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異世界転生したらヒロインや仲間が最強すぎて、なぜか護られています!  作者: 緑青白桃漠
第5章 長い夏季休暇中に巻き起こる冒険と新たな事件 第3節 遭難と海に棲む巨大な魔物の討伐
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#55 島の生活に飽きたレンと反乱の遭難者達

お待たせしました。第55話公開です。レン君の島での生活が長期化するなか、早くも挫折気味ですね、どうするレン君とファング(。>ω<。)

 アリス達と離れ、島での生活から早くも一週間以上が経とうとしていた。二人は日ごとに場所を移動しながら、早朝の森の中で喧嘩みたいな騒動になっている。


「レン、頼むから食べてくれよ」

「もう、いや、この生活から抜けたい」


 レンは遭難者の男性達より、まともな食事をしているが、一週間以上同じ物で、しかも調味料が塩だけだった。


「そんな事を言われても仕方ないだろう」

「ファングが全部食べれば良いよ」

「俺よりもお前が優先だろう。俺とお前は体の構造が違うんだから、何か食べないと、本当に栄養失調で死ぬぞ」


 最初の頃は、美味しく食べられたが日を増す毎に食欲がなくなっていた。


「だって、もうこの味に飽きたんだよ。調理方法も同じだし」


 調理方法はただ焼くだけのシンプルなメニューなので、食べた時の食感が同じだった。


「仕方ないだろう。調理器具とかないんだから、あればもう少しメニューにバリエーションが増えて、飽きなくなるハズだぜ」

「ないから言っているんだよね? あれば言わないよ」

「うっ、そうだけど、とりあえず食べてよ。本当、頼むから」


 ファングはレンに促していたが、食事する気配を感じなかった。


「ごちそうさま、あとはファングが食べて良いよ」

「はぁ、レンごめん」

「なっ、ファングこれはどういう事なの」


 ファングは精霊の力で影から黒い手を出し、レンを押さえ付けていた。


「悪いな。お前があまり食べてないから拘束さて貰うよ」

「ファング、やめて、これは犯罪だよ」

「何とでも言って良いよ、これはお前の為なんだから」

「これのどこが僕の為なの、拘束とかおかしいよね」

「安心しな、今から、俺が補助してやるから、ここにある物を食べようね」

「ファング、一体何をするつもりなの、僕はもうお腹いっぱいだよ」

「嘘を付くなよ。お前とは入学式からずっと付き合っているんだぞ! お前の食事量は見ているんだからな」

「うっ、確かに」


 レンとファングは入学式からずっと一緒に行動しているので、レンが食事して食べた量を知っていた。ファングはレンの影に近付くと、ファングの体は黒い液状になり、レンの影に溶け込んでいた。


 なっ、何で勝手に体が動くの?


 ファングがレンの影に溶け込んでいた途端、レンの体は操られていた。


「ファング、やめて、これは命令だよ」


 レンはファングに命令したが、無反応だった。


 ファングが僕に反抗するなんて初めてだよ。僕の事をかなり心配しているんだね。だけど、もう食べたくない。


 ファングの気持ちは分かっていたが、レンはこれ以上食事をしたくない為、必死に抵抗していた。しかしファングはレンの体を動かし続けて、食事していた所に歩かされると、焼けた魚を手にしていた。


