#52 洞窟内に現れた魔物とファングに隠された秘密
お待たせしました。第52話公開です。島での冒険を始めた二人はどうなるの?そしてファングは精霊の力や能力を乱用するかも?(。>ω<。)
レンとファングはエレントとアクトに護られながら、アルトニスの炎で周囲を照らし、周りを警戒して奥に歩いていた。
なんか不気味な雰囲気を感じるよ。あっ、光が見えた出口だよ。よかったモンスターは居なそうだね。
歩き進めると広い空間に出ていて、奥から光が見えていた。レンは出口に向かって走っていたが、ファングの声が後ろから響いていた。
「レン、勝手に走るな」
「だって光が見えたんだよ。出口だよ」
「ちっ、あいつ周りを見えてないな。エレント、アクト急いでレンの傍に行け早く」
ファングの表情は険しくなっていたので、エレントとアクトが慌てて向かっていると、レンの頭上から不気味な音が響いていたので足を止めていた。
なんか不気味な音が聞こえたんだけど、まさかね‥‥‥。
恐る恐る、上を見上げると、大量の蜘蛛がレンを見つめて、奇声を上げて、レンを襲って来た。
「うぁ、嘘だろう。出口が目の前に見えているのに、何でウィスパークが大量にいるの?」
大量の蜘蛛が目の前に広がり、出口の行く手を遮っていた。
「ファング、やるよ‥‥‥!」
【ファングはもう戦っているよ】
【レン様、私たちが援護しますから、出口に向かって蜘蛛を倒して下さいね】
レンが先に走ったせいで、ファングはかなり後ろの方で蜘蛛を倒しながら、レンの方に向かって足を進めようと必死に道を作ろうとしているが、大量の蜘蛛が次々とファングの行く手を塞いでいた。
「レン、お前は目の前の蜘蛛を倒して先に行け、俺も後から行くから」
ファングは蜘蛛を倒しながら、レンに伝えていた。
「分かったけど、蜘蛛にやられたら許さないからね」
「あぁ、大丈夫だよ。俺はレンの精霊なんだから簡単にやられるかよ」
「精霊は関係ないと思うけど、ファングの実力は知っているから大丈夫だと思うけど気をつけてね、エレント、アクト行くよ」
エレントとアクトに声を掛けると、二人はレンの近くに張り付くように、護衛を始めていた。
【ウィンドスラッシュ】
【アイストルネード、レンいまだ早く攻撃しろ】
「分かっているよアクト、旋風衝撃剣」
エレントは周囲の蜘蛛を切り刻み、アクトは凍らせた蜘蛛をレンにトドメを刺しながら、出口に向かって進んでいた。
「ファング、早く来なよ」
「分かっているけど、数が多いんだよ」
レンは出口に着々と近付いているのにファングは大量の蜘蛛に囲まれて、前に進めていない様子だった。
まずいよ、ファングを助けに行きたいけど、今は出口を目指して進まないと、助けに行ったら絶対に来るなと言われそう。
ファングの事を考えていたが、今は出口を優先して進んでいると、上の方から呻き声が響き、大量の小石とともに巨大な蜘蛛が現れた。
「ファング!」
レンとファングの間に巨大な蜘蛛がいるため、ファングに近付く事が出来なかった。
「レン、お前は先に行け、エレント、アクト、アルトニス、レンを頼むぞ」
「何を言っているのファング」
【レン、今は出口に向かえ、出口から攻撃すれば、レンは安全に攻撃出来るだろう】
レンは直ぐにでもファングの所に助けに行きたい様子だったが、アクトに説得されて出口に向かって進んでいた。
「はぁはぁ、もうすぐ出口だよ。ファング大丈夫?」
「お前、大丈夫かよ。あんまり無理するなよ」
「えっ、いつの間にいるの?」
「お前が俺を呼んだ辺りから、上手く巨大蜘蛛の攻撃を交わして来たんだよ。少しは褒めて欲しいぜ」
