#59 リノワール王国の皇太子夫妻とカイト王子の過去
お待たせしました。第59話公開です。カイト王子の家族が登場だけど、一体クラーケンはどこに行ったの(。>ω<。)
ここからはファング=カイト、カイト=ファング、フォレスト=ファング&カイトの人物表現になります。
おかげさまでユニーク数5000人突破ありがとうございますm(__)m
助けの船に揺られて二日が経ち、無事にレイン王国に辿り着いていた。
「やっと着いたよ」
「レン君、ハシャギ過ぎると、甲板から落ちるわよ」
レン達は甲板を渡り、岸に下り立っていた。
「それじゃ、レン君。僕は先に戻らせてもらうよ。用事が済んだら、例の所に来てね。逃げるのは絶対に許さないからねファング!」
「はい、分かりました‥‥‥」
カイトと別れると、五人は自衛団本部に向かって歩いていた。
「なぁ、レン、カイトの件、断らないか」
「えっ、どうしたの? 折角フォレスの事を聞けるのに?」
ファングが嫌そうな表情をしているので、レンが疑問に感じている。
「だって、行ったら確実に彼奴とあれになるんだぞ」
人前の道通りなので、言い辛い様子だった。
「確かにそうだけど、ファングはもう受け入れたんでしょう?」
「そうなんだけど、彼奴は異常だよ。船の中でどんだけ逃げ回ったと思っているんだ。会う度に、一つになろうとか本当に王子なのか?」
この二日間、ファングは必死に逃げ回った。何故ならカイトはレンにフォレストと呼んでと頼んでいたが、断られたのでカイトは強引にファングを捕まえようとしていた。その結果、船の中ではカイトの護衛や自衛団の人達を巻き込んだ状態で、船内が荒れていた。あるときは部屋中の扉を開けて捜したり、またあるときは侵入禁止区域に入ったりして、ファングを探していた。ファングを見付けると、カイトは強引に操ろうとしていたが、ファングも同じ手には乗らないので、苛立ったカイトは王子の権限を使って、護衛や自衛団の人達も使って捕獲しようとしていが、結局ファングは捕まらず、カイトはこの二日間、ストレスが溜まっていた。
「いや、王子だよ。だけど、あの様子だとかなり苛立っているね。一回くらいやればよかったのに」
「誰がやるか、あんな人前で、あいつ、絶対に自覚ないよ。一つになることしか頭になくて周りが見えてないよ」
「仕方ないなでしょう。カイト王子はファングの半身何だから、多分ファングが嬉しいのよ」
二人の会話を聞いて、アリス達が混ざり始めていた。
「それ本当かよ。だったら気持ち悪いぜ」
「えっ、ファングさんも気持ち悪いじゃないですか、あの姿になると」
「レイス、意味が違うぞ!」
「ファングお兄ちゃんの気持ちは分かるよ。僕も兄さんに困らされるから」
「確かに、あのバカ兄にはいつも悩まされるよ」
五人は話ながら、自衛団本部に着くと先に行っていた、アルベルトが待っていた。
「やぁ、待っていたよ。クリスが客室で待っているから行こうか」
アルベルトに案内されて客室に入るとクリスが出迎えていた。
「やぁ、君達、無事だったんだね」
「はい、おかげさまで何とか‥‥‥」
クリスは五人に労いの言葉を掛けた後、本題に入っていた。
「そうですか、僕達が戻る間もクラーケンの被害があったんですね」
「あぁ、そうだよ。しかも、現れる間隔がだんだん短くなっているんだよ」
クリスの説明によると、クラーケンの出現率がここ最近増えていて、しかもレイン王国のかなり近い近海まで姿を見せていることに五人は驚きを隠せなかった。
「それだと、早急に対策を練る必要がありますね。もしかしたらこの場所も危ないかも知れません」
「それはどう言う意味だ」
レン達は遺跡で見た壁画の事を説明すると、クリスは驚きを隠せなかった。
「なっ、もしその壁画に描かれている伝承が本当なら大変だぞ! アルベルトも聞いたよな。これは一大事だ」
