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交わりとすれ違い  作者: Noeru
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③交わりとすれ違い

③交わりとすれ違い


次の日のお昼、マヤは雪と昼食を取っていた。

「なんか、マヤと一緒に食べるの久しぶりだね。」

「そうだね!最近、雪はトシ君と一緒だったもんね。」

マヤはほっぺをわざとらしく膨らませながら言った。

「ごめんごめんって。嫉妬しないでー。」

(本当は、そんなこと思ってないくせに。)

マヤは口には出さなかったが心の中で毒を吐いた。

雪はちらちら携帯を見ながらニヤニヤしていた。

「どうしたの?トシ君?」

マヤは複雑そうな顔で聞いた。

「へへへ。」

雪は照れた様子でマヤに笑いかけた。

マヤは顔を引きつらせながら愛想笑いをした。

(私と一緒にお昼食べててもトシくんのことばっか…。)

雪はしばらくニヤニヤしながらスマホで連絡を取っていた。

「ごめん。もう終わったから大丈夫。」

雪はスマホを机に置き、目の前に座るマヤに言った。

「いえいえ。それでトシくんとは何か進展あったの?」

「うーん。そこまでは無いかな。」

雪は先ほどとはまた別の嬉しそうな恥ずかしそうな表情だった。

「へぇ。」

マヤは愛想笑いを続けた。

雪は咄嗟に照れながら言った。

「あっ、でもお互いあんまりイチャつくの好きじゃないからさ。普通にデートに行って手をつなぐくらいだよ。」

「そうなんだね。」

マヤは意外そうな顔をしてからニヤニヤしながら雪のお腹に抱きついた。

「じゃあ、こうやってギューってできるのは私の特権だね。」

「もう、いきなりなになに。やめてよ。」

「ちょっと太った?幸せ太り的な…?」

「太ってないよぉ!ちょっと焦るからやめてよぉ。」

そう言う雪は照れながらも嬉しそうな顔でマヤの頭をかき乱すように撫でた。



放課後、マヤは資格試験の講座を受講していた。

講座が終わった頃にはすっかり外は暗くなっていた。

「はぁ。資格試験の講座きっつ。」

自販機で買ったバナナジュースを片手に帰路に向かっていた。

すると、ふと公園でイチャついているカップルが目に入った。

マヤはその光景に目を疑った。雪と敏信が、見つめ合いながら座っていたからだ。

雪はマヤには見せない艶めかしい笑顔で敏信の頬に優しく触れていた。

敏信も雪の腰を抱き寄せ、とても嬉しそうに雪の顔を見つめ返していた。

雪と敏信は二人だけの世界に入っているようで、マヤに気が付く様子が全く無かった。

マヤは複雑な顔をたまま早足で駅に向かった。駅に着いた頃には軽く息が上がっていた。

(イチャつくの嫌いって言ってたじゃん。本当に嫌なところ見ちゃったわ。)