ファングは瞬発力を生かして、上手く巨大蜘蛛の攻撃を交わしながら、レンの所に辿り着いていた。
「もうすぐ出口だな、レンここでへばるなよ」
「大丈夫だよ。ここでへばったら、死んじゃうでしょう」
「アハハッ、確かに、さぁ行こうぜ‥‥‥レン!」
「えっ、ファング何して‥‥‥」
ファングは出口の頭上の岩が崩れかけていることに気付き、レンの背中を押して、洞窟の外に押し出すと、大量の岩が出口を塞いでいた。
「えっ、嘘だろう。ファング、ファング」
塞がった出口の岩を叩きながら、ファングを呼んでいた。
「聞こえているよ、そんな声を出すな。アクト、レンを連れて先に行け、俺は別のルートを探して行くから」
ファングは塞がった出口の岩に背中をつけて、レンの鳴き声を聞きながら、アクトに話していた。
【お前、まさかここで死ぬつもりじゃないよな。いくら半精霊でも、お前は人間なんだぞ! 心臓が変化した核を突かれたらお前は死ぬんだぞ】
「大丈夫だよ、俺を誰だと思っているんだよ。レンをおいて死ねるかよ。だからレンを頼むよアクト」
【はぁ、分かったよ、だけど死んだら許さないぜ】
「あぁ、絶対に死なないよ。レン、頼むから何回も泣くなよ。俺はまだ死んでないぜ。お前が希望を持たなかったら誰が持つんだよ」
「だってファングが大量に蜘蛛に食べられるかも知れないんだよ」
「俺が蜘蛛如きにやられるかよ。レン、俺は絶対に死なない、お前に誓って必ず、お前の所に行くから、だから今はアクト達と先に行け、良いな」
「分かったよファング、だけど死んだら絶対に許さないよ、エレント、アクト、アルトニス行くよ」
レンはファングを今にも助けたかったが、二人だけの約束を交わして、レンは精霊三人を連れて泣きながら、先に進んでいた。
はぁ、またレンを泣かせたな。泣かせるつもりは無かったんだけど、これも全てお前らのせいだよ。なぁお前ら、俺の養分になれよ。
ファングは不気味な笑みをこぼすと大量の蜘蛛に向かって走っていた。
【レン、大丈夫かぁ、少し休めよ】
「うん、分かったよ」
レンがかなり憔悴しきっていたので、アクト達が森の中で休める場所を探してレンを休ませていた。
【レン、あまり思い詰めるなよ。ファングは大丈夫だよ】
「うん、そうだね。ファングは大丈夫だよね」
【ファングさんがあんな蜘蛛相手にやられませんよ。今頃倒して僕達の後を追っていると思いますよ】
【レン様、ファングさんが見たらそんな顔をするなと言われますよ】
エレント、アクト、アルトニスがレンを励ましていた。
「そうだね、ファングなら良いそうだよ。それよりもアクト達はファングと会話出来ないの? 僕もファングと会話をしたいんだけど繋がらないんだよ」
【俺もファングと会話したいんだけど、あいつ拒否しているんだよ】
精霊間なら会話が出来るので、ファングと通信しようとしたら拒否されて繋がらなかった。
「ファング、どうして拒否するの? もしかして、ファングに何かあったんじゃ」
【落ちつけレン、あいつだって事情があるんだから仕方ないだろう? 今はファングとの約束を守ろうぜ】
【ファングさんはレンさんと契約している限り、死んでないから大丈夫だよ】
「契約とか言っているけど、どうやって契約しているのか分かるの?」
精霊と契約しているが、確認の方法を知らなかった。
【はぁ、お前は本当に何も知らないんだな。手のひらの裏をよく見なよ】
アクトに言われて、手のひらを裏返して、よく見ると、五つの刻印が刻まれていた。
「何これ、レオスと違う刻印が横に五つあるんだけど」
