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異世界転生したらヒロインや仲間が最強すぎて、なぜか護られています!  作者: 緑青白桃漠
第6章 久しぶりの学園生活とカルベル王国の反乱部隊!
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#88 二人だけの決闘!

お待たせしました。第88話公開です。ファングは助かるのか気になります(つд`)

おかげさまで累計PV数五万&ユニーク数一万突破ありがとうございますm(_ _)m

 レン達が喫茶店で新作スイーツを食べている頃、とある森では巨大な細胞球体が一つ宙に浮きながら、細胞の中で三つの鼓動を打っていた。


「ドックン、ドックン、ドックン」


 三つの鼓動は次第に一つの波長に合い始めると、巨大な細胞球体は、人間の姿に形を変え始めていた。やがて、巨大な細胞球体が変化するとそこには、クライブの姿があった。


「はぁはぁはぁ、良いね。全身から力が溢れてくるよ」


 クライブはファングと一つになり、体から溢れる魔力に酔っていた。


「ファング、お前の力はちゃんと俺が使ってやるよ。しかし、ファング以外にもう一つ鼓動を感じる」


 クライブはカイトの存在をファングから、聞かされてないので、胸を触りながら違和感を感じていた。


「まぁ、ファングの事だから、誰かと融合した時に、もう一つ心臓を手にしたのかな?」


 クライブはファング以外の鼓動に違和感があったが、あまり気にしてない様子だった。


「それにしても、体の奥から感じる違和感は何だ? 何かが俺の中で蠢くぜ、吐きたくても何も出ねぇ」


 レン達がフォレストの中で、専用の部屋を作ってあるので、家具類がたくさん体内にある事を、クライブは知らなかった。


「まぁ良いかぁ、このくらいの違和感別に気にならないし、それにむやみにやって、一体化が解けると厄介だからな」


 クライブはファングを取り込んで、力を手にしたのに、無理やり変な事をして、ファングがクライブの中から分離する事を恐れていた。


「なぁファング、お前の力凄いぜアハハッ、この力があれば、俺一人で世界を変えられるぜアハハッ」


 クライブは、暫くファングの力に酔っていると、突然苦しみ始めた。


「うっ、ウァー」


 クライブのお腹付近が、フォレストのブラックホールみたいに変化すると、大量の触手が噴き出していた。


「はぁはぁはぁ、ファング餌が欲しいのか」


 クライブは力が制御出来てないのか、暴走した状態で不敵な笑みを見せていた。


「良いぜファング、お前の力俺に見せろ。お前の事は何でも分かるからなアハハッ」


 クライブとファングは一つになっているので、ファングの記憶、行動、考えている事が手に取るように、クライブに伝わっていた。


「あぁ、飯の時間かぁ、俺もちょうど腹が減っていたんだぜ。ファング、お前の力でたくさん食べさせろ。そして食べ終わったら、お前の仲間を全て消してやるよ」


 クライブの不気味な声が一つ森の中で響きながら、森の奥に消えていった。


「はぁ、美味しいかった」


 ファングがクライブに取り込まれた頃、喫茶店の中ではレン達がちょうど、スイーツを食べ終えた所だった。


「私も食べ過ぎたわ。明日太らないかしら」

「いや、一日で太らないでしょう」


 アリスが変な事を聞いて来るので、レンが否定していた。


「酷いわレン君、私をファングみたいに気遣って」


 アリスのお決まりが始まったので、レンは目線を逸らしている。


「別にファングを気遣って要るわけじゃないよ、ただファングは精霊だから心配なだけ」

「じゃあ私が精霊になれば気遣ってくれるの」


 アリスが変な事を言っているので、レンは頭を押さえていた。


「いや、アリスが精霊になってどうするの?」

「そんなのレン君とあんな事をするためよ」

「いや、精霊の趣旨違うから」


 アリスが変な妄想をしていた。


「本当、レン君は酷いわね。私はレン君一筋なのに」

「アハハッ、それよりも、この後どうする」


 レンは苦笑いしながら、違う話にすり替えた。


「レン君、話を逸らさないで、都合が悪いといつも変えるんだから」

「だってアリスの妄想に付き合えないから」

「酷いわレン君、レイスやレオス君も何か言ってよ」


 話がレオスとレイスに、飛び火していた。


「何で俺様とレオスさんに振るんですか」

「そうだよ。僕とレイスお兄ちゃんは関係ないよ」

「あぁ使えないわね。ファングがいたら、殴っているわ」

「アリス、ファングが聞いたら怒るよ」


 アリスは納得してない様子だったが、暫くすると落ち着いていた。


「さて、レン君に無視されたから、本題に入りましょう」

「いや、無視と言うか、アリスの妄想だね」

「レン君は相変わらず容赦ないわね。まぁそこが良いんだけどね」

「レン師匠、あまりアリスさん声を掛けない方が良いですよ。邪魔なファングが居ないから、アリスさんが浮かれています」


 いつも喧嘩をするファングが出掛けているので、アリスの気分が最高潮にあった。


「もう、レイス君ったら、レン君に変な事を言わないで」


 アリスが顔を赤くしながら、首を振っていた。


「アハハッ‥‥‥気を付けるけど、無理そうだね」


 アリスが笑顔で見つめるので、顔のやり取りに困っていた。


「それでこの後だけど、夕方までここにいない。どうせ、外に出ても暑いだけだわ」 


 今は一年で暑い時期を迎えているだけに、行く場所は限られていた。


「やっぱりそうだよね。学生ギルドの依頼も涼があるところに集中しているから、残っている依頼が全て炎天下でやるのしか残ってないしね」


 学生ギルドに行くと、残っている依頼書が全て炎天下で行う物しか残ってないので、レン達も困っていた。


「本当そうよね。炎天下だと肌が荒れたりシミになるから嫌だわ。だけど一番は資金よね、このままだと底が付くわ」


 あまり酷暑の中で依頼をやりたくない四人は、何か良い方法がないか考えていた。


「ねぇ、ファングに頼んで、目的地に運んでくれないかな? リオスとテオ君でも良いわ」


 アリスは(らく)したい様子だった。


「僕も考えたけど、ファングが怒るから無理だよ。リオスとテオはあまり使いたくないかな。まだ黒竜が周知されてないから、騒がれると面倒くさいし、あっ緊急の時は使うけど、何も無ければ、人間の姿で行動して欲しいな‥‥‥」


