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竜のいし ひとつの月  作者: 水牛
序章 竜の遺子を受け継ぐもの
1/2

プロローグ


こんなん、生まれてからプロローグまでの方がよっぽど波瀾万丈な生活なのでは?と思ったのでタイトルはああなった。

 

「では、名前と年齢、どうしてこちらの国に来たのかを答えてくれ」

「ヴォロスです、年齢は13、サイラスには旅の為に向かう途中です」

 8年ぶりの外の世界、漸く人族に会えたと思えば取調べとか、やはり外はめんどくさい。


 城の中で一室に監禁されてた時ですら、丁寧に接してくれてたし、やりたい事を伝えれば大抵の事は許可してくれたというのに。

 あのまま、のんびりと暮らしていたかったなあ。

 まあ、今はもう、影も形もない更地になってるけど



「旅人にしては汚れていないな、魔法使いか?」


 水と風は使えますと答えると、少しピリッとした雰囲気となる。正面から質問をしている、恐らく隊長と思われる牛人は動かないが、僕の横にいる真面目そうな犬人から剣が首に突きつけられる。

 隣国が1ヶ月竜巻にすっぽり覆われていたのだから、そりゃ気になるか

 でも、あんなん人類種には無理だって


「竜翼を持った魔法使いの子供か、うちに見習いとして欲しいぐらいだが…コンボルで何かあったのか知らないか?」


 変わった事ではなく、直に隣国の事を聞いてきたのは、怪しむというよりは少しでも情報が欲しいのだろうな。


「あの嵐のことですか?早いうちに旅を再開して良かったですね、巻き込まれていたかもしれないと思うとゾッとしますが」

「コンボルの城下町ににいたのか?」


 よかった、ここで食い付いてくれた。こういった話術を手に入れたのもあの、隔離されてた生活のお陰なんだよなあ


「ええ、袋が破れてしまったので、最近は軍国化していたのでお金と時間はかかりますが、この袋を作って貰いに」


「袋が破れた?旅の必需品だろうに、翼をもつ魔法使いが苦戦するほどの魔種に襲われたのか?」


「ええ、この翼と頭の上に乗っている子を手に入れた時に」

 本当の事だ、まさか結婚する前に子どもの世話をすることになるとは思わなかったが。


「袋が破れて食料などの必需品がなくなりましたが、見ての通り竜から受け継いだ特徴が強いので、食べなくても生きていけるし、カンテラも必要がなくなりました。いい身体ですねえ竜って」

 この身体になって驚いたのは、生物としては蛇に近いのか、毎日食べなくても生きていけることだ。


「竜を倒すとは、その歳で随分と強力な魔法使いなのだな」

 そんな訳あるか、と叫びたくなる。ついこないだまで監禁されてて、鍛冶屋の真似事と革製品を作るのが好きなだけのただの子どもなんだよ。

 今言っても、誰も信じてくれない事はわかってるから言わないけど。


「迷った森の中で、竜が卵を守って死にかけてまして。周りは土が盛り上がってましたので、竜と戦えるような大蛇だったのでしょう、図らずも共闘となりまして」

 さて、ここが分水領だ、警戒させてしまうかどうかの


「大蛇は逃げたのを確認した竜は、卵から孵った竜に遺子を分けると力尽きたのでその後に、竜の遺子を取り込んだのですが…」


 さっきから頭の上ですぴー、すぴーと鼻息がうるさい君には、もっと危機感を持って欲しい。今、僕がひとつでも受け答えを間違えれば諸共死ぬというのに。


「頭に乗っているのはその卵から孵った竜か?」

 部下に人の首に剣を突きつけたまま笑うなよ、隊長さん。

 緊張してた空気が和むのは良いけどさ、オフィ、君のことなんだからせめて起きててくれない?

 竜が生まれた時も、僕の背中に翼が生えてた時もビックリしたわ!

 竜の母親まで驚いたよ。そのお陰で良い袋と皮鎧を手に入れることが出来たんだけどね。


「ええ、どうしようか悩んでいたら懐かれてしまったので、どうせなら育ててみるのも良いかなあと」

 あの時は顔が真っ青になったね。母親より僕の方に先に懐いたのだから。母親の怒りがこちらに向くかと思って

 その後、ある事情で子育てを頼まれたときには頭が痛くなって倒れたけど。


「確かにその竜の子どもはあなたを信頼しているようだ、自分の前で母親を殺した相手に懐くとは思えんしな」


 一瞬、竜のすぴー、という鼻息のみになる。

 気が抜けるわ


「しかし、コンボルで起こった竜巻の原因はその竜の親の番ではないという証拠があるか?」

 やっとここまで来たかという達成感。この会話の勝利がを確定した瞬間だ、僕はそこに話を繋げたかったのだ。

 僕が竜巻を起こした犯人である可能性を直接聞きに来きにくるのを。


「あそこまでの竜巻を起こせるような大きさの竜が、私と共闘した竜の番であれば、あの程度の蛇では卵を狙えないと思いますが、自殺行為にも程がある」


「確かにその可能性もあるが…」


「そもそも、そんな強い竜の子どもがこんなに小さい訳がありません、竜は強ければ強いほど大きくなっていくはずです」

 竜を基準にして考えた場合、これは確定している事だ。

 これ以上の証拠となると、荷物を調べるぐらいになり


「その通りだな、君の潔白は証明されたにも等しい」

 荷物を調べるということは、残った魔生の遺子を奪う者もいるために、旅人や冒険者からは嫌われる行為だ。

 それでも聞いてくる、必ず。

 その他にも、僕の持っている袋の大きさ的に、竜の素材が残っている筈もないからだろう。

 相手も証明したいだけなのだ、身近に自分の手に負えないような存在がいないと

 だから、1つずつ可能性を潰すような聞き方をする


「気を悪くしないでいただきたいのだが、もし良かったら、袋を調べさせてもらっても良いか?」

 これで終わり、袋を調べても素材は見つからない。

 勿論です、と答えた後は僕の首に剣を突きつけていた人の横にいる人が調べ始めるが素材は見つからず。

 漸く、1時間にも及ぶ取り調べが終わった。


「これは個人的な質問だが、何故、早めにあの国を出たんだ?」

 兵にならないか、国に仕えないかってうるさくて、と答えると取り調べの時には、余り動かなかった顔がしょんぼりとしてこの人可愛いと思った。

 でも、この警備隊に入ることはないです

 だって、絶対過労死するほど働くことになるからね。

 向こうから、色んな人が来るから。


 すぴー、すぴー



 オフィ、いい加減、頭が重いから起きて欲しいんだけど?


あ、隊長さん、この先の町に入った時の為に一筆書いてもらえるかな、面倒ごとは嫌いだよね?






主人公自身は質を高めることを中心とした生産系の技能しかない。


戦闘技能は一切ないというこの世界において珍しい存在。

なお、魔法や魔術を使うための属性の質はかなり高く、肉体のポテンシャルも中々のもの。



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