【それが、精霊と契約した証だよ。契約の刻印は早い順に刻まれるから、俺が上から二番目でファングは五番目だよ】
【因みに僕は三番目でエレナが四番目】
【私は最初にレン様と契約したので、一番上の刻印になりますわ】
アクト達に説明されて、レンはホッとしていた。
「それじゃ、この一番下の刻印が消えない限りはファングは生きているんだね」
【まぁ、そう言う事だな。だからあんまり心配するなとは言えないけど、少しは楽になるだろう。今はファングを信じようぜ】
「うん、ファングの無事が確認出来るなら大丈夫だよ。これ以上泣いたら、ファングに怒られるね」
レンはファングの刻印を見ながら、ファングの無事を祈っていた。
「それじゃ、先に行こうか」
【レン、もう良いのか?】
「うん、大丈夫。少し休んだから、早く先に行こう」
【はぁ、ファングが無事だと分かると、直ぐに元気になるんだなファングが見たら泣き付くぞ】
「ファングは大丈夫だよ。あの程度でやられたら、精霊じゃないよね」
【お前、ファングにはキツいんだな】
ファングが無事だと分かった瞬間、態度が一変していので、精霊三人は戸惑っていたが、それがファングを信頼している証拠だと感じていた。
「早く行くよ、エレント、アクト、アルトニス」
【分かったよ、そんなに急かすなよ】
【いつものレンさんに戻ったね】
【内心ではファングさんを心配しているけど、私達には心配を掛けたくないんですわ】
【まぁ、レンさんらしいけどね】
レンとアクト達は反対側の海に向かって、森の中をひたすら歩いていた。
バリボリバリボリ‥‥‥。
ファングが閉じ込められた洞窟内では不気味な音を立てて何かを喰らっている音が響いていた。
はぁ、はぁ、まだ足りない。もっと俺にマナを寄こせ。
ファングは精霊の力を解放したのか、異形の姿に凶変して巨大な蜘蛛や普通の蜘蛛を襲い、全身黒い異形の体に吸い込まれるように丸呑みされて、マナを摂取していた。
はぁはぁ、うぇ、はぁはぁ、うぇ。
先に取り込まれた蜘蛛が、異形の姿の化け物にマナを吸い尽くされたのか殻などの残骸を体内から排泄していた。
はぁ、はぁうぇ、もっともっと俺にマナをくれよ。
異形の姿の化け物は残骸を排泄しながら、無数の目で周囲を確認して、蜘蛛がいないか、見渡していた。
はぁ、はぁ、まだ何かが動く気配がする、うぇ。
無数の目が周囲を張り巡らすと、巨大な蜘蛛が落ちて来た頭上に、大量の蜘蛛の卵を見つけていた。異形の化け物は無数の黒い触手を伸ばすと、蜘蛛の卵を掴み、全て異形の体に落とし込み、ブラックホールのように、体内に吸い込まれてマナを採取していた。
はぁはぁ、これで全てかぁ、うぇ。
異形の化け物はある程度、残骸を体内から排泄すると、光に包まれて、元の状態に戻り、近くの岩に寄り掛かりながら座っていた。
はぁはぁ、レンに見られたらなんて言うかな。
ファングは異形の姿になり、モンスターを貪りマナを採取していたので、レンに見せた時の反応が怖かった。
でもマナはある程度回復出来たから、レンを護るには十分だな。だけど、あの姿になると、自分で無くなりそうだよ。
理性は何とか保っていたが、まるで獲物を狩る化け物なので、ファングは異形の姿が嫌いだった。
何とか理性を保てたけど、やっぱりレンがいないとダメだなぁ。あのままだと、あらゆる物を食べ尽くしそうになるよ。
異形の姿のデメリットを感じて、今後使う時はレンのいる時に使おうと考えている。
それよりもレンは今頃どうしているかな。ちゃんとアクト達が護っているのかな?
