ドラゴン、さらにバレ…そうになる
報告に行く竜騎士とオレを警戒して剣を構える竜騎士。
竜騎士が乗る竜も人間よりは相当でかいが、オレよりも凄い小さい。リザードのような小竜と呼ばれるやつだな。
やっちまうか?
オレは咆哮を上げる。単に威嚇のためだ。
竜騎士が乗る竜はビビらない。主人のためにその命を尽くそうとしている。
同じ竜同士だが、滑稽だと思う。オレらは誇り高き竜なのだ。誰かに付き従うのは柄じゃない。
相手はやる気みたいだな。しょうがねえ。鬱憤もあるし相手してやるとするか。
オレは翼をはためかせる。地竜が突撃し、竜騎士が槍を持って貫こうとしてきた。
オレは前足で蹴散らす。
竜が吹っ飛んでいき、木々を貫く。あの竜は死んだだろう。木が体に突き刺さっている。
オレはブレスを吐き、辺り一面を火の海にさせた。竜は暑がりこちらに近づかないでいる。
相手は敵わないと悟ったのか撤退していった。
「ふぅ。ま、憂さ晴らしにはなったかな」
オレの足元には数体の死体。ブレスを吐いて焼き焦げた人間の死体があった。
とりあえずオレは死体を前足で掴み、城の中に放り込んでやった。王城は騒ぎになっており空から焦げた死体が…と。オレの姿もバッチリ見られた。
「とりあえず弔っとけ。オレは責任とらねえ」
森に戻り、森に引火しているので消火することにした。くう、だからブレスは嫌なんだ。森の中でやると火事が起きるからな。
オレは翼をはためかせ、風を…。って、それじゃ余計燃え盛るな! バカだオレは!
と、とりあえず涎で消火できないかな? オレはよだれをぺっと吐き出してみる。
オレのよだれが木にかかると、火が消えた。ふー。オレのよだれすげーな。
オレはまた再び人化して、アリィとサリィのところに…。
いや、ちょっとドラゴン姿でやることやろう。オレは人化せずちょっと体を震わした。
オレは冒険者ギルドの査定窓口にいる。
「こ、これだけの数が森に落ちてたんですか?」
「おう! 落ちてた!」
「んなわけないでしょう! こんなにヘヴンドラゴンの鱗が落ちてるわけないでしょう! きっとドラゴンと交戦して…」
「いや、落ちてた…」
なんで信じねえんだこいつ! 落ちてたつってんだろ!
それにオレは鱗を取っ替えるからたまに落としてんだよ! オレはオレ自身の鱗を落としただけだっての! いいから買い取れや!
「ヘヴンドラゴンはきっと気が立って…!」
買い取ってくれねえから気が立ってるよ。
「いいから買い取れやあ! オレが落ちてたつったから落ちてたんだよ! それ以上もそれ以外もねえわボケっ!」
「ひいっ!?」
オレが怒鳴ると査定窓口の受付のやつが可愛い悲鳴を上げる。すると、奥の方から老年の女性が歩いてきた。
「どうなさったの?」
「こ、この冒険者の方がヘヴンドラゴンの鱗が大量に落ちてたのと…」
「そう。おかしいわね。ドラゴンは鱗を落とすのは」
「でしょギルドマスター!? でもこの方が…!」
「えーと…ヘヴンさん」
女性がオレを睨みつける。その瞬間魔力を感じた。こいつ、オレに対して精神操作系の魔法をかけようとしやがった。それで大人しくさせるのが手口か。だがオレ様には効かねーぜ!
「お前らヘヴンドラゴンの生態知らねーくせによぉ! ヘヴンドラゴンは自分で鱗を落とせんだよ! キレー好きだからなぁ!」
オレはそう怒鳴るがその女性は驚いて固まっていた。が、すぐに笑顔を作り私の部屋で対応します、こちらへと案内され、オレはついていった。
ギルドマスターの部屋と書かれた部屋がある。
「初めまして。私は王都冒険者ギルドマスター且つ、冒険者ギルド統括ギルドマスター。みんなは会長と呼んでるわ。それで…単刀直入に聞くわ。あなたは何者かしら」
「あん?」
「これでもこの国随一の魔法使いなのよ? さっきあなたに大人しくなるよう魔法をかけたけど効いてなさそうじゃない」
「あんなヘボ魔法の効くわけねーだろ」
「へ、ヘボ…」
オレがそういうと会長は落ち込んでいた。おいおい、元気出せよ。オレには効かねーが他の奴らにはきくんじゃねーか?
「オレはしがないEランク冒険者だ」
「嘘ね。Eランクが私の魔法が効かないわけないもの」
「お、オレは…」
どうしよう。かかったフリしとくべきだったか? ここでオレの正体を明かせば騒ぎになる。
「じ、実は隣の大陸でSランク冒険者だったんだ。そのおかげで魔法抵抗力が強いんだよ。ははは」
「そ、そうだったのね。そんな遠くから…」
「納得したか?」
「ええ。納得したわ」
ほっ。なんとか苦し紛れの言い訳が通じた。オレももうちょい慎重に立ち回んねーとな。迂闊が多いぜオレはよ…。