「あぁ、分かっているよ。早急に部隊編成とギルドの人達に声を掛けておくよ」
アルベルトは険しい表情で自衛団本部の奥に消えていった。
「こんな事を言える立場ではないんだけど、レン達も手伝って貰えるのかな?」
「良いですよ、どの道、倒さないと僕達は帰れませんから」
「すまないな、私は国王達とまた話して見るよ。もし本当に起こる事なら、必ず王国の部隊を出してくれるハズだから」
クリスとの話が終わると、クリスは足早に執務室に入り、レン達は自衛団本部の外に出ていた。
「何か大変な事になって来たわね。私達大丈夫なのかしら」
「珍しく、弱音を吐くなアリス」
「仕方ないでしょう。相手はあのクラーケンなのよ」
「確かにそうだけどよ。まだ来ると決まった分けじゃないぜ」
「そうだね、だけど、早めに対策はした方が良いよね。僕達も早く用事を終わらせて、準備をしよう」
五人はクラーケン討伐の作戦を練るため、早くカイト王子の用事を済ませようと指定された場所に来ていた。
「うぁ、さすが王国の皇太子夫妻が泊まる部屋に相応しいわね」
アリスが豪華な宿を見ていた。
「ここは貴族以上の宿だから、仕方ないね」
五人が豪華なホテルを見ていると、玄関口からカイトが手を振っていた。
「オーイ、待っていたよ。それじゃ行こうか」
五人はカイトに案内されていた。
「カイト王子、護衛の人が見当たらないんですけど」
普段なら護衛の人達が案内するのに何故かカイトが案内しているので疑問に思っていた。
「カイトで良いよ、レン君。この上の階は全て人払いしてあるよ。それにここは、皇太子夫妻が泊まる場所じゃないから、今回の話で用意した部屋だからね。それに僕の正体を他の人に見られると困るでしょう?」
「はぁ、お気遣いありがとうございます」
カイトの大胆さに、驚かされて声も出なかった。
「それで、ファング。僕は話の途中で一つになるかも知れないから、その時はよろしくね」
「あぁ、分かっているよ。姿を家族に見せるんだろう」
「ありがとう。それでアリスさん達は楽に聞いていれば大丈夫ですからね」
「はい、大丈夫です。私達三人は特に聞く事はないので」
五人はカイトの家族がいる扉の前に来ていた。
「父上、母上、例の人達を連れて来ました」
「その声はカイトかぁ、さぁ、中に入れ」
父親の声が聞こえるとカイトが先に入り、後からレン達が入って行った。
「父上、母上、私が言った人達を連れて来ました」
「何かカイト、雰囲気変わってないか?」
「しっ、当たり前でしょう。一応王族何だから、気品に掛けていたらおかしいでしょう」
ファングが小さな声で言うので、レンが慌てて静かにさせていた。
「銀髪の君がレン・フォワード君かな?」
「はい、お初にかかります。私はリノワール王国出身のレン・フォワードです」
「よい、顔を上げなさい。こちらのソファーに座りなさい。君達も後ろの椅子に座りなさい」
カイトの父親が言うと、レンとアリス達はそれぞれの椅子に座っていた。
「それじゃ、改めて私の家族を紹介するねレン君。君の左側が私の父上、アレクス・リノワールで第一王子で、左側が母上のマケイン・リノワール第一王女だよ。そして僕が第二王子のカイト・リノワールだよ」
カイトが家族の紹介をしていた。
「しかし、カイトから聞いていたが、本当に子供なんだな」
「カイト、本当にこの子にするのですか?」
自己紹介が終わった途端、家族が心配そうにカイトに尋ねていた。
「はい、父上、母上、僕はもう決めましたから、それに彼と契約しました」
カイトが家族に向かって契約したと言うと驚いた表情をしていた。
「カイト、私の許可なしに契約したのか?」
「はい、もう決めましたから」
「はぁ、何ってこった、こんな子供に私の子を託すのか」
「大丈夫よアレクス。カイトが決めた人何だから、カイトを信じましょう」
