第1話 町までの旅路
増長でわかりずらい文ですみません。
警備隊の宿舎の近くで一夜を過ごした。
国境警備隊から近くの町までの道のりは、街道に沿って進めばいいようだ、途中で枝分かれした道はなく、そのまま進めばいいのは楽でいい。
いざとなったら飛べばいいし
ついでに、国境までやってた魔法で地面を慣らしながら歩き、魔力操作のトレーニングをしながら街道を歩く。
《オフィ、あまり遠くに行くなよ》
《はーい》
竜は成長するにつれて様々な声帯を手に入れるとされている。人間の言葉を話す竜だっているのだ。別の種族の遺子を取り込んで耳が生え、その種族が声帯を使って言語を伝えているような知能の高い種族であれば会話は成立する。
ならば竜の遺子を持つものは竜と会話できるのかと言われれば、微妙なところだ竜同士は声帯で会話をしない、基本的に。発声は人類種でいえば感情の表現なのだとか。
竜の最大の感覚器官であり、相手に意思を伝える器官は角だ。角を使って会話をすることができるために、声帯を使った会話はあまりしないのだという。そのかわりにブレスが吐き出されるのと、消化、吸収に特化しているのだそうだ。勿論、出そうと思えば出せるが。
本と伝聞でしか知らなかったが角って、かっこいいだけじゃなかったんだな。
ちなみに、隣国で竜の研究書には殆ど載っておらず、間違っている事も多かったようだ。これらはすべて、地龍から聞いた話である。そりゃ長年生きたかつて竜だったもの方が理解してるに決まってる。
今後の成長を考えるとオフィだけでなく、僕自身にも必要な事だ。
あの城で、僕はオフィと一緒に生まれた卵から生まれ直した。
その卵の中から生まれたであろう生命、竜は既に事切れていながらも、まだ遺子が残っている状態だったのだ。
原因は2つ、竜という遺子の容量が大きい種族ですら入りきらないほどの多くの属性を生まれてきた時から持っていた事。
もうひとつは持って生まれた属性が、特殊なものが多く、生命体として活動するには致命的過ぎた事である。
恐らくは、竜ではなく龍として体を作るだけの時間があれば、無事に生まれる事が出来るはずだったはずだ。
僕がその卵を見た時衝撃を受けた、生命は、遺子は、ここまでの調和をとれるものなのかと。
これまでみてきた遺子は、どこか尖っているものばかりだったからだろうか、それとも僕が尖らせた原因だったからだろうかはわからない。ただ一つのことにのみ尖っていく、硝子の刃のような遺子を見続けてきたからかもしれない。
僕は何より、今は自分の体に宿っている竜の遺子、生きるための循環という形に美しさを見出したのだ。
そして、そんな奇跡のような循環の中加わり、受け継ぐことができることに大きな喜びを感じた。
恐らく、誰よりも生まれたいと卵の中で思いながらも時間が足りなかった為に自分の体を作ることが出来なかった遺子に浸りながら、
嵐蛇と地龍が僕と卵の2つの遺子を混ぜ合わせ、僕は卵の中から自分と竜の遺子を容量に合うように純化していくことで生まれなおした。
遺子を混ぜる行為は極めて危険なものだったが、どの道、僕がオフィを育てるには足りないものが多過ぎる。竜が強いのは様々な理由があるが、親が子供の為に小さな頃から強い遺子を餌として与える事が出来る点が非常に大きい。
属性の質については僕が純化をすれば良いが、元が弱ければあまりにも少ない量にしかならないので、必然的に強い遺子を持つものを倒すしかないのだ。
僕と卵の遺子を混ぜ合わせるのは成功したが、竜そのものですら容量が足りず、自壊してしまうようなものを、半分竜が混じった人類程度がそのまま受け容れる事はできない。
ならば徹底的に純化して僕の容量に収まるよう、調整すれば良いのだが、結果的にかなりの量を削ってしまった。
属性の量を削るということは、長時間にわたって属性を使えない。魔法使いの得意とする広範囲に大火力をぶちかますことや、継続的に搦め手を使い、相手を釘付けにする事ができないという割と致命的な問題が残ったのだ。
これには、僕も嵐蛇も地龍も頭を抱えた。
魔法が使えないのなら、竜の肉体の機能を前面に使用していけば良いのではと思ったが、その場にいる誰もが人類の体を使った戦闘技術、竜の翼を使った戦闘方法を知らないという事実に。
地龍は地竜から成り上がりをしたので、翼を使った事はなく、嵐蛇は先天的に風の属性を持っており、こちらも翼を使った飛行をするどころか、翼すら持たずに空を飛ぶことができるのでそんなものは必要ない。
つまり、僕の現状を考えると肉体は強く、翼を持ち、多くの属性の魔法を使え、瞬間的な火力は高い魔法使いではあるが、
肉体を操る技術は無く、空の飛び方も自分で覚えなくてはならず、魔法の長所がほぼ潰れていながらも無駄に手札だけは多いという、何でもできそうで何もできない、器用貧乏にも届かない、ただの無能なのでは?
