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異世界転生したらヒロインや仲間が最強すぎて、なぜか護られています!  作者: 緑青白桃漠
第5章 長い夏季休暇中に巻き起こる冒険と新たな事件 第3節 遭難と海に棲む巨大な魔物の討伐
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#53 遭難者発見で孤立する二人と闇に染まるファング

お待たせしました。第53話公開です(。>ω<。)島での生活に慣れてきたけど、レン君はあまり乗り気じゃないみたいですね。だが島の捜索中に遭難者を見つけたけど様子が変ですね(^-^;)

 ファングの中で眠っていると、ファングに起こされていた。


「レン、そろそろ起きろ、アクト達が朝食を作って待っているぞ」

「うーん、もう朝なの?」

「お前は俺の中にいるんだから、光が入る分けないだろう」


 レンはファングの体内で眠っているので、内部はかなり薄暗かった。


「今度、目覚まし時計やランプを装備しないとダメだね」


 あまりにも暗いのでレンが色々と家具を揃えようとしていたので、ファングは呆れていた。


「レン、それはまた今度な、それじゃ体内から出すから、黒い霧状のカーテンで囲んだエリアの奥に出てくれ、その間に俺は真の姿になるから」

「うん、分かったよファング」


 ベッドから起き上がると、レンの作った空間の周りには黒い霧状のカーテンで覆われているのが分かった。黒い霧状のカーテンの外に出ると黒い触手が現れ、レンを包み込むと、ファングの体内から排泄されていた。


「うっ、うぇゴホゴホ」

「うっ、眩しい」


 暗い空間から急に明るい所に出ていたので、目がチカチカしていた。


「レン、ごめん、もう少しゆっくりと、包み込みを開けばよかったな」

「謝らなくて、良いよ。それよりもそのうっ、うぇゴホゴホを何とかして、誰かに聞かれたらどうするの?」


 あまりもリアクションが大きいので、誰かに聞かれないか気にしていた。


「悪いレン、まだ上手く排泄が出来なくて、練習すれば苦しまずに出来ると思うよ」

「別に今は、人がいないから良いけど、もし無理なら、ファングの体内で休むのはやめるよ」

「レン、それだけはやめて、もっと俺を使ってよ、お願いだからレン」

「はぁ、なんか僕が悪者に感じるよ。ファングもとの姿に戻ったら朝食を食べるよ」


 ファングはレンとの約束を破りたくないのか、排泄の練習をするとか、色々言っているので、頭を抱えながら、アクト達が作った朝食を食べていた。


【ファング、俺達が作った朝食を食べないのか?】


 ファングを見ると、一つも食べてなかった。


「これはレンにあげるよ」

「えっ、ファング何を言っているの食べないと、マナを摂取出来ないでしょう」

「いや、俺は昨日大量にモンスターを取り込んでマナを摂取したから大丈夫だよ。一番食べないと行けないのはレンなんだから、俺は向こうで排泄の練習をするよ。アクト、俺の特訓に付き合ってくれないか、魔法で周囲の音を遮断して欲しいんだ」