ファングはレンの事をかなり心配していた。
レン、すぐ行くから待っていろよ‥‥‥! うっ、うぇゴホゴホ、うぇ。
ファングは口から、蜘蛛の残骸を吐いていた。
残骸を体内から全て排泄出来ていなかったか、うぇゴホゴホ。レン今行くからな。
ファングは体内から蜘蛛の残骸を時々吐きながら、レンがいる場所に向かって洞窟内を彷徨っていた。
「はぁ、疲れたよ」
【レン、お前はここで休んでいろ、俺とエレントが何か食べ物を探してくるから、アルトニスは火を起こしてレンの傍に付いていろよ】
【了解、よっと、それじゃ火の準備をしてるね】
アルトニスは実体化すると、火の準備に取り掛かっていた。
「僕も手伝うよ、アルトニス」
【良いよ、レンさんはゆっくり休んでいてよ】
「だけど‥‥‥」
【レン、アルトニスが休めって言っているんだから、素直に従えよ】
「分かったよ、休んでいれば良いんでしょう」
【それじゃアルトニス、あとは頼むぜ】
【エレントとアクトも気をつけてよ】
エレントとアクトは火を起こしたのを確認すると、食材を探しに、飛び立っていた。
「はぁ、なんか悪いねアルトニス、全て任せてしまって」
【良いよ、こうして、レンさんに尽くせるから】
「いやなら、素直に言ってよね」
【嫌とかないよ、こうして人間の姿でレンさんに尽くせるのが嬉から】
アルトニスは人間の姿だと、普通の十代の少年なので、レンから見ると頼りになるお兄さんである。
「なんかこうして人間になると、本当に僕のお兄さんだよね」
【えっ、僕、お兄さんらしく見えているかな】
レンに言われてアルトニスが照れていた。
「見えているよ、アクトやエレントだって、大切なお兄さんとお姉さんだから」
【へぇ、お前にそんなふうに見られているなんて恥ずかしいぜ】
【レン様、私凄く嬉しいですわ】
「えっ、いつの間に戻って来たの? かなり早くない?」
【そんな遠くに行ってないからな、近くにあった木の実や山菜を採って来てやったぞ】
アクトが採ってきた、山菜をアルトニスに渡すと調理をしていた。
「まさか、聞かれていたなんて、恥ずかしいよ」
【悪かったな、立ち聞きして】
エレントとアクトに人間になっている時の印象を聞かれていたので、顔を赤くしていた。
「それよりも、山菜に何も調味料を掛けてないけど、味があるの?」
【いや、多分素材の味だよ。まぁ見ていなよ】
アクトが立ち上がり、魔法を唱えて暫くすると遠くから水の固まりが飛んで来て、アクトの近くで浮いていた。
「アクト、その水は何?」
【何って、海水だけど、エレント、アルトニスよろしく】
【了解】
【分かりましたわ】
エレントとアルトニスはアクトが魔法で運んだ海水を熱して塩を作って、山菜に振りかけていた。
【ほら、食べなよレン、温かいうちに】
「ありがとうアクト、なんか凄いね、普通は出来ないよアハハッ」
アクト達が塩を作っている所を目の前で見せられたので、呆気に取られていた。
「うん、美味しいよ。それよりも、誰かに見られたりしないの?」
【大丈夫だろう。もう夜だから、海水が空中を移動している様子は見えないと思うぜ】
辺りはすっかり暗くなって、夜を迎えていたので大丈夫だとアクトは言っているが若干心配だった。
「まぁ、夜だから誰も見てないと思うけど、もう少し考えてやってよ」
【悪かったよ、次はもう少し考えてやるから許して】
「別に怒ってないから、そんな顔をしないの、全く本当に精霊なんだか疑うよ」
精霊らしさを全く感じないので、アクト達に確認していた。
【いや、普通に精霊だから、俺達が何をやろうと自由だろう】
「普通そこまで自由過ぎるのはアクト達だけだよ」
アクト達の自由さに翻弄されているレンだったが、とりあえず今後も問題なければ自由にさせてあげる事にした。
「それよりも、僕達は何時までこの生活が続くのかな?」
