ドラゴン、人間になる
ファロファラル王国郊外。
オレは口うるさい小娘に悩まされていた。
「それでですね、とても美味しい山菜があってですね」
「それ何度目だ…」
この小娘は冒険者というものらしい。
始まりはただこの近くに来て昼寝していただけだった。その時に王国から何やら警報が聞こえ、兵士に囲まれてしまったのだ。オレは見向きもせず寝ていたがな。
それで、オレが恐ろしいのか王国はオレを警戒している。オレはあんたらから手出ししなかったら襲うつもりはないし、監視の目もいらないのだが。
そんなことでちょっと嫌気がさしてきたころ、一人の冒険者が近づいてきた。彼女は森で迷ったらしくオレを見つけて恐怖していた。
『そんな恐るなよ。オレは何もしねえぜ』
オレはそういうとこの小娘…。純粋といえばいいのか単純といえばいいのか。
すぐに信じて毎日のように来やがる…。うざい。
「お前暇なのか? 冒険者はモンスター狩らないと金にならねえってあんた言ってたろ。生活がキツキツだとも」
「えっ、あー、いや、私は魔物狩る実力がないっていうか…薬草見つけることしかできないんです!」
「私が言うのもなんだがよく冒険者名乗れるな」
オレがそう言うと涙目でポカポカ前足を叩いてくる。
薬草探しで生計を稼ぐって…。もっと向上心というものはないのか。そのまま年老いて死ぬ気か? 人間はあっという間に死ぬっていうのに…。
「や、薬草もポーションに必要ですから。これでも薬草摘みはプロですよ。ハイポーションに必要な上薬草も簡単に見つけれますからね!」
「薬草以外も魔物とかと戦え」
「いやです! 怪我したくありませんから! 痛いし!」
痛いのが怖くて冒険者よくやってられるな。
オレはあくびを一つする。
「眠いんですか?」
「寝不足なんだよ。四六時中監視されてるからよォ」
そう言って茂みを見ると少し動く。
こう監視されちゃ寝るに寝れない。視線感じたら寝れないタイプなんです。
オレが危険ってのもわかるけどさあ。
「オレは温厚だから? 許してやってるけど…こうも監視されてたら滅ぼしちゃうかも」
と、からかってみると、悲鳴が聞こえどんどん遠ざかっていく。
はあ。ここは比較的あったかくて結構快適だったんだがなあ。
「しょうがない。移動してやるか」
「えっ…」
「なに? 嫌なの?」
「いやですよぉ!」
と、オレに抱きついてくる。
つってもオレのこの巨体は目立つ。どこに行っても警戒はされるだろうな。
どこへ行こうと同じか…。
うっぜえ…。
「…はあ。じゃあオレにどうしろと」
「なら人になって住んでみたらどうですか?」
と。
たしかに人になればこういううざい問題にならないな。
「そうか。ならちょっと…」
ドラゴンに伝わる人化の術。それを今やってみよう。
たしか…。
オレは魔法を唱える。
人化の術。初めてやってみるな…。
すると、オレの体が光り始める。光が収まるとオレには人間の手足が生え、近くにあった水たまりを見ると鱗は残っているが竜人だと言えなくもない感じの人になった。
「おお! 人間だ!」
オレは人間になった。
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