【はぁ、分かった。レン、ファングとこの奥にいるから何かあったら言えよ】

「レン、ちゃんと俺の分も食べろよ」


 ファングはレンに料理を渡すと、アクトを連れて、奥の方に歩いて行った。


「全く、ファングらしいよ」

【レンさん、昨日ファングさんと何を話したの?】

「えっ、それは‥‥‥秘密かな」

【アルトニス、レン様とファングさんの秘密の時間を聞くのは良くないですわ】

【ごめんレンさん、つい気になって】

「良いよ、知りたい事は誰でもあるから、ただファングは人一倍の努力家でバカ何だと思うよ」

【それファングさんが聞いたら泣くよ】


 レンはファングから渡された料理を食べ終えて、暫く休んで待っていると、ファングとアクトが戻ってきた。


「レン、ちゃんと俺の渡した料理を食べたな」

「残したら、絶対に怒るよね。それよりもファング、なんかへばってない? また強引なやり方で練習をしたんでしょう」

「うっ、何でバレるんだよ。ある程度回復してから戻って来たのに」

「ファングは平常心でも、ほんの一瞬だけ顔色を悪くするから分かるんだよ」

「そんな細かい所まで見られたら、何をしても無駄だな‥‥‥」


 ファングはレンにバレないように、必死に平常心を保って戻って来たのに、レンにバレていたので、地面に倒れ込んでいた。


「それでファングは上手くいったの? その‥‥‥排泄の方」

「レン、なんか汚いイメージをして、声を詰まらせただろう」

「そんな事はないよ、ただ言い辛いだけだよ」

「本当かな、まぁ良いけど。お前の為に習得したから、今度から変な声を出さずに排泄出来るぜ」

「もう習得したの? アクト、ファングはどんな強引な方法をしたの?」


 アクトに確認すると、周辺に落ちている木々などを根こそぎ、体内に頬張ってから排泄の練習をしていたので、その強引さがかなり伝わっていた。


「はぁ、無茶しすぎだよ、また長時間排泄して、ファングの悲鳴を聞くはめになる所だったよ」

【俺は止めたんだけど、ファングが早く習得しないと、使ってくれなくなるとか言うから、仕方なく許可するしかないだろう】

「はぁ、僕を持ち出して脅したのファング?」

「こうでもしないと、レンは絶対に俺を使わなくなるだろう?」

「いや、使うけど、焦点がずれているよね。何でファングの体内を利用することが目的になるの? 気持ち悪いよ」

「俺は、お前に使われないと、生きている目的を失うんだよ」

「いや、ファングは僕を護るのが目的であって、僕に使われるのは違うよね」


 ファングの目的がずれているので、レンは修正しようとしていると、何を思ったのかレンに追い打ちを掛けていた。


「レンは俺を使わないで、捨てるのか」

「どうしてそうなるの? 分かったから、使えば良いんでしょう」

「うん、たくさん俺を利用してよレン」


 レンは頭を押さえて悩んでいた。


 誰か、ファングの目的を修正してよ。


 ファングは一度約束した事をこれ以上破りたくないのか、いつもより必死になっていた。


「はぁ、もう行こうか、これ以上話したらおかしくなりそうだよ」

「なら、俺の中でゆっくり休みなよレン」

「それはやめておくよ、そんな事をしたらファングが人間じゃないとバレるから」

「えっ、ここは誰もいないから、良いでしょう。頼むから、俺の中に入ってレン」

「あぁ、うるさい。分かったよ入れば良いんでしょう」


 ファングがしつこ過ぎるので、レンは心が折れていた。ファングは一度姿を変えると、レンを黒い触手で包み込み体内に入れると人間に戻して、お腹をさすりながら奥に歩いていた。


「はぁ、レンが俺のお腹にいるのが分かるよ」

「ファング、気持ち悪いよ。何をしているか知らないけど、変な行動をしないで」


 レンはファングがお腹をさすりながら歩いていることを知らないので、声を頼りに注意していた。


「悪いレン、つい嬉しくて、お腹をさすりながらレンの魔力を感じちゃたよ」

「僕は何も見えないんだから、あんまり変な事をしないでよ」

「うん、気を付けるよ。レンは俺が見ている様子が見えないんだよな」

「えっ、何を聞いているの? ファングが自分で体内に分身を作った時、見たでしょう。薄暗くて何もない空間でしょう」


 ファングは寝るときに精神を通して、自分の体内を見ていたので、分かっているよねと答えると、ファングはレンに指示をしていた。


「確かに、何もないよ。だけど、今はレンだけの空間を作ってあげたでしょう。レン、もう一つのテーブルを見ていなよ」

「えっ、隣のテーブルに何かあるの?」


 レンはテーブルをジッと見ていると、突然映像が現れたのでびっくりしていた。


「凄い、どうやって映しているの、ちゃんと周りの景色や森の様子が分かるんだけど」

「えっ、それは‥‥‥あまり見ない方が良いよ」


 ファングは見ない方が良いよと言っていたが、レンが知りたいと何回も言うので、テーブルの脚を隠すように不自然な板が周りを覆ってあるから、捲ってみなと言われて、レンは板を取り外すと気分が悪くなっていた。