【さぁな、エレナに確認したけど直ぐに動かないから、一週間程度この生活が続くと思うぜ】
アクトは定期的にエレナと通信を取っているけど、直ぐに動く気配はないと報告を受けていた。
「そっかぁ、暫くこの島で生活するのか、なんか辛いよ」
アクトに一週間程度と言われて、遠くの空を見ながら言っていた。
【おーいレン、現実逃避するな、俺達が付いているから安心しなよ】
「そうだね、ありがとうアクト。だけどファングを探さないと行けないんだよね」
ファングとは洞窟で離れてしまったので、ファングと再会する方法を考える必要があった。
【まぁ、ファングなら大丈夫だろう。今頃、必死にレンを探しているかもよ。それよりも、温かいうちに食べなよ。折角俺とエレントが採って来たんだから】
「そうだね、頂きます」
アクトから焼きたての山菜を渡されて、食べようとした時、奥の方で何かが揺れる音がした。
「えっ、今なんか揺れた音がしなかった?」
【レン、お前は食事をしていろ、俺が様子を見るから】
「うん、分かったよ」
レンはアクトに言われて、食事をしていると突然アクトが叫んでいた。
【ファング、しっかりしろ】
「えっ、ファングがそこにいるの?」
アクトが大声で叫んでいたので、レンが向かうと、そこにはお腹を抑えて苦しんでいるファングの姿があった。
「ファング、しっかりして何があったの?」
「レン来るな、頼むから、今すぐ俺から離れろ、うっ、うぇゴホゴホ、うぇ」
「えっ、何これ」
ファングは口から、モンスターの残骸を吐き出していたので、レンは呆然としていた。
【こいつ、精霊の真の姿になって、大量のモンスターを取り込んでマナを摂取したな。その残骸を全て排泄しない内に人間の姿に戻ったから、体内に残った残骸を人間の口から排泄している所だよ】
「それって、あの船で見た異形の姿だよね」
【あぁ、そうだよ。ファングの真の姿は精霊フォレスの異様な姿で、体は全てブラックホールのように何でも吸い込むんだよ。一度黒い体に触れるとあらゆる物を吸収するから、かなり危険だぜ。それに、無数の目が周囲に現れるから、一滴も敵を逃さないよ。これで光と闇を司る精霊なんだから恐ろしいよね。全く光の部分がないから疑うけど】
アクトはファングが言っていた、光の部分の要素を全く感じないので、闇の精霊だと疑っていた。
【しかし、ファングさんはよくこんな危険な精霊を自分の物にしたよね、今でも不思議だよ。おそらく精霊の中だと上位クラスで危険な部類に入るね】
「そうなんだ、アハハッ、でもファングは僕の精霊だから見過ごせないよ」
レンは危険な精霊と契約した事を後悔しているけど、ファングは最初の友達なので、苦しんでいるファングを助けられないか、アクトに聞いていた。
【そんなの簡単だよ。お前がファングに命令すれば済むだろう。俺達精霊は契約者に逆らえないんだから、なんなら手のひらの刻印を翳せば良いよ。そうすれば逆らえないから】
「うん、分かったよ、ありがとうアクト」
「アクト、てめえレンに何を言っているんだ、そんな事をしたら、レンを取り込むかも知れないんだよ。うっ、うぇゴホゴホ」
ファングはレンを取り込む事を危惧していた。
【それはないね、仮にレンが体内に取り込まれても、吸収はしないし、逆にお前の体内でレンを護ると俺は思うぜ。だって契約者に危害を加える事は出来ないから、おそらく取り込まれそうになると、お前がレンの体に特殊な魔法を掛けて防ぐと思うよ】
【そうだね、船の中で異形の姿をしていた時、レンさんだけ、黒い何かが纏わり付いていたから、多分特殊な魔法で護っているんだよ】
「なら、大丈夫だね。ファング今すぐ楽にしてあげるからね」
「レン、俺は大丈夫だから、やめてレン」
ファングは異形の姿を拒んでいたがレンは手のひらを翳して、命令をしていた。
「レン、やめてくれ、頼むから、異様な姿になりたくないよ。レンにまた見せたくないよ」
