ドラゴン、謝罪される
竜騎士との戦いも終わり、オレは街を歩いていた。
「竜騎士がヘヴンドラゴンに攻撃したらしいわよ」
「やだ、ヘヴンドラゴン怒ってるでしょ?」
「それが戦い終わったあと昼寝してたらしいわよ。呑気に…」
いや、昼寝するのは気持ちいいじゃん?
オレがギルドに行くとまた見たことがある馬車が目の前に停まっていた。嫌な予感がする。
オレは引き返そうと足を後ろに向けると扉が開く音が聞こえる。
「あー! いましたヘヴンさん!」
「み、見つかっちゃった」
「あのですね! 今ヘヴンドラゴンが昼寝してると! 近づくチャンスですよ! 行きましょう!」
「仮にも貴族令嬢だろ。危険を冒すのは…」
「人間は生きる年数が少ないんです! なら後悔しないように生きるんですよ!」
ぐいぐいと馬車に押し込もうとする。
オレを馬車に上げたらヘヴンドラゴン見れねえよ。ヘヴンドラゴンはここにいんだから。
オレは振り払い、逃げ出した。
「なぜ逃げるんです!? 仲間でしょう!」
「いや、ヘヴンドラゴンは怖いから…」
「大丈夫です。ヘヴンドラゴンは一発で昇天させてくれるからヘヴンドラゴンと言われるくらいです。殺すのなら一瞬で済みます」
「殺される前提で話進めんな!」
アリィといいエミールといい、どこか頭がおかしい。人間はこうなのか? ちょっと怖いんだけども。
オレは森に逃げ込みドラゴンに戻る。
あ、危ね…え?
オレはなんとなく嫌な予感がして振り向いた。
すると、驚いた顔を浮かべたエミールが木の影からこちらをのぞいていた。
あぁ…。
「ヘヴンさんがまさかヘヴンドラゴンだったなんて…」
エミールはオレの背に無理やり乗っかってきて寛いでいる。
なんだよコイツ…。なんなんだよコイツ…。なんでここまで追ってきたんだよ。怖えよ、てか結構速度出して走ってきたのに追いつけるの?
「これはもう運命ですね。結婚しませんか?」
「い、嫌だ…」
「振られてしまいました!」
オレは草をぷちり、ぷちりと食べていた。なんとなく自分への戒めとして苦い薬草でも…。
「鱗のこの硬さ、それでいてちょっとだけ伝わってくる体温にドラゴンの匂い…。溜まりません! これは素晴らしいドラゴンです!」
「どうもありがとよ…」
すーはーすーはーとしてきて気色悪い。コイツが貴族令嬢ってんだから。さぞ周りも変人と思ってるんだろうな。
婚約者とかいるのか? いや、婚約されてても引かれて破棄でもされるんじゃねえの?
「ん? なんか飛んできますよ?」
と、その声を聞いてオレも何かが飛んでくる音が聞こえる。
王城の方から飛んでくるのはドラゴンだった。あのデカさは竜騎士が乗るようなドラゴンじゃねえ。
なんのドラゴンだ?
オレが身構えていると、上空からドラゴンが降り立った。
降り立ったドラゴンは赤い。真紅のドラゴンというのはたしか…。
「カイザードラゴン…」
「ひっ…」
と、エミールが突然怯えだした。
どうしたのだろうか。すると、カイザードラゴンの背中から人が降りてくる。二人。
「ヘヴンドラゴン! 突然申し訳ない! 俺はファロファラル王国竜騎士隊大隊長マクロス・ハインドリヒと言う!」
名前を聞いてオレは後ろを向く。
親子、か。なるほど、親が来たから隠れたのか。オレはぶるぶる身を震わせると、耐えれなかったエミールがポトリとオレの背中から落ちる。
「え、エミール…?」
「こ、こんにちはお父様。今日はいいお天気ですね」
隠れた、ということはバレたくないということだろう。
涙目でこちらを睨む、オレは笑いを堪えるのに必死だった。
「何をしているんだエミール!」
「だ、だってヘヴンドラゴンが寝てると聞いてきたんですよ!? 昼寝時がチャンスじゃないですか!」
「危険な真似をするな!」
「ま、まあまあ隊長落ち着いて…」
「ダメだ! 危険な真似をしやがって…」
と、涙目のエミールと怒っているマクロス。オレは思わず吹き出してしまう。
「やっぱ怒られるから隠れたんだなー。悪かったよ、エミール。反省してる…」
「許さないわ!」
「でもオレより父が怖いって…。マクロスだっけ。オレは怒ってねーから安心しろよ。そっちから手を出さない限り出さないから」
「そ、そうか。わかった…。このたびは誠に申し訳なかった」
「どうしても許してもらいたいならたっぷり説教してやってよ。こいつオレの後ろ追いついてきて人化解かれるとこ見られたんだよ」
オレは人化する。
「オレの人間姿はこれな。冒険者ギルドで冒険者として働いてる。人間になってることはなるべく秘密にな。騒ぎになるから」
「わ、わかった…」
「よし、じゃ、エミール。説教頑張って」
「う、裏切り者〜!!」
マクロスはぺこりと頭を下げ、エミールを連れて飛んで行った。
ふぅ。ちょっとした仕返し。手出ししないからオレのイラつきをマクロスに晴らしてもらおうか。
今日は肉が旨くなりそうだ。