カイトが勝手に契約をしていたので、父親がうな垂れていた。
「すみません、僕がカイトの事を知らずに契約してしまって」
「いや、君は悪くないよ。多分カイトは一度決めた事は絶対にやるから、おそらく強引に迫られたんでしょう?」
「えっ、まぁ‥‥‥」
契約するまでの出来事を話すと、アレクスはカイトに怒っていた。
「お前はこの子の気持ちや将来を考えないで契約をしたのか」
「良いでしょう。僕が決める事何だから、父上は黙って、誰のせいでこうなったの?」
「それは‥‥‥」
「二人共、喧嘩は止めなさいお客さんがいるんですよ。すみませんね、見苦しい所を見せて」
「はぁ」
マケインが喧嘩を止めるとカイトとアレクスの間に亀裂が生じていた。
「本当に見苦しい所を見せてすみませんね」
「いえ、大丈夫ですよ」
カイトはアレクスを睨んでいたが、カイトが口を開けた。
「父上、僕は喧嘩するためにレン君達を呼んだんじゃないんですよ。フォレスの事を教えて下さい」
「お前、何故急にそれを」
精霊フォレスの事を聞かれたので、アレクスが戸惑っていた。
「何故? それはフォレスの半身を見つけたからですよ」
「何だと、まさかこの仲間にお前の半身がいるのか」
フォレスの言葉に過剰に反応しているので、ファングが声を掛けていた。
「アレクス皇太子殿下、フォレスの事を知っているのなら全て話してくれませんか」
「まぁ、ファングがまじめに貴族らしく振る舞っているわ」
隣で見ていたアリス達がファングの丁寧さに驚いていた。
「何だね、君は? 今はレン・フォワードと私の息子と話しているんだ。部外者は喋らないでくれ」
「何だと!」
「ファング、落ち着きなさい。今は我慢よ」
アレクスに部外者扱いされて、ファングがキレそうになっていた所をアリス達が強引に抑え込んでいた。
「すみません、アレクス皇太子殿下?」
「何だね、レン・フォワード君」
「今、喋った彼がカイト王子の半身ですよ」
「何だと!」
レンが手を上げて、ファングが半身だと告げるとアレクスは驚きを隠せなかった。
「お前、名を何と申す」
「俺はファング・ドレッド、リズワール王国出身で貴族騎士の三男だよ」
「まさか、こんな子供がしかも、荒い性格がカイトの半身なのか?」
「てめえ‥‥‥」
「父上、これは私が決めたんですから、口出ししないで下さい」
ファングはキレそうだったが、カイトがうまく交わしてくれた。
「まぁ、良い。なら証拠を見せなさい。本当に半身なら完全なフォレスの姿になるだろう?」
「分かりました父上、今やって見せますよ。ファング君、やりましょう」
「あぁ、そうだなガツンと言わせてやるぜ、レン頼むぜ」
「うん、分かったよ」
アレクスは未だにカイトが言っていることが信じられず、絶対になる事が出来ない、精霊フォレスを要求していた。ファングとカイトはその言葉を待っていたとばかりに、レンを見つめてフォレストと叫ぶと、二人は一つの姿になり、アレクスとマケインの目の前に見せていた。
「ばかな、本当に精霊フォレスなのか?」
「アレクス、私のカイトは無事なの?」
精霊フォレスの姿をした、ファングとカイトを見て、恐怖感を漂わせていた。
「はぁ、大丈夫ですよ。アレクス皇太子殿下、マケイン皇太子妃、彼らは異様な空間を放っていますけど、危害を加えたりしません。フォレスト、僕の横に来て、喋って」
レンが命令すると、ファングとカイトはレンの横に来ていた。
「父上、母上、これが私の本当の姿です」
「おぉ、素晴らしい。カイト、私のもとに来なさい」
「はぁ、誰がそっち行くんだよ」
「何故、人格が二つあるんだ。カイトを返せ」
カイトからファングに変わったので、憤りを隠せなかった。
「父上、私とファング君は別々の存在ですよ。それに私はレン君の精霊ですから、その命令は聞けません」
「カイト、私に逆らうのか」
カイトを利用しようと企んでいたので、カイトが止めていた。
