ドラゴン、冒険者と戦う
治安が悪いシュプレヒター伯爵領の一番栄えている町。
冒険者ギルドに入ると酒浸りになっているやつやゲームを楽しんでいる奴がいた。
「なんかようすかぁ?」
「ギルドマスターいるかしら」
「今不在っすー」
「あらそう? ならギルマスの部屋で待たせてもらうわ」
とギルマスが押し入ろうとすると受付嬢が止める。
「ちょちょ、なんなんすか? 騎士団呼びますよ?」
「あら、受付嬢なのに王都冒険者ギルドギルドマスターでグランドマスターの顔も知らないの?」
「あっ…! マーズ様っすね、どうぞどうぞ」
と人が変わったように案内されていく。
「オレはついて行ったほうがいい?」
「ここは人間の話し合い場なのよ。適当に遊んでてもらえる?」
「へーい」
そう言われたのでオレはギルド内の酒場で肉を頼む。
周りは笑うようにオレを見ている。
すると後ろからオレの倍くらいある体格のやつがやってきた。
「どけ」
「それが人に物を頼む態度かよ。こういう時は頭を下げてどいてくださいお願いしますっていうもんだ」
オレはこいつのためにどくなんて事は考えてない。
「王都の冒険者が偉そうに…。装備揃ってないところをみるに初心者だな? 初心者が戦えるんでちゅかー?」
ムカつくな。
殺してもいいだろうか。ま、多少の暴力はギルマスにも許された。
オレは男の腕を掴む。
「とりあえず腕の一本もらうぞ」
「はあ?」
オレは男の腕を掴んだまま男をぶん殴る。
男は腕の一本が引きちぎれぶっ飛んでいった。冒険者ギルドの壁を突き破り外で気絶している。
「ギルマスから多少の暴力は許されてるからな。さ、肉をくれ」
オレは酒場で料理を受け取り肉を食べる。周りは吹き飛んでいった男とオレがぶん投げておいた腕を見ていた。
王都の奴らならば腕を掴まれたら掴まれたですぐに反撃に出るくらいには強い。反撃に出ないあたり舐められていたんだろうな。
「な…なな…」
「バケモンだああああ!」
冒険者たちは逃げて行った。取り残されたのはオレと酒場の従業員とギルドの受付嬢のみだった。
受付嬢も呆気に取られている。
「ま、こんなもんだろ。しばらくオレに対して戦意喪失したままだろうな」
悪いがオレは黙ってることはできねえからな。舐められたままでいるのはなんだかムカつく。
ドラゴンにとって舐められたら最後、弱いと思われてることと同義だ。オレはプライドこそ低いとはいえそれは強いからだ。強いという自負がある。
ギルマスが奥から出てきた。
後ろにはイラついてる様子の男がいる。その男はギルドの壁を見た。
「な、なにこれえ!?」
「ヘヴン、なにしたの?」
「舐められたから一人をぶん殴った」
そういうとその男はオレの胸ぐらをつかむ。
「お前! ギルドの壁を壊しやがって! 弁償しやがれ!」
「おういいぞ。いくらだ?」
「三千万だ! 三千万!」
ふむ、それはオレでもわかるぞ。
こいつオレからぼろうってつもりだな。オレが悪いという罪悪感を植え付けたつもりだろうがオレは別に悪いと思ってない。
「ギルマス、三千万もするか?」
「うちの壁は三千万したこともないわね。建物全てならいくけど壁一枚程度三千万は高いわ」
「だ、そうだ」
「慰謝料も含めてんだよぉ!」
という。
オレは拳を作ってギルマスに聞くがギルマスは首を横にふった。
「そいつに手を出さないほうがいいわ。王族との繋がりもあるわよ」
「へ…?」
「王族の一人の命の恩人だから下手に手を出しちゃあんたの首が物理的に危ないわね」
とギルマスがいうと男は手を離した。
そして、綺麗な土下座を見せてくる。地に頭をつけ、「申し訳ございませんでしたあ!」と大声で叫んでいた。ギルマスは笑っており、オレはどうしたらいいかわからずあたふたするだけだった。
「ま、あんたらの処分は追ってくだすわ。それじゃ」
「ま、待ってください! 私にも生活が…」
「生活があるなら全うなことをすればよかったのよ。生活だなんだ言う前に自分のしたこと見直すのね。ほらヘヴン、帰るわよ」
ギルマスはギルドを出て行ったのでオレもついていった。




