ドラゴン、頭おかしい娘に驚く
まだ怪我は完全に回復してないがとりあえずギルドに入る。
みんなヘルヘイムドラゴンのお金で潤ったようだ。オレが倒したんだけどな。なんでお前ら全員で倒したような雰囲気なんだよ。おかしいだろ。
これだから人間は気に入らないんだ。他人の手柄を自分のものって感じにしやがって。オレが一番取り分多いべきだろ。
「納得いかねーな。オレが倒したのによォ。少しなら分けてやるがオレには取り分ねーのかよ。オレの死闘はなんだったんだ」
「これヘヴンの分だって。あるよちゃんと。みんなより多いから。少しの素材でも結構潤ったけど大半はヘヴンのだよ」
「そう?」
オレは袋を受け取る。そして袋の中身を覗くと金貨がたくさん入っていた。それが十袋くらい目の前に置かれる。
総額でなんぼだろうか。
「ヘヴンが討伐したのに等分に分けたのではヘヴンが報われないだろう。私が無理を通した」
「ギルドマスターわかってるな! 有難くもらうぜ」
「金額はおよそ900億は超えているだろう。それほどの大物だ」
「ほえー」
「他の冒険者は百万とかそういう額だ。全員足してもヘヴンには満たない」
「ならいいけどよ…」
しばらくは金稼がなくてもいいな。
ヘルヘイムドラゴンと戦うのは二度とごめんだがこの金額は熱い。もしかしてオレも死んだらこのような金額になるのだろうか。考えたくないな。
「ヘヴン。その金は一度ギルドで預かろうか?」
「そうだな。持ちきれん。盗るなよ」
「ヘヴンを敵に回すようなことはしないさ」
と、ギルドマスターが笑う。
「ギルマス、なんか仲良さそうだぞ…」
「俺らが話しかけても全然会話してくんないのに…」
「羨ましい!」
ギルドマスターがあんなに和やかなのは珍しいのか。
オレは食う分だけの金だけはもらい、他は預ける。オレはとりあえず肉を注文した。そしてアリィの隣に座る。
「およっ、ヘヴンさん! 私が恋しくなったんですか?」
「違う。何してるのか気になっただけだ」
「何してるか? ポーションづくりですよ! 薬草を多めにとってきたんでポーションを作ってるんです! 私のは結構高く売れるんですよー! 貴族にも売ったことあります!」
「もう冒険者よりポーション売りになったらどうだ?」
こいつは冒険者よりポーション売りの方が稼げるだろう。才能を無駄遣いしている。
というか、臭い。そのすり鉢から漂ってくる草の匂い。それはなんだ。本当に薬草か? ものすごく青臭いぞ。
「くさっ」
「ふっふっふ。薬草はすりつぶすと臭いんですよ。原因としては肥料になっている動物たちの糞とも言われています」
「そんなこと知ってるならもう薬草の専門家になってしまえよ…」
オレは鼻をおさえる。ドラゴンのオレですらこの匂いはきつい。青臭いしなんか生臭い。食欲も失せてくる。そこらへんに生えてるのは臭くねーのによ。
「どうりでここらへんが空いてるわけだ。臭い…」
「ヘヴンラゴンって嗅覚が敏感なんですか?」
「そういうわけじゃないがこれはない。人間でも臭いと思うだろう」
「慣れてくるといいにおいに思えるんですよー」
こいつ…。なんつーか薬草に狂ってる。
姉のサリィはあんなにまともなのに妹がとち狂ってる。頭おかしいぞコイツ。なんでこいつが冒険者なんだ。
「この匂いが武器に使えるなら臭さで気絶させて討伐しようとしたのになー」
「オレを?」
「違いますよ! 他のモンスターです!」
いや、匂いに敏感なのは魔物それぞれだからな。
グレンウルフとかは嗅覚が優れているから効果はありそうだが…。逆にポイズンスライムなどのものはそもそも鼻というものが存在しない。
それでも匂いというのは一種の身を守る手段にもなりえるのは否めないがな。
「ヘヴンラゴンって毒って聞きますか?」
「効かないな」
「麻痺は?」
「効かん」
「じゃあ幻覚」
「やっぱお前オレを討伐するつもりだろ」
こいつなんか日に日に頭おかしくなってないか?




