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境界と召喚

六話目

さて、境界にとばされて数日?がたった。時計もないし太陽や月もないからなんとなく数日だ。

その間ただ何もせずこの世界をさまよいつづけている。どうやってあっちの世界に行けるのか鬼に聞けと女神ババアは言っていたが、正直自分を殺した奴と話をする気なんかおきない。

もともと一人でぼーっとするのは前世の学生時代からやっていたので平気だったのだが、さすがにこれだけの時間をぼーっとすごすと辛くなってくる。

「おい、鬼!お前名前あんのか?」

『あるに決まっている。』

「じゃぁ、なんて名前だ。」

『ザイルだ。』

「ザイル、お前って何者だ?なんであの時あの場所にいた?」

『俺は鬼人族だ。鬼人族は知っているか?』

「田舎者だから知らん!」

『そうか、鬼人族はノルド大陸とズーディ大陸の北部の島々に住んでいる。ちなみにそのまま北に行くと魔大陸だ。』

「俺はまだ17になったばかりだったからズーディ大陸を出たことすらないから知らん!近くの町に出かけるくらいしかしたことなかったんだぞ!」

『・・・そう怒るな、お前ら人族だって腹が減ったら生き物を殺して食べるだろう?はっきり言って悪いが俺はそれと同じ感覚だ。』

「ならお前はお前を殺したあの4人を許せるってことか?」

『見つけたら間違いなく殺してやるな。』

「お前、自分がさっきなんて言ったか覚えているか?」

『…それとこれとは別の話だ!』

「別じゃねぇよ!」

『お前はあいつらが何をしたか知らんからそう言うんだ!』

「何があったんだよ!」

『話すと長くなるがいいか?』

「短く簡潔に頼むわ。」

『…仲間をやられて俺もやられた。』

「マジで短いな!いいよ!どうせ暇なんだから長くてもいいよ!」

『いやっ、短くと言ったからな。なら話すぞ。』


『俺は昔、島で手がつけられない悪ガキだった。当時の族長に勝負を挑んでぼこぼこにやられちまってな、島を追放されちまったんだ。』

「族長って強いんだな。」

『俺の姉だ。』

「お前、自分の姉さんに負けちまったのか?」

『そうだ、姉は加護持ちでな、しかも容赦なかった。だが弟ということで特別に追放ってことですんだんだ。姉は処刑と言ったが周りが止めたんだ。』

「加護ってなんだ?てかお前の姉って本当に鬼だな。」

『加護も知らんのか?加護ってのは神から与えられる特別なスキルだ、姉は鬼神の加護を持っていた。鬼人族は鬼神を崇拝していたからな。』

「そんなにすごいのか?」

『鬼神の加護は鬼神の戦闘力を宿すことができる。当時の俺は足元にも及ばなかった。』

「すごいな、まぁそれで追放されてどうしたんだ?」

『ノルド大陸の方に行って一緒に追放された連中と山賊や盗賊をやって暴れ回っていたんだ。』

「お前どんだけ迷惑な奴なんだよ。」

『好き勝手にやっていたからな、そしたらゴロツキ共が集まってきてどんどん大きくなっていった。』

「お前大山賊の頭やってたってことか?」

『そうだ、鬼人や魔獣、人族と気がつけば数百人になったいた。そんなある日のことだ、奴等がやってきたのは。』

「そういえばあいつらは何者だったんだ?討伐依頼を受けた冒険者だったのか?」

『わからん、だが俺の魂を封印したことなどを考えるとただの冒険者とは思えないがな。本来魂の封印なんて必要がないからな、魂なんてよほどの理由でもない限り消えてしまうからな。』

「あの女神ババアもあいつらのことをイレギュラーって呼んでたしな。」

『言ってたな。砦に現れた時あの連中もなんかいろいろと言ってたぞそういえば。』

「気になるからあいつらのこと細かく教えてくれよ。」

『説明するよりお前のスキルを使って記憶を覗くのが早いかもしれんな。』

「魂の解析か、どこまでのことができるスキルなんだ?ってなんで知ってるんだ?」

『お前と俺は魂が繋がってるからお前が遮断しない限り考えてることが俺にも流込んでくるんだよ。』

「どうやって遮断する?お前も遮断してるのか?」

『心を閉じる感覚というかまぁそのうち勝手にできるようになるだろう、俺は元々魂吸収のスキルを持っていたから魂の使い方がわかるだけだ。』

「なるほど、まぁ困るもんでもないしいいか。」

『いいのか、まぁお前がそういうならいいが、とりあえず俺に使ってみろ。』

「わかった。魂の解析!」

意識が自分の中に沈んでいく感じがある。

(これが魂?)