 レンのわがままが始まったので、三人が困り果てていた。


「レン君の目立ちたくない発言が始まったわ」


 レンが喋っている中、アリス、レオス、レイスがコソコソ話していた。


「アリスさん、諦めるしかないですよ」

「やっぱり、そうなるよね。レオス君、転移魔法とか使えないの?」

「使えるけど、前に言ったよね。僕が行った範囲しか行けないよ」

「はぁ、仕方ないわ。ファングを説得するしかないわね」

「アリスさんはファングと喧嘩したいんですか?」


 アリスはどんな手を使ってでも、楽したい様子だった。


「ねぇ、僕の話を聞いているよね?」


 アリス達がコソコソ話しているように見えたので、レンが声を掛けていた。


「えっ、聞いているわよ。それでレン君、ファングは私が説得するから良いわよね」

「えっ、アリスが説得するの?」


 アリスがファングを説得すると聞いた途端、難色を示していた。


「レン君、変な顔しないで」

「いやしてないけど、アリスとファングはいつも喧嘩するから、迷惑だなと思って」

「酷いわレン君、悪いのはファングよ」


 アリスにも原因があるのに、全てファングになすり付けていた。


「そうなんだ、じゃあ頑張って」

「任せてレン君、とりあえず学園の任務が終わった後じゃないと、依頼もまともに出来ないから、暫くはファングに話さないでね」

「うん、分かったよ。はぁファング災難だな」


 レンは他人事の用に思っていると、個室の扉を叩く音があった。


「オーイ、レン、ここに入るんだろう。俺だよファングだぜ」

「うわ、噂をすれば嫌な奴が来たわね」


 ファングの声が聞こえたので、アリスが嫌な顔をしていた。


 うわ、そこまで嫌な顔するんだ。


 アリスの表情を見たレンは、目線を逸らしてファングの無事を祈るしかなかった。


「オーイ、レン、早く開けろ」


 アリスが嫌がらせをしていた。


「アリス、開けてあげなよ」

「はぁ仕方ないわね、開けるわよ」 


 アリスは嫌だったが、レンに言われて扉を開けてあげた。


「ちっ、何時まで待たせるんだよレン」

「うん、今ちっって言わなかった?」


 ファングの発言に違和感を感じたレンが聞いていた。


「えっ、そんな分けないだろう。お前の気のせいだよアハハッ」


 ファングは苦笑いして、誤魔化していた。


「そうかな? まぁ良いかぁ。ファング早く来なよ。お腹空いたでしょう?」


 ファングに違和感があったが気のせいだと思い、ファングにメニューを渡していた。


「レン、俺は良いよ。腹空いてないし」

「えっ、ファング食べないの?」


 ファングの言葉を聞いて、四人が嫌な予感を察知していた。


「ファング、まさかモンスターを捕食してないわよね」

「えっ、するわけないだろう。クライブと喧嘩して、食欲がないんだよ」


 ファングの言葉を聞いて、四人はホッとしていた。


「なら良いんだけど、大丈夫ファング」

「あぁ大丈夫だよレン。ウップ」

「ウップ?」


 レンが首を傾げていた。


「いや何でもないんだよアハハッ。ちょっとトイレ借りるぜ。走って来たから気持ち悪くなっただけだよ」


 ファングは慌てて、トイレに向かって行った。


「ファング、大丈夫かしら、あれは相当ショックを受けているわね。どうしたのレン君?」


 アリスはファングに呆れていたが、レンが何かを考えていたので、気になっていた。


「いや、なんかファングじゃない感じがして」


 ファングらしくない部分がいくつもあったので、レンはファングに対して違和感だらけだった。


「そうかしら、レン君の気のせいじゃない?」

「そうかな?」

「俺様はいつものファングに見えますけど」

「僕もファングお兄ちゃんに見えるよ」


 三人が否定しているので、レンは仕方なく合わせていたが、レンは納得してなかった。


 はぁ、ファングには悪いけど、僕の違和感を払拭するために、試させて貰うよ。


 ファングに唯一違和感を感じているレンは、ファングが戻って来たら、本物のファングかどうか調べる事に決めていた。


「うっ、うぇ」


 トイレの鏡を見ながら、ファングが苦しんでいた。


「今のでバレちまったかな。まさか消化不良でバレたら洒落にならないぜ」


 ファングは独り言みたいな事を言っていた。


「ファング、今俺の臓器を連結させるから、骨まで綺麗に消化しな」


 ファングは鏡を見ながら、お腹の改造を始め、ちゃんと消化されているか確認していた。


「よし、これでだいぶ楽になったぜ、これでモンスターの残骸を吐かなくて済むなアハハッ。さて、彼奴らが騙されながら俺に殺されるのが楽しみだアハハッ」


 ファングは鏡の前で不気味な笑い声を上げると、レン達がいる個室に戻って行った。


「よう、待たせたな」

「待たせたなじゃないわよ。大丈夫なの?」

「あぁ大丈夫だぜ。見ろよ、沢山出したらスッキリしたぜ」


 ファングはお腹をポンポン叩いていた。


「ファング、汚いことを言わないで」


 アリスはファングから離れていた。


「アハハッ、ファング、何か食べなよ」

「いや、俺は腹空いてないし」


 レンはファングに勧めていたが、拒否していた。


「なら僕が頼んだ物なら、少しは食べてくれるよね」