「いや、ファングやめて、僕は食べたくないよ。本当にお腹がいっぱいなの」


 ファングに体を動かされて、魚を口に持っていこうとしていた。


「嘘をつくな。俺がお前の食事量を知らないと思っているのか? 良いから食べろ。俺が手伝ってやるから」

「いや、ガブリ、モグモグ、ゴックン、ガブリ、モグモグ、ゴックン、はぁ、はぁ」

「ほら、食べれただろう」

「いや、ファングが僕の体を操っているからだよね。もう良いよね。食べたから」

「ダメだよ。まだ残っているよねレン」

「ファング、やめて本当に頼むから、やめてファング!」


 ファングに無理やり食べさせられて、食事が終わるとレンは木に手を当てて、死にそうな表情をしていた。


「まじで、もう嫌なんだけど」

「レン、よく食べたな、これは俺が貰うぜ」


 ファングはレンが食べられない、魚の頭の部分などを食べて魔力の回復をしていた。


「ファングは良く食べるよね。まぁ、人間でなくなったから当然かぁ」

「お前、俺に対する嫌みか、この姿だとちゃんと味覚があるよ。毎日毎日、同じだとさすがの俺も飽きるぜ」

「本当、かなぁ」

「何だよ、その疑いの目は」


 レンはファングの発言を疑っていた。


「まぁ良いけど」

「良くないだろう、何でいつも逃げるんだよ」

「さぁ、行こうか」

「はぁ、分かったよ。たまには俺の事を信じて欲しいよ」


 ファングはレンの態度に呆れていが、二人は森の中を移動していた。


「なぁ、レン、今日はどこまで移動するんだ」

「アクト達の話だと、近くアリス達が来るみたいだから、海の方に行こうかと」


 アクト達が自衛団を引き連れて、レン達の捜索を始めたので、船が見える位置に移動しようと考えていた。


「そうだったな、もう直ぐ、こんな生活とおさらばだな」


 レンの辛い表情をこれ以上見たくないので早く迎えが来ないか待ち遠しかった。


「そうだね、ところでファングは最近、僕よりあまり食べてないけど、何でいつも元気なの?」

「ドッキ!」

「ドッキ? 何か僕に隠しているのファング?」


 ファングは未だに、遭難者の男性達から魔力を摂取していることをレンは知らなかった。


「隠している分けないだろう、俺とレンはずっと行動しているんだぞ、俺の中にいるときも食べ物など入って来なかっただろう」

「確かに、じゃあ何でそんなに元気なの?」

「そんなの、お前が少しずつ、もとの状態に戻っているからだよ」


 ファングは誤魔化そうと、レンに抱き付いて、わざと泣きそうな表情を演出していた。


「分かったから、抱き付かないで。ファングは僕とずっといたから、大丈夫だと思うけれど、もう隠し事みたいな表情はやめてよね」

「うん、分かったよレン」

「だから抱き付かないで」


 ファングは何とか誤魔化せてホッとしていた。


 まずいな、レンにバレたかなぁ。あぁ死にたい。俺を捨てたりしないよね。


 レンは、何事もなかった用にしていたが、ファングの心臓はバクバクだった。


 彼奴らの魔力を奪うのは今日で終わりにするか。


 これ以上やって、レンにバレると大変なので、今夜が最後の魔力摂取にしようと考えていた。


 まぁ、アリス達が近く迎えに来るから、もう十分だな。最後は死なない程度に魔力を全て奪ってやる。


 遭難者の男性達の末路何か気にしないファングは、レンに見えないように、不敵な笑みをしていた。


【ファング、お前、精霊の能力を使って何かやっているだろう。毎朝、お前のマナが増えているんだよ】


 ファングが不敵な笑みをしているので、アクトが声を掛けていた。


「何だよアクト、別に良いだろう俺が何しようと、レンに言ったら殺すぞ」


 アクトがレンにチクらない用に圧を掛けていた。


【言わないけど、あまり使わない方が良いぞ! お前はもう隠し事が出来ないんだよな。もしバレたら、お前はレンに契約破棄されるぞ】


 ファングがまた余計な事をしているので、心配していた。


「分かっているから、こうしてお前に頼んでいるんだろう。アクト、言ったら分かっているだろうな?」

【はぁ、分かったよ。お前は精霊の力に目覚めてから変わったな。まるで闇の精霊だよ。本当にお前は光と闇を司る精霊なのか?】


 闇系の力しか使っていないので疑っていた。


「俺は光と闇を司る精霊だよ。ちゃんとフォレスから聞いたから、それに光系も使えるぜ」


 ファングを乗っ取ろうとした精霊が言っていたので、ファングは光と闇を司る精霊と信じていた。


【なら良いんだけど、お前が闇系の力しか使っていないから、俺達はお前を疑っているんだぞ】

「それは悪かったな。なるべく気を付けるよ」


 精霊三人はファングの事を疑っていたが、レンの大事な仲間なのでなるべく信じようとしていた。


「お前ら、まだ生きていたのか」

「うん、お前らは!」

「こんにちは、そちらも無事みたいですね」


 森の中を歩いていると偶然、遭難者の男性達に出くわしていた。


「まさか、生きているなんて驚きだぜ。しかも、体が痩せ細っていないな。どうやって食料を手に入れている」

「はぁ、お前らに答える分けないだろう」


 一人の男性が声を掛けるので、ファングはレンの前に立ち睨み付けていた。


「まぁ、良いけど。その様子だと、食事に飽きたみたいだな」

「それはどうも、あなた達も顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」


 遭難者の男性達を見ると、朝から疲れた表情をしていた。


「こんなの問題ない。ずっと食料を探して動いているから、疲れが出たんだよ」


 遭難者の男性達はファングが放った分身に夜中、魔力を吸われている為、朝になると疲れが出ているなど彼らは知らなかった。


「そうか、なら、せいぜい頑張れよ、行こうぜレン」

「待てよお前ら、食料があるのなら、ここに置いていけ」

「はぁ、お前、何を言っているだ」


 遭難者の男性が食料を置いていけと言ったのでファングがキレていた。


「ファング、やめな、すみません。食料はありませんよ、僕とファングが食べられる分しか取ってないので」

「そんな事ないよな、その手に抱えている木の実は何だよ。それを置いていけよ」

「お前ら!」

「ファング、分かりました。木の実は置いていきますよ。これで良いでしょう」


 ファングは今にも暴れそうになっていたが、レンが止めて、木の実を地面に置いていた。


「それで良いんだよ。まぁせいぜい食料を探せよガハハハ」


 遭難者の男性達はレンとファングが歩きながら探した木の実を抱えると、自分達の拠点の方に消えていった。


「彼奴ら、絶対に許せない。何でレンは彼奴らに従うんだよ」

「僕が許すと思うの? ファングは彼奴らに分身達を送ったまま、魔力を定期的に吸っているよね」


 レンの怒りが頂点に達していたので、ファングはビクビクしていた。


「レン、何で知っているんだ。アクト、お前がレンにチクったのか?」

【俺は一言も言ってないよ】


 ファングはアクトを睨み付けるていたが、その様子を見たレンが言った。


「ファング、アクトは何も言ってないよ。僕がファングの事を知らないと思ったの?」

「レン、これはその‥‥‥ごめんレン、本当にごめんレン」


 ファングはレンに必死に謝っていたが、レンは気にしてないと声を掛けていた。


「大丈夫だよ。ファングが怒るのは無理ないから、だけど早く言って欲しかったよ。僕は君の本音が知りたいのに何で隠すの? 正直に言えば、僕だって怒らないし、ちゃんと対策を考えるよ」

