ドラゴン、違う町にいく
乗り合いの馬車があり、旅行に向かう人などを見えた。
その中にギルマスが浮かない顔をして乗り込もうとしていた。
「よぉギルマス。何してんだ?」
「ああ、ヘヴン。ちょっとシュプレヒター伯爵領の冒険者ギルドに行くのよ…」
「ふーん。一人で?」
「ついていきたいの? 大歓迎よ」
「んー、暇だしいいぞ」
「まじで!?」
ギルマスはオレの腕を掴む。
「みんな断られたのよー。一人で行きたくないのよアソコ…。ま、詳しい話は馬車内でしましょうか」
と、オレも馬車に乗せられた。
馬車に乗ったところでギルマスはため息をついた。
「シュプレヒター伯爵領はあまりいい噂がないのよ。冒険者もなんていうか悪漢だらけっていうかろくなのいないし敬遠されてるのよ」
「ほう」
なるほど。ろくでもない奴らの集まりってわけか。
どういう奴らかは知らねーが絡んできたら黙らせればいいな。
「やむを得ない場合はぶん殴ってもいいだろ?」
「ま、あそこは暴力絶えないし今さらなのよね」
「よし」
ギルマスはため息をまた吐いた。
オレはシュプレヒター伯爵領を知らないが、誰も行きたがらないというのは本当に悪評だけが広まってるんだろうな。
ここまで嫌悪されてるとなると本当に救いようがないバカどもばかりなのか?
「ていうか冒険者ギルドって複数あるんだな」
「そりゃそうよ。各町に一つ…というわけじゃないけどそれでもほとんどの町にあるわ。その町によって冒険者の質が違うし強さも違うのよ」
「へぇ」
へえ、強さにバラツキがあるのか。
「シュプレヒター伯爵領は主にCからBランクの冒険者が多くいるのだけど…その多くは実力に見合ってないというか、そこのギルド自体がなんらかの不正をしてるのよね」
「その不正を暴きに行くと?」
「そゆこと。ま、簡単にボロは出さないでしょうからしばらくそこに滞在するのよ」
ということはオレもしばらくそこにいろってことか。
「でも不正ってランクを偽ることだろ? ランクを偽っていいことあるのか?」
「王都に呼ばれるくらいね。高ランクとなると。みんな王都のギルドに行きたいのよ。王都となると依頼の数もすごいし報酬も高い。高ランクになればなるほど王都に呼び込むのよ。シュプレヒター伯爵領からも王都にどうでしょうか?という冒険者は山ほど来てるけど怪しいからダメなのよね」
「ふぅん。たしかに依頼料は多いものばかりだな」
疑問に思ってはいなかったがたしかに依頼料が多いものばかりだった。
王都に住んでる冒険者ってなかなかのツワモノ…。
「え、じゃあアリィもツワモノ…?」
「あいつは薬草に関してだけはすごいし王女に飲ませたエリクサーを作ったのは彼女よ。あの子に関しては薬草のことだけで引き抜いたわ」
「そうなのか」
「あいつは戦闘に関してはてんで素人っていうか、王都の子どもと同じくらいよ」
弱え…。
「そういやオレ冒険者は王都で登録したけどそれもいいのか?」
「王都に住む人はいいのよ。あなたの場合サリィの推薦で冒険者になれたのよ」
「サリィの?」
「王都に住むAランク以上の冒険者の推薦なら外部の人でもなれるのよ」
へぇ。仕組みはそうなのか。
サリィが推薦したからなれたというわけで王都で冒険者になるには他のギルドに入る必要がある…と。
オレはギルマスの説明を聞きながら馬車に揺られた。
シュプレヒター伯爵領に降り立ち、ギルマスはその足でギルドへ向かおうとしている。
オレは街の様子を見ていた。
路地裏では何かを取引しているようなところ見えた。
「なあ、悪者が多いなこの町」
「まあ統治者が統治者だもの。治安は悪いわね。財布とか鞄やポケットに入れたからって安心しちゃダメな町なのよ」
「ふぅん」
と、その時誰かがぶつかってくる。
「っぶねーな!」
「悪い」
オレは右手に財布を持ちギルマスと歩いていく。
「こういうことだな」
「あんた…」
「ま、オレのも取られたしおあいこだろ」
「あんた財布持ってたの?」
「いや、前にクエストで拾った石が入った袋」
いい形だったから拾ったんだけどとられてしまった。まあいいや。どうせ石だし。
「油断ならないな」
「そうね。あんたなら平気そうだけど」
「ま、取られちゃいけないもん取られたら…殺してでも取り返すさ」
オレは財布をポケットにしまった。




