ドラゴン、ドラゴンと戦う
昨日の男は意気揚々と私のことについて語っていた。いいことをしたからな。
攻撃してきた奴を見逃したわけだしいいことだ。殺しはしなかったからな。だがしかし、私をなめすぎなやつもいるからそいつらにだけは制裁しておきたいが…。
「訝しみの谷に行くメンバーが決まった!」
と、突然ギルド長が現れそういった。
ギルド長は紙を貼りだす。Aランク冒険者の名前がずらーッと並べられていた。Aランク冒険者は意外と多いらしく、中にはサリィの名前も入っている。
で、Eランクと書かれた私の名前も。
「準備をしたまえ! 早速向かうぞ!」
訝しみの谷。
独特な雰囲気がありちょっとじめじめしているところだ。バジリスクの生息地だということもあるので近づく人はいないようだ。
私たちは谷を下りていく。
「これはなんてキノコかなぁ」
「毒ベニクロダケよ」
「げ、毒キノコ」
と、冒険者たちが会話している。
このじめじめした環境のせいかキノコの類がよく生える。バジリスク意外だとマタンゴがここを好んでいるというが…。
「マタンゴの姿も見えないな」
「そうだな。マタンゴがいてもいい気はするが…」
ギルドマスターは私と同じ疑問を持っていたようだ。
マタンゴも逃げ出したと考えていいのかもしれないな。私たちは谷を下りていると、足跡を目撃した。
この足跡…。もしかするとなんだけどドラゴンか?
「なんだこの足跡は…」
すると、谷の底から突然咆哮が聞こえる。
この鳴き声はあいつだ! ヘルヘイムドラゴン! 私と同じ厄災級のドラゴンだ。それを感づいたやつがいるらしい。
「まずい! 逃げるぞ! この鳴き声は厄災級のドラゴンだ!」
「なっ、なんでそんなものが! っていうか厄災級のドラゴン訪れすぎじゃないですかうちに!?」
「うちがよっぽど心地いいんだろう! 国に報告するぞ!」
と、その時だった。
谷底からドラゴンが飛んでくる。立派な図体をしたヘルヘイムドラゴンがこちらを睨む。まるでそれは入ってきたな、殺すぞと言わんばかりの視線だ。
ギルドマスターたちは睨まれている。下手に動けば…。
どうする? 私なら相手できる。が、ここで人化を解くのはまずい。
「まずいな、どう逃げたものか」
「オレちょっと上に!」
「どこいくんだ! おい!」
オレは急いで上に走って向かう。ドラゴンが追ってくる。
地上につき、オレは誰も見てないことを確認し人化を解いた。オレもヘルヘイムドラゴンを睨む。よくもオレに喧嘩を売ったな、おい。
ドラゴンはオレに向かって咆える。オレも咆えてやる。
「っと、あぶねえ!」
先に仕掛けたのはあちらだ。
翼を広げ突撃してくる。オレはそれを受け止め、至近距離でブレスを吐いた。
「ガアアアアア!」
こいつは意外とタフだからなあー。
オレはドラゴンと取っ組み合いになっていると、谷をあがってきたギルドマスターがオレを見る。
「ヘヴンドラゴン!? ヘルヘイムドラゴンと交戦してるのか!」
そういう声を上げると、ヘルヘイムドラゴンは狙いを私じゃなくギルドマスターになった。
ぎろりとギルドマスターを睨み、ギルドマスターめがけて突撃しに行ったのでオレも向かい、爪でひっかこうとしていたヘルヘイムドラゴンを蹴って吹っ飛ばした。
「た、助けてくれたのかしら」
もたもたしてねえで逃げろや!
といいたいが声でバレる可能性もある。慎重にだぞ、オレ。
「あ、ありがとう?」
「お礼なんていいからさっさと逃げろやボケェ!」
あ。喋っちゃった。
喋ったことに驚きなのか、こちらを見る。そして、違和感を感じたようだ。ギルドマスターは勘が鋭そうだからな。
「あ、あなたってもしかして…Eランクの…」
「気づいたのかよ…! ってか逃げろコラ! ヘルヘイムのやつ狙い定めてんぞ!」
「そ、そうね。ヘヴン…。あとで話しましょう」
「くっ、なんでオレはこんなにバレるんだ…」
オレはヘルヘイムのやつに八つ当たりすることにした。