「ファング、僕に隠し事はしないと言ったよね。僕もファングの体や力を何も知らなかったから、ここで一度僕に全てを見せてよ。僕は怒ったりしないから」
「うん分かったよ、ごめんなレン」
ファングはレンに謝りながら、悲鳴を上げ苦しみながら、異形の姿に変わっていった。
「これがファングの真の姿なんだね」
【あぁ、そうだよ。これがファングの真の姿で前の精霊フォレスの姿でもあるんだよ】
レンはファングの真の姿を見ながら、アクトに説明されていた。
「ねぇ、ファングに触れる事は可能なの?」
【あぁ、大丈夫だよ。レンなら体内に取り込まれないで、黒い体に触れられるハズだよ】
レンは異形の姿のファングに近付くと無数の目が突然現れて、レンを見ていた。
うっ、なんか異様な姿で、気持ち悪いけど、ファングに変わりはないんだよね。
レンは一瞬、無数の目で足を止めて躊躇していたが、再び足を動かして、ファングの所に行くと手を伸ばして、触れていた。
「はぁ、よかった。なんとか触れるみたいだね。ファング、そんな目で見ないの、僕の声が聞こえているよね。僕はどんな姿になってもファングを見捨てないから、だから僕の声に答えてファング」
レンは優しく、ファングに呼びかけると涙声で返ってきた。
「レンはずるいよ、いつも簡単に丸め込もうとするから、こんな化け物を受け入れるのはレンだけだよ」
「確かにそうだね、だけどファングは僕達の仲間で僕の精霊なんだから、見捨てたりしないよ。ねぇアクト」
【そうだな、ファングは化け物であらゆる物を食い尽くす、危険な精霊だけど、俺が認めた精霊だから見捨てたりしないぜ】
「アクト、それフォローになってないだろう。だけど凄く嬉しいよ。こんな俺でも受け入れてくれるんなんて」
異形の姿になってもレンやアクト達に受け入れてくれるので、ファングは泣いていた。
「ファング、無数の目から涙が流れているよ」
「ごめん、つい嬉しくて」
【なら、さっさと体内に取り込んでいるモンスターの残骸を排泄しろ。レンをあまり心配させるな】
「うん、分かったよ。レン、俺に命令したら、俺から離れてくれないか」
「えっ、うん分かったよ、全部排泄しなよファング」
レンはある程度、距離を取りファングに命令すると、ファングは苦しみながら、体内に残っているモンスターの残骸を排泄し始めていた。
「うぁ、なんて量なの?」
【凄いですわ、まだまだ体内からモンスターの残骸が排泄されていますわ】
【この量だと、おそらく洞窟内にいたあの蜘蛛を全て取り込んだみたいだね。まぁここにあるのは一部だけど、レンを探しながら排泄していた分を合わせれば、つじつまが合うよ】
【それ以前に、あの体のどこにあんな大量のモンスターが入っているのか不思議だよ。本当に体はブラックホールの作りになっているんだな】
レンとアクト達は大量の残骸を排泄している、ファングを見ながら、驚いたり分析をしていた。
「はぁはぁ、うっ、うぇ、はぁはぁ、うぇ」
「ファング、まだ排泄するの?」
「ごめんレン、まだまだ出て来そうだよ、ある程度排泄したハズ何だけど、うぇ」
「そう、なら向こうの茂みでやって、見ている方は気持ち悪いんだから」
ファングの排泄があまりにも気持ち悪いので、遠くの方で排泄してと促していた。
「レン、酷いよ、俺の全てを見るんじゃないのか?」
レンが全て見せてよと言ったので、最後まで排泄を見届けてくれると思っていた。
「もう見たから良いよ。全て排泄してから改めて見るよ。エレント、アクト、アルトニス、食事の続きに戻ろうか」
「ちょっと待って、レン、うぇ、うぇ」
【ファング、あまりレンに変な光景を見せるな】
【ファングさん、今は排泄に集中しなよ。かなり苦しそうだよ】
【ファングさん、レン様に汚い姿を見せないで下さい】
「だから俺の話を、うぇ、はぁはぁ、うぇ」
ファングはレンとアクト達に見捨てられて、食事を再び始めていた。