「ごめんなさいレン、本当にごめんレン」


 ファングはレンに見つかり、たくさん泣いていた。


「じゃあ、ファング、彼奴らの魔力を今すぐ吸いな。ただし、僕が言った魔力量だけキープして、オーバーした量は全部ファングの食料にして、構わないよ」


 レンは泣き付いているファングに顔を近付けて、耳打ちするとファングの目が光、分身達に命令信号を送っていた。


【まずいな、レン、かなりキレているよ】

【レンさん、強制的な命令しちゃったね】

【ああなった、ファングさんはレン様しか止められませんわ】


 ファングは強制的にレンの命令に従っているので、精霊三人はキレているレンにビクビクしながら見ていた。


「アクト、アルトニスは先に海の所に行って、どこか休める所を探してきてくれないかな? 僕はファングとエレントと一緒に行くから」

【分かったよ、早く済ませて、来いよ。エレント、レンを頼むぞ】

【分かりましたわ。後からレン様と行きますわ】

【それじゃ、アクト、行こうか】

【あぁ、そうだね】


 アクトとアルトニスは海の方に飛んで行った。


「ファング、そろそろ離れてくれないかな。もう十分だよね」

「うん、ごめんレン。もう大丈夫だよ」

「なら良いんだけど、ちゃんと魔力を吸収してるの」

「あぁ、問題ないよ。命令信号は送ったから、もう直ぐ来るよ‥‥‥あっ来たみたいだよ。はぁ、どんどん魔力が送られて来るよ」


 ファングは分身達から送られる魔力に慕っていた。


「じゃあ、僕が言った量まで吸い尽くしてね」

「分かったよ、だからそんな怖い顔をするなよ。お前のその表情を見たくないよ」


 レンの表情がかなりやばいので、ファングはレンに声を掛ける冴えも怯えていた。


「ふーん誰のせいでこうなったと思っているの()()()()?」

「はい、全部俺が悪いです」


 ファングがレンに対して、また約束を破っていたのでキレていた。


「さて、行くよファング。次、隠し事をしたら、本当に契約破棄も辞さないからね」

「うん、もうしないから契約破棄何て言わないで」


 レンは歩きながら、ファングを見るとかなり反省しているのか足取りが重そうだった。


 はぁ、ファングに傷付く事を言っちゃったな。これで少しは反省するかな? てか、魔力を吸収してる最中だから、何かお腹を触っているし、絶対に反省してないよ。


 ファングはレンが見ていない所で時々魔力を確認する仕草をしているので、レンは頭を痛めていた。


 はぁ、見ないようにしよう。内心では反省しているみたいだから。


 ファングの顔色を見ると、時々険しい表情を見せているので、反省している様子が見て取れた。二人はエレントを連れて、アクトとアルトニスが先に向かった方に歩いていた。


「何だ、急に力がどんどん抜けていくだが」

「俺もだよ。さっきまで、何ともなかったのに何なんだよこれ」

「最近、俺達の体、変だよ」

「まさか、変な物を俺達は食べたのか」


 遭難者の男性達はファングの放った分身達に蝕まれていた。


「クククッ、アハハッ、もっともっと魔力を寄こせ」

「そうだね、あまり吸収しちゃダメだよ。ファング様以前に、あの方の命令だからね」

「多分、あの方の逆鱗にこの人達は触れたんだよ」

「あぁ、あの台詞は完全にアウトだな。あの方から食べ物を取るなんて」


 ファングの放った分身達は、遭難者の影の中で不気味な笑みをしながら、魔力を貪りながら話していた。


「あのガキに会ってから、俺達おかしくないか?」


 遭難者の一人が、何かに気付き始めていた。


「あぁ、確かに、あんな化け物、今までいなかったぜ」

「多分、あのガキの魔法だろう。クソやられたぜ。恐らく話している最中に何かしたんだ」


 遭難者にあった最初の日に既に、ファングの分身が送り込まれているなど知らなかった。


「なら、ガキが寝静まる所を捕まえて、食料調達の奴隷にしてやろうぜ」

「あぁ、良い考えだ。今まで俺達を苦しめた罰をやらないとな」


 遭難者の男性達はレンとファングに復讐しようと企んでいた。


「彼奴ら、あの方をやるつもりだぜ」

「彼奴らの会話は筒抜けなの知らないのかな?」

「知るわけ無いだろう、俺達は遭難者のそれぞれの影に入り込んで入るんだから」

「確かに、本当馬鹿な奴らだよなアハハッ。とりあえず、この事をファング様に報告しようぜ」

「あぁ、そうだな」


 遭難者の会話は全て、ファングの分身達に筒抜けだった事を知らなかった。


「はぁ、綺麗。てか冷たい」

「レン、あまり奥に行くと濡れるぞ」


 レンとファングは森を抜けて海に出ていた。


「だって、ずっと森の中にいたから新鮮だよ」

「確かに、そうだけど、俺達は着替えを持ってないんだよ」

「それは分かっているよ。足元だけ濡らす程度で良いよね」


 レンは砂浜に靴を置いて、軽く足元を濡らしていた。


「全く、まぁレンの元気な姿が見られるから良いか」

「ファングも早く来なよ、冷たくて気持ち良いよ」

「あぁ、分かったよ今‥‥‥レン、ちょっと問題が発生した」

「えっ、何かあったのファング?」


 ファングが急に立ち止まったので頭を傾げていたが、ファングはわざわざレンの所に行き、足を濡らしながら説明していた。


「そう、彼奴らにバレたんだぁ」


 遭難者達にバレていたが、レンは納得していた。


「どうするんだレン。彼奴ら報復するみたいだぜ。何なら俺が彼奴らを消そうか」


 ファングがかなり焦った表情を見せているので、ファングを落ち着かせて注意していた。


「それはダメだよファング」

「だけど、レン。万が一お前に怪我でもされたら俺は‥‥‥」


 ファングはレンの事になると、いつも思い詰めた表情を取るので、レンはため息を漏らしていた。


「はぁファング、怪我は付き物だから、しょうがないでしょう。とりあえず彼奴らは泳がせて置いて良いよ。もし本当に来るときはちゃんとファングに指示を出すからから良いでしょう?」

