異世界!?
面白いと思ってもらえると嬉しいです。
(どうしてこんなことになっちまったのかなぁ)
今俺は魂だけの状態で何もない空間をさまよっている。
それもこれも全部背中にくっついてるバカとあのババァのせいだ。
★★★
俺は21歳の大学生だった、名前は古田洋介。正直だらだらと大学生活をおくっており毎日これという目的もなく過ごしていた。
ある日の夜、コンビニのバイト帰りに後方から走ってくる車のライトが近づいてくるのを感じた。これが古田洋介としての最後の記憶だった。
次の記憶はとてもぼんやりとしていて光りの中で何かを話しているという記憶だった。何を話していたか全く思い出せない。とても不思議かつ不可解な記憶だ。
次の記憶は赤ん坊の声から始まった
「ああきゃぁきゃ」
赤ん坊の声は俺の声だとすぐに気がついたが俺にははっきりと意識があり、記憶もあった。
(なんで赤ん坊に生まれたのに意識や記憶があるんだ?普通生まれ変わったら記憶なんかあるはずないのに)
困惑していると突然おばちゃんから抱上げられてベッドに横になっている女性の横に寝かされた。
「ああ、良かった無事に生まれてきてくれて」
女性は嬉しそうに微笑んでいる。
バダン、ドタドタ、ドガッ、ドス
すごい音をたてて一人の男が部屋に入ってきて派手にずっこけた。
「エリック大丈夫?」
「大丈夫だっ、血が出ていて痛いが生きてるから大丈夫だ」
どうやら男は頭を強打したようだ。
「レーナっ俺のことより君は?子供は?」
「私は大丈夫よ、子供は・・元気な男の子よ」
「ありがとう、レーナありがとう、よく頑張ってくれた。」
エリックは感動して泣き出してしまっている。そして俺の顔をのぞきこんで
「お前の名前はレイリックだ、強い男に育つんだぞ。」
抱上げようとするエリックにレーナが
「抱上げる前に血をふいてちょうだい、レイリックに血がつくわ」
おもいっきり睨んでいるレーナにエリックがびびっているのがわかる。
「はい、すいません」
母親はやはり強いな
(どうやら俺はこの二人エリックとレーナの子供として生まれかわったようだがなぜ記憶があるんだ、わからない、それとこの二人の髪の色薄い青色なのが気になる)
この二人以外のお産の手伝いに来ていたであろう人達もよくみると青色だったり緑だったり耳が普通よりとがっていたりしていた。わけがわからないがとりあえず今は寝よう。
□□□
とりあえず生まれて数ヶ月がたった、今解っていることはどうやら俺は地球じゃない世界に転生してしまったということだ。
そしてこの世界は魔法があるということ、これが何よりも興味深い。
もしかすると俺はよくある転生ものの世界に来てしまったのではないだろうか、いわゆるチートな主人公になったのでは。
魔法のことが知りたい、この世界のことがもっと知りたい。
とりあえずあと数年自由に動けるまでまつしかないか。
□□□
ようやく4歳になり自分の好きに歩き回られるようになった。この世界には魔法以外にスキルという特別な能力があることもわかった。このスキルには二種類あり経験により得られるスキルと生まれ持ったスキルの二種類だ。
経験により獲得できるものは例えば剣の訓練をやっていけば剣術スキルが獲得できる、そして剣術スキルのランクが上がっていくとそれにより剣技を覚えることができるらしい。要は努力次第でどうにかできるのがこちらだ。
生まれ持ったスキルの方はかなり珍しく有名なもので鑑定スキルや収納スキルなんかがあるらしいがかなりレアスキルらしくなかなか所持してるものはいないらしい。
次に魔法に関してだが火、水、風、土、光、闇と6属性ありこれは親からの遺伝などで影響する場合が大きいらしい。
ちなみにエリックは風属性、レーナは水属性の才能を持っているらしい。
スキルの確認は教会やギルド、特殊なアイテムなどで確認ができるそうだ。
「さぁついたよレイリック」
エリックから声がかかって自分の世界から戻ってきた。
エリックとレーナと一緒に歩いて来たところ
そう、今日は教会に俺のスキルと魔法属性の確認に来たのだ。
「なんだかどきどきしますねとおさん」
「レイリックなら大丈夫よ、すぐ私みたいに水魔法が使えるようになるわよ」
「いやっ、風魔法だよ。風魔法が使えると猟に役立つんだから」