ふれてみる。

(これがザイルの記憶、頭の中に流込んでくる。この辺か?)


□□□

ザイルが仲間達と酒を飲んで騒いでいるところから始まった。

鬼人が三人、リザードマンや獣人あとは人間がいる。

酒を飲んでみんな上機嫌にくだらない話をしている。

ドン!

突然扉が開き一人の男が慌てて入ってくる。

「頭!すいやせん!」

「何事だ!」

鬼人も言葉はノルド大陸の言葉を使っているらしく通じているようだ。

「敵襲です!」

「どこの軍だ!数は何人だ!」

「それが黒ずくめのかっこうをした四人組です。」

「冒険者が討伐依頼でも受けてきたか?今日の門は誰が当番だ?」

「今日はフジンが守りについつます。」

鬼人の一人が答えた。

「フジンなら問題なかろう。」

「それが、フジン様は奴らに切り殺されました!」

「なんだと!」

「まさかフジン様が!」

「兄貴がやられるだと!」

話を聞いていた周りが騒ぎ出す。

「うるせぇぞ!」

ザイルが一括しだまらす。

「ザズ!幹部たちと奴隷獣人どもとリザードマンを連れて数で押し潰してやれ!一人も逃がすなよ!」

「わかってるよ兄者!」

鬼人の一人が立ち上がりうなずく。

「フジンの仇は俺が取ってやるよ。いくぞお前ら!」

ザズと他の鬼人達を先頭にぞろぞろと部屋を出ていく。


ザイルはいらいらしながら報告を待っていた。

だがいくら待っても報告は上がってこない。

業を煮やしザイルが部屋を出る。

戦闘の音が近づいてくる。

男を相手にザズとリザードマン、女二人には鬼人と獣人達が対峙していた。

「何者だ貴様ら!」

「お前が噂の鬼人か、でかいな、それに三本角か。」

「逃げるなら今のうちだぞ、まぁ逃がさんがな!」

「それはこっちのセリフだ!お前の魂もらうぞ!」

ザイルが大きな鉄の棒で殴りかかる。

黒髪の男はやすやすと受けると横をすり抜けリザードマンを切り捨てそのまま一気に他の鬼人を切っていく。

「きさま!鬼火!」

ザイルが炎のをいくつも発生させるが次々と避けられてしまう。

その間に女二人も連携し鬼人を殺して獣人や人間を切り捨てていく。

「鬼人を殺すとはお前らの武器も普通じゃないな。」

「当たり前だ!お前らを殺しに来たんだからな!」

「兄者!ここは退くべきだ!」

「何をつまらんことを!」

「ここは俺が時間を稼ぐから急いで脱出を!」

「逃がすかよ!」

男が一気に間合いをつめると同時に刀を振るう。

ザイルはかろうじて避けたと思ったが左腕を切り落とされてしまった。

「くそったれが!獄炎!」

巨大な炎の壁をつくりだす。

「兄者今だ急げ!」

ザズが左腕を拾い投げわたす。

「まだ回復が可能だ、持って行ってくれ。」

「くそっ、お前も来い!」

「すぐに行くから先に逃げてくれ、はやく!」

「さっさと来いよ!」

ザイルは走り出し、酒を飲んでいた部屋の後ろの隠し扉から地下に降りる。

「くそっ、あいつら絶対に殺してやる!」

地下には転移の魔石が置いてある。

転移の魔石だけでは転移先が何処に行くか解らない。だが逃げる為なのであえて何処に飛んだか隠す為そのまま使う。

「ザズはまだか?」

いらいらしている。すると走ってくる音が聞こえる。

「兄者まだいるなら早く行け!俺はこいつらを」

言いかけた言葉の後に倒れる音が響いた。

「こいつは、なかなかしぶとかったな。」

男の声が聞こえる。

ザイルは魔石を起動させる。

「しまった!そこか!」

男が気づき突っ込んでくる。

「覚えておけよ貴様ら!」

ザイルは転移した。

気がついたら森の中にいた。

「どこの森だ?とりあえず傷を治さねぇと。」

