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祭と狩

三話目

カーナの事件から6年が過ぎた。

俺とイルが17歳、ファナ16歳、カーナが10歳になる。

あの事件のあといろいろとカーナの秘密がばれそうなことはあったがとりあえずばれずに過ごせている。イルとファナにはあのあとに口止めをしたが二人とも約束を守り黙っていてくれている。

カーナと離れることになるからと頼んだのもよかったのだろう。


今日はイルとファナとの三人で近くの森まで猟に来ている。

明日は村の祭りなのだ。この祭りは成人の祝いの祭りである。この国では17歳で成人のあつかいになる。

つまり俺とイルは今年で成人するのだ。

ちなみに成人したら前の世界と同じ感じで飲酒ができるようになるし結婚もできるようになる。おまけで税金も納めなければならなくなる。

村によっては家や農地を貸し出されたりするので成人してすぐ路頭に迷うようなこともない。なので成人したからと家を追い出されても大丈夫なのだ。ちなみに冒険者に登録できるようになるのも17歳からである。

俺達は明日の祭りの為に大きい獲物を探しにきている。

「レイどの辺りまで行くかい?」

「今日中に帰って来られるところくらいまで行ってみようかと思っているけどイルはそれで大丈夫か?」

「問題ないよ、ファナは大丈夫?」

「私は平気よ。私の場合ただの暇潰しだしね。」

「遊び感覚で猟に出ると痛い目みることになるぞ、そんなこと俺の父さんの前で絶対言うなよ、」

「ごめん、ごめん、エリックおじさんの前でなんか言わないわよ、鍛練メニュー増やされても嫌だしね。」

「確かにおじさんなら根性叩き直すって言って徹底的にやられちゃうかもね。」

「父さんのことだから連帯責任だって言って俺やイルまで巻き込まれるだろうしな。」

「僕は本気で遠慮したいね。」

イルもファナも苦い顔をしている。

イルもファナも今は俺と一緒に父さんの指導を受けておりみんなで朝からの鍛練をおこなっている。

「とりあえず大物を捕って俺達の実力を見せてやろうぜ!成人してもしっかりやってけるってとこをさ。」

「そうだね、しっかりとした実力があるところを見せておけば僕も冒険者になることを反対されないかもしれないし。」

「イルはすぐに村を出るのか?」

「いやっ、予定は来年にしようと思っているよ。」

「ファナと一緒村を出るのか?」

イルの顔が真っ赤になる。

「うん、二人でやっていこうと思ってるよ。」

ファナがイルの腕に抱きついて言う。

「もちろんよ!二人でパーティ組んでやっていくんだから」

イルが急に抱きつかれて慌ててる。

そう、この二人付き合ってます。でもイルの奥手なのは全然治らないのでファナがグイグイいってます。

「いっそのこと結婚すればいいのに。」

俺はにやけて二人に言う。

「いやっ、そんな急に結婚って」

イルがまた慌てだす。

「私は成人したらすぐにでも・・」

「ファナ、本当に僕なんかでいいのかい?」

「あたり前じゃない、イルがいいのよ。」

(やばい、二人の世界が完成しちまう。まぁ結婚の話をふったのは俺だが、というか17歳で結婚かぁ、俺なんか前世21歳でただの学生だったのに異世界はこれが普通なんだからすごいよなぁ。)

「お二人さん、そろそろ行かないと日がくれますよ。」

俺は二人に声をかけるとイルとファナは二人の世界から帰ってきた。

ちなみにこの二人が付き合うきっかけになったのもカーナなのだが、今日カーナは家で留守番をしている。一緒に行きたがっていたが両親から危ないのと何が起こるかわからないからと止められてしまったのである。

「ごめん、ごめん」

また森の奥に向かい歩きだす。

「二人の世界つくるのはいいけどちゃんと二人とも気配感知は発動しといてくれよ。いちゃついてる間に食われるぞ。」

「「わかってるよ!(わよ!)」」

俺達は歩きながら雑談を続けていく。

「レイは冒険者どうするの?やっぱりカーナを待つの?」

「もちろんそうでしょう、だって自称カーナを導く者だからねぇ。」

ファナがニヤニヤしながら言ってくる。

「自称はよけいだ。すぐにでも街に出たいと思っていたけどカーナが成人するのを待つことにしてるよ。」

「妹思いなのはいいけどあんまり妹ばっかりかまってると結婚できないわよ。」

「気にしてることを言うな!」

「あらっ気にしてたのね」

ファナが笑いながら言ってくる。

「まぁまぁ、でもレイよりもカーナの方からお兄ちゃんにベッタリって感じだから、成長してきたらある程度離れていくんじゃないかな。」

「それはそれで寂しいがしかたないな。」

「そういえばこの間レイのことカッコいいって言ってる子がいたわよ。」

「なに!どこの子だ、紹介しろ!」

「私の家の二つとなりの家のララちゃん6歳よ!紹介してあげよっか?」

またファナがニヤニヤしている。

「・・・俺は小さい子に興味はないよ。」

「それは残念ね。」

(完全にからかわれてるな俺、でも別にロリコンでもシスコンでもないし普通に同年代との恋愛がしたいのだがなぁ)

