ドラゴン、責任を取る
翌日、オレとギルマスはイセカイ人にこの世界のことを教えていた。
魔物のこと、貴族のこと。特に教えていたのはギルマスだが。
「元の世界に戻る方法は分からないわ。だからここで暮らす術を身につけなさい」
「は、はい!」
「そうねえ。まずは仕事、ね」
「ぼ、冒険者をやりたいです!」
と、一人が言った。ユウというやつだ。
「私も…冒険者をしたいです」
「ぼ、僕、も…」
三人とも冒険者をやりたいという。
冒険者はオススメしないとギルマスは言った。命の保証はない、と。
それもそうだ。魔物によって殺されることもある。仕方ないことだ。
「なぜ? 言っておくけど面白半分でなるというのなら承知しないわよ」
「面白半分ではありません。この世界で生きるために強くなりたいからです。それじゃダメですか」
「私も…! 魔物がいて、自分の身を守れないようならこの世界で生きていけないと思うんです」
「…………」
覚悟がすごい。そこまでの覚悟はいらねーよ。
「ま、いいわ。冒険者カードを発行するわね。Fランクからのスタートよ…。そういやFランクで思い出したけどヘヴン。あんたランクアップしないの? あんたならすぐにCになれるでしょ」
「めんどくさいし別に金に困ってねーし」
そもそも肉を買う以外でオレは金使わないのだ。だからヘルヘイムの金とかオレの鱗の金もたくさん残っている。
「ヘヴンさんって結構強そうな見た目なのにランク低いんですね」
「強いだなんて当然のこと言うなよ」
「強そうって…言ったんですけど…」
オレが強いのは当たり前だって。
「ま、まず薬草採取などの安全なのからやるのよ。魔物と戦うのは武器を手に入れて知識を身につけてから。それを守ること。もし破ったら…カード剥奪はしないけど私はあんたらを見限るわ」
「ギルマス、勇者パーティにいたほどの実力者だからあまり逆らわないほうがいいぞ」
そういうと三人はうなずいた。
「ま、来なさい。カード配るわ。あと、薬草採取…いや、キノコね。ファルファルの森に生えてるキノコがあるのよ。それを取りにいこうかしら」
オレはファルファルの森に戻りドラゴンに戻っていた。
ギルマスから解放されて居眠りをしている。と、ガサガサと歩く音が聞こえてくる。
「わっ、前に見たドラゴン…。黒いドラゴンと戦ってたんです」
「ヘヴンドラゴンっていうのよ。怒らせると国が滅ぶくらいにはやばい相手だから怒らせないこと。わかった?」
三人は頷いていた。
「さ、横を通って…」
オレは尻尾で邪魔をしてやる。
ギルマスはこちらを向いた。どけなさいと言っているがオレはただからかってるだけで…。
「どけろぉ!」
「ギルマス今怒らせたらダメだって言ってましたよね!?」
ギルマスがオレの尻尾を思い切り蹴った。
オレはギルマスの方を見ると少しイライラしているようだ。
まあ、本当はこんなことしなくてもいい仕事だからな…。
「ご、ごめんなさいね。ついイライラして」
いや、いくなってことだから。
オレは尻尾をどけない。あっちで今ヘルのやつとその王女が川で水浴びしてんだよ。見たことねえよあんなヘルの緩んだ顔。
アレの邪魔したらそれこそあっちが不機嫌になる。
「…ギルマス、もしかして行くなってことじゃないですか?」
「そ、そうだと思います!」
「…そうね。そうなの?」
と、確認してくるので頷いてやった。
すると奥の方から何かが飛んでくる音が聞こえる。それはオレの前に着地した。
「ヘヴンドラゴンさん。白くて美しい鱗ですね。ありがとうございました。またこの国にお邪魔させてもらう時があるかもしれないのでその時は」
「王女様。ヘルが嫌な顔をしております」
「きっとヘヴンドラゴンが気に入らないんでしょうね。早くいきましょうか」
と、王女様がヘルに乗り去って行く。ヘルは帰り際に尻尾をブンブン振った。
また会おうなってアイツ素直じゃねえなと思いつつ尻尾をどかす。
「あ、あの黒い竜だ…」
「あれはヘルドラゴン。ヘヴンドラゴンと合わせて創世の双竜と呼ばれてるのよ」
「え、なにそれ初耳」
そう呼ばれてたのオレら。
「い、今の声って」
「さ、さあいくわよ! ヘヴンドラゴン、また!」
「もういいよ。どうせバレんだしそろそろみんなにバレてもいいよ。隠すのもめんどくさくなってきた」
「ヘヴンさん…?」
「そうだよ。朝のヘヴンだよ。アレはオレが人化した姿な。本当の姿はこっち。それで時空歪めちゃったのもオレとアイツ」
オレはそう説明し奴らを見る。奴らは怖れ半分、興味半分という感じでオレを見ていた。
「イセカイのことは知らないけど責任はオレにもあるからな。出来るだけ協力はしてやるよ。元の世界に帰りたいだろうがそれは考えんなよ」
オレは責任はきちんと取るドラゴンです。