「分かったよ、ただし魔力吸収だけは継続させるよ」

「ありがとうファング」


 ファングは納得していない様子だったが、レンとの約束をもう破らないと誓ったので、レンが命令するまで我慢していた。


「それじゃ、軽くここで過ごしたら、夕食にしようか」

「そうだな、アクトとアルトニスも時期に戻って来るだろう」

「エレント、アクトとアルトニスが戻って来たら教えて、僕とファングはこの周辺にいるから」

【分かりましたわ、レン様】


 レンとファングは二人仲良く、海の砂浜を走ったり、周囲の景色を見渡して、アリス達の船が来ないか見渡して過ごしていた。やがてあたりが夕焼けを迎えると、アクトとアルトニスが帰って来て、近くの森と海の砂浜の境界線付近で暖を取りながら夕食を取っていた。


「はぁ、今日はアリス達の船が見つからなかったね」

「まぁ、アリス達は昨日、出たばかりだから、直ぐには着かないだろう。明日もまた確認しようぜ。確実に近付いているのは間違いなんだから、そうだよなアクト」

【そうだね、エレナと通信しているけど、近付いているのは確かだよ。それにエレナの魔力も感じ始めているから、明日には着くと思うぜ】

「えっ、本当! ならこの生活も今日と明日で終わりだな」


 精霊同士はマナを感じ合う事が可能なので、レンはアクトの説明を聞いて喜んでいた。


「レン、何か嬉しそうだな」

「当たり前でしょう。もう、この島での食事にうんざりしているんだから」


 もう直ぐ辛い食事などから解放されるので、元気になっていた。


「確かに、だけどレン、あんまり食べ進んでないぞ」

「えっ、大丈夫だよ。ちゃんと食べるよ。あと一日で元の食事に戻れると思えば食べられるよ。うーん、美味しいよ」


 島に流れ着いてから毎日同じ食事なので、レンは飽きていたが頑張って食事をしていた。


「レン、あんまり無理するなよ。明日にはアリス達が迎えに来るかも知れないんだから、その時にたくさん食べなよ」

「うん、そうだね、だけど今日は頑張って食べるよ」

「はいはい、分かったよ。それじゃ俺はお前の食べかけの部分を貰うよ」


 レンが頑張って食事をしている様子を見ながら、レンが残した物をペロリと食べていた。


「えっ、魚の頭や内臓とか食べるの?」

「レン、俺がモンスターなどあらゆる物を食べていたの知っていて、それは無いだろう。俺は食べないと魔力を補給出来ないんだぞ」

「それは知っているけど、せめて人間らしくしてよ」


 ファングは大量のモンスターを取り込んで、消化出来ない残骸をレンの目の前で排泄していたので心配している。


「うっ、それを言われると俺も困るんだけど、この島から出たら普通に戻すつもりだから、許してよレン。これはお前の為なんだから」

「そんなの知っているよ、確認しただけ。もしここから脱出しても、同じようならファングを捨てようか考える所だったよ」


 ファングが真っ当な答えを言ったのでホッとしていた。


「俺がそんな事をするわけ無いだろう。レンが言った事はちゃんと守るよ。隠し事以外はちゃんとやっていたよね」

「そうだね、だからもう隠し事はダメだよファング」

「うん、分かっているよ。もう何回も同じ過ちはしないよ」


 ファングは改めてレンに誓っていた。食事が終わると二人は寝る準備をしていた。


「なぁ、今日は俺の中で寝ないのか?」

「寝ないよ、何でそんな表情をするの? 今夜は彼奴らが来るかも知れないんだから、ちゃんと二人いないと不自然に見られるよ」

「それは分かっているけど‥‥‥」

「ファングが心配するのは分かるよ。じゃあこうしようか」


 ファングがあまりにも心配するので、困ったレンはファングに抱き付きオッケーにしていた。


「えっ、良いのかレン」

「うん、今日だけ特別だからね」


 ファングが喜ぶと早速、ファングが木に背中を付けて寄っ掛かると、レンを呼んでいた。


「さぁ、おいでレン」

「えっ、後ろから抱え込まれるの?」