「レイにもちゃんといい人が見つかるから焦らずにね。」

「・・・イルに言われるとなんかすごく寂しい気持ちになるのはなんでだろうなぁ。」

「「なんでだよ」」

二人からつっこまれる。

「まぁとりあえず気持ち切り替えて獲物を探そうぜ。」

「ごまかしたわね。」

「はははっ、とりあえず獲物はボア系の魔獣かな?」

「そうだな、ボアかベア系を狙いたいとは思ってるよ」

「やっぱりベアぐらいの大物じゃないとみんなをビックリさせるんでしょ!」

「そうだよな、とりあえず二人は自分の前方だけなら気配はどれだけさぐれる?」

「僕は土魔法の振動感知と併用して60ヤーレくらいの距離かな、でも大きいか小さいかくらいしかわからないし動いてないと感知できない場合があるよ。」

「私は前方だけなら100ヤーレはいけるわよ。風魔法使ってだからだいたいの大きさくらいまでわかるわ、レイもそれくらいでしょ?」

(1ヤーレはだいたい1メートルちょっとだから)

「まぁ俺もそれくらいだな。」

俺達三人はエリックから気配感知に関して徹底的に鍛えられている。エリックからは魔獣よりも早く相手に気付けと教えられている。早く相手を知ることで不意討ちすることもできるし、相手が悪いときはすぐに逃げることもできる。死んでしまってはその先に何もないのだから勝てないとわかった時は全力で逃げろと教えられているのだ。

「とりあえずそれぞれで獲物を探ってみて大きいやつの反応があったらそっちに行ってみようぜ。」

「わかったわ、私はこっちね。」

「なら僕はこっで。」

「じゃぁ俺はこっだな。」

みんなそれぞれ気配を探りだす。

数分後

「俺の方はたぶん、ウルフ系の魔獣が5頭くらいと小型の魔獣が2頭だな。」

「私の方は全然ダメね、小型のやつを少し感じるだけだわ。」

ファナががっかりして言う。

「僕の方は大きいやつがいるみたいだ、激しく動き回ってるからたぶん大型の魔獣が縄張り争いでもしてるんじゃないかな?」

「なら好都合じゃん、疲れてるところをからせてもらおう。」

「レイってずるいわね。」

「うちの父さんもいつも言ってるじゃないか、危険をおかすくらいなら逃げろって、疲れて弱ったところを狙うのも作戦だよ、それにやばい奴なら疲れてるときは追ってこないだろ。」

「・・まぁそうね。」

「ということで決定な、イルもいいだろ?」

「うん、でもやばいときはすぐに逃げるからね。」

「もちろんさ、ならゆっくり進んで行こうぜ。」

俺達は周りを確認しながら進んで行く。

対象から20ヤーレくらいのところで止まり様子をうかがうことにした。

「この辺りがぎりぎりのところだろうな、というか思ったよりも大きかったな。」

「だいぶ大きいわねどちらも。」

「あの赤い毛のベアってレッドベアかなもしかして?」

「黒いのはマウントベアで赤いのはレッドベアだな、レッドベアなんてこのあたりには普通いないんだけどな。」

「じゃぁ強いやつなの?」

イルとファナがちょっと不安な表情でになっている。

「いやっ、昔父さんと猟に出た時に一度の遭遇しているけど強くはなかった、でもマウントベアよりも皮膚が硬いのと小規模のブレスを使ってくることがある。」

「討伐のランクは?」

「確かマウントが下から2番目のFでレッドが3番目のEだったはず。」

「大丈夫なのそんなの狙って?」

「大丈夫だって父さんからも言われてるじゃないか、俺達なら実力ならそれぞれでEランクの冒険者くらいはあるって、三人で一気にやれば大丈夫だよ。」

「そうだね、マウントベア押されてるみたいだしマウントベアがやられるか逃げるかしたところで僕がレッドベアの足を土魔法で止めるからその隙に二人はレッドベアの目を狙って矢をうって。」

作戦をつげるイルにファナが

「レイの影響でイルまでずるっこくなったわね」

「俺のせいかよ!」

「ずるじゃないよ、確実かつ安全に倒すならこれが一番だと思ったんだよ。正面から行って君がケガでもしたらいけないし!」

「イルったら」

二人が見つめあって赤くなってる。

「ごちそうさまです!てなわけでそろそろ決着つきそうだぞ。」

「うっ、了解ならみんなで別々の方向から仕掛けよう、僕の魔法が合図だよ。」

「了解!」

「よろしくね。」

それぞれレッドベアを囲んで待機する。

かんじんのマウントベアとレッドベアの方はというと、手数はマウントベアが多いようだがやはりレッドベアの方が攻撃力が高いらしくマウントベアの方がダメージが大きい。

そうこうしていると、レッドベアがファイアーブレスを吐きマウントベアがひるんだ隙に腕を弾き飛ばしマウントベアの首もとにくらいついた。

マウントベアの手足から力が抜けるのがわかる。

レッドベアはマウントベアを地面に落とし食べようとしている。

俺は矢をつがえいつでも矢が放てるように準備をする。

レッドベアがマウントベアを食べ始めようとした次の瞬間地面が隆起しレッドベアの手足を押さえる。

俺は連射して次々に矢を射かける。

狙いは右目、逆からも矢が飛んでくる。

俺の放った矢は手で防がれてしまったが、ファナの放った矢がレッドベアの左目に当たる。レッドベアは暴れて左手と両足をおさえていた魔法を無理矢理引き抜き矢を避けていく。