 ファングが拒否するので、レンは一緒に一品だけ食べようと提案していた。


「ちっ分かったよ。お前と一緒に食べてやるから、そんな目をするな!」

「ファング、レン君に向かって今、舌打ちしなかった?」


 ファングから聞き慣れない言葉に、アリスが首を傾けていた。


「えっ、そんな分けないだろう。レン、何を頼むんだ?」

「それなんだけどもう頼んであるよ」

「はぁ、いつ頼んだ?」


 ファングは聞いてなかった。


「ファングがトイレに行った後、レン君が一人で店員さんの所に行ったから、私達も分からないんだよね。もしかするとファングのサプライズかもよ」


 ファングがトイレに向かってから、直ぐにレンが一人で、どこかに行ったので、アリス達も聞かされてなかった。


「そう言う事かよ。まぁ、お前の事だから俺の好物だろうな」


 ファングが考えていると、店員さんがやって来た。


「お待たせしました。トルコリのフォワグラです」

「うわ、スゲー良い匂いだぜ、食べて良いのか?」


 店員さんが持って来た料理を見て、ファングがよだれを出しそうになっていた。


「良いよファング」

「ちょっとレン君、これって‥‥‥」

「良いから黙って見ていな」


 アリスは料理を見て、何か気が付いたが、レンに止められていた。


「ウメー、レンお前も食べようぜ。レンが頼んだ奴だからな」


 ファングは美味しそうに食べていたが、レン達は若干ファングから離れていた。


「ねぇ、君ファングじゃないよね?」

「はぁ、急に何を言い出すんだ? それに何で離れているんだ?」


 レンが急にファングを疑っていたので、ファングが首を傾げていた。


「だって、ファングはフォワグラ系が大嫌いのハズよ」

「アハハッ、何を言い出すんだ。それじゃ精霊になって捕食している時はどうなんだ? モンスターを丸呑みすれば、モンスターの肝臓系を食べているぞ?」


 アリスにも言われたので、ファングは慌てていた。


「ファングが精霊の姿でモンスターを食べているは知っているよ。だけど人間の姿だと食べられないんだよ。食感や味覚を感じる人間の姿はね」


 ファングが人間の姿になっている時はちゃんと、五感を感じる事が出来るので、四人はファングの嫌いな食べ物を確認していた。


「ファングはねぇ、人間の姿でそれを出された時は必ず、レン君に命令して貰ってから食べているのよ。レン君に頼まないで食べている時点で既におかしいのよ。克服した事なんて聞かされてないし、ファングの性格なら必ずレン君に言っているわ」


 ファングはレンに隠し事はしないと、約束しているので、ファングがレンに内緒にするのは考えにくかった。


「アハハッ、アハハッ!」

「やっぱり僕の違和感は当たっていたね。ファングを何処にやった」


 偽物のファングが笑っていたので、レンが本物のファングを聞き出していた。


「ファングは俺が食べてやったよ、まぁ俺に吸収されて死んだけどな。はぁまさか、ファングの記憶を完全に得たのに、何故バレたんだ。ファングの記憶は完全に得たハズなのに」


 偽物のファングは何故失態したのか、理由が分からなかった。レンはファングが喰われた事に、憤りを感じていたが、感情を押さえて話した。


「それは簡単だよ。ファングは僕に命令して欲しい時、基本的に目線を送ってくるから、僕との会話が記憶されてないんだよ。多分君は、ファングが美味しそうに食べている映像だけで、ファングの大好物だと認識しただけでしょう」


 レンはファングの事をよく見ているので、目線や表情を見れば、ファングが言わなくても、だいたいの事が分かった。


「アハハッ、まさかファングがお前と契約していたなんて‥‥‥まぁ良いかぁ、騒ぎを立てずに始末する予定が台無しだよ。さよなら、ファングと一緒にあの世に行きな」


 偽物のファングは短剣を抜くと、レンに襲い掛かっていた。


「レン君、逃げて!」


 アリスは今にも、気絶しそうに叫んでいたが突然、偽物のファングの動きが止まっていた。


「くっ、何故体が動かない」


 レンの目の前に来ると、偽物のファングは硬直していた。


「貴様、何をした」

「別に何もしてないよ。君はファングが死んだと言ったけど、僕とファングの契約印は切れてないよ」


 レンが手のひらに刻まれた精霊印を見せると、偽物のファングの様子がおかしかった。


「馬鹿な、ファングは完全に俺が吸収したハズだぞ」

「じゃあ何で精霊印が消えてないの、ファングいい加減、寝てないで、さっさと出て来な、本当に解除するよ」


 レンが切れ気味に言うと、偽物のファングは苦しみ始めていた。


「うっ、馬鹿な、完全に取り込んだハズなのに‥‥‥レン、頼むから契約を解除しないで」


 偽物のファングを口を借りて、本物のファングが出て来た。


「やっと出てきたねファング、これはどう言う事かな?」

「レン、済まない俺が失態したから、お前に危険な目に合わせて、俺精霊失格だな」


 ファングはレンに謝っていた。


「ファング、事情を話せるよね」

「うん、アリス達もそこにいるよな。俺何も見えないんだよ。レンの力で一時的に、こいつの体の一部を支配しているだけだから、お前の声がこいつの耳から聞こえるだけで周りの状態が分からないんだよ」


