ドラゴン、肉のために戦う
あれから数日が経った。あの奴隷少女はギルマスが拾って育てている。ギルマスはなんでも請け負うな。あの三人だったり奴隷だったり。ギルマスはお人好しっつーかなんつーか。
で、オレはドラゴンのままギルマスを背中に乗せていた。あの少女も一緒にだ。
「あの女の方なんですか?」
「ああそうだよ」
アルフェリート商会の建物は破壊された。
アルフェリート商会について悪い噂が飛ぶようになっていた。
オレを怒らせるようなことをしたのだとか言われているし、地下から奴隷が見つかったことにより言い逃れもできなくなっていた。
「王もヘヴンドラゴンが見つけてくれたと大騒ぎよ。違法奴隷商売をしていたことにより大商会の会長が逮捕、そしてシュプレヒター伯爵の爵位剥奪が今回の罰ね。シュプレヒター伯爵も一枚噛んでたらしいわ」
「ま、伯爵が逮捕されてもあのギルドは変わらねーだろ」
「そうでもないわ。ヘヴンが暴れたおかげで王都にはあんな化け物が沢山いるって思われたからか王都に来たいという人は格段と減ったわ。あと職員も総入換え、厳しい子を送ったから多少は改善されるはずよ」
というのが今回の顛末のようだ。
こういう悪いことをしていたらいずれかは報いがやってくる。それは人間でなくても同じだろう。
魔王もそうだ。かつて存在していた魔王。人間を虐殺し、ドラゴン全てを従えようとしていた。そして、神に等しい力を求めていた。
そいつも勇者に討伐されて死んだ。悪者は結局どうであれ裁きを受けるのだ。
「それで、いつまでオレに乗って飛行してるつもりだよ。オレは寝たいんだけど」
「いいじゃない。今日は休みだし遠くまで行きたいのよ」
「自分の足でいけよ。オレが行く義理はねえだろ…」
「あんたにお礼も兼ねてよ。向かう先は極上の魔牛の肉があるって噂なの。販売してるのもそこだけだし自分で行かなきゃ買わせてもらえないのよ」
「それを早く言え!」
肉のためならば仕方ない。
些か肉で釣られているような気がするがまあいいだろう。美味い肉こそ真理。ギルマスは信用できるからな…。
肉を売っている村に到着した。
オレは二人をおろし人化する。
「おかしいわね。家畜どころか人間も外に出てないわ」
オレのせい、な訳がない。
村は静まり返っておりそれが逆に不気味さを感じられる。
ギルマスは近くの家をノックすると中から人が出てきた。
「な、なんでしょう」
「肉を買いに来たんだけどなんでこんな静かなのかしら。家畜も見えないし」
「あ、ああそれはですね。近くに住み着いたドラゴンが人間を襲うんです。家畜も危ないから家屋に押し込んで…」
「ドラゴン…?」
「奴は数時間おきにこの村に来るんです。も、もう少しでやってくる時間になります。あなた方も早く…」
すると、背後から何かが飛んでくる音が聞こえた。
オレは奴隷少女とギルマスを部屋の中に押し込み、背後を振り返る。
「なんだよ、ただの雑魚ドラゴンじゃねえか」
ドラゴンがオレを見てヨダレを垂らしている。オレは走って距離を取るとそのドラゴンも追いかけてきた。
そして、オレは立ち止まるとそのドラゴンは大きな口を開けてオレを食べようとしてくる。オレは人化を解いた。
ドラゴンはオレの硬い鱗を噛む。
「オレに舐めたマネとるんじゃねえよ」
オレをみてそのドラゴンは震えだす。逃げ出そうと翼を広げるがオレは翼を爪で貫いた。
「肉を求めて来たんだよオレは。テメェのせいで買えなかったらどうすんだコラァ!」
「ガッ…ガッ…!」
ドラゴンは逃げられないと思ったのかオレに威嚇してくる。
オレは口でドラゴンの首元に噛みつき振り回した。
木にぶつかり木が折れドラゴンに突き刺さる。オレはそのまま空中に放り投げブレスを放った。
ドラゴンの心臓部を貫き、ドラゴンは動かなくなって墜落する。
「このドラゴンは番がいるはずだ。メスが餌を取ってオスが巣を守る…。近くにもう一体いるはずだな」
オレはそれらしきものを探す。
すると洞窟が見え、その中に目が光るのを見えた。オレはそこに向かってブレスを飛ばすと、山が崩れ落ち、ドラゴンは下敷きとなる。
「よし」
オレは村に戻り空中で人化する。
着地し、先ほどの家を開けると中でギルマスはお茶を飲んでいた。
「終わったぞ」
「早かったわね」
「あの程度の雑魚どうってことない。さ、肉をくれ」
オレは村人にそう頼んだのだった。




