ドラゴン、目を覚ます
目が覚めるとオレはどこかの部屋の中にいた。
腹部が針金で縫われている。オレは立ち上がると腹部に痛みが走った。
「いってぇ…」
「め、目を覚ましたか! ヘヴン!」
「おうヘル。お前もう酔っ払ってねーな?」
「あ、ああ。悪かった。迷惑をかけた。今回ばかりは私が悪い」
と申し訳なさそうにしている。
オレはその場に座りつつため息をついた。生きていたのは幸運だった。
割とマジで死ぬかもしれない怪我を負ったからな。生きててよかったよ。
「お加減はどうですか?」
「おうドラゴーラの姫。まだ痛えけど大丈夫だ」
「よかったです…。本当に申し訳ございませんでした」
ドラゴーラの姫は頭を下げた。ヘルも頭を下げる。
ったく、こんなこともうないようにしてくれよ。
「いいよ。別に。ヘル。借りひとつな」
「ああ。わかった」
「…素直なヘル気色悪」
「なっ…!」
オレが知ってるヘルはオレに喧嘩をふっかけてくるやつだ。こんな萎れたヘルはいつぶりだろう。
ヘルも反省してるし別にいいよ。
「あー、腹減った。ヘル、肉を持ってこい」
「わかった」
「大量にだぞ。スタミナ補給してすぐに治すから」
「わかっている。なんの肉でもいいだろう?」
「ま、贅沢は言わねーよ。なるべく早くな」
そういうとヘルはオレの竜舎から出ていった。
ドラゴーラの姫とオレがこの空間に取り残される。
「なあ」
「は、はい」
「そんな怯えんなよ。ヘルってなんで協力してるんだ? あいつ結構気難しいから協力なんて滅多にしねーやつなんだけど」
「え、えっとですね。私に惚れた…っていう感じで」
「あー…」
あいつ姫を好きになって協力してやがんのか。単純なヤツ。でも、人間はすぐ死ぬ。もしこの姫が年老いて死んだら、病気を患って死んだらどうするのだろうか。
「ヘヴンさんはなんでファロファラル王国に協力を?」
「オレ? 特に理由なんかねーよ。強いて言えば近くに住んでるからかな」
オレは人間に協力する理由はない。
頼まれたら引き受けるってだけで協力するつもりはほとんどない。
ま、でも、ギルマスとかになら協力はしてやってもいいがな。
「そんな単純な答えなんですか?」
「そんなもんだぞ。オレらは悠久の時を生きてるからな。協力するのも暇つぶしってみたいな感じもある」
「そうなんですか…」
オレとヘルは長生きだ。多分この世界が創られた時から生きている。
何億年も生きてると結構暇を持て余すのだ。
「あ、ヘヴンさん。そういえばなんですがファロファラル王国冒険者ギルドのグランドマスターから伝言を受け取ってるんです」
「伝言?」
「勇者祭までに傷を治せ、らしいです」
んな無茶な。
「オレのこの傷数日はかかるぞ。勇者祭に間に合うかは五分五分ってとこかな」
「そんなにかかるんですか?」
「結構デカイ穴と傷をつけられたからな。治す体力もそれほどねー」
体力があるならまだいいのだ。
血も大量に失って体力が回復しきっていない。体力の回復を優先したいが血が足りない。
「お腹に穴があいてよく生きてますね…」
「まあ、生命力は抜群に高いからな。それに昔のヘルはもっとひどいことをしてきたさ」
昔酔っぱらった時オレも止めに入ったんだが、その時に心臓を貫かれた。
そんときゃ流石に死ぬかと思ったがすぐに心臓を再生したことでことなきを得た。
「オレは少し寝る。起こすなよ」
「わかりました」
オレは目を瞑った。