 ファングの近くに、レン達がいるが偽物に支配されているため、レン達の声だけが頼りだった。


「ファング、レオスとレイス君、それに黒竜の二人もいるから安心して、さっさと詳しい教えなさい」

「アリス、むちゃ言うなよ。だけどお前らを信じているぜ。こいつにまた支配される前に説明するな」


 ファングは再び偽物に支配される前に、レン達に事情を説明していた。


「なるぼとね、ファングのかつての友達だったクライブの誘いを裏切って、取り込まれたんだ。情けない精霊だわ」

「いやクライブは友達じゃないし、それにアリスの指摘に反論出来ないぜ。俺のせいで、レンを危険な目に合わせてしまったからな」


 ファングは四人に弱音を漏らしていた。


「ファングは、レン師匠の為にクライブの約束を破ったんですよね」

「あぁ、そうだけど、結果的にレンを危険な‥‥‥」


 ファングは同じ事を言いかけると、レイスが怒っていた。


「ファング、自分を責めないで下さい。ファングはクライブの違和感を感じていたんでしょう。なら良いじゃないですか、レン師匠なら許してくれますよ」

「レン‥‥‥俺、精霊失格だよな」


 ファングは口を震わせながら、レンに言っていた。


「ファング、確かに精霊失格だけど、今度はちゃんと話せているじゃない。僕はファングが成長しているだけで嬉しいよ。だからファング、クライブなんかに負けないで僕の所に帰って来てよ。僕にはファングが必要何だよ」


 ファングは今にも泣き出しそうだった。


「レン、俺絶対に死なないから、だからレン、俺に力を貸してよ」

「ファング、泣かないの、僕達も力を貸すからクライブに負けないで、カイトもいるんでしょう?」

「あぁ、カイトは取り込まれる前に、俺の人格にしまっているから、大丈夫だよ。今は仮死状態で眠っているぜ」

「そう、カイトが無事なら大丈夫だね。ファング、僕に何を命令して欲しいの?」


 ファングに聞くと、驚く答えが返って来た。


「ファング、本気で言っているの?」


 レンは、ファングの提案に難色を示していた。


「あぁ、それしか方法がないぜ。俺が再びクライブに支配されたら、思いっきり精霊印で命令してくれ、フォレストの肉体が混ざっているから、簡単に命令を拒否出来ないハズだぜ」

「もし命令が効かなかったら、ファングは‥‥‥」


 仮に命令が通用しなかったら場合、それはファングとカイトの死を意味していた。


「何を落ち込んでいるんだレン、俺なら大丈夫だよ。俺はお前を信じる、お前も俺を信じないと成功しないだろう。それに俺はこんな所で死ぬつもりはないぜ。俺はまだお前の役に立って無いんだからな。カイトもそう思っているぜ」

「そうだけど‥‥‥」


 ファングが死ぬ可能性があるためレンは、躊躇っていた。


「レン君、ファングの気持ちに応えてあげましょう。それにこれ以上騒ぐと、お客や店員に気付かれるわよ」


 今でも店員が来てもおかしくない状況にあるため、アリスがレンを促していた。


「分かったよ。ファング、一つだけ約束してよ。必ず僕の所に戻るって」

「あぁ、必ず戻るよレン」


 ファングと約束をすると、レン達は移動する準備を始めていた。準備が出来る間、ファングはレンに気づかれないように、アクトにコンタクトしていた。


「アクト、聞こえるか、お前に伝言がある。俺がクライブに消されたら、レンを護って欲しい」


 ファングはアクトに遺言を残そうとしていたので、聞いていたアクトは怒っていた。


【お前、勝手に死ぬな、俺は認めないぜ。レンは、護ってやるけど、レンに内緒で俺に遺言を残そうとするな。俺が認めてもレンは、絶対に認めないし、ファングを叱っているぜ】