「はい、父上は私を利用したいだけですよね。だけど、父上は精霊使いではないです。もしレン君を捕らえるのなら私は躊躇わず、父上を食べます」
「カイト、その姿になって本性を出したか」
カイトは化け物の姿に変わった途端、態度が違っていたので、アレクスは驚きを隠せなかった。
「父上、私はもう全てを捨てるのです。母上も私のありのままを見て下さい。僕は自由に生きます」
「カイト、喋り方が違うけど良いのか?」
突然、喋り方を変えていたのでファングが驚いていた。
「はい、これが僕ですから、これからは一人の少年で見て欲しいです」
「そうか、からかって悪かったな、カイトの熱意は伝わった。だが、お前は私の息子には代わりはないんだ。困ったらいつでも言いなさい」
「カイト、あなたが着ている王族の服は私達の形見として持ちなさい。私達はカイトの味方よ。他の王族達が何をいようと私達が守るわ」
「ありがとう父上、母上、僕はこれからファングとして生きていますけど、消えたりはしないので、そこは安心して下さい」
カイトはアレクスとマケインに感謝していた。
「レン・フォワード君、私の息子をよろしく頼むよ。彼は長い間、王族にいたから庶民的な事には乏しいと思うがよろしく」
「カイト、しっかりレンさんの為に尽くしなさいよ。あなたは精霊何だから」
「はい、父上、母上、僕はレン君の為にこの命を尽くします」
ことがポンポンとスムーズに進むので、レンは一人に悩んでいた。
何か話が簡単に進んでない? カイト、事前に話しているよね。
レンは一人頭を押さえていた。
「それでフォレスの事を聞きたいんだな」
「あぁ、そうだよ。さっさと教えろ」
「ファング、失礼でしょう」
「アハハッ、良いよ。カイトの半身だから、聞く資格はあるし、それに彼が半身にさせた責任があるかね。それじゃ話そうか」
アレクスはレン達に精霊フォレスが何故、ファングとカイトを選んだのか話していた。
「父上、今日はどこに修行に行きますか?」
話は今から四年前に逆戻る。
「カイト、熱心過ぎではないか?」
「私は早く一人前の王族騎士になりたいんです」
王室で休んでいるアレクスに頼んでいた。
「修行するのは構わないが、お前はまだ子供何だぞ」
「良いじゃないですか、カイトがこの国を指揮する、将軍になるんですから」
「確かにそうだが、そこまで頑張る必要は」
カイトが熱心にやっているので、アレクスは悩んでいた。
「父上、私は早く、父上の助けをしたいんです」
「分かった、なら、リノワールとリズワールの中間にある洞窟に行こうか」
アレクスはあまり熱心ではなかったが、カイトの熱意に負けて、洞窟にやって来ていた。
「カイト、ここにはウッドスネークが大量に生息する洞窟だ。あまり危険ではないから、良い修行になるだろう」
「はい、分かりました。それでは、私は行きます」
「こら、早く先に行くな」
カイトは剣を構えると、アレクスを置いて先に走って行った。
「はっ、とぁ、やっ、ふぅ、父上どうですか?」
「大したもんだ。あの数を一度に倒すなんて」
カイトの剣捌きに魅了されていた。
「ありがとうございます父上、だけど、もう少し強い相手と戦いたかったですね」
「それだけ熟せれば充分だよ。さぁ帰ろうか」
「はい、父上」
修行を終えて、リノワール王国の王城に戻ろうとした時、出入り口の方から声が響いていた。
「グアアア」
「何だ、今の声は」
「父上、あれを」
「あれは、マッドベア、何故ここに」
カイトとアレクスが通って来た方を見るとそこには巨大な熊がいた。
「グフ!」
「カイト、しっかりしろ」
カイトはマッドベアの攻撃を直に受けて、倒れていた。
「お前の相手はこの私だ、息子にはこれ以上やらせはしない」
アレクスはマッドベアに必死に戦っていたが、投げ飛ばされていた。