 ファングが嬉しすぎる表情をしていた。


「この方か、レンを包む込むように護れるし、万が一直ぐに体内に入れられるだろう」

「精霊の力を使っても構わないけど、姿を変えるのはダメだよ。それは僕が判断するよ」


 何かあったら直ぐに安全な体内に入れようとファングが考えているので、レンが止めていた。


「えっ、ケチ。この方が絶対に安全なのに」

「そんな事をしたら大騒ぎになるでしょう」


 ファングは不満に思っていたが、レンに触れられるので、直ぐにもとの状態に戻っていた。


「それじゃ、僕は寝るけど何かあったら言ってよ」

「うん分かったよレン、ゆっくり休めよ」


 裏から抱かれたまま、寝るとファングはアクト達に指示している。


「アクト達は、周囲を確認して、彼奴らが見えたら教えろよ。それでレンを起こすから」

【分かったけど、ファングの方も分身達と定期的にやり取りして、状況を確認しろよ】

「あぁ、分かったよ、それじゃ宜しくな」


 アクト達は周囲を確認するため、上空や森の中などを飛び回り確認している。


「さて、聞こえるか、分身達」

「あぁ聞こえるよファング様、俺達は常にファング様と繋がっているから」

「そうか、それで彼奴らはどんな状況だ」


 遭難者達が二人のいる所に向かっているのか分身達に確認していた。


「ほーう、彼奴らこっちに向かっているのか」

「あぁ、そうだよファング様、ファング様の命令で魔力を吸収しているのに、何かピンピンしているんだよね」


 最終的な命令はレンがしているが、ファングの分身達はファングを経由して命令をされるので、レンが命令した事は知らない。


「その事は分かったけどよ、お前ら、レンをあの方と言っているのか」


 レンの事をあの方と言っているので、驚いていた。


「そうだよ、この方がレン様の為になるでしょう。レン様を名乗ったら、確実に狙われるよ」

「確かに、流石は俺の分身達だなぁ」

「そうだろう、それで彼奴らを始末しようか」

「いや、それはやめておけ、もうレンにお前らの事はバレているから、余計な事をしたら俺が殺される」


 分身達が勝手に遭難者達を襲おうとしているので、止めていた。


「結局バレたんだ。ファング様がずっと魔力を吸うから悪いんだよ。あの方に怒られたの」

「当たり前だ、かなり怒られたよ。それにお前らの魔力吸収量を増やしたのはレンだよ」


 ファングは分身達に怒られた経緯や命令を出した名前を言うと分身達は驚いていた。


「えっ、あの方の命令なの、てっきりファング様の欲望で吸収量を増やしたのかと」

「そんな分けないだろう、俺を出来損ない精霊と一緒にするな。そんな事をしたら完全にレンに捨てられる以前に契約破棄されるよ」

「確かに、もしあの方と契約破棄されたら、俺達も困るからな、俺達はお前何だし」

「お前ら、俺の弁明をするなよ。はぁ、ちゃんと意思があるから仕方ないかぁ」


 分身達はそれぞれ個別の意識を持っている。


「そうだよファング様、お前らはファング様の体内から生みだされた存在だから、ちゃんと意思もあるし、自立できるからね」

「ただ違うのは、お前らの命はファング様と繋がっているから、本体がやられると消えちゃうんだけどね。あとは命令系統や俺達の存在はファング様が握っているから、いつでも命令出来るし、消すことは簡単だからね」


 分身達はファングの肉体の一部から生み出されているので、いつでもファングの命令で一つに戻す事が可能である。


「お前ら、そんな話は良いんだよ。さっさと彼奴らの監視をして、定期的に俺に教えろ」

「はいはい、分かったよファング様、了解したよ」

「彼奴ら自由過ぎるだろう。本当に俺何だな!」


 自由過ぎる分身達に頭を悩ませいたが、とりあえず遭難者達を勝手に襲おう事が無くてホッとしていた。やがてファングは寝たふりを初めて、暫く待つとアクト達が遭難者達を発見したので、レンを起こしていた。