「確かにそうかもな。レンなら絶対に怒りそうだ」

【なぁファング、絶対に死ぬなよ。お前が死ねば、レンは、暫く立ち直れないから‥‥‥】


 アクトはファングを心配していた。


「そうだな、ここで俺が死ねば、レンは多分カルベル王国での任務がままならないだろうな。だけどなアクト、俺は死ぬ気はないぜ」


 ファングもレンの事を知っているので、だいたいの想像は付いていた。


【ファング、必ずレンの所に戻れよ】

「あぁ、必ずな。それとアクト悪いな、お前に全て背負わせて」

【何を言っているんだ、俺達は精霊だからレンに尽くすのは当たり前だぜ】

「そうだな、レンの方は頼んだぞ。俺はそろそろ行くぜ」

【ファング、勝手に消えるなよ‥‥‥】


 ファングとアクトは互いに約束を交わすと、ファングの意識は消えかかっていた。


「うっ、うぁ」


 ファングの意識が、クライブに再び飲み込まれようとしていた。


「ファング!」

「レン、手はず通りに頼む、うっ、うぁ」


 ファングが最後の力で、レンに言うとファングの意識は消え、クライブの意識に入れ替わっていた。


「はぁはぁはぁ、ファング今度こそお前を取り込んだぜ。レン、さっきは良くも精霊印でやってくれたな。だがもう効かないぞファングは完全に俺になったからな」 

「それはどうかな! ファング信じているよ‥‥‥フォレストに命じる僕に本来の姿を見せて‥‥‥」

「うっ、貴様まぁ」


 レンは、ファングを信じながら契約印で命令すると、クライブは苦しみながら、姿を変えようとしていたが、クライブも抵抗していた。


「レン君、クライブが姿を変えないわよ」


 クライブは、強引にレンの命令を拒否しようと藻掻いていた。


「大丈夫だよ。ファングならやってくれるよ」


 ファングの言葉を聞いたクライブは、凶変していた。


「ファングだと、そうか、お前は俺に争うのか、楽にすれば良いのに、貴様に付けられた契約印はどこだぁ、うっ、うぁ」


 クライブは自ら、ファングの契約印を解除しようとして、体を組まなく確認していた。


「ヤバいわよ。彼奴ファングとレン君の契約を自ら解除する気よ」

「アリス黙って、ファングは僕を信じているんだから、僕達もファングを信じてあげようよ」


 アリスが弱音を吐いていたので、レンが渇を入れていた。


「レン君‥‥‥分かったわ、さっきは弱音を吐いてごめんね。私達がファングを信じてあげないと、奇跡は起こらないわね」

「そうですよアリスさん、俺様達もファングを信じましょう」

「ファングお兄ちゃん頑張って」

「そうだよ、ファングは絶対に返ってくる」


 四人は、ファングを信じながらクライブの姿を見ていた。


「グァ、契約印はどこだファング!」


 クライブは必死に抵抗しながら、ファングの記憶を辿り探していると、ファングに刻まれた契約印を見付けていた。


「あった、これでお前の命令は無効だぁ」

「レン君!」


 アリスは慌てていたが、レンはファングを信じているので、慌てる様子がなかった。


「大丈夫だよ。ファング、信じているよ」


 クライブは契約印を解除しようと契約印に手を掛けた時、レンの契約印が激しく光始めていた。


「うっ、何だこれ‥‥‥体が維持出来ない、貴様まぁ」

「レン君見て、クライブの体が急速に変化し始めたわ」

「多分ファングだよ」


 クライブの体から、大量の触手が噴き出して巻き付いていた。


「ファング、貴様まぁ、あと少しで契約印が解除出来るのに、うっ、うぁ‥‥‥」


 クライブは急速に体が変化すると、巨大な球体状の細胞になり、一定の鼓動を打っていた。


「ドックン、ドックン、ドックン」

「うぁ、フォレストのあれより更にパワーアップしているわ、まるで魔王の細胞だわ」

「アリス変な事を言わないの? これがファングとクライブが融合した姿なの?」


 巨大な球体状の細胞を見て四人が困惑していた。


「レン君、今のクライブの叫びで、店員さんが来るわよ」

「そうだね、この姿は終わってから考えるよ。今はファングに言われた事を命令しないと、後はファングが何とかしてくれると信じているよ」


 レンは急いで命令すると、巨大な球体状の細胞は動きを止めて、淡い光に包まれるとどこかに消えていた。


「あのうお客様、先ほど大きな叫び声が聞こえたんですけど?」


 クライブの叫びを聞いて、喫茶店の店員が声を掛けてきた。


「えっ、ちょっと飲み物をこぼしてヒッヤとしたときに、声が出ちゃたぁだけですよ。オホホホ」

「それなら良いんですけど、周りにお客様がいるので、もう少しお静かにして下さい」

「はーい分かりました」


 四人は間一髪、巨大な球体の化け物を見せないで済んだ。


「はぁ何とか誤魔化せた」

「レン君、休んでいる暇は無いわよ。急いでレンの部屋に行くわよ」

「そうだね、今思ったけど、僕部屋に転移してもヤバいよね」

「仕方ないでしょう。むやみにどこかに飛ばすよりマシよ。ファングもたまには頭を使ったわね」


 アリスはファングを関心していたが、何故か一部罵倒していた。


「アハハッ、何か余計な台詞があったけど、とりあえず急ごう。リオス、テオ行くよ」

〈了解だぜ、俺と兄さんがサクッと連れていくぜ〉

〈レン、急ごう〉 

「うん、ありがとう。アリス急いで会計お願い」

「分かっているわよ。全くファングのせいで、後半ゆっくり出来なかったわ」


 四人は急いで、リオスとテオの背中に乗って、レンの学生寮に急いでいた。


「ドックン、ドックン、ドックン」


 レンの部屋に転移された、巨大な球体細胞は再び鼓動を始め、ファングとカイトを浸食し始めていたが、ファングに刻まれた精霊印が光出すと、再び鼓動が止まって宙に浮いていた。


