ドラゴン、血をあげる
オレらがパーティしていると冒険者ギルドの扉が開かれる。
入ってきたのは一人の男だった。肩には人間を抱えている。
「誰か相棒を助けてくれっ…」
と、助けを乞う男。
酷くうなされている。顔色が悪い。オレは近づいて観察してみる。ほかの冒険者も心配して近づいていった。
「症状は?」
一人の男性冒険者が尋ねる。
「バジリスクがっ…」
バジリスク。Bランクの魔物に指定されてるっつうドラゴンか。
あの毒は厄介だぞ。オレは抗体あるから効かないが人間が受けると即死してもおかしくねえが…。体力があるからかまだ耐えている。
「解毒剤も飲ませたんだがよっ…。効かねえんだ」
「バジリスクの毒を解毒する薬はさ…」
「バジリスクの毒に抗体を持つドラゴンの血か、万能薬と言われてるヘヴンドラゴンの血しかねえよな」
…あ、オレ狩られる?
「こいつ一人のために危険を犯したくはねーぜ…」
「悪いが無理だ。すまん…」
「…………」
なんの冗談だ。オレが血を上げろっていうのか?
オレも好んで人助けはしたくねえ。死ぬときゃ死ね、そういうスタンスでいるが…。
だけどなあ、後ろでオレをサリィが見てんだよ。助けろ、と。
「ヘヴンドラゴンにお願いしてみましょう。血をくれないかって」
「ちょ」
「だ、だが…」
「人間心を込めれば許してくれる」
サリィが目配せしてくる。
わかったよ。あげりゃいいんだろ。なんだよお前ドラゴンをこき使いやがって…。オレが優しードラゴンだからいいけどオレ以外だと殺されてるからな。
オレは冒険者ギルドを出て森に急いで向かう。ヘヴンラゴンに戻り来るのを待った。
こき使われるのがむかつくんでとりあえず森の木に八つ当たりしているとサリィたちがやってくる。
「ヘヴンドラゴンよ! 聞こえるか!」
聞こえますが?
そういうようにオレはそちらを向く。
「仲間が毒に侵されている! どうか血を分け与えてくれないか!」
しょうがねえな。
オレは爪で自分の手を突き刺す。痛い、涙が出そうだ。
オレの手からポタポタと血が垂れる。持ってけと言わんばかりに手を前に出した。
「く、くれんのか…?」
さっさと持ってけ馬鹿野郎。早いとこ治してーんだよ。痛くてじんじんする。
オレの血を瓶に汲む男。オレは手を治す。自然治癒力を高めただけで体力めっちゃ使うんだよな。こんな小さい傷ならすぐに回復するしそんな疲れないが。
「協力感謝する!」
「ありがとうございます! ヘヴンドラゴン様!」
気にするな。
あとサリィ。あとでこの借りは返させるからな。ただでオレの血をやると思うなよ。
オレが冒険者ギルドに入ると先程の男が意気揚々に話していた。
「ヘヴンドラゴンが血をくれたんだよ! 気まぐれかなんだか知らねーけど…」
私はサリィの後ろに立つ。
「ヘヴン? 男の人が…」
「おい、白々しいぞお前…」
「…いいじゃん。血の一滴や二滴くらい」
よくねーよ。痛いんだよ傷つけんの。
「でもこういうこと続けるとヘヴンドラゴン悪いドラゴンじゃないって思ってもらえるんじゃないかしら」
「そうかもしれねーけどよ…。地味にいてーの。わかる? ナイフで手の甲を刺したようなもんよ? 痛えだろ」
「うっ、そう考えると痛そうね…」
オレの爪はどんだけ太いと思ってる。刺す場所によっては致命傷だぞ。
「ったく」
オレは血を飲ませて回復してきた男をみる。顔色が良くなっている。
この顔見れただけでもいいかもしれねーけど。それでも嫌なもんは嫌だ。