手下がいることから達成ランクはDランク。 

 今の俺のランクは登録したての為、Eランク。本来なら引くのがベスト。

 でも俺は少し躊躇う。

 元よりゴブリンの目撃情報を元に探していたが、思っていた以上に時間がかかってしまった。

 そろそろ夜行性の危険な魔物も活動をし始める時間も迫っている。

 今回俺が受けた依頼は依頼者が急遽魔石を欲したため出した依頼。そのため受託後その日のうちに達成しなければいけない。

 今日中に魔石を集めないと依頼失敗となる。

 依頼を失敗すること、特にはじめての依頼で失敗となると身の丈以上の依頼を受ける向こうみずという印象がついてしまい、ギルドの信用が低くなる。

 俺は出来るだけ早くランクを上げる為、冒険者組合の評価を得る為に敢えて初心者には多少難しい依頼を受けた。

 だが考えが甘かった。

 もうこれが最初で最後のチャンス。やるしかない!

 俺はそう決意し、失敗だったと後悔しつつ、討伐のための準備にかかる。

 出来るだけリスクを負わない様何重にも作戦を考え、思考をまとめた。

 俺は近くに手で握れるくらいの大きさの手頃な石を右手でもち、緊急避難用の煙玉を二つすぐに使えるようにする。

 そして体に魔力を行き渡らせ身体強化の発動、剣をすぐに抜けるように準備。

 ボブゴブリン、普通のゴブリンと違い警戒心が強く、自己保身が強い。

 そのため、常に警戒体制を取る際は自分の前に手下配置する。

 だから俺はその逆手をとる。

 正面から戦っても勝機は十分あるが、最低限の戦闘で終わらせるのに越したこともない。

 俺は右手に持っていた石を投げる、そして


カシャン


 「ガイア!」


 音がした瞬間ボブゴブリンが声をあげ、二体のゴブリンに指示し、音のした方に立たせる。

 俺は後ろを警戒していないボブゴブリンを剣を抜き、八相の構えからは首を上から斬りつける。


「は!!」

「ギャ!!」


 浅い!

 俺は斬りつけるも仕留めることはできなかった。

 俺はすぐに眉間に魔力を集め、塊を生成。

 形は銃弾。

 前に並ぶように三つ生成。

 俺は斬りつけたあと、即座に残心し、ゴブリンたち体を向ける。

 俺がゴブリンたちを見たときにはボブゴブリンは苦しんでおり、残り二体のゴブリンは混乱しているのか俺とボブゴブリンを交互に見ている。

 これは好都合!!

 俺は生成した弾丸を二発、それぞれのゴブリン二体の目元に撃ち込む。

 俺が眉間に魔力の塊を生成したのは最も狙いやすく実戦で使い勝手が良かったからだ。

 イメージはスコープ。

 目で直接見て、狙いを定める。

 数年間ゼフと訓練試行錯誤を繰り返し、実践で狙い撃ちが可能になるレベルまで鍛え上げた。

 相手の視界を一瞬奪うならほぼ完璧にできる。


「ギャ!!」

「グニャ!」


 魔力の塊が着弾しゴブリン二体が手で目を押さえる。

 これで二体は数秒行動不可。

 俺は弱ったボブゴブリンと一対一で戦うことができる。

 数秒とはいえ時間が空いたおかげか手下がニ体が動けないのを見てボブゴブリンは俺に石斧でかかっていた。

 そのまま退治してもいいのだが、まだほぼ無傷のゴブリンが二体がいるため時間はかけたくない。

 そう判断し、ボブゴブリンが俺の剣の間合いに入った瞬間を見計らい、目に魔力を集め、魔法を発動。


『見切り』

 

