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ドラゴン、雨に打たれる

 レインドラゴンの巣に飛んできた。

 レインドラゴンはオレに気づいたようでオレをみてひっと叫ぶ。


「おいおい、そんな怖がらなくてもいいじゃねえか」

「痛めつけるでしょ! やだよお!」

「お前喋れるようになったんだなー」

「あ、うん。ある冒険者が熱心にきて覚えたっていうか…それはどうでもいい! 僕になんの用!?」


 レインドラゴンは怯えたようにオレから距離を取る。


「とりあえず泣け」

「は?」

「涙が欲しいだけだ。泣かねーとまじでボコるぜ?」

「ひっ…い、いやだよぉ。どうしてもっていうなら…その…戦うのも嫌だよぉ」


 あまりの怯えっぷりだ。


「ねえ、なにかしたの?」

「いや、なにも。昔から一緒にいたってだけのドラゴンでオレにもビビるからなこいつ」

「そう…」


 オレは身構える。


「お前も強くなったんだろ。オレらドラゴンは戦いは避けられねえ。泣きたくねえならオレを殺してみろ」

「…わかった」


 レインドラゴンも身構える。

 オレらは目を見合った。先手はレインドラゴンだ。噛みつこうとしてきたのでオレは口の中に腕を突っ込んだ。


「ふんぬっ…!」


 オレはドラゴンを持ち上げる。


「すごい力…」

「どりゃああああ!」


 オレは洞窟の壁にドラゴンを擦り付ける。レインドラゴンは吹っ飛んでいった。

 オレは追撃しに向かうとレインドラゴンのブレスがオレの翼を貫く。


「いっ…」

「ぼ、僕だって成長してるんだ!」

「ほう。そりゃそうか」


 オレはレインドラゴンの上に跨り、首元に爪を突きつけた。

 このまま力を入れれば首に風穴が開く。


「オレに怪我を合わせることができるなんて大した成長じゃねえか」

「…まだがでながっだぁ」

「お、泣いた」


 レインドラゴンは悔しさから泣き出し、水晶がポロポロ落ちていく。

 オレは穴が空いた翼をみる。これ何日で治るかなー。


「レイン。強かったぞ」

「でもぉ…」

「レイン。お前、普段から戦いたいとか思ってねえだろ。普段から勝ちたいという飢えが勝利に必要なんだ。勝利に貪欲な方が勝つ」

「うん…」

「ま、また泣かせにきてやるから」

「…またリベンジする」


 レインは泣き止んだ。

 ギルマスは近づいてきて水晶を拾う。カバンの中に水晶を詰め込んでいた。


「ヘヴンさん、この人は…?」

「冒険者ギルドのマスターだ。それでお前人間の言葉を冒険者から教えてもらってたって聞くが誰からだ? お前そんな外でねえのに出会いあるのか?」

「僕の巣で雨宿りしにきたんだよー。えーっと名前はたしかマルディナ…」

「ほう、あのSランクの女魔法使いね」


 やはりファロファラル王国の…。

 でもそんなやつ見たことないな。オレが知ってるSランクはダルマしかいない。


「マルディナ…?」

「ああ、ギムートン伯爵領にある冒険者ギルドの冒険者よ。王都に属してないから知らないのも無理はないわ」

「ギムートン伯爵領ねぇ」

「たしかにここはギムートン伯爵領だし不自然でもないわね。ギムートン伯爵領の冒険者はツワモノ揃いなのよ」


 理由はこの森が大きく関係しているだろうな。


「噂をしていると来たようだよ」


 と、洞窟の入り口を見ると冒険者が複数立っていた。

 冒険者たちはオレをみて剣を構える。


「だめ! 剣を納めて。このドラゴンは僕の…ヘヴンさん、あなたは僕の何?」

「いや、オレに聞くなよ…」

「マルディナ。久しぶりじゃない。そろそろ決心ついた? 王都にくる」

「…ギルマス?」


 マルディナたちは剣を納めた。


「マルディナ、誰だこいつは」

「冒険者ギルド王都本部マスターにして全ギルドを統括するグランドマスターだ」

「ほー、そんな偉いの…で、こっちはなんだ? 図体でけえ白いドラゴンだが…」

「……! そいつはっ…!」


 魔法使いは杖を構える。


「逃げる準備した方がいいです。こいつは僕らでも…」

「そんなやべえのか?」

「ええ。厄災級指定、ヘヴンドラゴン! その強さは計り知れませんがドラゴンの中でも一、二を争うぐらいには強い、と」

「なんでこんなとこにいるの!? と、とりあえずギルマスも…」


 びっくりしすぎだろ。オレは何もしてねーのによ…。


「そんな慌てんなよ。オレ何もしねーし」

「そうよ。落ち着きなさい。私の竜だから」

「おい、いつお前の竜になったよ」

「…あの、竜騎士隊長がのるカイザードラゴンが羨ましいのよ。見栄ぐらい…」

「オレ基本誰かの下につくとかまっぴらごめんなんだが」

「私を立てると思って! そうだ、冒険者からとてもいいミノタウロスの肉を貰ったのよ。まるまる一頭。それをあげるから…」

「使いドラゴンだ」


 肉には勝てねえ。


「へ、ほえー、ギルマスすげえな…」

「襲うことはないわ。安心しなさい」

「そ、そうですか。ならばいいのですが」


 剣をしまい、地べたに座る。

 そして何やら抱えていた袋を広げた。中に入っていたのはたくさんの木の実だった。

 果実や硬い殻で包まれたもの…。


「わーい! ありがとー!」

「有事の際には頼みました」

「いいよいいよー。この果物くれるならねー」


 ほう、ギムートン伯爵は果物でレインドラゴンを釣ってるのか。

 頭いいな。


「さて、私らは帰るわ。早く水晶届けないと」

「オレに乗っかってくんだろ…」


 オレは洞窟の外に出て翼を広げる。穴が空いてるが飛べないわけではない。


「じゃ、またな」


 オレはそう言い残して雨の森を去った。
















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アンダーワールドクロニクル
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新乙です! この嘘が後々に………なんて事にならなきゃ良いけど… まぁなってもギルマスですしね~…
[良い点] ギムートン伯爵領の冒険者達は、レインドラゴンを悪い事に使わない感じだから大丈夫かな?なんか、仲良さそうだったし。 ヘヴンは、レインドラゴンにして見たら、いつか越えたい壁なのか……強かった…
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