マヤはしばらく膝に手を付き、地面を見つめていた。



 次の日の放課後、マヤと幸太はファーストフード店にいた。

「何、マヤ今日も暇なの?」

「夜はバイトあるけどね。まぁデートしてくれる彼氏もいない寂しい独り身ですからね。」

幸太はマヤの言葉を無視しながらハンバーガーを口に運んでいた。

マヤは無視され幸太の顔を軽く睨んだ。幸太は依然と無視を貫いていた。

マヤは諦めてストローを口に運んだ。店内をふと見渡すと、数組くらいカップルが目に入った。

ポテトを食べさせ合いっこしていた。マヤは少し怪訝そうに再び飲み物に目を落とした。

「恋愛って片思いが1番楽しいよね。」

「あれ、この前、恋愛ドラマは付き合ってからがキュンキュンするとか言ってなかった?」

幸太はすかさずにツッコミを入れた。するとマヤはチッチッチッと人差し指を顔の前でふりながら言った。

「幸太は分かってないねぇ。付き合ってからもいいけど片思いが究極に萌えるんですよ。トシ君も付き合うまでの方がキラキラしてたでしょ。」

幸太は少し考えてから言った。

「別に今も変化ないと思うけど。」

マヤはつまらなさそうに窓の方を見た。幸太はマヤに言った。

「なんか、今日いつもに増して機嫌悪くない?何かあった?」

「別に…。」

マヤは昨日の放課後のことが頭に過ったが何も言わなかった。

その後、隣に部活帰りの男子生徒の団体が座り、自然と席を立つ形になった。


 マヤはバイトまで時間があるとのことで、急遽二人で駅ビルをブラブラすることになった。

「えっ、」

突然、マヤが携帯画面見ながら立ち止まった。

「何、どうかした?」

マヤは携帯画面を幸太の顔の目の前に向けた。

「ちょ、近い近い。」

幸太はマヤの腕を軽くつかみ、顔から離した。

携帯の画面には雪が投稿した短い動画が投稿されていた。

「雪ちゃんの投稿?それがどうした?」

「…。」

マヤは黙って機嫌悪そうに幸太を見つめていた。

幸太はスマホの画面を再度よく見た。動画では軽く、雪が敏信と軽くじゃれ合っている姿が投稿されていた。

「雪ちゃんと敏信がイチャついてるね。」

幸太は半笑いをしながら言った。マヤはじっと黙って幸太を見つめていた。

「何が言いたいのさ。カップルだからイチャイチャするのは普通でしょ。」

「イチャイチャするの好きじゃないって言ってたもん、雪は。」

マヤは幸太に訴えかけるように言った。

「そんな、親友にわざわざイチャイチャしてるとか言わないだろ。」

「それは……。」

「マヤだって彼氏いた時はイチャイチャしてたでしょ?」

するとマヤは悔しそうにそっとスマホの電源を落としながらそっぽを向いた。

しばらく二人の間には気まずい空気が流れた。

幸太はマヤの表情を窺ったがまるでおもちゃを買ってもらえなかった子供のようにいじけた表情をしていた。

そして困ったような目をしてから小声で言った。

「まぁ、個人的にはあまりそういう事をSNSに載せるのはどうかと思うけどね。」

マヤはゆっくり顔を上げ、無表情で幸太の顔を見つめ返しながら言った。

「別に親友だし言ってくれてもよくない?なんで嘘つくんだろう。」

「でも、雪ちゃんが仮に敏信とイチャイチャした話を全部してくれたらそれはそれでマヤは文句言いそうじゃん。」

幸太はすかさずマヤに毒を刺すと、マヤは苦虫を嚙み潰したような表情をした。

「否定は出来ない……かも。」

「めんどくさい女だな。」

「……うるさい。自分でも分かってるし。昨日は実際見ちゃったし、遠くからだったけど…。」

「気まずっ…。それは、災難だな。親友が恋人とイチャついているところ見たくは無いな。」

二人は適当に駅ビルをブラブラして解散した。



次の日の昼休み、雪は後ろで手を組みながらマヤの目の前に立ち、ニコニコしていた。

マヤは雪の顔を見てから自然とサラサラの黒髪ボブの軽く揺れる毛先に目を移していた。

雪はマヤの視線の先など気にせず楽しそうな声のトーンで言った。

「ねぇねぇマヤ。なんか隠してる事ない?」

雪はニヤニヤしながらマヤの顔を見つめていた。

マヤはその嬉しそうな楽しそうな雪の顔を見て釣られて軽く笑みがこぼれてしまった。

「えっ、何が?どういうこと?」

「またまた、なんか最近いい事あったんじゃないの?」

「いや何にもないよ。」