「アクト、時々ファングの様子を見てきてくれない」
【別に構わないけど、あの様子だと暫くは排泄しているだろう】
「はぁ、どんだけ、モンスターを吸収したんだよファング」
食事をしていると、今も遠くから、ファングの呻き声が聞こえているので、頭を痛めていた。
「ご馳走さま、はぁ、美味しかった。エレント、アクト、アルトニスありがとね」
エレント、アクト、アルトニスにお礼をするとかなり喜んでいた。
「さて、ファングの排泄は終わったかな?」
【流石にもう終わっているだろう?】
【これで終わってなかったら、ファングさんはどれだけモンスターを喰らったのかかなり気になるけど】
【それ以前にモンスターの残骸が山になっていますわ。見るだけで気持ち悪いですわよ】
レンと精霊三人はファングの様子を見るため、再びファングのいる方に歩くと、大量の残骸が山のように広がり、未だに排泄をして苦しんでいた。
「ねぇ、ファング。まだ排泄しているの? 僕も流石に退くレベルだよ」
「俺だって、もう排泄したくないよ。だけど、体の中がまだ疼くんだよ。うっ、うぇ、おぇ」
【おそらく、それが最後だろうな。巨大な蜘蛛まで取り込んでいたのか】
ファングは巨大な残骸を排泄すると、体の違和感がなくなっていた。
「はぁはぁ、レン、もう大丈夫だよ。見苦しい姿はもうないから」
「うん、それは分かったけど、この大量の残骸どうする? 見るだけで気持ち悪いし、ここにあったら不自然だよね」
ファングが排泄した大量のモンスターの残骸をどうしようか悩んでいた。
【なら、ファングの体内に戻せば、隠せるよな】
「アクト、俺が一生懸命排泄したのに、またもとの状態に戻すのか」
【アハハッ、冗談だよ。真に受けるなよ】
「はぁ、ファングこっちに来て」
「えっ、うん分かったよ」
ファングはレンの所に近付くと、レンはファングの異様な体を触りながら言っていた。
「もうこう言う事はしないでよファング。マナがないからって、勝手に真の姿になってモンスターを取り込むのは許さないよ」
「ごめんレン、もうしないよ」
「はぁ、エレント、風魔法で残骸を遠くに飛ばしておいて」
【分かりましたわ】
ファングは弱々しい声で謝っているので、かなり反省しているのが分かった。エレントは風魔法で遠くに残骸を吹き飛ばすと、レンはファングの異様な体を見ていた。
「改めて見ると気持ち悪いね、ファング無数の目を出して、こっちを見ないで」
「うっ、酷い言われようだよ」
【ファング、お前が選んだ道なんだから、レンに何を言われても我慢しなよ】
「分かっているけど、この無数の目は俺の目なんだけど」
「それは分かっているよ。だけど一度に見開いたら怖いでしょう。ファングなら目を開く数を調節出来ると思うけど」
「うっ、それは確かに言えます」
レンに言われると無数の目は調節されて、少なくなっていた。
「最初からそうしてよね」
「ごめんレン」
「はぁ、ファングはいつも謝って済ませようとするんだから」
「違うよ、本当に反省しながら謝っているんだよ」
「はいはい、分かったから、そんな声を出さないの、しかしこうして見ると本当に精霊なんだな」
ファングの真の姿を見せられて、本当に人間から精霊に変わっているのを実感していた。
「ねぇ、もとに戻っちゃダメかな」
「ダメだよ、もう少し調べたいから」
「分かったよ、好きなだけ調べなよ」
ファングは早くもとの状態に戻りたかったが、レンが許してくれないので、好きなだけ、体を調べさせてあげていた。
「はぁ、しかし凄いよね。黒い体に触れるし、手を押すと今度は体内に吸い込まれるから、どういう体の作りになっているのかな?」
レンはファングの体に手を触れたり、押したりして体を調べていた。
「レン、くすぐったいよ、それにあまり腕を俺の体内に入れるな、誤ってレンを取り込んだらどうするんだよ」
ファングがレンに注意しているので、イラッとしていた。
