ドラゴン、意識を失う
祭りの準備も慌ただしくなっていった。
オレは冒険者ギルドの酒場で肉を食べていた。祭りというのは活気付くんだなと思っていると冒険者ギルドの扉が勢いよく開かれる音がした。
「ヘヴン様! ヘヴン様はいらっしゃいますでしょうか!」
「あぁ?」
オレの名前を呼ばれた。
オレは肉を全部頬張り向かうとそこにいたのはいつぞやのドラゴーラの姫。
ドラゴーラの姫は焦ったようにオレの腕を掴む。
「ヘルが暴れてるのです…!」
「はあ?」
「お願いします、私の国を助けてください…」
「ちょ、ちょい待てよ。なんでヘルが暴れてるんだ? あいつは本当に怒らないと暴れねーぞ」
「それが…私が飲んでいたワインを間違えて飲んでしまったようで…」
酔っ払いやがったのかアイツ。
「お願いします…!」
「わかったよ。ただし協力すんだから肉をくれよ」
「わかりました…」
オレは冒険者ギルドを飛び出し、郊外に出てドラゴンに戻る。
背中に姫を乗せ、オレはドラゴーラに向かうのだった。
ドラゴーラにつくと、ドラゴンに戻っているヘルが炎を吐いたのか少し燃えていた。
肝心のヘルはというと、少し遠くで竜と戦っている。といっても、ヘルの方が実力が上だからか防戦一方だ。
「姫、降りろ」
オレは地面に一度着地し姫を下ろす。
オレは飛び上がり、ヘルに向かって突っ込んでいった。
ヘルを蹴り飛ばす。
「てめえ! 手間かけさせんなよオレによぉ!」
ヘルはオレを睨む。
すると、ブレスを吐いてきた。オレは躱し、ヘルに向かって突っ込む。ブレスを相殺すると空間が歪むかもしれねーからな…。
ヘルはオレに向かって突撃してくる。
オレに掴みかかってきた。オレを地面に押しつけ、口を開く。
やべえ、ブレスを吐いてくる!
オレは唾液を目に飛ばした。ヘルは目を瞑り前が見えなくなったのと目が痛くなったのか上を向きブレスを吐いた。
オレは力を込め、ヘルを引き剥がす。だがしかし、ヘルの爪がオレの胸の辺りを切り裂いた。オレの体から血が垂れる。
「ぐうう…。やりやがったなこの野郎…」
痛みがやってくる。
どちらが勝つかはオレはわからねー。っていうか、胸に受けた傷…。超痛え。
「ガアアアアアア!」
ヘルは突撃してくる。
ヘルの腕がオレの腹部を貫いた。オレは痛みを堪える。
まずい。こいつの方が強い…。本能のままに戦っている。オレは本能を抑え込んでいるのかっ…。
「だああああ! 畜生! お前ぜってえ許さねえからなああああああ!」
オレは光のブレスを吐く。
ヘルの腕を力を込めて引き抜いた。オレの腹から垂れる血。
痛い。涙が出そうだ…。
「死ねやコラァ!」
オレは力一杯地面に叩きつけた。
地面が割れ、ヘルとオレは落下していく。地底にオレらは落ちた。
オレは立ち上がる。ヘルは酒が入っていることもあり気絶して眠っているようだった。
痛い。ここまでダメージを受けた。意識が遠のきそうだ。
火傷もした。腹部には穴が開いているし胸の傷からも大量に血が出ている。
割とマジで死にかけた。
「お前マジで許さねえからな…。起きたら覚えておけよ」
オレはそう言って意識を失い、その場に倒れる。こんなことになるのなら見過ごせばよかったな。オレは人間のためにやるなんてバカだな。
そう思いながら…。