「うっ、ここはどこだ」


 少年が目を開けると、そこには見慣れない光景があった。


「そうだ俺は彼奴に、精霊印で飛ばされたのか、だがバカだなぁ、飛ばされた事でファングを捨てたか、これでファングの力は完全に俺の物だアハハッ」

「誰がレンに捨てられたって、よぉクライブやっと目覚めたか、待っていたぜ」


 クライブが高笑いをすると、目の前にファングの姿があった。


「何故ファングがそこにいるんだ」

「はぁお前何を言っているんだ? ようやく精神に引きずり出せたぜ。これも彼奴のお掛けだな」


 クライブは凶変していたが、ファングはレンに心から感謝していた。


「貴様、彼奴に何の命令をした」

「何故お前に教える必要があるんだ? ほら受け取れよクライブ、ここで決着を付けてやるぜ」


 ファングは空間から剣を取り出すと、クライブに渡していた。


「何故本物の剣があるんだ。ここは精神の中じゃないのか?」


 クライブは剣を見て、状況が混乱していた。


「ここは精神の中だけど、一つだけ違うぜ。ここは俺とお前の体が融合した腹の中だよ」

「はぁ、何故腹の中に剣があるんだよ」


 クライブがおかしい部分を指摘されると、ファングは言いにくかった。


「それは‥‥‥まぁお前はここでやられるから教えてやるか」


 ファングは一瞬躊躇っていたが、レン達に命令されて体を改造された事をクライブに伝えていた。


「アハハッ、マジかよ。それじゃあの違和感は、間違いじゃなかたのか」


 クライブは人間の姿になった時の事を、思い返していた。


「クライブ、今ならまだ戻れるぜ。やった事を償えば許してやる」


 ファングはレンの教えで、クライブを殺したくなかった。


「アハハッ、ファング、俺が命乞いか、ふざけるな。俺はお前を手に入れて、世界を変えるんだよ。それにレン、レンうるさいんだよ。彼奴の何処が良いんだか」


 クライブはファングに言ってはならない事を口した。


「お前、今なんて言った? レン、レンうるさいだと、クライブ、お前地獄に行けよ」


 ファングは冷酷で冷徹な表現に変わっていた。


「何だよその表情、一度も俺に見せてないだろう。お前はレンに心を奪われたのか」


 ファングがレンに取られて、クライブが怒り狂い始めていた。


「あぁ、レンは、俺に取って大丈夫な仲間だからな。それにレンに会ってから俺は変わったよ。何か彼奴といると、退屈しないんだよ、何でか分からないけど」

「そうかよ。ならお前が渡した剣で切り刻んでから改めて取り込んでやるよ」


 クライブは鞘から剣を抜くと、ファングに向かって構えた。


「そうか、残念だよクライブ、お前なら状況が読めると思ったけどな」

「俺はお前を取り込んで、最強になってやる」

「はぁ仕方ない。命乞いすれば、見逃してやったのに‥‥‥クライブさよなら」


 ファングはボソリと独り言を言っていた。


「何、独り言を言っている!」

「いや何でもないぜ、それと言い忘れたけど、この空間はただの精神世界じゃないぜ」

「何意味不明を言っているんだ。それにお前は俺には勝てない」

「それはどうかな、俺はお前が知っているファングじゃないぜ」


 ファングは鞘から剣を抜くと、クライブに向かって走り出した。


「カキン、カキン、カキン」


 激しい討ち合いが始まり、互いの剣が鳴り響いている。


「ファング、やっぱり昔と変わらないな。お前は俺には勝てない」

「まだ始まったばっかりだぜ。それに、相手の力量を見るためだよ。お前は確実に弱い」

「何だとファング!」


 ファングに挑発されて、クライブが反撃を始めた。


「どうだファング、俺は弱くない」

「そうだな、クライブは変わってないな。だからかな、お前はそれ以上成長してない。お前はそのバケモノみたいな力に頼りすぎているんだよ」


 ファングも精霊の力に頼っているが、時々レンに言われて剣の練習を怠ってなかった。クライブは剣で反撃するも、全て交わされていた。


「なぜ一発も当たらないんだ」

「クライブ、お前弱いな」


 ファングが隙を見つけて斬り込むと、クライブは倒れ込んで藻掻いていた。


「イテー、何だこれ、あぁー。ここは精神の中じゃないのか、何で血が出てないのに修復しないんだよ。それにこの痛みは何だあぁー」


 クライブの悲鳴が、精神世界に響いていた。


「立てよクライブ、簡単に倒れ込むな」

「貴様、彼奴に何の命令をした」


 クライブが怒号を鳴らしていた。


「何でいちいちお前に説明するんだ。さっき言っただろう。ここは精神世界だけど、普通じゃないと、ここは現実と重なっているんだよ。つまりお前が斬られた部分は表側で起きているんだよ。今頃、血が噴き出しているだろうな。レンに怒られるけど、精霊魔法を使えば元通りになるから別に良いけどな」