「ふはぁ、ファング、遭難者達が来たの?」


 レンは眠たそうな表情をしながらファングに聞いていた。


「そうだよ、さっさアクト達から報告があったよ」

「なら、僕は寝たふりするから、ファングは精霊の力で周囲を確認してよ」

「それは大丈夫。俺の分身達を放っているから、居場所は把握出来るよ」


 レンは寝たふりを始めると、ファングはアクト達に指示を出して、自分も寝たふりを始めて遭難者達が来るのを待っていた。


「おい居たぞ」

「おっ、あのガキ、寝ているじゃないか」

「クククッ、これは好都合だぜ」

「お前ら、足音を立てないで、あのガキを縛り上げるぞ」


 遭難者達はレンとファングを見つけると、足音を立てないように忍び足で背後から近付いて行くとファングが声を掛けていた。


「お前ら、そんなコソコソしないで、さっさと来いよ。なぁ遭難者達よぉ」

「お前ら、寝たふりをしていたのか!」


 レンとファングは立ち上がり、遭難者達に向き合っていた。


「こんばんわ、こんな夜遅くに僕達に何か用ですか?」

「レン、お前は律儀だよな。こいつらに挨拶する必要あるのか」


 レンが遭難者に挨拶をしているので、ファングは頭を押さえていた。


「お前らが寝ていれば、痛め付ける必要はなかったのになぁ、本当に残念だよ。お前ら、作戦変更だぁ。どんな手を使っても構わないから、このガキを捕まえろ」

「ウォー!」

「こいつら他のグループも呼んだのか」


 遭難者の一人が叫ぶと、レンとファングを囲んでいた。


「ガキ達、悪いようにしないから大人しく捕まれ、この数じゃあ俺達に勝てないぜ」


 遭難者の一人がレンとファングに向かって降参しろと言っていたが、レンは降参するきはなかった。


「そうですか、あくまでも僕達を捕まえるんですね。捕まえた後はどうするんですか?」


 捕まえた後、レンとファングをどうするのか聞いている。


「そんなの、俺達の奴隷にして助けが来る間まで扱き使ってやるよ」

「なっ、お前らって奴は‥‥‥」

「ファング、うるさい黙って」

「すまないレン」


 ファングは怒っていたが、レンが止めていた。


「分かりました」

「じゃあ俺達に降伏するのか」

「いえ、違いますよ。あなた達の言い分を分かっただけで、僕達は降参するなんて言ってませんよ」

「ガキ達がぁ」


 レンとファングが素直に従わないので、遭難者の一人が怒っていた。


「ファング、もう良いよ、好きにやって、ただし殺すのはダメだよ。姿を変えるのも許可する」

「良いのかレン、彼奴らに俺の正体をバラしても」


 今まで避けていた事を許可すると言ったので驚いて聞き返していた。


「良いよ別に、どうせこいつらにバレても、圧力で黙らせれば誰にも話さないだろう」

「お前はいつも、俺の想像を超えることをしでかすよな。それってこいつらに恐怖を植え付けるのと一緒だぞ」


 レンが遠回しに言うので、ため息を吐いていた。


「どうせこいつらは腐りきっているクズだからね。普通なら自分の過ちを認めて謝罪するのに、一つも無いよ。もし謝れば、僕達もやっているた事を認めて、お詫びをして上げるのに」

「それを直ぐ、判断出来る人はいないと思うよレン。お前の考えや理屈はいつも難しいよ」


 レンの強引な理屈にファングは頭を押さえていた。


「ガキ達、何をコソコソ話している。お前ら、早く彼奴らを捕まえろ」


 遭難者の一人が苛立ち、メンバーに指示をすると一斉にレンとファングに襲って来ていた。


「それじゃ、ファングあとは宜しく、アクト、アルトニスは僕と一緒に来て。エレントはファング達が弱らせたら人達を植物魔法で拘束して」

「分かったよレン」

【任せろ、久しぶりに暴れるぜ】

【アクト、暴れるのは構わないけど、ちゃんと手加減してよ】

【分かりましたわ、レン様】


 四人に指示を出すとレンは森の方に歩いていった。


「待て、一人だけ逃げるつもりか」

「はぁ、逃げるだと、まだ森の中に何人かいるだろう、大勢の方は俺一人で充分何だよ。さぁ、俺らと遊ぼうぜ」

「何だよ、これ、うぁー」


 ファングは分身達に命令信号を送ると、遭難者の影から現れて遭難者を襲わせていた。


「お前ら気をつけろ、これは俺らの姿に化ける化け物だ。貴様は一体何者なんだよ」

「さぁ、俺は何者なんだろうな。俺を楽しませろよ」

「何だよ、その姿はこっち来るなうぁー」


 ファングは不敵な笑みをすると、遭難者を襲い楽しく遊んでいた。


「はぁ、ファングの異様な声と悲鳴が聞こえるよ」

【まぁ、気を落とすなよ。まだあの姿にはなってないよ】


 レンの後ろから悲鳴が大声で響いているので、頭を押さえていたが、アクトが大丈夫だと言ったので目の前の隠れている人達に集中させていた。


「いや、なってもならなくても、ファングの実力は知っているから、今ごろ恐怖を植え付けているよ。多分最後になって恐ろしい姿になると思うよ」

【ファングさんは戦闘になると頭の回転が良いから、効率よくやるんだよ】


 レンと精霊二人はファングのやりそうな事を想像していた。


「さてと、隠れてないで出て来たらどうですか?」


 レンは森の奥に向かって叫んだが反応がなかった。


【よっと! 何だよ、レンがわざわざ呼んでいるのに】

【そうだね、アクト。レンさんに向かって失礼だよね】

「はぁ、何で出て来るの?」

【えっ、ファングに許可したから、俺達も良いだろう】

「はぁ、分かったよ、さっさと終わらそう」


 アクトとアルトニスが勝手に姿を晒しているので、頭を押さえていたが二人はもの凄い速さで飛び回ると、隠れている遭難者達に攻撃していた。


「何だよ、こいつら、何で宙に浮いているんだよ」

【はぁ、俺達は精霊だぞ、飛べて当然だろう】

【アクト、僕達は基本的に精霊使いと契約しないと、彼らは見られないんだから驚くのは無理ないよ】

【それもそうか、じゃあおとなしく俺達にやられな】

「来るな、グフ」


 アクトとアルトニスは隠れている遭難者に攻撃して襲っていた。


「さて、僕の方もやりますか」


 体を構えて、遭難者に向き合っていた。


「お前、精霊使いなのか」

「えっ、そうだね。本当なら、なるつもりはなかったけど、成り行きでねアハハッ」

 レンは精霊と契約したくなかった心境を語っている。


「何だよ、お前らは、これでも喰らえ」

「質問したら最後まで聞くのが筋じゃないの? はぁ、それじゃいくよ、ソニックブースト」


 レンは質問に対して答えている最中に襲って来たので、レンは足に風を纏わせて、瞬足で移動していた。


「なっ、消えただと!」


 レンを捕まえようと素手で差し伸ばすと、目の前で消えたので、周りをキョロキョロしていた。


「そんなんじゃ、僕を捕まえる事は出来ないよ」

「なっ、いつの間に俺の背後にグェ、このクソガキがぁ、ちょこまかと動くな」

「早く降参した方が良いと思うよ」

「何だと、なっお前ら」


 レンが高速で移動しながら、遭難者に忠告すると、遭難者は宙に浮く少年アクトとアルトニスにやられている姿を目撃していた。


【レン、こっちは終わったぜ】

【レンさん、この人もやる?】

「こっちに来るな、降参するから許して」

【レン、流石だな。よくあんな動きが出来るな】

「まぁね。レイジ兄さんと小さい頃に色々特訓に付き合って貰ったから」


 アクトとアルトニスはレンの瞬発力に驚いていたので、昔の事を軽く話すと納得していた。レンはエレントを呼ぶと、遭難者達を植物で縛り付けるとファングがいる方に歩かせていた。


