第二話 プロポーズの応援しちゃいます
男性が席に座ると、俺と萠は男性と向かい合う形で座る。
「今日は相談所に来てくださってありがとうございます。俺の名前は佐野塁、隣にいるのは小浜萠です。まずは、貴方のお名前をお聞きしてもいいですか」
俺は軽い自己紹介をした後、男性の名前を聞く。
「葛城松也です」
「かつらぎまつやさん」
萠は『相談記録帳』と書かれたノートに葛城さんの名前を復唱しながら記入する。そしてその横に葛城さんらしき人の似顔絵を書いていた。その絵はあまりにも葛城さんに似ていなかった。
「萠、似顔絵は書かなくていいぞ」
「はぁい」
俺はこっそり萠に耳打ちをすると、萠は面白くなさそうに動かしていた手を止める。
「葛城さん、次は相談内容を聞いてもいいですか?」
俺は気を取り直して葛城さんに相談内容を聞く。
「あっ、はい。実は僕には彼女がいるんですが、一ヶ月以内にプロポーズすることを考えているんです。でも、プロポーズをどんな風にすれば良いか分からなくて。」
「分かりました。彼女さんにどんなプロポーズをすれば良いかアドバイスが欲しい、ということでいいですか?」
「はい! よろしくお願いします!」
葛城さんは素早く席を立ち、俺達に綺麗な角度のお辞儀をする。
俺たちに相談したからなのか、すっきりとした表情になっていた。
「彼女さんってどんな人なんですか?」
「写真があるので見せますね」
萠が葛城さんにそう聞くと、葛城さんはジーパンのポケットからスマートフォンを取り出した。少しスマートフォンを操作すると、俺達に画面を見せる。その画面に映っていたのは、黒髪で長髪の女性だった。
「わぁ、美人さん!」
「彼女の美久です」
萠の表情が普段より輝き、画面の中の美久さんに釘付けになっていた。
「彼女は優しい人で、こんな頼りなさそうな僕でも大切にしてくれるんです。なので、たまには格好いい所を見せてあげたいなぁと思いまして」
俺は初対面ながら、葛城さんは良い人なんだと思った。彼女が大切にしたい気持ちも分かる。しかし、プロポーズの方法か……。俺も萠も恋人がいたことがないので難しい問題だ。話を聞くだけで良いと父さんは言っていたが、いざ相談となると解決してあげたくなる。どうすればいいのだろうか。
「ねぇ、塁くん。恋愛に詳しい人を助っ人で呼ぶのはだめかな?」
萠が横にいる俺を見つめ、頭を横に傾けながら提案をする。助っ人か……。この萠の提案は良いかもしれない。だが、恋愛経験豊富な人が知り合いにいるか?
あ、一人いた。あいつなら何か良い方法を知っているかもしれない!
「萠、それだ! 葛城さん、電話したい相手がいるので少し待ってもらってもいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
俺は葛城さんの了承を得て、ある人物に電話をかけた。