「貴様!」


 ファングの説明を聞いて、クライブは怒り狂いながら、斬りつけて来た。


「はぁ、単純だなぁクライブ」


 ファングは単純過ぎる攻撃に、失望してクライブを切り刻んでいた。


「ぐぁーファング! あぁー、イテー助けて、俺消えたくない」

 クライブはファングに八つ裂きにされて、倒れ込んでいた。

「クライブ、さよならだな」


 ファングは剣でトドメを刺そうとしている。


「まて、ファング、仲間になってやるから俺を消すな。お前には俺が必要だよな」


 クライブが突然、命乞いを始めていた。


「へぇ、都合が悪いと命乞いするんだ」

「ファング、俺を使えば最強になれるんだぞ」

「確かにそうだな。なら助けてやっても良いぜ。レンの為に尽くすなら」

「あぁ、尽くす、だから助けてくれファング」


 クライブの激変に呆れたファングだったが、レンの為に使えると思い、クライブを助けてあげようとした。


「仕方ない。ほらクライブ立てよ」

「あぁ、助かるぜファング」


 ファングはクライブに手を差し伸ばすと、クライブはファングの体に手を突き刺していた。


「グッフ、クライブ貴様」


 クライブはファングの体に入り込もうとしていた。


「アハハッ、ファングさぁ俺と一つに‥‥‥グッフ‥‥‥何だこれ何で斬られているんだ」


 クライブはファングを浸食し始めて、喜んでいた最中突然、背中から剣が突き刺さって、ファングごと貫通していた。


「残念だなクライブ。それよりも遅いぜカイト」

「カイトだと‥‥‥グッフ」


 後ろを見ると、カイトの姿があった。


「ごめん遅くなって、でも予定通りだねファング」

「あぁ、全て上手く行ったよ。アハハッ」

「そうだねファングアハハッ」

「貴様、その目は何だ」


 クライブが見ると、ファングとカイトは同じ目になって光っていた。


「アハハッ、そこにいるのは俺だぜ。なぁカイト?」

「そうだねファング、僕はカイトでファングだよ」

「貴様、まさか半身を操っているのか」

「アハハッ、今頃気付いたのか? 主導権は全て俺が管理しているから、遠隔で操るのは簡単だぜ」

「そうだねファング、僕は死んでいるも同然だから、全てファングに全権を渡しているんだよ。ファングの指示で僕は動いただけだよ」


 二人の説明を聞いて、クライブは笑っていた。


「アハハッ、俺は死ぬのか」

「そうだな。だけどお前が生きたいと思うなら、助かるかもな」

「ファングは俺にレンを尽くせと言うのか?」

「あぁ、そうだせクライブ」

「アハハッ、お前は全てレンに喰われたんだな。はぁ悪かったなファング、俺は何に焦ったのかな? この力に目指してから俺は道を外したのか?」


 クライブは、消えていく前にファングに謝っていた。


「そうかもな。だけど心を入れ替えれば、きっと精霊印を通してレンが助けてくれるよ」

「何だよそれ、精霊印助かるわけ無いだろう」

「そうかもな。カイトお前も来いよ。俺達一つになろうぜ」


 カイトはファングに言われて、体を密着させていた。


「はぁ、仕方ないな。レン君に怒られるよ」

「大丈夫だよ。カイトも入ればクライブを助けられるだろう?」

「お前、再度浸食される可能性があるのに、恐くないのか?」

「恐いぜだけど、お前を死にたく無いんだ。それにレンに怒られるからな」

「フッ、やっぱりレンが出て来るんだな。はぁ何か俺がバカバカしいよ。ファング、俺の力をやるよ。さぁ取りこめファング」

「そうだな。クライブゆっくり休めよ」


 クライブはファングに委ねると、意識を失っていた。


「カイトやるぞ」

「はいはい、終わったらレン君に伝えなよ」

「あぁそのつもりだぜカイト。レン、今戻るから、新たな力を手にして、レンは嫌だと思うけど、俺を嫌いにならいでよレン」


 ファングとカイトはクライブを包む込むと、淡い光が全身を包み込み、精神世界から姿を消していた。一方レン達は、双頭の黒竜に残って、学生寮に着いていた。


「アリス、僕は先に行くよ」


 レンは双頭の黒竜から降りると、足早に自分の部屋に向かっていた。


「はぁ、ごめんねリオス、テオ君、本来ならレン君が撫でてあげるのに」


 アリスは双頭の黒竜の頭を撫でてあげていた。


〈気にするな。レンは仲間の元に駆けつけているんだから当然だろう?〉

〈レンは、大切な仲間を失うかも知れないんだから、僕とテオを気にしている時間が勿体ないよ〉


 召喚獣が言う台詞じゃないので、アリスが驚きながら関心していた。


「はぁ、相変わらず何て賢い黒竜何だろう?」

「アリスさん、俺様達も行きますよ」

「そうね。リオス、テオ君、早く人間姿になって行くわよ」


 アリス達も急いで、レンの所に向かって行った。


「ファング、カイト!」


 レンが扉を開けると、床一面に黒い液状が飛び散っていた。


 えっ、何これ黒い血? まさか二人に何かあったの?