「くっ、カイト‥‥‥! うん、ここに石碑だとしかも、さっきの衝撃で壊れたのか」
アレクスがぶつかった所には石碑があり、今は砕けていた。
「てっ、こんな事をしている場合じゃない、カイト」
【クククッ、やっと我がこの地に復活出来たよ、感謝するよ人間】
「誰だ、姿を表せ」
【クククッ、良いだろう、復活したお礼だ】
「何だあれは、お前は何者だ」
謎の声が聞こえ、姿を見せるとそこには白と黒の体をした化け物がいた。
【クククッ、我は光と闇を司る精霊フォレス、精霊王に封印されていたが、お前のおかげで復活した感謝するよ】
「お前、精霊なのか? なら、私の息子を助けてくれ」
アレクスは精霊フォレスに頼むと、精霊フォレスは笑っていた。
【クククッ、アハハッ】
「何がおかしい」
【良いだろう、助けてやるよ】
精霊フォレスは不気味な高笑いをすると、マッドベアを一瞬にして白と黒の体で包み込むと、マッドベアは消えていた。
「お前、何をした」
【何? 我はさっきのモンスターを食べただけだ。ぺっ】
「何だと」
精霊フォレスは一瞬にしてマッドベアを体内に入れると残骸だけ吐き捨てていたので、アレクスは驚いていた。
「父上、この化け物は父上が呼んだのですか?」
倒れていた、カイトが目覚めて、アレクスの所に来ていた。
「カイト、無事だったかぁ‥‥‥! 何をする」
アレクスがカイトに近付こうとしたら、精霊フォレスに遮られていた。
【クククッ、お前、良い体をしているな。その体を我に寄こせ】
「貴様、それでも精霊なのか?」
【クククッ、人間、誰もが善良な精霊だと思うな。我を封印した精霊王を消すために、我は人間と一体化した半精霊になって、この世界を支配してやる。そして我は人間に化けた精霊としてこの世界の王になるのだ】
精霊フォレスはカイトに向かって、一つになろうとしていた。
「やめろ、カイトに近付くな」
【クククッ、その程度の攻撃など、我に効かぬはわ。さぁ、その体を寄こ‥‥‥クククッ、アハハッ、もう一人、近くに若い体があるのか、なら貴様には我の半分、光を与え、もう一人には闇を与えてやろう。そうすればいずれ二人は一つになり魔力量を膨大に持つ、新たな我が復活するアハハッ】
「お前の言いなりになるか」
【ほう、威勢が良いな小僧、ならその体を寄こせ】
「クッ、うぁああ」
「カイト! やめるんだ」
精霊フォレスは白と黒の体を分離させると、白い球体がカイトを襲い、黒い球体が出口の方に向かって飛んで行った。
【クククッ、アハハッ、素晴らしい体だ。魔力量も相当ある。このまま成長すれば、あの精霊王に勝てる】
「カイトを返せ」
【クククッ、カイトはここにいるだろう? 我をカイトと見ろ人間、いや父上かな】
「貴様、カイトの体を使って」
カイトの体は精霊フォレスに乗っ取られていた。
あれ、僕は死んだのか? 父上、母上、僕は‥‥‥。
カイトは精霊フォレスに呑み込まれた事を振り返っていた。
あれっ、父上の声が聞こえるよ。
何か薄明かりから声が響いていた。
そうだよ、僕はまだ死んでない。父上、今助けます。
カイトはアレクスの声を頼りに、意識の中の光に手を伸ばして、何とかフォレスを自分に取り込もうとしていた。
【うっ、何だこれは、何故体が言うことを効かない】
「これは僕の体だ。お前にはやらない」
【クッ、貴様、おとなしく我に取り込まれれば良いことを】
「カイト!」
「父上、大丈夫です。僕は負けたりしません」
【クッ、やめろ。我の意識が消えていくだと、貴様まぁ‥‥‥】
精霊フォレスはカイトに取り込まれ、精霊フォレスの意識は完全に消滅していた。
「カイト、大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です父上。だけど、体が何か変です」
「何だ、その髪と目は、それとその体は‥‥‥」
カイトの形見はさほど変わらないが、色が劇的に変化していた。