マヤは最近の出来事を頭の中で振り返ったが何も思い当たる節が無かった。

「真面目に何も思いつかないんだけど。」

「えぇー。うそー?私から質問するのは違うしなー?」

「なになになに?めちゃくちゃ気になるじゃん!寧ろ教えてよ。何のこと?」

雪はニヤニヤしながらマヤの耳元で囁いた。

「マヤって幸太くんと付き合ってる?」

へっ?とマヤは信じられないという顔で雪に言った。

「いや、付き合ってないよ。」

「でも、この前二人で並んで駅に向かうところ、偶然見ちゃったんだよね。」

「あー、まぁ最近一緒に帰ったね。」

「仲良しじゃん!幸太くん顔はいいし、よさげじゃん。性格は分からないけど、どうよ。さすがトシくんの友達って感じ?」

「はぁ…?」

マヤは少し怪訝さうな顔をした。

「マヤにその気があるなら私は応援するよ。あ、そうだ。あれだったらトシくんにも協力して貰えるように話すよ!」

「いや、別に幸太とはそういう関係じゃないから。勝手に盛り上がらんでよ。」

マヤは低い声でだるそうに言った。すると雪は少しその態度に驚いたのか声のボリュームを下げていった。

「……なんで少し機嫌悪くなってるの?怒ってる?」

「いや、別に怒ってないけど。」

マヤは少し気まずそうに一言呟き、窓の外を見つめた。

雪はしばらく、マヤと幸太がくっ付いてほしいなど色々と言っていたがマヤには全く話が頭に入ってこなかった。



「ってことがあったの。危なく喧嘩になりそうだったよ。」

マヤは目の前でコーラを飲む幸太に言った。

今日も二人は約束したわけでは無いが、ファーストフード店で向かい合って座っていた。

「それはそれは。お疲れさま。」

マヤは幸太の軽い返答を気にせず続けた。

「誰のせいで放課後暇になってこの時間ができてるんだっつーの。何にも気づいてないんだから。」

マヤは不満とばかりにアイスラテを喉に流し込んだ。すると幸太が薄笑いを浮かべながら言った。

「それ雪ちゃんに直接言えばいいじゃん。」

するとマヤは更に機嫌が悪くなったようで幸太の顔を睨みつけた。

幸太はキョトンとしながらマヤの顔を見ていた。

しばらく目が合っていたが先に目を逸らしたのはマヤだった。

「そんなの…。言えたらこの会を開催してないわよ。」

「会って何だよ。何会?オフ会的な?」

「慰め会……同情会……嫉妬会的な。」

マヤは自信なさそうに言った。

「別に俺は嫉妬してないんだけど……。」

「えー?でも遊ぶ回数少なくなったってしょんぼりしてたじゃん。」

「しょんぼりはしてないよ。ただ、事実を述べただけだし。」

「素直じゃないなぁ。」

マヤは楽しそうに笑った。

幸太も自然とつられて笑顔になっていた。

「幸太はずっと彼女いないの?」

マヤは突然、ふと思ったことを口にした。

すると幸太は黙ってストローで飲み物を飲みながらじっとマヤの顔をじっと見つめていた。

そのまま、無表情なままマヤをまっすぐ見つめていた。

「な、なになになになに?怖いって。」

マヤは焦りながら顔を逸らした。しかし、物おじせず続けて質問した。

「前はいたんでしょ?でもなんか女関係で色々あってしばらく彼女はいないって感じ?」

「何、その予想は。前も思ったけどどこからその予想がきてるの?」

幸太は飲み物を吹き出しそうになりながら笑っていた。

「ごまかさないで教えてよ。幸太、普通にモテそうじゃん。」

幸太はしばらく口を開こうとしなかったがマヤがあまりにしつこいので一言言った。

「なんでそんなに知りたいの?」

マヤは目を見開き、しばらく返答を考えてから頬杖をつきながら可愛い口調で言った。

「幸太くんのこともっと知りたいからかなっ?」

「何、誘ってんの?そういうことは軽い気持ちで言わない方がいいよ。」

幸太は少し強めに言った。

「なんで、別にいいじゃん。本当のことだし。」

「そういうのやめてって最初に言ったよね。」

幸太は冷めた目をしながら言った。

マヤは驚き、返す言葉が見つからず黙ってしまった。

幸太はナゲットにマスタードを付けて黙って食べていた。

「別に誘ってないし、これくらいいいじゃん。」

幸太は黙ったままだった。マヤは少し強めに言った。

「私は幸太と一緒にいて楽しいし、色々知りたいと思っているのは本心だよ。それもダメなの?」

