可憐に羽ばたく金星の不死鳥
金星、美の象徴の惑星であるが、実態は硫黄とガスの溜まり場だ。
そんな美とはかけ離れた星に、黄色の羽毛の不死鳥は尾を引きガスに焼かれながらも、可憐に美しく羽ばたいていた。
不死鳥は罪人か、あるいは求道者だったものだろうか? もはや何が自分だったかを忘れ、不死鳥は今も死なず、そして金星から離れることが出来ない。
永遠に、この醜悪な惑星から離れることが出来ないのか。
不死鳥は自らの環境に絶望し、そして幾何桁ほどの死を通した先の輪廻を信じた。
信じて信じて、その黄色い羽毛と、焼かれて焦げ臭くなった肉体で羽ばたき続けた。
そして、ついに不死鳥は死を迎えた。焼かれた羽毛は再生せず、肉は塵となり宇宙の虚を舞った。
不死鳥の魂は塵となったが、いつか再生し一つの惑星に住まうだろう。
不死鳥の生は変わらず苦悩に焦がされるだろう。
もしくは、そんな生の中で華麗に羽ばたくか。
環境でない、己の姿こそ一番の美なのだから。