「うぇ、何で大量の目が画像を投影しているの?」

「だから見ない方がよかったんだよ。レンが気持ち悪いと言いそうだから、頑張って隠したのに」


 板を外すと、大量の目が光っていて、ファングの目から送られる映像を映し出されていた。


「何で大量の目で映すの?」

「仕方ないだろう、俺の持つ力なんだから、有難く受け入れろよ」

「分かったよ、有難く見させてもらいますよ。だけど、いくつかの目が僕の方を見ているんだけど」

「当たり前だろう、そこにある目は全て俺の目なんだから、お前の様子がくっきり分かるぜ」

「ファング、両方見ることが可能なの?」


 ファングは中にいるレンが見えているので、どうやって両方を見ているのか気になっていた。


「今は一時的にそこの目に集中させて見ているだけだよ」

「それじゃ、ファングの本体の方はどうなっているの?」

「多分、目を見開いた状態で立ち止まっているかな」

「えっ、それ怖いんだけど、早く歩いてよ。不自然に見られるよ」


 ファングは立ち止まった状態で目を見開いて立ち尽くしていた。


「レンが気持ち悪そうにしていたから、様子を見ただけなのに酷いよ」

「それじゃ、両方を見ることは不可能なんだね」

「そうだね、だけど瞬きした一瞬で別の目を動かして、レンを確認する事は可能だよ」


 目を瞑った一瞬で別の目に切り替えて、目が開く瞬間にもとに戻す芸当をレンに説明すると、レンは周囲を見渡していた。


「えっ、それって、僕の空間に別の目があるの?」

「ドッキ!」

「ファング、いまドッキって言わなかった?」

「えっ、何の事かな、アハハッ」

「はぁ、ファングの体の中だから、自由に僕を監視することは可能だね」

「違うんだよレン、別に変な事をしてないから」


 ファングはレンに説明していたが、レンは気持ち悪い目を板で塞いだ後、エレント、アクト、アルトニスと会話しようとしていた。


「レン、頼むから俺の話を聞いて」

「ファング、もう良いから先に歩いて、その話はあとでするから」

「うっ、分かったよ」


 話を後回しにすると大抵、レンが怒っている状態なので、ファングはうな垂れながら、レンの恐怖に怯えて歩き出していた。


 はぁ、ファングは後でキツいお仕置きをしないとダメだな。


 レンはファングの罰を考えながら、ファングが見ている映像を椅子に座りながら見ていた。


「エレント、アクト、アルトニス、聞こえる?」

【あぁ、聞こえるぜレン】

【レンさん、どうしたの?】

【レン様、お呼びですか?】


 精霊三人と通信を開くと、レンはファングがいる位置の情報を聞いていた。


「なる程、この先をずっと進むと海に出るんだね」

【あぁ、そうだぜ】

【だけどレンさん、その付近に煙がいくつか立ち上っているんだよ】

「それって、遭難者がいるって事なの?」

【それは分かりませんわ、少なくとも、ここからだと複数確認出来ますわ】


 煙がいくつか立ち上っているが、人の姿を確認してないので何とも言えなかった。


「分かったよ、アクト達は姿を消して人がいるか見てきてくれないかな?」

【あぁ、分かったぜ】


 精霊三人は煙が立ち上っている方に飛んで行った。


「ファング、もう少し先に行ったら、僕を体から出してよ。この先に人がいるみたいなんだよ」

「分かったよレン、もう少しこの状態でいたかったけど仕方ないな。レン、俺が見ている映像を見ながら、何か気が付いたら教えろよ」

「うん、分かったよ。ファングはそのまま真っ直ぐ歩いてよ」

「了解、なんか俺がレンと精霊依をしているみたいだよ」

「そうだね、なんか変な感じだけど」


 ファングはレンの指示に従って歩き始めていた。


「ファング、この辺で良いよ。体から出して」

「えっ、ここで良いのか? もう少し先でも良いんじゃ?」

「ダメだよ、誰かに見られたら困るでしょう?」

「はぁ、分かったよ、いま出してやるよ」


 ファングはもう少し先で、レンを体内から出してあげようと考えていたが、レンに言われて仕方なく体内から出していた。


「はぁ、やっぱり外の空気は気持ちいいよ、ファング、僕のわがままを聞いてくれてありがとね」

「別に良いよ、俺はレンの精霊なんだから、何でも従うよ。それよりももう少し、俺を撫でてよレン」

「うっ、ちょっと気持ち悪いよファング、早く人間の姿に戻って、その後撫でてあげるから」

「えっ、本当! ちゃんと撫でてよレン」


 ファングは人間の姿に戻ると、レンに頭を撫でられて凄く喜んでいた。


 僕は一体何をしているんだろう?


 ファングを撫でていると、アクト達が戻って来た。


【お前ら、何をしているんだ】

「何って、レンに褒めて貰っていたんだよ」

「アハハッ、ファング、あの話はこれと別だから、覚悟してね」


 体内にいるレンを監視した疑惑をファングに聞くと既に認める趣旨を言い始めている。


「うっ、あの事だな。分かったよ、何でも罰を受けるから、早く言ってよ。お前が言わないと、恐怖で怖いんだよ」


 レンが中々言わないので、内心ではビクビクしていた。


「はぁ、あの事を認めるんだね」

「あぁ、認めるから、早く言ってよレン」

「分かったよ、それじゃ、今日一日は、精霊の力を使わないで過ごす事いいね」

「レンちょっと待って、精霊の力を封じられたら、俺寝ることが出来ないんだけど」

「まぁ、そこは頑張って、ファングに取って一番苦痛な罰だよね。因みに、アクト達は僕と寝るから、ファングは一人で朝まで時間を潰しなよ」

「レン、あんまりだよ。そこまでやるの?」


 ファングは地面に倒れ込みうな垂れていた。


【良いじゃんか、お前に取っては楽な罰だろう】

【そうですよ、精霊の力を封じられたら、僕達は何にも出来ませんよ。どうやってレンさんの護るんですか?】

【ファングさんは、まだ恵まれていますわよ。精霊の力とは別に人間の力を持っていますから、ファングさんは火と炎を得意とした剣術を持っているでしょう?】

「うっ、それを言われると何も反論出来ないよ」


 精霊三人の説明を聞くとファングは一つも反論が出来なかった。


「それじゃ、ファング、今日一日頑張ってね」

「うん、分かったよ。気分転換に少しだけ撫でてよレン」

「はいはい、それで機嫌が直るなら」


 ファングはうな垂れていたが、レンが頭を撫でるとすっかり元気を取り戻していたので、レンはファングの扱い方に慣れていた。


「それでアクト達は何か分かったの?」

【あぁ、それなんだけど】


 アクト達は煙が立ち上っている周囲の様子を鮮明に説明すると、レンは煙が立ち上っている方向を見ていた。


「それじゃ、あそこに行けば、誰かがいるんだね」

【あぁ、そうだぜ、今は数人程度しかいないけど、話によると食料を調達しているみたいだぜ】 

「分かったよ、アクト達は姿を消して、引き続き周囲の確認よろしく、ファング行くよ」

「あぁ、今行くよ。レンは俺の後ろをついて来いよ」

【おう、こっちは任せなレン】


 アクト達は周囲の確認をしに姿を消すと、レンはファングの後ろを付いていくように歩き始めていた。


「ねぇ、ファング、どうかしたの、さっき何か考えていたけど」

「いや、昨日まで、煙が見えなかったから、ちょっと疑問に思っただけだよ」

「確かに、まぁ僕達は洞窟を抜けて来たから見えないだけだよ」

「多分そうだけど、一応は警戒しろな」

「はいはい、ファングは僕に対して心配性なんだから」


 ファングは人間不信なのか、レンが認識した相手以外は警戒しているので、ちょっと困っていたが、ファングが思っていることは理解出来る。レンとファングは森の中をひたすら歩き進めると、煙が立ち上っていた場所に着いていた。