ザイルは歩き出す。


□□□

「お前と奴等の因縁はわかったよ。ザズってのは弟だったのか?」

『実の弟だ、俺を慕ってついて来てくれた奴だった。だからあいつらを見つけたら殺してやる!』

「わかったが、俺は今のところ関わるつもりないからな、てかお前体がないのにどうやって仇討ちするつもりだ?」

『…お前の体を借りて。』

「嫌だっての!女神ババアも関わるなって言ってたろ、最低でも俺はカーナと会うまでは関わるつもりないからな。」

『…会ったあとならいいのか?』

「知らん!というかこの魂の解析ってスキルだが、お前のことも消せるんじゃないのか?」

『…』

「やっぱりそうなんだな。どうやらふれた魂の能力や記憶、技術の吸収、その魂を魔力に変換して吸収したりもできるようだしな」

『頼む!消さないでくれ!』

「奴等のこと諦めるか?」

『わかった、今は諦めるが頼みがある!』

「なんだよ。」

『お前が吸収する魂を俺にもわけてもらいたい。』

「なんでだよ?そんなことして俺に何の得があるんだよ?」

『魂があれば俺はお前の戦闘のサポートをすることができる、それに魂がたまっていけば俺は力を取り戻せる、そしたらお前は俺の強力なスキルも使えるようになる、お前は既にいくつか俺のスキルを獲得しているがどれもたいしたことないものばかりだ。』

「お前に魂やるとお前は力を取り戻すそしてお前は俺に力を貸すということか。」

『悪い話じゃないだろ!強くならなきゃいけないんだろ?』

「わかった、でもおかしなことしたら俺はお前を消すからな。」

『わかった。』

「ところでどうやってあっちの世界に行くんだ?」

『おそらくだが、運命の女神がやろうとしているのは俺を使っての召喚だろう。』

「召喚?どういうことだ?」

『境界ってのは出ることができない世界だ。』

「てことは召喚されないと永遠に出れないってことか?」

『まぁ運命の女神が仕組んでることだからそれに関しては大丈夫だと思っているが、もう1つの問題としてどういう姿で召喚されてしまうかということだ。』

「どういう姿?どういうことだ?」

『鬼の魂や悪魔の魂ならそういう姿で召喚されるが、一応お前は人間の魂だったからな、聞いたことがなくてな。』

「あの女神ババア大丈夫なのか?」

『俺としても問題ない姿であってほしいが。』

(・・けて)

「なんか言ったか?」

『どうした?』

「なんか聞こえたほら」

(助けて)

「助けてって誰かの声が」

『やばいまだ話しは全部終わってないってのに!』

「どういうことだ?」

『召喚されるぞ!いいか、召喚されたら何があっても動くな!言葉を発するな!』

「だからどういうことだ?」

『いいな、俺が合図をするまで動くなよ!俺が手助けできるのは一度きりだろうから間違えるなよ。』

(お願いです、妹を助けて!)

魂が突然引っ張られていくのを感じた。


◆◆◆

気がつくとそこはどこかの御屋敷の広い部屋の中だった。

床には魔法陣、魔法陣の周りにはうっすらと空間の歪みが見える。おそらくは結界か何かだろう。

その結界の外を武装した兵士達が囲んでおりその先にもう一つ魔方陣が見える。兵士が邪魔で見えにくいが、魔法陣の上には白い髪の女性が横たわっており、胸には剣が突き立てられており魔法陣の上は血だらけになっていた。

(さっきの声の主か?生け贄ってやつだよな。)

その後ろに立っている男がしゃべりだす。

「おやっ?鬼を召喚したかと思ったのですがねぇ。」

この男の見た感じものすごく胡散臭い、変なメガネをかけて普通着ないてあろうアニマル柄のローブを着ている。

(中身は大阪の奥さまじゃないよな?)