「父上、私は‥‥‥」
「カイト、何も言うな。お前の事は私にませろ。お前は何も心配するな」
カイトは優しく撫でるとリノワール王国に戻っていた。しかし、リノワール王国に戻ったカイトはその後、王族から嫌われる立場に立たされる事になったのである。
「これが真実だよ」
「そうか、アレクス皇太子殿下が石碑を壊した事で精霊フォレスが復活したんだな」
アレクスの説明を聞いて、ファングが納得していた。
「それじゃ、精霊フォレスは精霊王の復讐の為にやったんですね」
「あぁ、そうだよ」
「だけど、何で精霊フォレスは封印されていたんだ?」
ファングは精霊フォレスが封印されていた理由が気になっていた。
「さぁ、知らないよ。過去に何かあったみたいだけど、その精霊はもう存在しないし、今はファングとカイトが後を引き継いだ善良の精霊何だから良いでしょう?」
「まぁ、確かに、それにフォレスの事を知れたから良いかな!」
とりあえず精霊フォレスの事が聞けたので、これ以上は聞くことはなかった。
「それじゃ、僕達は戻ろうか、ファング、カイト、分離! そしてカイトは家族と少し過ごしてから来なよ。君はもう家族に会えなくなるんだから」
「うん、分かったよ」
ファングとカイトが分離して、元に戻っていた。
「それじゃ、アレクス皇太子殿下、マケイン皇太子妃、僕達は戻ります。カイトは家族と話したら、ファングの魔力を頼りに来なよ」
「うん、分かったよレン君」
「すまないね。カイトと話す機会をくれて」
「レンさん、息子をよろしく頼みますよ」
「はい、分かりました」
レン達はカイト、アレクス、マケインに見送られると宿に向かって歩いていった。
「カイト、これからあの子に尽くすけどやっていけるのか?」
「うん、大丈夫だよ父上。僕が選んだ人だから」
「あなた、カイトはあらゆる物を見通す力があるんですから大丈夫よ。カイトに間違いはないわ」
「あぁ、そうだな。それでカイト、本当に学園を辞めるのか、レン・フォワード君に頼べば、学園生活も出来ると思うが」
アレクスはカイトの学園生活を気にしていた。
「いえ、未練を残すとレン君を困らせるので、それに僕はファングとして生きるので」
「そうか、分かったよ。学園の方は手続きしておくよ」
「ありがとうございます父上。多分学園の方は混乱すると思いますがよろしくお願いします。それで父上、母上、一つだけ僕の頼みを聞いて貰えますか?」
学園の話が終わり、カイトがアレクスとマケインに頼みごとをすると驚いていた。
「えっ、カイト、今なんて言った?」
「だから、家具を僕の体に入れたいんですよ」
「カイト、正気なの? 家具を体に入れるなんて」
カイトの意味深な発言にアレクスとマケインが戸惑っていた。
「僕は正気です。ファングと一つになった時に体の一部に家具があったんですよ。ファングに聞くとレン君達の秘密の空間って言っていました」
ファングと一つになると全て共有するので、ファングが取り込んだ物が全て分かった。
「そうか、確かにフォレスの力を使えば何でも出来そうだ。分かった、それじゃ、今から家具を買い占めよう。ここなら、色々あるしな」
「そうね、折角息子をレンさんに引き取って貰うんだから、多少のお礼はしないとね」
「ありがとう、父上、母上」
「でも、買うのは良いが、どうやって体内に入れるんだ? 人前で見られるとまずいだろう?」
「それは大丈夫です。空間魔法の要領でやればバレません」
カイトは大丈夫と言うと、アレクスとマケインは若干不安な表情を見せたが、彼の熱意に答えてあげる為に、夕暮れの街中を馬車で移動しようとしていた。
「はぁ、疲れた。クラーケンの話は明日で良い?」
「そうね、カイト王子の話で疲れた気分だわ」
五人は夕食を取り終えて、部屋で寛いでいた。
「それにしても、ファングさんは大丈夫何ですかね?」