蛇と龍から同時に憐憫の目を向けられるような人類種、初めてかもしれない。屈辱である。
ともかく、純化以外の竜から受け継いだ他の属性の使い方、竜と人の混じった体の中でも鱗、爪、ツノ、牙、翼を使ってできる事、できない事を把握する事が第1目標だ。
嵐蛇、地竜が共に子育てが出来ない事態だから子育てを頼むなど理由はあれども、結局のところ彼らに助けられたことには変わりないのだ。
僕は僕の体の半身である竜の分まで生き、そしてオフィを育て上げなければならない。
命を救ってくれた父と母に報いるためにも。
《オフィ、上に離れ過ぎだから、こっちにおいで》
《ん?のっていい?》
オフィは角での会話を既に成立できるほどだ。
バサバサと音を立てて顔の前にオフィが降りてくる
きゅう、とわざわざ鳴いているのは構って欲しいからだろうか、頭を撫でてあげるとそのまま腕にくっついた。
諦めて肩に乗るようにいうと嬉しそうに鳴き、腕を登って顔を擦り付けてくる、おのれは猫か。
好奇心旺盛だから、町に入ったら他の人についていかない様に言っておかないと簡単に誘拐されそうだ。
《僕以外について行ったらダメだぞ》
キュイ、と少し落ち着いた返事が帰ってきたがとても不安だ。
人慣れしているのか?わからない。
街道を歩いていても今のところ、さっぱり人と会っていないので判断が難しい。国境警備隊が見える範囲にいた時には、既に頭の上で寝てたからな。
近づいた時、こちらを警戒していた人たちの目が、何か変なものを見る間に変わったのは、仕方がない事だろう。
さて、これからのことを考えよう、
この国は隣国が戦争に使う物資を送る事を許可していたので、積極的にというわけではないが協力していた訳である。僕の証言を信じて偵察を向かわせれば、城があった場所が綺麗さっぱり更地になっているのはすぐにわかるだろう。
援軍の名目で軍を派遣して、そのまま支配するかどうかを決める筈だ。鉱山自体はまだ存在するから、採掘できたものをどうするかがカギか。
隣国が戦争をしていた国に情報が届いて、使者や使節団が到着してからが本番だな。最初は話し合いになるはずだが、どうあがいても拗れるはずだ。
戦争になりそうならさっさと別の国に向かうようにしなければ、理由をつけて無理矢理徴兵されそうだ。
国境から40キロほど移動しただろうか、途中で村もあったが、あまり近寄りたい雰囲気ではなかったので、そこは少し早く移動した。
隣国との中継地として経済が回っていた村だったのだろう。一日中歩いても人とすれ違わなかったので恐らく、収入源がない状況だ。これから、なぜ客が来ないのかを聞きに町へ向かう人選を行うのだろう。
町に行きたいので護衛しろとか言われたら面倒だな。
これからの村の財政を考えると、報酬も出し渋るはずだし、ここで安請け合いをして町で広まったら安い報酬で働かなくてはならないことになる。
寝るか、夜も眠らずに移動するか
《オフィ、寝るか移動するかどっちが良い?》
《ゔぉろのあたまでねたい》
頭の上に乗せて移動するか。
オフィを手で掴み、頭の上に乗せるとふんっと鼻息が聞こえ、いい位置を探しているのかもぞもぞしている。とてもくすぐったい。
《頭で寝ていいぞ、ただし掴まっておくこと》
《ねる、おやすみー》
色々と考えながら歩く。
この辺りには強い個体が少ないので、さっさと違う国に行くのは十分に考えられる選択肢だ。
強ければ強いほど元の生物の範囲を超えた体や属性を使った魔法を使って来ることがある。
元の種族的に、人間よりも俊敏に動けたり、力が強かったりすることもあるが、この辺りではでかい土蛇程度だろう。緑の少ない大地である為、あまり食べなくても生きていられる蛇の系統が多かったはずだ。
オフィの成長にはあまり必要がないだろう。
属性の種類は、あの国で確認されているのは火、水、土、風の直接触れて、触れ、感じる事ができて研究が進んでいる4つが基本、
光、闇の人類種の研究があまり進んでいない2つの属性と。
毒、木、雷、霊、など多岐に渡るため、まだ名称の付いていない属性もあるのではないかとも言われているし、実際に僕が使っている純化もそこに入るはずだ。
