ドラゴン、勝つ
ヘルヘイムドラゴン。
地獄の業火を顕現したと言われるドラゴンだ。もちろん得意技はブレス。
流石のヘヴンドラゴンちゃんでも熱いし痛い。
だがオレもオレで得意なもんあるもんねえ!
オレは聖属性のブレスを使える。炎も吐けるが一番得意なのは光のブレス。
一応オレは聖なる力を持ってるからね。
「ガアアアア!」
「オレ以外ドラゴンって喋んねーもんなー。オレキシャアアアアとかあまり言いたくねえんだけどっ」
ブレスを放ってきたので光のブレスで対抗。
オレの放つ光のブレスは全てを取り込む。闇が飲み込むのなら光は取り込むのだ。
そして、光の方がはやい。
オレのブレスがヘルヘイムドラゴンの翼を貫く。
「よし、怯んだ! いまだあ!」
オレは素早く突撃して、前足の爪で引っ掻く。ヘルヘイムドラゴンは地面に落ちていった。
そこで追撃するために近づいていく。土煙が晴れるとドラゴンはブレスの準備をしていた。
「やべっ」
ドラゴンは急には止まれない。
オレは至近距離で奴のブレスを受ける。意識が飛びそうだ。だが、負けねえ。気力はまだある。
すると、その瞬間、崖が崩れた。
崩れたはいいが、下にはサリィたちがいる。
「まずい!」
オレは急いでサリィたちに覆いかぶさる。
オレの体に岩がぶつかり、ヘルヘイムドラゴンがぶつかる。
意識が…遠のく。だがまだだ。
「ヘヴン!」
「テメェらはさっさと上に逃げろ! もうじき崩れるぞ!」
「でも…」
「サリィ。みんな。仕方ないわ。一旦帰りましょう」
サリィたちはギルドマスターに連れて行かれる。
ありがとな。オレはこんなとこで死ぬわけがない。
オレの体から血は垂れるが意識はまだあった。ヘルヘイムドラゴンを追って谷の底に向かう。
谷の底ではヘルヘイムドラゴンが気絶していた。気絶で済むとはオレもオレだがタフだなー。
「トドメ!」
オレはドラゴンの心臓を前足で貫いた。
「よし! 持って帰ろ」
オレは完璧に死んだヘルヘイムドラゴンを咥える。お、重い…。
ゆっくり羽ばたき、オレは地上に出た。
勝ったのは、オレだああああ!
血塗れでオレは野原にヘルヘイムドラゴンを落とす。人化して冒険者ギルドに出向いた。
「ヘヴン!」
サリィが抱きついてくる。
ギルドマスターがありがとう、と握手を求めてきた。怪我は大丈夫かとも心配してくれる。このぐらいの怪我なんともねーよ。
「門の前にヘルヘイムドラゴンの死体がある。素材にしろよ」
「ああ、直ちに回収! 冒険者総出で解体するぞ!」
「心臓部を綺麗に貫いたから鱗が傷ついてるぐらいだぜ。あー、疲れた」
オレは椅子に座る。
冒険者ギルドにはギルドマスターを残して誰もいなくなった。ギルドマスターはオレの目の前に座る。
「ヘヴン。お前は本当にヘヴンドラゴンなのか?」
「そうだよ…。隣の大陸のSランクとか嘘こいたけどな」
「…そうか」
ギルドマスターは微笑んだ。
「安心しろ、危害を加えるつもりはねーよ」
「わかっている。我々を助けてくれたからな。逃げろとは言わないだろう」
そうかよ。
それにしても…。
「勇者は元気してるか?」
「えっ!? 勇者と出会ったことあるの!?」
「長く生きてるし討伐しようときたぐらいだからな。あんたいたっけ」
「最初から魔法使いとしているわ。それに勇者は老衰で死んだの」
「ふぅん」
「私以外は死んだわ」
「ギルドマスターはなぜ生きてるんだ?」
「そりゃエルフだからよ。これでも五百年は生きてるわ」
と、ギルドマスターはぴょこぴょこと耳を動かす。
ほう、エルフか。エルフといえば森の中で大半を過ごしてるから森の外で出会うのは珍しい。
オレもエルフはそんな見たことがない。
「エルフってことで狙われたりとかしねーのか? 奴隷商とかに…」
「私はこれでも勇者パーティの魔法使いよ。やられるわけがないわ」
「そらそうか。ていうか一気にフレンドリーになったな」
「気が抜けたってのもあるの。いつまでも堅苦しくいたくないのよ」
ギルドマスターはどこからかお酒を持ってきて飲んでいた。
「オレ一応みんな恐れるドラゴンなんだが」
「大丈夫よ。あなたは襲わないから」
なにその信頼感。