「あれ、人にいないよ」

「おそらく、食料を探しに行ったんだよ。見ろよ、まだ若干燃えているぜ、さっきまでいた証拠だよ」


 ファングは焚き火をした場所を見て、木の燃え方を確認していた。


「それじゃ、ここで待っていれば、誰かしら来るのかな?」

「見たところ、この辺を拠点にしているみたいだな。見ろよこれ、焚き火の燃えかすが、こっちにたくさんあるぜ」


 ファングが示す方を見ると、焚き火の燃えかすが山積みにして一カ所に溜めてあるのが分かった。


「それじゃ、ここで待機して待った方が良いよね」

「あぁ、そうだな。もしかするといくつかのチームに分かれて行動している可能があるな」

「それって、この島の調査をするために、チームを作ってそれぞれ行動しているの?」

「おそらくな、今は別のチームと合流して、情報のやり取りや食料の調達をしているんじゃないの」


 レンとファングは生存者に期待を寄せながら、ここで待つ事を決めて、座り込んでいた。


「あぁ、暇だよ。レンの罰がなかったら、レンを俺の中に入れたいのに」

「いや、ダメだから。てか、もう使わないよ。人が居そうな場所に来たから」


 レンは人目を気にして、ファングに注意していたが、納得していない様子だった。


「えっ、何でダメなの? 俺の中にお前専用の空間を作ってやったのに一度切りで、捨てるのか?」

「いや、捨てたりしないけど、あれは緊急の時とかに使おうかなと考えただけで、毎日使うわけではないよ」

「ふーん、レンなら、絶対に移動や野宿などで楽して利用する為に強引に作ったと思うんだけど?」


 ファングが鋭く付いてきたので、何とか誤魔化そうとしている。


「そんな事はないよファング、僕はあくまでも緊急用に使うだけで、ファングを使って楽に移動をしようなんて考えてないよ」

「やっぱり考えているんじゃんか、まぁ良いよ。また使って貰える事が分かったから、次使う時はある程度、内部を一新してアリス達も使えるようにして置くよ。だから遠慮しないで、俺を使ってね()()


 ファングがレンを真剣に見つめるので、つい本音が漏れてしまった。


「うっ、分かったよ。しかもアリス達にも利用する場所を作ってくれるの?」

「当たり前だろう。どうせレンが説明したら、使うに決まっているだろう。まぁ、気持ち悪いとか罵声を浴びされそうだけど、一応仲間だからな。仲間じゃなかったら作らないぜ、と言うか俺の中に入ったら、吸収されて死んじゃうけどなアハハッ」


 レンは仲間に対してはペラペラと喋るので、ファングは事前にアリス達の空間分の広さを確保してレンを安心させていたが、ファングが意味深な発言をしたので待ったを掛けていた。


「ファング笑い事じゃないよ。もし、ファングの体内に知らない人が入って来たら拘束して、吸収して殺すのはダメだからね。それをしていいのは魔獣とかのモンスターだけだからね」


 異形の姿で誰かが体内に侵入したら、吸収して殺そうとしていたので、レンは俯き、その表情を見たファングはまずいと思った。


「分かっているよ、冗談だから、人間だけは拘束するよ。だけど万が一レンに危害を与えたら、魔力だけ吸い取って弱らせる程度なら良いだろう」

「はぁ、構わないけど、マナが欲しいだけだよね。まぁ殺さないだけましだけど」


 ファングの事を理解しているので、魔力を吸収するくらいなら見過ごしてあげることにした。


「ありがとねレン、一応俺の中に入った奴は俺の養分の対象だからな。まぁレンの友達とかは例外だよ。レンが認識している、相手は俺の細胞センサーに反応しないようにしてあるから」


 ファングの認識している仲間やレンの友達などは例外だと言ったので、レンはホッとしていた。


「と言うか、ファングが認識している情報が全て細胞体にインプットされているから、識別出来るんでしょう」

「へぇ、レンはそんな細かい所まで見ているんだな」


 レンはファングの体内で一晩過ごしていたので、ファングの体の機能はある程度把握していた。


「当たり前でしょう。ファングの中で寝たとき、ファングの精神体は僕の所にいたよね。だけどファングの体内では細胞が気持ち悪いほどに活発に動いて虫などを取り込んでいたでしょう?」

「多分、俺の口か鼻から入った小さい虫だろうな。あの時なんかムズムズしていたから、吸ったときに体内に入ったのか、まぁ入ったら、レン以外は全て吸収するように、信号を送ってあるから、お前の周りにうるさい虫など寄り付かなかっただろう? と言うか、俺が認識している以外、黒い霧状のカーテンで覆っている所を通過するだけで、取り込まれる仕組みにしてあるけどな」