「頼むから許して、これ以上魔力を吸われたら俺達は死ぬ」

「大丈夫だよ。殺したりしないから、ゆっくり俺に吸われな、俺の分身達は俺の肉体に戻れ」

「分かったよ、ファング様」


 分身達は黒い液状になると、ファングの体目掛けて飛び付き、肉体の中に溶けていた。


「ばっ化け物、来るなうぁー」

「アハハッ、良いぞもっと俺に魔力をよこせ」


 異形な姿になったファングは、全身から黒い触手を伸ばして、遭難者全員を包み込んで魔力を吸収していた。


「何だよ、あの化け物わぁ」

「はぁはぁ、まだ逃がした奴がいるのか」

「ひぇ!」


 ファングは魔力を吸収しながら、無数の目が一斉に全身に出現し、360度見渡して取り残した遭難者達を捜していた。


「ファング、結局姿をバラしたんだ」

「その声はレンかぁ、そっちは終わったのか」

「そうだよって、何で遭難者達を取り込んでいるの、殺したりしてないよね」


 エレントが拘束していると思いながら戻ると、ファングが遭難者達を取り込んで魔力を吸収しているので、遭難者達を心配していた。


「安心しろよ。ちゃんと顔の部分は出しているだろう。少しは弱らせないと、万が一の事があるだろう。だからレンが連れてき奴も寄こせ」

「そう、分かったよ。それなら良いよ」

「ありがとうレン、それじゃお前らも俺の為に魔力を寄こせ」

「やめろ、うぁー」


 遭難者達はファングに魔力を吸われ、ある程度弱らせるとエレントの植物で拘束して、レンの近くに縛りつけていた。


「よし、これでもオッケーだな」

「お前は人間にばけた、化け物だぁ」

「何とでも言えば、俺は人間で精霊だし、見抜けないのが悪いんだよ」


 ファングは人間の姿に戻っていたが、遭難者達から罵声を浴びさせられていた。


「うるさい、あそこのガキがぁ、精霊使いだと分かっていたら、こんな事をしてなかったよ。まさか精霊使いが精霊を放し飼いにしているなんて普通はあり得ないよ」


 遭難者達はレンが精霊を放し飼いにしていることを知らなかったので嘆いていた。


【ファング、そいつらと話す必要はないぜ】

【そうだよ、彼らはレンさんを襲ったんだから】

【レン様を襲った人達にはキツい罰が必要ですよ。もう少し魔力を吸ったらどうですか】

「あぁ、そうだな。もう少し吸わせて貰おうかな」

「やめろ、やめてくれ」


 ファングはエレントに言われて遭難者達から魔力を吸収していた。


「はぁはぁ、あのガキは何体の精霊を持っているんだ。しかも精霊同士で仲が良いだと、あり得ん」


 遭難者達はレンが複数の精霊を持っていることに驚いていた。


「なぁ、これ以上騒いだら、動けないくらいに魔力を吸うよ」

「分かったから、命だけは助けて」 

「ファング、それくらいにしたら」

「分かったよレン」


 ファングは遭難者達を脅しているので、レンが止めていた。


「ねぇ、この事は誰にも話さないでよ」

「はぁ、助かったら話すよ。そして、お前らに罪をきせてやる」

「そうなんだ、じゃあここで死ぬ、ファングなら簡単に殺せるよ。しかも苦しまないように、どうする」

「おい、アクト。レンが俺、以上に恐いことを言っているんだけど」

【そうだね、完全に脅しているよ】


 ファングと精霊三人はビクビクしながら聞いていた。


「だから、お前らの脅しに屈するかよ」

「そう、分かったよ。ファング、ここから一人選んで食べて良いよ」

「えっ、良いのかレン?」


 レンが衝撃的な事を言ったのでレンに聞き返すと、レンはファングに小さな声で耳打ちしている。


「良いよ、ただし、体内に入れたら、上手く演技してよ。くれぐれも、吸収しないようにね」

「あぁ、そう言う事かぁ、分かったよレン」


 納得すると、再び恐ろしい化け物に変わり、捕まった遭難者を適当に一人選ぶと黒い触手を伸ばして、黒い体に引きずり込もうとしていた。


「やだ、助けて、死にたくないよぉ」

「やめろ、本気で食べるつもりなのか」

「僕は言った事に嘘を付かないから」

「頼むから、早くこいつらに謝ってくれ、頼むか‥‥‥」

「ゲフ、はぁ美味しかった。ゆっくり消化して、お前らには骨だけやるよ」


 遭難者の一人が体内に吸い込まれるとファングはわざとらしい演技をしていた。


 凄い、棒読みみたいな演技だよファング。だけど、効果覿面だな。かなり焦っているよ。


 ファングはレンから見たら下手だったが、遭難者達はファングが今までやっていた能力などを見ているので、次は自分がやられると焦っていた。


「分かったから、誰にも言わないから、俺達を食べないで」

「ふーん、どうやって証明するの?」

「ここから無事に脱出出来たら、俺達は牢獄に入るから良いだろう。お前らの事もキッパリ忘れるから」

「分かったよ、僕の事は忘れなくて良いから、罪だけちゃんと償ってね。ファング!」


 遭難者達が罪を認めたので、取り込んだ遭難者を吐き出すように言った。


「あぁ、分かったよ。これで良いだろう」

「ベッチャ!」


 体の一部から黒い触手を出すと、自分体内に突っ込み、暫くすると遭難者を引っ張って、吐き出していた。


「エレント、気絶している彼を、再度縛っておいて」