「水魔法は生活するのにいろいろ便利なんだから」
なぜか教会の前で魔法について競いだす両親。
(どちらでも使えれば俺は嬉しいのだが、というか俺って一応転生者だからもしかしたらチートなスキルとか魔法とか持ってたりしないのだろうか)
わくわくしながら魔法論議を終えた両親と教会に入っていく。
教会に入ってすぐ神父さんが迎えてくれた。
40代くらいのイケメン神父さんだ。
「レイリックくんこんにちは、今日はよくきたね」
「神父様こんにちは、今日はよろしくお願いいたします。」
「レイリックくんはその歳で相変わらず礼儀正しいねぇ。」
「本当誰に似たのかしら、まぁエリックじゃないのは確かね。」
レーナが微笑みながら進み出てくる。
「神父様、今日はお願いいたしますね。」
「レーナひどくないかぁ、神父様よろしくお願いいたします。」
エリックがへこみながらあいさつをする。
「だってあなたは外で猟に出てばっかりだからレイリックの教育関わってないでしょ。」
エリックは痛いところつかれて何も言い返せないでいる。
「まぁまぁ、お二人の育て方がいいということに違いはありませんから」
子育て論議が長くなる前に神父さんが止めにはいった。
「レイリックくんじゃぁ先にお祈りをしましょうか」
神父さんに言われ俺は進み出て膝まついてお祈りをする。
「運命の女神よ、彼の道に栄光を与えたまえ。」
神父さんがお祈りをする。
「でわレイリックくん君のスキルを確認してみましょう。」
「はい、よろしくお願いいたします」
神父さんに連れられ石板の前に立つ。
「じゃぁレイリックくん、この石板に両手をあてて下さい。」
「はい」
石板に両手をあてるとゆっくりと文字が浮かびあがってくる。
俺はまだ字を覚えてないので両親が確認をする。
「スキルは特にないみたいだね、まぁ子供だからそんなもんだよね。」
「そうね、スキルはこれから少しずつ必要なものを覚えていけばいいのよ。」
(特殊なスキルはなしかぁ、あとは魔法か)
どきどきしながら両親の様子をうかがう。
「あなた、レイリックは風の適性があるみたいね、水じゃないのは残念だわ。」
レーナがかなり残念そうにしている。
「まぁまぁ、どちらかの属性が受け継がれていたんだから良かったじゃないか、属性がないことだってあるんだから。」
エリックはレーナに気を使って自分の属性が受け継がれたと喜んだ様子を見せなかった。
(おおっぴらに喜んだら後が怖いからだろうな、それにしても風属性だけかぁ、チートでもなんでもなかったんだなぁ。)
けっこう残念だがまぁ魔法が使えると考えれば嬉しいかぎりである。
「とおさん、今度魔法教えて下さいね。」
「もちろんだともレイリック、お前もいずれ立派な狩人にならなきゃいけないんだから。」
エリックは嬉しそうに答える。
「狩人は考えておきます。」
俺はとりあえず答えたが正直狩人じゃなくこの世界に生まれかわったのだから冒険者になりたいと考えていた。
(まぁとりあえず冒険者になる練習として狩人の手伝いをしていけばいいか。)
即答されてエリックが固まっているが放っておこう。
「神父様ありがとうございました。」
「あなたも固まってないでお礼を言って、本当に今日はありがとうございました。」
「失礼しました。ありがとうございました。」
慌ててエリックがお礼を言う。
レーナは慌てる様子を見て笑っている。
「さぁレイリックが普通の子供だったことだし帰ろうか」
(普通の子供?)
エリックの一言にどういう意味か聞こうとしたが両親はそのまま出口の方に向かって歩き出してしまったので慌てて追いかける。
教会を出て家の方に歩いて行く、俺はどうしても気になったので先程の話しをエリックに尋ねてみる。
「とおさん、さっきの普通の子供ってどういう意味?」
エリックはレーナと顔を見合わせて答えてくれた。
「この世界には極まれに別の世界の人間が転生してくることがあるんだよ。」
「えっ」
「転生者は神様からこちらの世界を豊かにする為に遣わされているらしいわ。」
「そう、向こう側の世界の文化や技術をこちらに広めて生活を良くする為にね、そしてその転生者達は特別なスキルを持っていることがほとんどなんだ。」
(えっ、俺は?)