「ファングの体には驚かされるよ、虫如きに、大量の触手や目などを使って捕まえるんだから。そこまでやる必要があるの?」


 ファングの体内に入る限り、レンに危害を加える事はほぼ不可能なのにそこまで厳重にするのか疑問だった。


「あるよ、もうあんな事はごめんだよ」


 ファングはレンが誘拐された事を話し始めていた。


「ファング、まだあの事を覚えているの、あの時は仕方なかったんだよ」

「確かにそうだけど、俺はあの時の約束を果たせなかったんだよ。だから今度こそは、お前を必ず護るって誓ったんだよ。お前に近付く悪い虫は全て駆逐させるってね」


 レンとの約束を守れなかった悔しさから、ファングは手段を選ばなくなっていた。


「そう、あの時をきっかけに、ファングは変わったんだね」

「悪いなレン、これからたくさん迷惑を掛けるかも知れないけど、お前を絶対に失望させないから、ずっとお前の傍にいさせてよレン」

「分かったよ。ファングはもう僕の精霊で、常に繋がっているから、安心してよファング」


 ファングはレンの横に体を付けると、頭をレンの肩に寄せていた。


「ファング、誰かが来るまで、あの続きをやりなよ」

「あれって、何だっけ?」

「はぁ、あれって言ったら、風系の練習でしょう」

「あっ、そうだった、忘れてたぜ。つい精霊の力に魅了されて、忘れる所だったぜ」


 レンに言われると手をポンと叩き、ファングは手のひらを出して、風を起こすため手のひらに力を集中させていた。


「はぁ、ダメだ。全然起こる気配を感じないよ」

「精霊の力に目覚めたのに、風を起こすことは無理なのアクト?」


 ファングは精霊の力に目覚めたから、簡単に出来ると思っていたが、出来てないのでアクトに確認していた。


【レン、精霊になっても無理だよ。精霊はあくまでもその属性に特化しているだけだから、何でも出来るわけじゃないんだよ】

【ファングさんは光と闇の精霊だから、光と闇系は簡単にあつかえるよ、あとは精霊になる前の火と炎だね。あとは練習するしかないんだよ】

「はぁ、簡単に出来ると思ったのに、これじゃいつ習得するか分からないよ。ファング頑張って、僕は昼寝するから、誰か来そうな気配がしたら起こして、エレント、ファングの指導お願い」


 精霊の力が目覚めれば簡単に習得出来ると思っていたのに、簡単に出来ない事が分かると、レンはファングの指導をエレントに押し付けていた。


【分かりましたわ、風系は私に任せて下さいレン様。それじゃファングさん頑張りましょう】

【アルトニス、俺らは周囲を見回ろうぜ】

【オッケー、それじゃファング、エレント、レンさんをよろしくね】

「あぁ、気をつけて行って来いよ」


 ファングはアクトとアルトニスに声を掛けると周囲の確認に飛び立った。レンはファングとエレントが風系の練習をしている間、昼寝を始め、ファングはエレントにアドバイスを貰いながら、風系の練習を始めていた。やがて、日が掛けてくるとファングはレンを起こしていた。


「おーいレン起きろ、そろそろ誰か来るぞ」

「えっ、もう夕方になるの、はぁ、なんかまだ眠い」

「レン、しっかりしろよ。誰か来たら笑われるぜ」


 目が覚めると、辺りは夕暮れを向かえ始めていた。レンはまだ寝たそうだったが、アクトの水魔法で顔を洗うと眠気が覚めていた。


「フゥ、アクトありがとう、さっぱりしたよ」

【それじゃ、俺達は消えるから、ファングよろしくな】

「あぁ、分かったよ。そっちもレンを護れる体制だけは取れよな」


 アクト達が姿を消して、暫く待つと数人がやって来た。


「うん、何だお前らは、何処からやって来た」


 がたいの良い男性が二人に声を掛けていた。


「すみません、突然お邪魔して、僕達は‥‥‥」


 レンとファングは数人の男性に説明をしていた。


「なるほど、お前らは俺達を助けるために来たが、謎の巨大生物に襲われて、ここに流れ着いたんだな」

「えぇ、そうです、だから迎えが来るまで皆さんとご一緒出来ないかと」

「それは無理な話だな。お前らは俺達と同行して飯を食おう何て甘ったれるなよ。お前ら二人に食わす飯はないぜ。この食料だって、何とか手に入れたんだから」

「なっ、俺達を食料泥棒みたいに言うなよ。別にお前達から貰おうなんて一言も言ってないだろう」


 レン達は遭難した人と一緒行動しようと提案すると、拒否され挙げ句に食料泥棒みたいな事を言うのでファングが切れていた。


「それはどうだか、まぁ、助けが来る情報は有り難く受け取るよ。ほかのメンバーにも伝えておくぜ」

「お前ら、いい加減に‥‥‥」

「ファング、分かりました、僕達は別で行動しますので」

「まぁ、せいぜい生き残れよ坊主、助けが来る時に生きているか分からないがなガハハハ」

「お前ら‥‥‥」

「ファング、そうですね、お互い生き残れるように頑張りましょう。ファング行くよ」


 ファングは今にもぶち切れそうになっていたが、レンがいるので必死に堪えていた。レンとファングは複数の遭難者と分かれて、再び深い森の中を歩いて行った。


「よかったんですか、あの子達を見捨てて」

「仕方ないだろう、あの坊主にあげたら、俺達の食料が無くなるんだぞ」

「それはそうですが、あまりにも可哀想ですよ」

「なんなら、あの坊主に付いて行けば良いだろう?」

「えっ、それは嫌ですね、私はここで死にたくないですよ」

「なら、あの子達は忘れろ、辛いけど今は目先の事をやるんだ。それにあの坊主、どこで情報を手に入れたか知らんが、話が本当なら迎えが来るはずだ、それまで俺達は生き延びるぞ」

