ドラゴン、ドラゴン(?)と出会う
ヘヴンドラゴンは信用していいのかどうか、曖昧なところだと噂されていた。
こんな優しいドラゴンオレ以外いないよー。
「それにしても、オレも王国側の動きも見ておかなくちゃなー」
王がなにを考えてるのか、竜騎士は本当に戦いを仕掛けてくるのか。
竜騎士の動向も考えねーと。
王国側からしたらオレは脅威だ。それは認めるよ。オレは王国を簡単に滅ぼす力はあるからな。
でもそこまで警戒されたらオレはどこで生きればいいんだ? オマエラ人間だけの世界じゃねーんだぞ。
「お姉ちゃんにその鱗見せてください!」
「やーだー! これお守りなのー!」
と、商業街を歩いているときちんとした身なりの女の子が昨日オレの背中に乗った男の子と話している。
鱗がどうしたのだろう。
「これはおたからなのー! 知らない人に見せたらぬすまれるー!」
「盗みません。神に誓います。なので…」
「やー!」
女の子は押しが強い。子どもは泣きながら嫌だと言って通せんぼしている。
オレはその子の間に入る。
「なにしてんだお前。嫌がってんだろ」
「…す、すいません。ヘヴンドラゴンの鱗が見えたものでテンションがあがってしまって」
「坊主も泣くな。男は泣かずに守るもんだぞ」
「うん…」
オレは女を睨む。
「小さい子を泣かすまで何してんだよ」
「ごめんなさい…」
「謝るのはオレじゃねーだろ」
「そうですね…。君、ごめんなさい。お姉ちゃんが悪かったです」
「うん…いいよ」
女の子は素直に謝り、馬車に乗った。
馬車には紋章が刻まれている。あの女の子は貴族と見ていいな。
貴族をアレで判断するのは早いがろくでもないのか?
「あ、すいません。あなたの名前を伺っても…」
「ヘヴンだ」
「ヘヴンさん。ありがとうございます」
そうして馬車は走っていった。
貴族はどう動くのか。あの女の子は何を考えているのか。
鱗を欲しがる理由は何だ?
「…わからんな」
人間の考えることはオレにはさっぱりだ。喧嘩ふっかけてくんなら受けて立つしスルーならスルーしろ。
翌日オレが冒険者ギルドに行くとギルド内は騒然としていた。
「こんにちは。昨日ぶりですね」
「あんたは…」
昨日の女の子が座っていた。冒険者は触らぬ神のように遠ざかってちっちゃく騒いでいる。
それほど偉いのか? この貴族は。
「…だれ?」
「名前を言っておりませんでしたね。私はハインドリヒ公爵家の長女のエミールと申しますわ」
「ふぅん。公爵家長女ねぇ」
やはり貴族様だったか。
「それで? 貴族様がオレに何の用?」
「あっ…いや、その、運命だなって」
「運命?」
「あなたとは…趣味が合いそうな気がするんです!」
と、オレの手をがしっと握る。
「あなたを見たとき何となく思ったんです! あなたもこちら側の者だって!」
こいつもドラゴンなのか? 人化してる。こちら側の者ってことは…。
人化という魔法があるということは過去にも人化したドラゴンがいるってことだが…。こいつにはドラゴンの気配がないぞ。
「お前もなの?」
「はい!」
「そうなのか…」
こいつもドラゴンか…。




