国王、焦る
ギルドマスターはエリクサーを手に持ち王城に入った。
「王! エリクサー完成いたしました!」
目に見えるくらいやつれた王がその知らせを聞き、思わず涙をこぼした。
王とはいえど人の親。娘を心配する気持ちは本物だった。
「これで娘が…! 恩に着る…!」
「いえ、臣下として当然のことをしたまでですから」
王はエリクサーを持ち第一王女が寝ている部屋に向かった。
部屋に入り、王はエリクサーの蓋を開け王女にのませる。うなされている王女。
「だ、だめか…?」
「すぐに効き目が現れません。しばらく様子見てみましょう。今の内に医者を城内に招いて…」
「う、うむ! もう少しで治るからな、アンリ…」
王は必死だ。
王子が二人、王女が一人と子どもが多い。が、三人とも大事に育てていた。
国民からは親バカと親しまれているくらいだ。それも自覚しているらしく、よく話の種になっている。
「王妃様にも伝えておきましょう」
「アイツも私みたいに焦燥しているからな…。私よりやつれている。早く伝えよう」
「なら王は王妃様のところに向かってください。私が医者を手配しておきますので」
「頼む!」
王は走って向かって行った。美しさも関係なく、ただ必死だった。
ギルドマスターも急いで医者を手配する。医者がやってきたのは一時間後だった。
医者が王城に到着し急いで部屋に向かわせる。
一時間経ったにもかかわらず王女はうなされ続けたままだった。
「エリクサーを飲んでこの状態…?」
「そうだ…。見るからに変わってない気がするが…」
「エリクサーを飲んで一時間でこれとなると…エリクサーでも治らない病気…ではありませんね。エリクサーは万能薬とも呼ばれている。それで治らないとなると…」
医者は考える仕草をした。
「呪い、という可能性もあります」
「呪い…」
エリクサーは呪いを治せない。
「誰に呪われたのですか…?」
「王よ、何も聞いておりませんか? 怪しい物をみた、とか」
「いや、全然聞いておらん…」
「私、心当たりがあります」
ギルドマスターが声を上げた。
「以前王女様は黒い竜が近くに寄ってきたと相談してきました。それではありませんか?」
「黒い竜…?」
「それしか聞いてませんし私には思い当たるドラゴンはおりませんが…」
「それかもしれません。ただ、呪いとなると解呪できるのは教会の者…。この苦しみから見て司祭でも解けるかどうか…」
「最高司祭ではダメか!?」
「ダメでしょうね。ドラゴンが使う呪いはとても強力で人類では解呪不可能とも言われていることもあります」
王は絶望した。呪いで最高司祭でも解けない。
「ですが神聖な竜の血なら呪いが解けるとも…」
「神聖な…」
「幸運なことに近くに住み着いているヘヴンドラゴン。その血なら…」
王には絶望には変わらない。
だけど、解呪できると聞いて少しは希望を持っていた。ヘヴンドラゴンからどうにかして血を採取しようとも考える。
「無闇に攻撃をしたら…」
ヘヴンドラゴンは恐るべき存在だ。
傷をつけるとなるとこちらも重大な被害を負う。自分の娘のためだけに被害を出していいものか考える。
ギルドマスターはそれを聞いて少し脱力していたが。
「王。大丈夫です。ヘヴンドラゴンには真摯な態度をとっていれば怒ることはありません。頼んでみましょう」
「…仕方がない。そうするしかない。出掛ける準備をする。少し待ってくれ」
「かしこまりました」
ギルドマスターは待つことにした。