「オー!!!!!!」


 遭難した複数の男性はレンとファングに対して色々な意見があったが結局、二人を見捨てて、自分が生き延びることを優先していた。


「クソ、何なんだよ彼奴らは、俺達は食料泥棒なんかじゃないのに」


 ファングは近くの木に八つ当たりしていた。


「仕方ないよ、彼らも必死に生き延びようとしているんだから」

「それでも、レンは悔しくないのか、あんな事を言われて」

「悔しいよ、僕も切れそうになったから、だけど生存者が入るだけでも僕は嬉しいよ」


 遭難した男性の態度は気に食わなかったが、この島で生き延びていたのは、レン達に取って希望だった。


「まぁ、それは確かに言えるけど、彼奴らの言い分には納得出来ないぜ」

「そうだね、なら僕達が彼奴らより裕福にすれば、いつかは一緒に行動してくれると思うよ」


 遭難者の男性より裕福な食事をしようと考えている。


「なら、明日からやろうぜレン、今日は食料に有り付けないかも知れないけど、我慢出来るよなレン」

「大丈夫だよ、たかが半日抜いても死なないよ」

「アクト、エレント、アルトニス、聞いての通りだ。さっそく取り掛かってくれよ」

【分かったぜ、レンの為に美味しい魚を見付けてくるぜ】

【僕はこの森の山菜を探して来るよ】

【私は、アルトニスと同じ森の中で木の実を探して来ますわ】


 精霊三人はレンとファングの会話を聞いて、それぞれ食料を探しに飛び立っていった。


「ファング、罰は解除するよ。状況が変わったから」

「あぁ、分かったぜ、もう少し奥の方に行ったら、俺の中で休めよ」

「ありがとうファング」


 ある程度、人目に付かない場所まで来ると、ファングは姿を変えて、レンを体の中に入れてあげると、もとの姿に戻り、近くの木に寄り掛かっていた。


「ファング、誰かに見られたりしなかったよね」

「はぁ、お前は本当に心配性だな。大丈夫だよ、暗闇だし、俺の姿は闇と同化してるから、全く見えないよ」


 異形の姿になると全身真っ黒のおびただしい体になるので、夜になると、暗闇に同化するので周りからは全く見えないのである。


「そう、なら大丈夫だね。だけどさっきまで寝ていたから、眠れないよ」


 昼間、たくさん寝ていたので、眠れなくなっていた。


「寝るのが悪いんだよ。俺の練習を見ていればよかったのに、レンはいつも、特訓とかやらないよな。俺は一緒にやりたいのに」


 レンはいつも見ているか、寝ているかの二択なので、ファングはレンと一緒に特訓などをしたかった。


「僕はそう言うタイプじゃないよ。ファングとレイスくらいだよ、ほぼ毎日特訓しているのは」

「別に良いだろう、体を動かさないと鈍るんだよ。まぁ、それはさておき、レン、お前の所に行くよ。中でゆっくり話そうよ」

「えっ、うん分かったよ。早く来てね」


 ファングは周りから見ても寝ている様子が分かるようにすると、自分の体内に入るレンの所にやって来ていた。


「待たせたなレン」

「うっ、やっぱり体内だと、全身真っ黒なんだね」

「仕方ないだろう、これは俺の体の一部で形成されて入るんだから文句言うなよ」


 ファングの体は全身真っ黒だったので、レンは警戒している。


「黒い体に触れても大丈夫だよね」

「あぁ、構わないぜ。別にレンを吸収したりしないから、そんなに警戒するなよ。それにここに作った家具も吸収しないよ」


 ファングの体は肉体の一部で形成されているので、物体に触れるとあらゆる物を吸い込み吸収する。


「何これ、気持ち悪いよ。中が液状になっているし。でも濡れたりしないんだね、不思議だよ」

「まぁ、スライムの一種だと思えば良いよ。だけど俺に触れればあらゆる物を吸い込んで、この中から出ることは出来ないぜ。そして俺の中に入った物はゆっくり分解されて、俺のマナに変わるんだよ」

「ファング、不気味な笑みをやめて、僕達が悪者になるよ」

「ごめんレン、つい大量の蜘蛛を取り込んだ時のマナが増える感覚が堪らないんだよ。吸収すると全身に力が漲るんだよ」


 ファングは不気味な笑みで、蜘蛛を取り込んだ事を話しているので、レンは頭を痛めていた。


 はぁ、何でこんな危険な精霊と契約しちゃたんだろう。確かにファングを助けるために契約したけど、こんな力があるなんて知らなかったよ。ファングがますます闇に落ちていくよ。僕はファングを上手く制御出来るのかな。