「いったいどういうことだスミス殿?」

頭の良さそうな金髪長身紳士が話しかけている。

見た感じシャツや宝飾品からかなりのお金持ちなのがわかる。

「マークレ様いやっ私は確かに強い魔物を召喚できたと思ったのですが。」

「これがか?」

俺の方を指さして言う。

「スミス殿、私は昔魔大陸に戦争に行かされた時これに似た者を見たが、そいつはウッドドールという魔人で最下級の意思のない戦闘人形だったよ。」

「ですが、こいつはどうやら鉄でできているようですからそれとは違うかと」

「そんなことはわかっているよ!私が言いたいのは最下級の魔人の上位種程度の魔人で私が喜ぶとでも思っているのかということだよ!」

(ウッドドール?鉄?魔人?どういうことだよ?)

「いやぁおかしいですねぇ、失敗かなぁ。」

スミスと呼ばれている男はあまり悪いと思ってないようだ。

「だいたいこいつは先ほどからピクリとも動かないし話もしないじゃないか!おかしいだろう!私が君にいくら払っていると思っているんだ!それに生け贄に私の奴隷コレクションの中でもとびきりの一匹を出したというのに!」

マークレと呼ばれてる人間はそうとう頭にきているらしく先ほどまでの知的さはなくかなり取り乱して怒りをぶつけている。

「確かに反応がないですねぇ、生け贄にも戦争奴隷の巫女職の生娘と素晴らしい素材ですから失敗するとは思えないんですがねぇ」

スミスはやはり悪いと思っていない態度だ。

その様子にマークレが完全にキレてしまったようだ。

「この男を捕まえて殺せ!そしてこの役にたたん魔人もだ!」

兵士達がスミスの両腕をつかんで押さえる。

「ひどいじゃないですかマークレ様~。」

「ふざけるな!私が望んだのは私をこの地に追いやった王族や馬鹿な貴族どもを殺す為の魔人だ!こんなもんを召喚しておいてふざけるなよ!もういい!殺せ!」

二人の兵士がかまえていた槍をスミスに突き刺した。

「ぐはっ!」

スミスが死んだと思った瞬間、スミスは砂になって崩れていった。

「どういうことだ!」

マークレが慌てる。

すると部屋にスミスの声がひびく。一人の兵士がしゃべりだした。

「ひどいなぁ~まぁ働いた分はお金はいただきましたので今回の件は誰にもいいませんから~でわまた。」

兵士が倒れた。

と同時に魔法陣の周りに張ってあった結界が消える。

「くそっ、見つけ出して殺せ!逃がすな!それとそいつも殺せ!」

こちらを指さしてわめきちらす。

「マークレ様落ち着いてください、お前達はあちらを追え!こいつは俺が首をはねてやる。」

一人の兵士が前に出てマークレに話しかけ他の兵士に指示を出していく。

「ラークか、頼むぞ。」

マークレが落ち着きを取り戻す。

このラークという男他の兵士より少し良い鎧をつけている、おそらくここの兵士達の隊長なのだろう。

ラークが魔方陣の中に入り俺の後ろで剣をかまえる。

「斬鉄!」

ラークが動かない俺の首にむけ剣を降り下ろす。

『右腕で首をガードしろ、そしたら左に向かって跳んで一気に窓を突き破って逃げろ!』

突然のザイルの言葉に反応し右腕をあげる。

『部分鬼人化、鬼甲化!』

ザイルがスキルを発動させた。

右腕に剣が当たる!それと同じタイミングで左にとび出す。

剣が腕に当たったところから折れてしまった。

突然動いたことと剣が折れてしまったことに驚き兵士達は全く反応できていない。

(合図が遅すぎるぞザイル!本当に死ぬかと思ったぞ!)

『俺の魂だけだと少ししかスキルが発動できないから力をためていたんだよ。』

驚いた兵士達の横をすり抜けて一気にを窓を突き破る。

窓に当たる瞬間俺はおかしなものを見た。

そう、変な人形が窓に当たる瞬間を見たのだ。


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