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第三話 強力な助っ人、現る

「塁、どうしたの? 今日は萠ちゃんと相談所のお仕事するんじゃなかった?」


 俺が電話をかけると、ある人物が電話に出た。

『』ある人物』とは俺と萠の友人である篝志恩(かがりしおん)のことだ。あいつには彼女がいて、社会人の姉もいる。きっといいアイデアを出してくれるだろう。


「あぁ、今相談が来たんだが、俺達だけでは解決できなさそうなんだ。志恩に聞けばいいアイデアが思い付くかもしれないと思って電話した」


「良かったら、僕もカフェに行くよ。長話もお客さんに迷惑だろうからね」


「いいのか? そうしてくれると助かる」


「じゃあ、今から向かうね」


 俺は電話を切った後、先程座っていた席に戻った。そして、志恩がカフェに来てくれることを萠と葛城さんに知らせた。


「今、俺と萠の友人がカフェに向かってくれるみたいなのでしばらく待ってもらっても大丈夫ですか?」


「勿論です。僕のためにありがとうございます」   


「大丈夫ですよ。気にしないでください」



 志恩を待っている間、俺と萠、葛城さんは色々な話をした。美久さんとの出会いは大学の映画サークルだったとか、俺と萠は産まれたときから一緒だったとか、他愛もない話だ。

 そうしているうちに、志恩の声が聞こえた。



「塁、来たよ」



「志恩、来てくれてありがとうな。葛城さん、彼が俺と萠の友人の篝志恩です。

 志恩、こちらの方が相談者の葛城松也さんだ」



「篝です。よろしくお願いします」



「葛城です。こちらこそよろしくお願いします」



 志恩が相談所の中へ入ると、俺は葛城さんに志恩を、志恩には葛城さんを紹介した。そして、葛城さんと志恩がお互い挨拶をしあう。




「塁、葛城さんの悩みって何?」



「彼女さんへのプロポーズの方法についてだ」



 俺が簡単に志恩に葛城さんの悩みを伝える。と腕を組んで何かを考えているのか、うーん、と唸る。



「プロポーズね……。でも、なんで僕が呼ばれたの?」





「それはね、志恩くんが恋愛について詳しそうだからだよ」



「え、僕が?」



 志恩が自分の呼ばれた理由に疑問を持っているようだったので萠が教えてあげると、志恩は目を丸くした。



「志恩、お前は彼女がいるからな。お姉さんもいるんだし、女心が分かると思ってさ」





「いや、女心なら萠ちゃんに聞いた方がいいのでは?」





 志恩は困った様子で、萠の方を見た。

 志恩と俺達が知り合ったのは去年の春のことだ。あれから一年は経っているが、まだ萠のことを知らないみたいだな。萠はまともな意見を言うことはあるが、それは珍しいことだ。特に恋愛については彼女に意見を求めてはいけない。なぜなら彼女の理想の男性は「毎日一緒に自分が埋もれるくらいチョコレートを食べてくれる人」らしいからだ。しかし、志恩の意見を尊重して一応萠にプロポーズの方法を聞いてみる。



「萠、お前は女性がどんなプロポーズをしたら喜ぶと思う?」



「うーん、『僕と結婚して、一緒に毎日たくさんのチョコを食べましょう』ってチョコで出来た花束を渡してくれたら喜ぶ!」



「志恩、どうだ?萠の意見は参考になるか?」



「なりませんでした」



 志恩はその場でうなだれた。萠の思考は常識を超えていることが多いからな。



「そんな方法があったんですね、小浜さんすごいです!」



「葛城さん、それで喜ぶの多分萠みたいな人だけです」



 葛城さんが真似をせんばかりに褒めていたので俺は必死に止める。美久さんが萠くらいのチョコレートが好きなら止めないがそういう訳ではなさそうだ。


「あ、いい方法思いついた」



「志恩、何か思いついたのか?」


 俺が葛城さんを必死に止める中、志恩が何か思いついたようだったので、俺は期待を込めながら聞いた。



「遊園地デートで、夜の観覧車の中で告白するっていうのはどうかな」



「恋愛漫画みたいだね! さすが、志恩くん」



「よくある展開だからこそ、成功しやすそうだな」


 俺と萠が志恩の意見に賛成する。遊園地デートか……。あるあるだが、世の女性が憧れるシチュエーションだ。


「それなら、美久も喜んでくれるかもしれないです!」


 葛城さんも賛成ということは、決まりだな。

 案外早く決まって良かった。



「では、遊園地デートでプロポーズをするということで大丈夫ですか?」



「はい、ありがとうございます!」



 葛城さんが席を立ち、俺達三人に頭を下げた。

 これで今日の最初の悩みは解決だな。

 と、思ったが志恩が何か言いたそうにしている


「志恩、どうしたんだ?」


「塁、これで相談は終了?プロポーズのプランも立てないといけないし、提案したのは僕達なわけだから最後までサポートしてあげたらどうかな?」


「志恩くんの意見に賛成!」   


 確かに、プロポーズの方法を提案したのは俺達の方だ。形だけ決めて計画や実行を全て葛城さんに任せるのは申し訳ない。



「わかった。葛城さん、良かったら最後まで俺達三人でサポートしてもいいですか?」



「佐野さん達が迷惑でなければ、そうしてくださると嬉しいです。なんだか僕だけじゃ自信がなくて……」


「では、また後日カフェに来てもらっても大丈夫ですか?そのときは相談所ではなくて大きなテーブルで話し合いましょう。」   


「わかりました。よろしくお願いします」


 俺が後日カフェに来てくれるように頼むと、葛城さんは承諾してくれた。そしてもう一度頭を下げてカフェを後にした。



「最初のお仕事、どきどきするね」 



「志恩、巻き込んでしまってすまない」



「大丈夫だよ。僕もできる限り協力するね」



「それは助かる」



 俺達三人は葛城さんを見送り、相談所を閉めたあと、店内の片隅で葛城さんと美久さんの遊園地デートの計画を立てた。

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