「ファングお兄ちゃん、かなり辛そうだったよ」
「多分、食べ物が当たったんでしょう」
ファングは夕食中に腹痛を起こしていた。
「でも、かなり苦しそうな表情していたよ。急に、お腹の調子が悪くなったし」
「まぁ、暫くすればトイレから戻るでしょう」
ファングの事を心配して話していると、顔色が悪いファングが戻ってきた。
「ファング、大丈夫なの?」
「俺が大丈夫に見えるか、精霊の力を使って、一生懸命体内から排泄しようとしても出ないんだよ。うっ、まただ、イテー、何なんだよ、一体」
腹痛の原因も分からず、ファングはレンの近くで倒れ込み、お腹を押さえていた。
「ファング、ちょっとお腹見せて、触って良い?」
「えっ、別に良いけど、あまり押すなよ。マジで痛いんだから」
レンはファングのお腹を優しく触って確認していたが、特に変わった様子はなかった。
「うーん、特に変わった所はないね」
「多分、食べ物が当たったんでしょう?」
アリスがスパッと食べ物で解決しようとしたらファングに否定された。
「そんな分けないだろう? 俺の体はあらゆる物を吸収するんだぞ」
ファングの体は精霊なので、食中毒を起こすのは考えにくいと言っている。
「分からないわよ。精霊だけに起こる、有害物質かも知れないし」
「えっ、そうなのか? うっ、ダメだマジで死にそう。レンの所で横になって良いか?」
「うん、良いよ」
アリスと話していたが、腹痛が治まらず、レンの隣で横になっていた。
「それにしても心配だわ」
「そうだね。このままだと寝られないよ」
「悪い皆、俺のせいで」
「ファングさんは悪くないですよ。腹痛は誰でも起きますから」
「ファングお兄ちゃん、無理しないで横になっていて」
四人がファングを心配していると、扉を叩く音が聞こえた。
「すみませーん、レンさんにお客様ですよ」
扉を開けると宿の娘ナンシーがいた。
「僕にお客ですか?」
「はい、それもかなり身分の高い人が来ていますよ?」
「分かりました、今行きますね」
ナンシーはお客様がいる方に戻って行った。
「レン、俺も連れて行け。多分、あいつが来たんだろう?」
「ファング、その体じゃ無理よ」
ファングは腹痛でお腹を押さえていたが連れて行けと言っている。
「大丈夫だよ。それに俺の直感だけど、あいつが俺の体に何かしたに違いない。あいつと俺は繋がっているから、原因があるとすればあの王子しかいない」
ファングとカイトの体は常に繋がっているので、カイトに原因があると考えていた。
「はぁ、分かったよ。ファングは僕が連れて行くから、三人は待っていて」
「分かったわ、気をつけてよ。ファング、レン君に迷惑掛けないようにね」
「あぁ、分かったよ。すまないレン、肩を借りて」
ファングはレンに支えられながら、お客が待っている受付前に来ていた。
「やぁ、レン、ファング君、待っていたよ」
「カイト、お前、顔色が悪いけど大丈夫かぁ」
カイトの顔色が優れないのでファングが聞いていた。
「大丈夫だよ。そい言うファングは何か苦しそうな感じだね」
「まぁな、ちょっと食あたりしただけだよ」
「それなら良いけど、レン、ファング君、少し外に行かないか、僕のあれもあるから」
「分かりました。ナンシーさん、僕達はちょっと宿を出ますので、外に出ても大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。ですが早めに戻って来て下さいね。戸締まりがありますので」
ナンシーに確認した後、三人は外に出て人目がない場所に移動していた。
「ふぅ、ここまで来れば大丈夫かな、うっ、ちょっと頑張り過ぎたかな」
人目がない場所で安心したのか、カイトが急にお腹を押さえていた。
「えっ、カイトも腹痛なの?」
「いや、違うよ。僕とファングが腹痛なのは体内に大量の家具が入っているからだよ」