 『身体強化』の応用で、一つの部分のみ強化する『部分強化」を工夫して編み出した。

 『見切り』は目の眼力を最大限にまで強化するための魔法でこれもゼノとの訓練で身につけたもの。

 俺はスローモーションに見えるボブゴブリンの動きを観察。

 秒にしてコンマ数秒、体感にしておよそ五秒。

 落ち着いて観察してタイミングを見計らい、身体強化を使用しながらガラ空きの左腰目掛けて八相の構えから振り下ろす。

 俺が八相の構えからしか攻撃しないのはそれしか通用する攻撃手段を持っていないからだ。

 俺は剣の稽古は全て八相の構えから振り下ろす訓練ばかりをした。

 俺では普通にやったところで、目上の相手には勝てない。

 だから通用する一撃のみを鍛え続けた。

 結果、八相の構えから振り下ろすことに特化した体になり、その一撃はゼノでも受け切れない時がある程の威力になった。

 

 「ウギャ!!」

 

 俺が左腰に斬りつけると今度こそボブゴブリンが倒れた。

 そして、体が消滅していって魔石のみが残る。

 本当にこういうところはゲーム仕様なんだな。

 俺はそんな感想を抱きつつも残りの二体のゴブリンと対峙する。

  

「フギ!」

「ギギ!」

 

 怒りを感じているのだろう。

 親玉を殺された恨みまたは妨害されたことへの怒り。

 分からないが理由としては妥当だろう。

 でも、今は関係ない。

 二体のゴブリンは俺に対し警戒心を持っているため、動かないでいる。

 俺は常に短期決戦を望む。

 俺に戦法では長時間も戦う力はない。

 俺は生成していた魔力の塊を右側にいるゴブリンにぶつける。

 

「グギ!!」


 所詮はゴブリン、学習はしない。

 俺の魔法を撃ち込まれたゴブリンはまたも視界を奪われる。

 左にいるゴブリンは何が起こったのか理解ができず、慌てている。

 俺はそのゴブリンに向かい構えてから斬りかかる。


「ギ!」


 左にいたゴブリンは真っ二つとなりその場から消失、魔石のみが残る。

 俺は右側のゴブリンにすぐにとどめは刺さず、あえて放置。

 ただ、すぐにトドメをさせるように準備はする。

 念のため、魔力の塊を2発眉間に生成。

 残りのゴブリンから距離を空けて剣を八相の構えにする。

 もちろん周囲の警戒も忘れずにする。

 それから数秒時間が経ち、ゴブリンは復活して、自分の生命の危機を感じる。

 どんな生き物は生命の危機があった場合、必ず逃げるだろう。

 もちろん、仲間が多くいる場所に。

 ゴブリンはすぐさま南の方角へ逃げた。

 帰省本能、ゴブリンは無意識にそちらの方向に向かう。

 俺は魔力の塊を発射することなく、身体強化でゴブリンに向かって剣を振り下ろす。

 

「ギャ!」


 ゴブリンが最後そう鳴くもすぐに魔石となる。

 

「はぁーーー」


 戦闘が終了し、俺は大きなため息を吐き生成していた魔法を解除した。

 はじめての実戦、死ぬ恐怖があり余計に疲労が溜まった。

 そして何より魔力総量を一気に三分の一弱使ったため、さらに疲れたのを感じる。

 俺の魔力総量は少ないが無属性魔法を工夫して格上相手に戦えるように訓練をしていた。

 今日の戦闘で使った魔法も訓練をし続けて身につけた。

 ただ、魔力の燃費が悪い。

 俺の戦闘で使える魔力量は魔力の弾丸で考えた方がわかりやすい。

 俺の魔力総量から使える残弾数は百発。

 ただ、それプラスで戦闘中に身体強化、部分強化など使うため、一回の戦闘では精々三十発使えればいい方。

 身体強化は魔力の弾丸一発で精々五秒。

 部分強化に限っては一回使うと十発分の魔力を消費してしまう。

 こういった理由で俺が戦闘できる時間は長くて数分、短くて数十秒

 でも、素質がない俺でもたった数分、数十秒は渡り合うようになった。

 今日の戦果をみて俺自身の成長、自信に繋がった。

 原作開始まで俺は気を抜かず努力を続けたいと思った。


お読みいただきありがとうございます。

次回は明日18時までに更新します。


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントは作者のモチベーションになります。


よろしくお願いいたします。


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