ドラゴン、バレる
冒険者ギルドに入ると騒がしい声が聞こえる。
オレはアリィに連れられ受付まで行くと、でかいおっぱいだな。母性を感じる。
おっと、このオレとしたことが人間の胸に興味を惹かれるとはな。
「アリィさん、薬草は…」
「はいどーぞ。あと、新規登録したいんだって」
と、アリィがオレの背中を押す。
「かしこまりました。では、こちらの用紙に氏名をご記入ください」
「わかった」
オレはペンを取りヘヴンと書く。
紙を手に取り、受付がデスクの引き出しからバッジを取り出した。青いバッジ。
オレはそれを受け取る。
「それはFランク冒険者の証となります。身分証となりえますので持参しておいてください。ああ、それとランクを上げる方法ですが採取系一つ、討伐系三つのクエストをこなすとEランクに昇格となります。Eランクまでは試験はありませんがEランク以降ランクを上げる際は試験がありますゆえ」
「わかった。なら適当に見繕う」
「クエストはあちらのボードに貼っております」
と、指したのは壁にかけられたボード。オレはテキトーに一枚紙をとる。
オレは受付に持っていった。
「これ受ける」
「…これはBランクのクエストとなります」
「余裕だ」
「…あの、あなたが受けれるのはFランクの依頼のみです…」
そうなのか。
「ならファルファルの森での薬草採取にします! ヘヴンさんもいいよね?」
「ファルファルの森?」
「ヘヴンさんが住んでたあの森のことです。あそこは本来魔物も弱ったいのしかでないんで初心者はまずあの森で練習するんです」
「ほう」
「あなたが来て一気に生態系崩れましたけどね」
オレ強いからなー。魔物はオレの強さがわかるんだろうな。
「アリィさん。ファルファルの森は今は危険です。他のクエストを…」
「ヘヴンドラゴンは極めて温厚です! 大丈夫ですって! 悪運は強いので!」
「はあ…。死んでも知りませんからね」
と、受付はファルファルの森での薬草採取クエストにハンコを押した。
やれやれと言った感じだ。そんなに不安ならついてくればいいのに。オレは襲われても大丈夫だぞ。
「では行きましょう! 薬草のことならこの私にお任せですよ!」
「あ、ああ」
そして、冒険者ギルドを出ようとすると背後から声をかけられる。
振り向くとアリィの姉のサリィがいた。サリィは、アリィの腕を引っ張る。
「あんな危険なとこには行くな。ヘヴンドラゴンは私らでは敵わない。立ち去るのを待つんだ」
「でも…」
「私はアリィを失いたくない」
そう告げる彼女の目は真剣だった。
深い事情がなんかあるのか? オレには関係ないがね。でも、安心させてやったほうがいいかもしれないな。
「ならついてこい。安全だって理由見せてやる」
オレがそう言って二人を森に連れ出した。
オレが休んでたところに向かう。
「ヘヴンドラゴンがいない…? 移動したのか?」
「ああ。オレは飛び去る姿を見た」
嘘だ。オレはここにいる。だが、オレがヘヴンドラゴンだと言っても騒ぎになるだけだ。それは避けたい。ヘヴンドラゴンは去ったのだとそう言う安心感を持たせるのが大事なのだ。
オレは人間のことはわからねー。でも、長く生きてきて人間を観察してきた。
王国ではドラゴンと人間は共存している。飛竜を使う兵士がいると聞いている。人間は強い。恐怖を持っても立ち向かってくる。侮れない。だからオレは迂闊に手を出さない。
「そうか。いや、また戻ってくる可能性もあるから安全とは言えんが…。まあいいだろう。薬草採取だったか? アリィ、薬草を…」
「もう採取してまーす! 薬草のスペシャリストですから?」
ドヤ顔がウザい。
すると、アリィの背後に何か気配を感じる。サリィも気づいたのか短剣を取り出していた。
短剣の切っ先をアリィにむける。アリィは何がなんだかわかってないようで手を上げていた。
そして、アリィに魔物が襲い掛かろうとして、サリィはアリィを突き飛ばす。
なかなかいい姉妹だ。気に入った。
オレは飛び蹴りを喰らわせた。
魔物は小さなトカゲだ。人間はこれを…リザードと言ったか。
リザードはオレの蹴りを受け吹っ飛ぶ。リザードはオレとは違い飛竜じゃなく地を走る竜だ。一応ドラゴンだがドラゴンの端っこも端っこだ。なんでことない。
むくっとリザードは起き上がる。
「なるほど、力も人間並みに落ちてるのか」
なら腕だけを人化解除してみるか。
オレはやってみると、腕だけがドラゴンの腕になる。おお、やればできるもんだな。
オレはリザードに近づく。リザードは本能的に怯えていた。逃げることも出来ず恐怖に立ちすくんでいる。
「サリィ、無事か」
「私は無事だけどあなたのその腕…。ホンモノ?」
「ん? あっ」
やべっ。
オレの腕は独特の色をしている。聖なる乙女のように純白なのだ。オレの腕。
見られてしまった。こいつを始末…しなくてもいいがどうしよう。
「その白い腕…。ヘヴンドラゴン…」
「あー、あー」
「ま、まさか…」
オレ氏、初っ端からやらかす。