【分かりましたわレン様】


 気絶している遭難者を縛り上げると、ファングの所に来ていた。


「それじゃ、ファングあとは宜しく。アクト達も頼むよ」

「あぁ、任せな、ゆっくり俺の中で休めよレン」

【レン、こいつらが逃げないように見張っているから、安心して寝なよ】

【レンさん、お休み、こっちは任せて】

【レン様、ちゃんと休んで下さいよ。私達を気にしなくても大丈夫ですから】

「ありがとう皆、それじゃお休み」


 レンはファングの黒い触手に包まれると体内に入れられていた。


「お前、自分の仲間を食べたのか、これは傑作だよアハハッ」


 ファングがレンを取り込んでいたので、遭難者の一人が笑っていた。


「あぁ、今俺に向かって笑っただろう?」

「当たり前だ、お前が仲間を食べたんだからな」

「はぁ、レン、こいつらウザいんだけど何とかならない」

「えっ、僕今から寝る所なのに、分かったよ」


 レンは寝ようとベッドに入ったのに、遭難者の一人が騒ぐので、ファングに呼ばれてイライラしていた。


「あぁ、傑作だよ愉快だアハハッ」

「お前、それ以上言ったら‥‥‥! うっ、やめろレン、アハハッ、くすぐった」

「何だ、何が起こっている」


 ファングが突然苦しんだと思うと、急に笑い出したので、遭難者はファングに何が起こったのか分からなかった。暫くファングが苦しんだり、笑ったりを繰り返すと、ファングの黒い体内からレンが顔だけ出していた。


「ぷっは、何とか出て来られたよ、こんばんは、皆さん!」

「なっ、何故生きているんだお前」


 レンがファングの体内で吸収されてないので驚いていた。


「さぁ、何故だろうね」

「レン、俺の体を強引にかき分けるなよ。出方を教えるとこれだよ」

「ごめんね、ファング」


 ファングの体内から出る方法を教えてあげていたが、レンが雑に出て来るので、注意していた。


「何故だぁ、じゃあさっきのは嘘だったのか?」

「嘘じゃないよ、何なら入ってみる?」

「やめろ、頼むから」


 レンはファングの体を自分の体のように動かすと、黒い体から触手が伸び出し、レンの腕を形成すると遭難者の首を掴んでいた。


 へぇ、凄いな。ファングから聞いていたけど、僕の体のように動かせるんだ。


 レンはファングから聞かされて、便利な機能を見つけていた。


「お前、その化け物に何をした」

「さぁ、何をしたんだろね、ファング、行こうか」

「あぁ、そうだな、なんか精霊依の逆の立場で面白いぜ」


 ファングの体が次第に変化して、レンの体を形成していた。


 へぇ、意外と便利だな。首から下は全部ファングの黒い体に出来るんだ。まぁ当たり前か、僕の体はファングの中にあるんだから。だけどあまり日常では使えないな、黒い体じゃ変に見られるよ。


 レンはファングが形成した体を見ていた。


「凄いよファング、まるで僕の体みたいだよ」

「当たり前だ、俺の体は形を成してない、歪んだ存在なんだから、何でも姿を変えられるよ」


 ファングの肉体は黒いスライム状の液体みたいに、何でも姿を変える事が可能だった。


「お前ら、俺を無視するな」

「あっ、そうだったね、それで何なのかな、僕は寝たいのに呼び出して」

「ひぇ、悪かった。だからそれをやめろ」


 レンの黒い体から無数の手が遭難者の横に押し当てているので怯えていた。


「えっ、僕は何もしてないよ、ほら見てよ」


 レンはやっていないので、体を一周させて見せていた。


「そんな分けないだろう、お前が‥‥‥まさか、彼奴も動かせるのか」

「そうだけど、僕がいつファングの体を操ったと言ったの? この体はファングだし」

「レン、相手から見たらお前が俺を操っているように見えるよ」

「えっ、そうなの? じゃ終了で、はぁ早く寝たい」

「レン、俺の体で遊ぶんでおいて、それはないだろう!」


 レンはファングの体で遊び終えると、もとの姿に戻っていた。


「これで分かったよね、これ以上、僕達の仲間を困らせて僕を呼んだら次はどうなるか分かるよね」

「はい、分かりましたから、命だけは」


 大胆の行動をレンがしていたので、遭難者達は怯えていた。


「それじゃ、ファング、今度こそ寝るけど、呼んだら怒るよ。あとは全てファングに任せるから」

「分かったよ、今度こそお休みレン」


 レンは再びファングの中に戻ると、ベッドの上で寝始めていた。


「さて、お前らはずっと俺達が見張っているから、安心して寝なよ」

「寝られる分けないだろう、せめて、その異様な姿を変えてくれ」

「それは無理だな。これが本当の姿だから」

「そんな分けないだろう、さっきあのガキがぁ、自在に姿を変えられるって」

「確かに、あれはレンが言ったから変えただけで、お前らの命令で変えるわけないだろう」

「理不尽だろう!」


 ファングと精霊三人は怯えている遭難者達を一晩中監視しているのだった。


次回更新は明日です。温かくお待ち下さいm(__)m予定が変わる場合もありますm(__)m

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