「ちっ、こっちをつぶしそこねたか、ウィンドアロー」

俺は風魔法を使って一気に勝負にでる。

レッドベアも負けじとこちらにファイアーブレスをはこうと身構える。

「ストーンウォール」

イルがレッドベアを包むように壁を展開する。

俺の矢は壁に弾かれレッドベアのファイアーブレスはそのまま吐き出され自分を焼く形となった。しかしやはり火の体制があった為ダメージはそこまで大きくあたえられていない。

「ストームショット」

ファナが風魔法を発動させレッドベアのブレスを飲み込み炎の竜巻を発生させる。

レッドベアが大ダメージをうけよろめく。

「ウィンドランス」

「ストーンバレット」

俺とイルが魔法で追撃をする。

ドンという音とともにレッドベアが倒れる。

「やったのか?」

イルの声が聞こえる。

「やったみたいね!」

ファナの喜んだ声が聞こえる。

「とりあえずはやれたみたいだ、イル!よけろ!」

「えっ、くっ」

イルはとっさに前方に飛び出しよける、だがかわしきらずにダメージをうけてしまう。

「ぐぅっ、何?」

「イル!」

俺は矢をつがえ放つ。

「レッドベアだ!」

「なんでもう一匹いるのよ!」

「みんな一匹目を倒すのに必死でこいつが近づいて来てることに気がつかなかったんだ!」

俺達は気配を消して近づいて来ていたレッドベアを完全に見落としてしまっていた。

「ファナ!俺が引き付けるからイルにミドルヒールをかけろ!腕が使えなくなるぞ!」

イルは右腕を爪で引っかかれており、思ったよりも深い傷をおってしまっている。

「わかったわ!」

「お前の相手は俺だぞ!」

俺は矢を連射してレッドベアの気をそらす。

怒ったレッドベアがこちらに突進してくる。

「ちっ、弓じゃふりか。」

つがえていた矢をはなちすぐさま剣を抜く。

直接相手を切る感覚があるので剣は苦手で、矢に比べると得意ではないのだが、距離が近すぎて矢では対応ができない為仕方なく剣を装備する。

(とりあえずイルかファナの援護が来るまで耐えるしかない)

レッドベアの突進を回避し集中してかまえる。レッドベアが腕を振り回して攻撃してくる。

(やっぱり一発一発がかなり重いな、でも大降りな分隙がある!)

攻撃をかわしてすれ違いざまに攻撃を加えていくが毛と皮膚が硬いのて大きなダメージがあえられない。

「ウィンドアロー!」

「ストーンハンド!」

レッドベアの後方からファナの風の矢が飛んできて、足元からはイルの石の手がレッドベアの動きを止める。

レッドベアの意識が後方に向いた。

「今よ!」

「ウィンドブレード、身体能力向上!」

俺は剣に風魔法をまとわせ身体能力向上スキルを発動させて一気に勝負をかける。

レッドベアは突然俺の攻撃力が上がりあせりだしたがもう遅い、2撃、3撃と攻撃が入っていき最後はレッドベアの心臓を剣が貫いた。

「助かったよイル、ファナ」

「何言ってるんだよ助かったのはこっちだよ」

イルとファナがこちらに歩いてくる、イルはまだダメージが残ってるみたいだが傷はほぼ回復しているみたいだ。

「ほとんど一人でレッドベア倒すなんてレイやるわね」

「相手が油断してたのと身体能力向上使って一気にいったからだな、これ使うと後で体がしんどくなるからまだあんまり長くは使えないんだよ、なれればいいんだけど体がついていかないから」

「確かにしんどいもんね、エリックさんも言ってたけど体がついていってないから鍛えろそれしかないってね。」

「十分鍛えてるつもりだけどな。」

「確かにそうよね。」

「さてと、じゃあこいつらを魔法の袋にいれますか。」

「そうね疲れたから解体は村でやりましょ、それにベアが3体もいたら大変だからみんなにも手伝ってもらいましょ。」

「食いかけのマウントベアも持って帰るのか?」

「まだ全然食べられてないから綺麗よ、気になるならかじってるとこだけ切っていけばいいじゃない。」

「それもそうだね、このままにしててももったいないしね。」

「ならそうするか、俺がマウントベアばらすからその間にレッドベアを魔法袋に入れといてくれ。」

俺はイルに袋を手渡す。この袋はエリックが冒険者をしていた時から使用しているものを借りてきたのだ。かなり高い物だから絶対になくすなと言われている。

俺はマウントベアの方に近づいていったその時。

やばい感じがして立ち止まった。


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