属性を後天的に獲得するのは、遺子を受け継がねばならず、遺子を受け継ぐ方法は食事が一般的である。
受け継ぐには相手が亡くなって、あまり時間が経っていないうちでなければ、遺子が徐々に消えていくのだ。
それに加えて、受け容れる側に適正がなければ属性を獲得出来ない為、多くの人類種は属性が増える事はない。
そして、研究をするならば強い遺子を持っていなければあまり意味がない事もあるために、特殊な属性は研究が進んでいないものが多いのだ。
属性を最初から持って生まれてくる存在もいるが、稀である。殆どの生命体は親から遺子を分けてもらい、親と同じ先天的な属性であると判明する。
親の持つ属性に子供の適正が全くない事もあり、一概には言えないのだが。
その場合の多くは特別な属性を持っているものが多く、特殊な属性はより、遺子の容量を圧迫するため、
中々、親の遺子が子供に受け継げない。
その結果として、自分の子供ではないのではと疑問を持つ者、家の仕事を継がせることができないと嘆く者など問題が多く、そういった子供は孤児院に置き去りにされる事がある。僕もその1人だった。
これは、野生の動物にも言える事でもあるのだ。
社会性のある生物であるほど、そういった枠から外れたものを嫌う事もある。が、そんな中でも生き残るものや、群れの長が賢い生物だったりするとそういったものが、群れを強くする為に残しておく事もある。
結局のところ、使えると分かるだけの知識や経験があれば有効に活用する点は、人類種もその他も変わりはないのだ。
動物の中でも、生まれた時から魔法を使えるだけの属性の量、質を持つ種を魔物といい、
そして、中には必ず親の先天的な属性以外の属性を持って生まれてくる種もいる、竜もその1つである。
そういった種の事を魔種という。
実際には、そういった区別をしていないところも多い。というよりも、そこまでの余裕のある国か、領地か、街か、町か、村かが重要なのだ。
後になればなるほど余裕はない可能性も出てくるし、それは仕方のないことなのだろう。
属性の種類のことが国の重要な機密になっている国もあれば、属性の種類?そんなの基本だろ?と一般的な知識として認識している国もある。
魔法の事を研究の最先端に位置する国は基本的に富んでいる国である。魔法とは学問であり、研究内容は伝統の文化、資源を活用する為の技術、自然環境などの違いが存在する。すると、水を出すという魔法ですら地面から水を汲む、空気中から水を作る、自身の魔力から水を作るといった違いが出てくるのだ。
勿論、国に仕えて研究するものだけではなく個人的研究をしている者もいるにはいる。
その魔法の研究が僕が城に監禁されていた理由でもあり、監禁されていながらも外の世界の事を知っていたり、様々な分野の知識があったりするのは国の研究内容の多くに関わっていたからでもある。
何も分からずに感覚だけで魔法を使うよりも、どうやったらより効率的に魔法を使えるのかを理解していればより良い結果をもたらすのは当然の理屈だろう。
遺子から受け継ぐ特徴、属性を純化させる事ができるというのは当時は生きている存在の純化は出来ないなどの条件もあったが、国としてはその力は大きく無視はできなかったのだろう。
純化するという事は、余計な部分を削ぎ落とすことも含まれるために、
ただ単に、普通よりも質を高めるだけではなく、無駄な部分をなくすことで結果的に遺子を受け容れる側の容量を増やす事ができるのだ。
この魔法を使い、硝子の刃のような軍団を作り上げることで戦争に勝って、勝って、勝ち続けていた。
魔法、鍛治、調薬、生物、料理、属性、遺子を純化の技術に偏っているとはいえ、言わば最先端の研究していた時に得ていた知識だ、これを活用しない手はないだろう。
最初は国も僕もなぜ、遺子を純化する事ができるのか分からずにいたので時折、どこで使うのかと思うような知識まであるが。
そんなことを考えながら歩いていると、遂に町が見えた。
まだ夜なんだけど、野宿するしかないよな。
次からはちゃんとほかのキャラクターがしゃべると思います。