「なっ、カイトどう言う事だ」
ファングは切れ気味にカイトに尋ねると全て話していた。
「はぁ、お前って奴は、俺に内緒でやったのか」
「うん、ごめん。レン君の為にちょっと頑張っちゃった」
「それじゃ、ファングの腹痛の原因は家具なんだね」
「うん、そうだよ。まだ配置を決めてないから、体内でずさんに転がって、腹痛を起こしているんだよ。僕が排泄しないように、うまくコントロールしていたから」
「お前のせいで、皆に心配掛けたんだからな」
「ごめんファング謝るよ。僕と一つになれば、体内の面積は倍になるから、腹痛も消えるよ」
「はぁ、結局一つになりたいだけだよな。まぁ、いずれ家具は揃えるつもりだったから、感謝するよカイト」
全ての原因がカイトにあることが分かりファングはホッとしていた。ファングはカイトと一つなること、腹痛は消えていた。
「ファング、もう大丈夫なの?」
「あぁ、カイトと一つなったら嘘のように痛みが引いたよ。あいつもちゃんとここにいるしなカイト」
ファングは声を掛けながらお腹を軽くさすると、一瞬お腹を突き上げて、カイトがいる証拠を見せていた。
「なら良いけど、カイト、これから宜しくね。本当に合図してくれるんだね」
レンがファングのお腹に触れるとカイトがお腹を突き上げて、応えていた。
「まぁ、あいつは表に出る事はあまりないと思うけど、お前がカイトに会いたいなら、いつでも会えるぜ。人格を入れ替えたり、体内に入れば会えるからな」
「うん、そうだね。だけど基本的に呼ぶ機会はあまりないかも、戦闘がない限り」
「そんな寂しい事を言うなよ。時々、体内に入ってあってやれよ」
ファングはカイトを気遣っていたが、レンはその内と言っていた。二人はアリス達の所に戻ると全て話していた。
「そうなんだ。まぁファングが元気になってよかったわ」
「本当だぜ。あのままだったら、お前に迷惑を掛けるしな」
四人はファングが元気になってよかったと思っていた。
「それじゃ、ファングも元気になったし、さっさと整理して寝ましょうか」
「そうだね、ファング、僕達を中に入れてよ」
「えっ、今からやるのか、レンは早く寝ろよ」
「ファングさん、僕達は明日から使う予定なんだから、さっさと終わらせましょう」
「ファングお兄ちゃん、レンお兄ちゃんを困らせない」
「うっ、分かったよ。やれば良いんだろう」
四人はフォレストの体内に入り、ファングとカイトにテキパキ指示を出して家具を整理していた。
「ほら、さっさとやるのよ、黒ファング、白カイト」
「鬼だよ。俺とカイトは道具じゃないよ。それに俺とカイトを変な名前で呼ぶな。普通に呼べよ」
「そうだね、だけどレン君達の為に頑張ろうファング」
「はぁ、そうだな」
ファングとカイトはアリスの指示で家具を大量の触手使って運んでいた。やがて、全て運び終えると部屋は見違えるほどに豪華になっていた。
「うぁ、凄いよ。ファング、カイト、まるでお金持ちの部屋だよ」
「お前は、ただ見ていただけだろう。全て俺とカイトだけとかおかしいだろうアリス!」
「だって、ここは二人の体でしょう? なら自由に触手を伸ばして、運べるでしょう? 私達に重いものを持たせるの」
「お前、強引過ぎるだろう」
「何か言ったファング!」
「いえ何でも」
「アリスさんを怒らせると結構恐いですね」
「あぁ、そうだよ。お前も気をつけろ」
カイトはアリスの怒った顔を見て、若干怯えていた。
「でも改めて見ると凄いわね。さすがは王子だけはあるわね。本当にこれを私達が使っていいの?」
「はい、大丈夫ですよ。これは父上と母上の贈り物ですから」
家具などを一通り確認すると、レン達はフォレストの体内から出ていた。五人はベッドに入るとそれぞれ眠りに入っていった。
次回更新は明日です。温かくお待ち下さい。次回更新から第5章第3節クライマックスです(。>ω<。)