 精霊の力に目覚めてからファングがますますおかしくなっているので、この先がかなり不安だらけだった。


「ファングの黒い体は分かったよ。それじゃ、この中だと黒いファングは大量に作れるの?」

「あぁ作れるぜ、だけど気持ち悪いよ。全部俺でしかも、別々の言葉を発するから不気味だよ」

「それでも構わないから、一度だけ見せてよ」

「はぁ、お前は興味があると、俺の体で遊ぶんだな。まぁ良いけど、レン、あっちをジッと見ていなよ」


 ファングが指差す方を見ると、細胞から黒い液状のものが一部切り離されて、宙に浮くと黒い液状はいくつかに分裂して落ちるとファングの姿を形成し始めていた。


「うっ、気持ち悪い」

「だから言ったんだよ、まぁレンが言ったんだから最後まで付き合えよ」


 大量のファングが形成されると、一同にレン目掛けて移動し、レンを囲んでいた。


「レン、俺と遊ぼうぜ」

「俺がレンと遊ぶんだよ」

「レン、俺を捨てないでよ」

「お前、レンに泣き付いて遊ぶつもりだな」

「ねぇ、ファング、大量に作っても中身はほとんど同じなんだね」

「違うぜレン!!!!!!」


 大量のファングが一斉に否定した。


「何が違うの?」

「俺達はそれぞれの意思を持っているんだぜ」

「それは、聞いたけど、中身はほとんど一緒だよね。何が変わったのか教えてよ、大量のファングさん」

「うっ、それは‥‥‥分からないよ!!!!!!」


 大量のファングは分からないと一斉に言うので、既に最初に現れたファングがどれか分からなくなっていた。


「全部同じ姿だから、どれが最初のファングか分からないんだけど」

「それを言われると困るんだよな、俺が最初のファングだぜ」

「俺だよ、最初のファングは」

「違う、俺だよ、最初のファングは」

「あぁ、うるさい。どれでも一緒だよね。もう良いよ、大量のファングから一人にして」

「ごめんレン!!!!!!」

「そこは一斉に反省するんだね」


 大量のファングが一斉に謝ると、それぞれ体をくっつき合わせ、大量のファングは一つの固体に変化した。やがて、一つに纏まった黒い液状は一人のファングを再構築させていた。


「これで分かっただろう、レン?」

「うん、凄いね。だけど気持ち悪いよ。しかも、さっき切り離された部分が修復してるよ」

「当たり前だよ。俺の体なんだから、大量のファングは俺の体を伝わって、もとの位置に戻ったよ」


 大量のファングを作った、黒い液状は黒いファングの体と繋がっているので、そこを伝わりもとの位置に戻していた。


「まぁ、ファングはもう人間ではなく精霊だから、自分の体で色んな事が出来て当たり前か」

「お前、それ嫌みに聞こえるぜ」

「まぁ、ファングの能力は他にもまだありそうだ。処で、さっきの能力は体の外で使えないの?」

「お前、何を企んでいるんだ」


 レンがまた何か閃いたので、ファングが警戒していた。


「いや、人が入る所では使わないけど、偵察程度に使えないかな」

「はぁ、お前は楽することになると本当、頭の回転が早いよな」

「出来るのファング?」

「可能だけど、いくつか問題があるな」


 大量の分身を使うのは構わないと言っていたが、影や暗い部分しか移動出来ないし、触れると間違って取り込む可能を危惧するなどの問題点があった。


「吸収する部分はファングが何とかしてくれるよね」

「うっ、分かったよ、断っても使うんだろう。そんな目をするなよ。あぁ、やってやるよ」

「ありがとうファング」

「はぁ、大量の俺を作る時に嫌な予感がしたんだよ」


 レンが目をキラキラさせるとファングはうな垂れていた。


「それじゃ、あとでやってよ。とりあえず今日あった遭難者の監視ね。どこに入るか把握したいから」

「あぁ、分かったよ。お前が寝たらやるよ」

「ありがとう、しかしこの中、前より明るくなってない?」

「あぁ、気付いたのか、俺は光も扱えるから、俺の細胞を発光させて、明るくしているんだよ。レンが前に暗いって言っていたから、嫌なら戻すけど」

「いや、良いよ、寝るときに消せれば」

「そうか、なら、消すときは俺に言えよ。消してやるから」


 ファングは色々とレンの意見を取り込んでいるので、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「さて、僕は少し横になるよ」