 黒い血を見て、レンは慌てて部屋の奥に行くと、巨大な細胞球体が宙に浮き、一部から黒い液状が噴き出していた。


「イヤー、何よこれ」


 レンの部屋に入るなり、アリスが叫んでいた。


「アリス、騒がないで見つかったら大変でしょう」

「ごめんレン君」

「それにしても凄い状態ですね」


 四人は巨大な球体細胞を見て、今の状況を把握しようとしていた。


「リオス、テオは扉の外で人が入って来ないようにして」

〈分かったよレン〉

〈任せろ、誰も近づけないぜ〉


 リオスとテオに見張りを頼んでいた。


「レン君、ファングとカイトは大丈夫なの?」


 巨大な球体細胞を見て、アリスがレンに尋ねていた。


「大丈夫だと思うけど、ファングとカイトを信じるしかないでしょう。僕達が援護するレベルじゃないよ。それに契約印が消えない限りは二人は死なないよ」


 アリスと話していると、突然巨大な球体細胞は光始めていた。


「何が起こっているんですか?」

「僕に言われても困るんだけど、多分ファングがクライブに何かしたか、或いは‥‥‥」

「レン君?」

「いや何でもないよ。ファング、カイト無事に帰って来て」


 レンは契約印に手を重ねて、強く祈っていた。やがて巨大な球体細胞は活発に動き始め、三つの鼓動を打ちながらファングの姿になっていた。


「えっ、ファングなの?」

「その声はレンなのか?」


 ファングはまだ体を形成している中、レンの声に反応していた。


「はぁ何とかやったみたいね」

「そうですね、無事でよかったです」


 三人もファングの姿を見て、ホッとしていた。


「レン、済まなかったな」


 ファングは再びレンの姿が見られたので、今にも泣きそうになっていた。


「ファング、そんな顔しないの、ファングが無事で僕は嬉しいよ」

「レーン、うっ、うぁー」

「えっ、ファング?」

「レン君離れて」


 ファングが泣き出そうとした時、背中から触手が噴き出していた。


「ファング!」

「ダメよレン君、あれは多分クライブの触手よ」

「だけど、ファングが苦しんでいるんだよ」

「だからダメよレン君、様子を見ましょう。駄目だったら精霊印を使って」


 レンはファングを助けたかったが、アリスに言われて様子を伺っていると、ファングの様子がおかしかった。


「はぁ、そこにいるのレンだな」

「まさかクライブ、ファングを返せ」


 クライブがファングの体を乗っ取っていたので、レンが憤りを見せていた。


「安心しなよ。時期に俺の肉体はフォレストに溶け込むよ。今は細胞が反発しているだけ、俺はお前に謝りたいだけだよ。本当にごめんレン、そして俺のマスター!」


 クライブが急に謝って来たので、レンは不意打ちを喰らっていた。


「ふぇ、僕のマスター?」

「そうだよ。マスター。俺はクライブであってファングだよ。それにフォレスト、良い名前だね」


 クライブの変わりように、四人は戸惑っていた。


「ちょっと、何あの変わりよう、恐いんだけど」

「またファングがカイトみたいな事をして、クライブを仲間に引きずり込んだじゃないの?」

「その可能性はありますね」

「レンお兄ちゃん、ますますフォレストが危険な存在になるよ」

「いやもうなっているよね。ファングの体から噴き出していた触手も引き始めているから」


 四人はコソコソ話しながら、ファングの姿をしたクライブを見ていた。


「はぁ、やっと一つになったな、それじゃ俺は行くよマスター。フォレストの中で俺は償いしてマスターに認めて貰うんだ」


 クライブは独り言を言うと、ファングと入れ替わっていた。


「ちょっと‥‥‥はぁファングどう言うつもり」

「レン、全て話すよ」


 入れ替わって早々、ファングは四人に説明する羽目になっていた。


「はぁ、結局仲間にしたんだ。しかもカイトと同じ手を使ったんだね」

「あぁ、クライブはもう俺の半身で俺の操り人形だよ。もうクライブは俺に逆らえないし、肉体は完全に一つになって新たなフォレストに進化したぜ。おかげでモンスター残骸まで消化してマナに変換出来るから、捨てる部分は完全になくなったぜ。凄いだろうレン」


 ファングがクライブの能力を自慢していた。


「はぁ!」

「レン、何でため息をしているんだ」


 フォレストがますます危険な存在になって、レンは頭を痛めていた。


「ねぇ、ファング。クライブはこれからどうなるの?」


 クライブの将来が気になっていた。


「多分、カイトと同じ道を行く事になるな」

「そう、クライブは抵抗しなかったの?」


 カイトと同じ道と聞いて、クライブが抵抗しなかったか確認していた。


「命乞いするまでは抵抗したけど、最後は助けてやると言ったら、何か急に態度が変わって、自分の過ちを認めていたよ」

「そうなんだ、ねぇファング、仲間にしたんだから、カイトと同様に面倒見なよ」

「大丈夫だよ。クライブの面倒はカイトに頼んであるし、今頃カイトに厳しく指導されているぜ。まぁあの空間になれるまで時間が掛かるけど、クライブなら大丈夫だろう?」


 クライブを心配していたレンだが、ファングの説明を聞いてホッとしていた。


「それよりもファング、レン君の部屋が黒い液状で満たされているんだけどどうするの?」


 二人の会話が終わった所を見計らって、アリスが黒い液状について質問していた。


「あぁ、忘れていたぜ。ほら、よっと」


 ファングが人差し指を突き出して、自分の方向に向けると黒い液状は一斉に、ファングの体に染み込むように入って行った。


「うわ、やっぱりバケモノね」

「うるさい、精霊になってから分かっているだろう?」

「でも改めて見ると、凄いわね。血液まで思いのまま操れるのね」


 アリスは進化したフォレストの能力に関心していた。


「まぁクライブの能力も加わっているからな」 

「へぇ、クライブの能力って何なの?」

「俺に聞くなよ。多分クライブはアルビィスに似ているぜ、魔神族に近いかもな」


 クライブの本来の姿は意識を失って、分からないけど雰囲気的にそんな感じがしていた。


「アリス、聞いた所で何も変わらないよ。どうせフォレストの能力扱いになるんだから」

「確かにレン君の言う通りね。ファング、クライブの能力を得たからって、あまり力に頼らないようにね。ますます魔王に成りかけているわよ」

「うるさいアリス、俺は精霊フォレストだ。見た目は魔王かも知れないけ、精霊だからな」

「はいはい、そうだわね」

「お前、絶対に信じていたいだろう」

「はぁ、ファングが戻って来て感動したと思ったらこれだよ」


 何時ものように口喧嘩が始まっているので、レンは頭を押さえていたが、見慣れた風景に安堵感があった。


「それでレン、俺がクライブの所に出かけている間、お前らは喫茶店でおいしい物食べるなよ」


 四人が喫茶店に行っていた事を恨んでいた。


「仕方ないでしょう。ファングが出掛けて行く当ても無いんだから、それにファングはクライブに乗っ取られて、おいしくモンスターを食べたんじゃないの?」


 乗っ取られていても、記憶は残っているとアリスが指摘している。


「あれは俺じゃなくてクライブだよ。確かに味の記憶はあるけど、意識は無いんだぜ」

「意識なくても、味が記憶していればそれは食べた事と変わらないでしょう。ねぇレン君」

「確かにそうだね。まぁクライブに乗っ取られていたのは仕方ないけど、食べた事に変わりはないから、お互いさまでしょう」

「うっ、それ言われると何も言えないだろう。レンは本当容赦ないぜ」


 ファングは喫茶店で、レン達が食べた物を食べようとあれこれ言ったが、レンに言われて反論出来なかった。


「さて、ファング、今日は僕の部屋にいなよ。まだ完全にクライブの肉体が混ざってないでしょう」


 ファングが時々、体を押さえ付けているのが見えたので、レンが声を掛けていた。


「すまないレン、全部見透かされているんだな」

「ファングは僕に勝った事あるの?」

「いや無いな。お前に勝てたら、今の俺がいないだろう。俺、多分一生レンに敵わないかもな」

「そんな事ないでしょう。剣術には敵わないよ」

「確かに、だけど俺を一番理解して、見ているのはお前だけだよ。だからレン、俺の前から消えるなよ、お前がなくなったら俺‥‥‥」

「はいはい、今は体の方に集中しようねファング」


 ファングは弱音を吐くと、体を押さえたまま、レンの横に寄り掛かっていた。


「はぁ、男同士で、何をしているんだか?」 

「良いじゃないですか、ファングさんはレン師匠がいないとダメ何ですから」

「ファングお兄ちゃんには、レンお兄ちゃんが必要だよ」

「それもそうね。今日は大目に見てあげるわファング。リオス、テオ君、もう良いわよ」

〈了解だぜ〉

〈今、そっちに行くね〉


 それからレンの部屋では夕方になるまで、楽しく過ごしているのだった。

次回更新は明日です。温かくお待ち下さいm(_ _)m

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