ドラゴン、意識と戦う
ここは、どこなんだろう。
オレの意識が目覚めると真っ暗な闇の中だった。前も後ろも右も左も上も下も真っ暗闇。
あの黒いモヤのせいだろうな…。なんて思いながらオレは思案する。
「多分ここは意識の世界なんだろうな…。オレの肉体はどうしてるんだろうか」
そう思っていると目の前に映像?が流れ始める。
高いところ? 飛んでいる。もしかするとオレの体視点だろうか。
すると、突然オレの体の口からブレスを放ち、ファロファラル王国を攻撃している様子が見えた。
「はあ!? なにしてんだ!? 操られている、のか?」
目の前の光景は信じ難かった。
オレがファロファラル王国を襲っている。人々は逃げ、冒険者たちは剣を向けてはいるが…。
すると、カイザードラゴンがオレの体を蹴飛ばしていた。だがしかし、効いてない…?
「オレってこんな強いのか…って、そうじゃねえ!」
オレはどうにかしてこの状態を解除しなくては。
どうする? この意識体でなにができる? この真っ暗闇の空間でオレは何をすればいい?
畜生、わからねえ。オレは敵になるつもりはなかったんだがな…。
すると、真下から魔法が飛んできていた。
視線がそちらに移る。ギルマスが魔法を放っていた。息を切らし、少し涙目だ。
ギルマスは魔法を撃ち続ける。オレの体にダメージがあったのか、叫んでいた。
だがしかし、オレの体はそちらにターゲットをつけたらしく、光のブレスをギルマスに放とうと…。
その瞬間、何者かにぶっ飛ばされてしまう。
「はあ、今度は私が止める番、か」
ヘルのようだ。
オレは何をしてるんだろう。
「こいよヘヴン。殺したらゴメンなぁ!」
と、ヘルが襲いかかってきた。
オレは何をしてるんだろう。なんでこんなことをしてるのか。
オレは…早く戻らなくては。この状況を打破しなくてはっ…!
すると、真っ暗だった目の前に声がする。
『オマエは誇り高きドラゴンだろぉ〜? 人間なんていう下等種族を殲滅するのは当たり前じゃないかぁ〜』
な、なんだこの声は。ねっとりとして…。
『私のことが気になるのかい? 私は魔王だよ。思念体となって復活したのさぁ〜。君の体を支配して私は世界を征服する!』
「ま、魔王だァ? 何言ってやがんだよテメェ!」
だがしかし、敵はわかった。
オレの目の前にある黒いモヤを相手どればいい。だがしかし、現実の体が死んだらオレも多分死ぬだろうな…。
ヘルがオレを殺さないといいんだけどな…。
『ここで私がオマエを殺せば…! ヘヴンドラゴンの体は完全に我がモノとなる! ふはははは! こんな強いドラゴンの体がよぉ〜手に入るって私はなんて幸運なんだろうなぁ〜』
魔王というやつは憎たらしい口を聞く。
オレは戦闘態勢を取る。魔力は大きいが実力的には大したことなさそうだ。
オレは距離を詰め、右腕でひっかく。
『ぎいやあああああ!』
「攻撃が通じる!」
同じ思念体だからだろうか。
だがしかし攻撃が通じるというのは相手を殺せるということだ。
これ以上被害を及ぼさないようにオレは戦うしかねえ。
『予想外ッ! オレがやられ…』
と、魔法が飛んでくる。
オレは躱し、また距離を詰めた。大きな口をあけ、噛み付いた。
魔王は痛みに悶える。
『ヘヴンドラゴンは予想以上の実力だった…!』
「オレのこと舐めんなよ。何億年も伊達に生きてねーつってんだ!」
オレはモヤを噛みちぎる。
すると、オレの意識がくらっと…。いや、オレの体がひと回り小さくなった?
違う。少し意識が戻っていっている。
「うはははは! オマエの力が弱まったようだなあ!」
『うぐぐ…』
魔王は名ばかりの雑魚じゃねえかよぉ!