「あぁ、ゆっくり休め、早くお前の魔力を回復するのを俺達は待ち望んで入るんだから」


 レンの魔力は二日経っても完全に戻ってないので、ファングが心配していた。


「うん、心配しないでファング、多分、栄養が足りないから、魔力の回復が遅れているんだよ」

「多分そうだな、早くお前の魔力を回復させて、俺達を安心させてよレン。レンの魔力が俺達に流れないよ、俺やアクト達が生きた心地がしないんだよ」

「ごめんね、なるべく早く君達が安心出来るようにするから‥‥‥」

「お休みレン、無理だけはするなよ」


 レンが話している途中で寝てしまったので、ファングは苦笑いしていた。ファングはレンの所に来ると黒い液状になり、布団の形状に変わると、レンの体に被せてあげた。


「さて、レンが言われた事をやるか、うっ、うぇ」

「ベチャッ!」


 ファングはもとの体に帰って来ると、口から黒い液状を吐き出していた。


「さぁ、生まれろ俺の分身」


 ファングが叫ぶと黒い液状は反応して、複数に分裂すると、遭難者の男性の姿に形成されていた。


「呼んだかファング様」

「あぁ、呼んだよ。俺の分身達、実は頼みたい事があるんだよ」


 ファングは自分が生み出した分身に説明していた。


「へぇ、マスターを愚弄したのか彼奴らは」

「レンを苛める奴らは許せないな」

「任せろよ、お前の代わりにやってやるから」

「楽しみ、早くやりたいぜ」


 遭難者の男性達がレンに向かって食事泥棒みたいな事を言われたのでファングの分身達は怒っていた。


「あまり、魔力を吸収するなよ。吸収すると全部俺に流れて来るんだから、レンにバレたら殺されるよ。もう隠し事が出来ないんだから」

「任せろ、ファング様の指示通りにやるから」

「そうだよ、ファング様がやられたら、俺達は消えちゃうから」

「まぁ、仕事が終わったら、ファング様の体に戻るから関係ないか」

「いや、関係あるよ。戻る前に、問題が起きたら、全部俺に跳ね返って来るんだぞ! そうなったら、お前らは強制的に消すからな、お前らは俺と繋がって入るんだから」


 分身達を生み出したのはファングなので、レンが切れた時、何を言われるか怖くて、分身達に八つ当たりしていた。


「まぁまぁ、そう熱くなるなよファング様、俺達はファング様の一部に過ぎないんだから、俺達は常にファング様の体から発する信号で動いて入るだけなんだよ、俺達の意思はまがい物だろう。人間に化ける口実を作る為に」

「何だ分かっているじゃないか、レンが人間らしくしろとうるさいからな。まぁ、お前らは俺の分身であって、中身は俺だし、今は遭難者の男性達の姿だけど、形は何でも良いけどな。とりあえず朝になる前に移動しないと、お前らは闇で形成されているから、光を浴びると消されちゃうな。さぁ、行きな俺の分身達、彼奴らに罰と偵察をしてこい」

「分かったぜファング様!!!!!!」


 ファングが命令すると、分身達は闇に溶けていき、レン達と行動を拒否した、遭難者の男性達に向かって、猛スピードで移動していた。


 悪いなレン。やっぱり彼奴ら許せないよ。ほんの少し魔力を吸い取る程度で殺したりしないから許して。


 ファングは遭難者が言った事が未だに許せず、煮え切り返るくらいに、怒りに溢れていた。


 さぁ、早くお前らの魔力を俺に寄こせよアハハッ。


 ファングが闇に落ちたのか、冷酷な表情を見せると、お腹を触りながら、魔力が送られて来るのを待っているのだった。


「うぁ、来るな。何なんだこれは、何故俺の姿になっているんだ」

「お前は俺だ、お前は我がマスターを愚弄した。その体にある魔力を俺に寄こせ」


 遭難者は寝ようとした所を襲われていた。


「助けてくれ、うぁ」

「何なんだよ、一体、何で剣や魔法で攻撃しても死なないんだよ」


 遭難者の男性達は剣や魔法で攻撃しているが、黒い液状の物体は死ななかった。


「無駄だ、お前らみたいな攻撃では、俺達に傷などは付かない、さぁ俺の中に取り込まれて、その魔力を俺に寄こせ」

「よせ、来るなうぁ」

「クククッ、アハハッ、良いぞ、体に魔力が染みわたるぜ。これからお前らはファング様の養分としてこれから暫く定期的に魔力を貰うぜ。お前らはファング様に生かされた、養分体なんだからな」


 ファングの分身達は一斉に遭難者を襲い取り込むと、不気味な声を発して、魔力を吸収していた。やがて、魔力を一定量吸収すると、ファングの分身達は遭難者の影に溶け込み、そこから見えない黒い触手を服の中に通して体に巻き付くと、いつでも魔力を吸収する体制を取られていた。気絶している遭難者の男性達はファングの養分体にされているなど知るよしもなかった。


 はぁ、凄い魔力が俺の中に流れ込んで来るよ。


 ファングはお腹を触りながら、分身達から送られる魔力に慕っていた。


 だけど、魔力の質が悪いな。やっぱりレンの魔力が良いよ。


 魔力の質をどうやって調べいるのか分からないが、ファングは魔力をろ過して、不純物が含んだ魔力を体内から放出していた。


 ちっ、健全な魔力はこれっぽっちか、まぁ良いかどうせ彼奴らは俺のおやつ程度だしな。


 あんまり良い魔力が吸収出来なかったので、ファングは不機嫌になっていたが、所詮魔力をあまり持たない奴らなので、気にしていなかった。


 彼奴らの場所は把握出来たから、これでどこにいてもレンに定期的に報告出来るな。


 遭難者の報告はあまりしたくなかったが、レンの命令なのでしかなくやっていた。


 さて、俺の分身達も放った事だし、俺も寝るか。


 ファングは体を寝た状態にすると、レンのもとに現れ、レンを見つめながら、体内で過ごしているのだった。


次回更新は未定です。長期にお待ち下さいm(_ _)m

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