「もし子供が転生者だったりする場合そのスキルによっては国に子供を取られてしまうこともあるのよ、だから普通の子供で良かったってことなのよ。」
「そうなんだね、良かった、かあさんやとおさんと離れることにならなくて。」
エリックもレーナも笑顔で歩いていく。
(とは言ったものの俺って転生者なのになんもないなんてイレギュラーなのかな?まぁいいかとりあえずチートじゃないけどこの世界を楽しんで生きていこう。)
□□□
さらに月日は流れ10歳になった。このころになるとエリックから毎朝鍛練をするようにと言われるようになった。正直眠いので嫌だが冒険者になる為にと頑張っている。
鍛練と言っても弓矢の練習、簡単な剣術と風魔法の練習である。
「よぉレイリック今日も早くから頑張ってんな」
声をかけてきたのは隣に住むトーマさんだ。
「おはようトーマさん、トーマさんも早いですね。」
「朝から仕事した方が涼しくてはかどるからな、うちの子もレイリック見習って早起きさせるかな。」
トーマさんのところには俺と同い年のイルという男の子がいる。
「僕はただ冒険者になりたくて鍛練してるだけだよ。」
「それでもたいしたもんじゃねぇか、だが冒険者ってエリックやレーナは知ってるのか?」
「両親は知ってることは知ってるけど全然いい顔してくれない、冒険者ってそんなにダメな職業なのかな?」
「お前もしかして両親が元冒険者だって知らないのか?」
「えっ!全然聞いてませんけど。」
「二人とも今はあんな感じだが元々冒険者として有名だったみたいだぞ、まぁ何があったかまでは知らないが引退してこの田舎の狩人兼衛兵みたいなことをやってるみたいだがな。」
「そうだったんだ。」
俺が驚いていると後ろから歩いてくる気配があった。
「トーマ、息子にいらんこと吹き込まないでくれよ。」
父さんも鍛練に出てきたらしい。
「わりぃわりぃ、でも知っててもいいんじゃねぇか?」
「まぁレイリックも10歳だし知っててもかまわんか。」
エリックが腕組みをしながらため息まじにりかたりだす。
「俺も母さんも冒険者がどんだけ危険か知ってるからいい顔してないんだよ、この村なら猟が出来れば生活していくのに不自由しないからな。」
「それは分かってるけど。」
「まぁどちらにしろ弓と剣が出来ないと冒険者にも狩人にもなれんがな。」
「エリック、お前の実力を息子に見せてやったらどうだ?お前猟に息子連れて行ったことなかったろ?」
「そうだな、ちょっとやってみるか。」
そういうとエリックは準備を始める。
「レイリック的は4つだ、距離も大きさもバラバラだ。」
そういうと矢を4本取り出した。
「まずは基本の連射だ、一瞬で的を見極めて放て。」
エリックは素早く矢をつがえて、一瞬で矢を放っていく、もちろん全て当たっている。
「すごい。」
エリックはまた4本矢を取り出すと
「次は一斉射だ。」
4本全部弦にかけたかと思うと一気に引き絞り放つ。
また全ての的に当たる。
(すごすぎるでしょこれは)
驚いているとエリックが
「次は魔法と組み合わせだ」
エリックが手のひらを出し
「ウィンドボール」
と唱えいくつかの風のかたまりを飛ばしていく。
そしてまた4本矢を取り出すと的とは違う方向に放ていく。
どういうことかと思っていたら突然矢が方向を変えて4つの的のうち一番離れた的に吸い込まれるように当たっていく。
「なんで急に曲がったの?」
ビックリしてエリックに尋ねると
「風魔法に当てて方向を変えたんだよ、そうすることによって自分の位置が特定されにくくなるし人数だって把握出来なくなるだろ。」
「それはそうだけど、難しすぎるでしょこんなこと。」
「冒険者になりたいならこれくらい出来るようになれよレイリック。」
エリックは笑いながら言った。
(エリック、いやっエリックさん正直あんたのこと尻にしかれた残念な父さんだと思っていたよ、ほんとごめん、あなたは化け物だったよ。)
ビックリしてる俺を見てトーマさんが
「これだけ出来れば大道芸人になれるぞレイリック。いやぁ相変わらずエリックはすげぇなぁ。」
「俺は芸人じゃねぇぞトーマ。」
「そっちの方が稼げるかもね。」
「レイリックお前も言うか。」
俺の一言にエリックも苦笑いしている。
トーマさんは大笑いしてる。
みんなで笑っていると、走ってくる音が聞こえた。
「とぉたん、にぃたん、おかあさんがごはんて」
小さい女の子がたどたどしい口調で言ってくる。
そう、この子は今年3歳になるカーナだ。俺の妹だ、天使だ、我が家のアイドルだ、俺はこの子にデレデレなのだ。
前世の歳から考えれば俺も子供がいてもいい歳だし、前世の俺は一人っ子で妹がほしいとずっと思っていた。生まれた時の感動は今でも忘れない。天使だった、3歳になりさらに天使だ!
この天使を俺以上にかわいがっているのが
「カーナたーん走ったら危ないでちゅよ。」
天使を抱き上げるエリック。
今だに赤ちゃん言葉を使っている、先程の神業を見て見直した俺の気持ちを返してくれ。
「カーナちゃんおはよう、今日もかわいいね。」
トーマさんがカーナに声をかける。
「トマさんおはようござ」
「カーナたんに手を出したら射抜くぞ!」
「するか!俺には嫁も子供もおるわ!」
トーマさんが激しくつっこみをいれる。
「とりあえず俺も一仕事して帰って飯にすっかな、あんまりかわいがり過ぎると嫌われるから気をつけろよ。」
トーマさんが笑いながら畑の方に歩いていく。
「僕らも帰ってご飯にしようよ、お母さん待ってるよ。」
「そうだな、ご飯にしよう。」
僕らは家に帰って朝食を食べた。
今日も平和な一日が始まっていく。