すると、幸太はナゲットをコーラで流し込みゆっくり呼吸をしてから言った。

「それは親友に冷たくされて、心が少し乾いているからそう思うだけだよ。」

「別にそんなこと無いし…。」

「現に俺たちが一緒にいるのもそういう原因じゃん。」

マヤは何も言い返せなかった。

「なんでもいいから自分を満たしてくれるものを探していただけだよ。別に俺じゃなくても良かったわけだろうしさ。」

「それは……。」

「結局は偶然が偶然を招いた結果なんだよ。」

幸太は淡々と言葉を吐いていた。

マヤは言い返そうと必死に言葉を探したが見つからず、じっと机に視線を落としたままだった。

幸太はゆっくり携帯をいじり始めた。そして、ゆっくりと口を開いた。

「あと、マヤと雪ちゃんとの関係もそろそろ戻ると思うよ。」

「それ、どういうこと?」

幸太は意地悪な顔で最後に吐き捨てるように立ち上がりながら言った。

「それは、自分で考えて。じゃあ、俺行くから。」

幸太はそれだけ言うと軽く手をひらひらと上げてお店を出ていった。

マヤは長身の幸太の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。

その日を最後にマヤと幸太がファーストフード店で落ち合うことは無くなった。


次の日、マヤはあからさまに機嫌の悪そうな雪を見つけ声をかけた。

「おはよ。雪、どうした?」

「マヤ~。聞いてよぉ。」

雪は小動物のようにマヤの胸に顔を埋めて悲しそうな顔をしてきた。

二人は公園のベンチに移動した。

雪の話を要約すると、敏信と喧嘩したとのことだった。

今まで一度も喧嘩した話を聞いたこと無かったのでマヤはかなり驚いた。

「ちょっと、原因が見えないんだけど結局どういう経緯で喧嘩になったの?」

「それが私も分かっていなくてさ。でも、今まで溜まっていた小さい不満が一気に喧嘩に繋がったというか…。」

「そうなんだ…。」

マヤは静かに雪の愚痴を聞くことしかできなかった。そして最後に雪に言った。

「まぁ、どんな形であれ私にもできることがあったら言って。私は雪の味方だからさ。」

「マヤ…。ありがとうね。相談乗ってくれてスッキリしたよ。」

雪はスッキリした様子でそのままマヤと分かれた。

マヤはどうせ仲直りするものだと思っていた。

しかしこの後、雪と敏信の関係は自然消滅していき結局一週間後には別れることになった。

マヤは幸太が言っていたことはこのことかと後日気が付くのだった。

二人が別れて、マヤと雪の関係も元通りになり遊ぶ回数も徐々に増えていった。



ある日マヤが通学しているとちょうど、幸太が角を曲がってきた。

幸太もマヤに気が付いたようだった。

あれから一言も交わしていなかったため少し気まずいと思いながらもマヤは小さな声ですれ違いざまにあいさつした。

「おはよう。」

「おう!」

幸太は普段通りでマヤもホッとした。

そしてすぐに前方から雪が大きく手を振りながら、

「マヤ、早く!」

と声をかけられた。

マヤは嬉しそうに雪の方向へ足を速めた。

幸太は軽く振り向き、雪とマヤの関係がすっかり元通りになったことを確認すると軽く微笑んでいた。

 マヤは雪から敏信と別れたことを軽く聞いたが、詳しくは話を聞かなかった。

あれから雪と敏信が話していることも一緒にいることも全くなくなった。それと同時にマヤと幸太も自然と疎遠になっていった。

ある日、雪と二人でその廊下を笑いながら歩いていると、前方から幸太が一人で歩いていく姿を視界の端で捉えた。雪は楽しそうにマヤとの会話に夢中だった。

しかしマヤは幸太とすれ違う一瞬、幸太が呟いた言葉を聞き逃さなかった。

「よかったな。」

優しく微笑みながらマヤにしか聞こえない小声でドキッとした。

マヤは幸太の方向を振り返ろうとしたが後ろから幸太を呼ぶ大きな声にハッとし、そのまま短く息を吸い込んだ。

「マヤ、聞いてる?どうかした?」

隣を歩く雪の話がすっかり耳に入ってなかったマヤだったが雪に言った。

「どうもしてないよ。ってか今日はどこ行く?オケる?」

「いいよ!どこでも行こう!」

マヤは幸せそうに雪と昇降口に向かって歩いて行った。



おしまい

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