「ふーん、僕に反抗するんだ、誰のせいでこんな事をしているのか分かっているの? ファング、僕を吸収してよ、これは僕からの罰だよ。好きなだけ僕を吸収して、吐き捨てるといいよ」
「レン、お前、今なんて言ったんだ、答えろ」
ファングはレンが言った事を聞きだそうとすると、黒い体から無数の触手が現れて、レンを取り込もうとしていた。
「レン、頼むから今すぐ命令をやめろ、じゃないとお前を‥‥‥やめろ、なんで言うことを利かないんだよ、やめろやめてくれ頼むから」
ファングは必死に自分の体を制御しようと頑張っていたが、レンの命令には逆らえず、レンを触手で巻きつけて引きずると、体内に押し込み吸収していた。
「アハハッ、レンが俺の中にアハハッ、アハハッ」
【ファング、落ち着け】
「これが落ち着いていられるかよ、レンが俺の体内に入ったんだぞ、あぁ、もう終わりだよ。こんな世界消えればいいよアハハッ」
【まずいですわ、ファングさんが壊れかけていますわ】
ファングはレンを取り込んだ絶望で、暴れ回り必死にレンを体内から排泄しようとしていた。
【ファング、落ち着けよ。レンは吸収されたりしないよ】
「黙れ、俺を騙すなよ、レンは俺に吸収されて死ぬんだよな」
【はぁ、完全に理性が崩壊しているよ。本当、レンの事になると人が変わるんだから】
暴れて周囲に危害を与える前に、一度ファングを拘束させて、理性を一時的に戻そうとしていた。
「アクト、貴様、やっぱり俺を騙したんだな」
【俺は、一度も騙した事はないよ】
ファングは拘束を破ろうと、暴れ回っていた。
【ファングさん、アクトの話をちゃんと聞いて】
「アルトニス、お前までアクトの味方をするのか」
【はぁ、アルトニス下がって。ファング、俺の話をちゃんと聞け、レンはお前に吸収されていないよ。もし吸収されていれば、お前はレンの魔力で満たされているはずだぜ。なんでレンの魔力で満たされてないんだ?】
「えっ、確かにレンの魔力を吸収している感覚がない」
モンスターを取り込んでいた時は直ぐにマナが体内に吸収されているのが分かったが、今はレンが体内にいるのにマナを吸収している様子が感じられなかった。
【やっと気付いたか、だからレンは吸収されていない】
「じゃあ、なんでレンを体内から排泄出来ないんだよ」
【それはレン様に確認するしか方法はありませんわ】
【そうだね、直接レンさんに聞くしかないね】
「どうやって、レンと話すんだよ」
レンはファングの体内にいるので、話す方法をアクト達聞いていた
【はぁ、お前の体だろう、精神を体内にダイブさせて、レンと話せば良いだろう。お前の肉体は自在に変形出来るんだから】
「ありがとうアクト、レン、今行くな」
アクトに言われるとファングは直ぐに、精神を体内にダイブさせて、ピクリと動かなくなっていた。
【全く世話が焼けるぜ】
【そうだね、だけどレンさんも無謀な事をするよね】
【あぁ、そうだな。自分が死ぬかも知れないのに、ファングの体内に入るなんて】
【レン様は多分、ファングさんを信じて、ワザと体内に入ったんですよ】
【多分そうだな、今は無事に帰って来るのを待つしかないな】
ファングの体は宙に浮いたまま、アクト達に見守られながら、レンの帰りを待っているのだった。
ここがファングの体内なんだね。もの凄く広くて、薄暗いよ。
レンはファングの体内の特殊な空間を彷徨っていた。
これだけの広さなら、あの量を一度に取り込むのは可能だね。
レンは空間の広さを確認して、ファングが取り込んでいたモンスターの量に納得していた。
しかし、僕が吸収されている様子がないな、それにこの黒い靄見ないなものは何なの?
ファングの体内に入ると同時に、黒い靄みたいな物がレンの体に纏わり付いていた。
はぁ、今頃ファングは凶変して、暴れているのかな?
レンを吸収した絶望で暴れていると思っていた。
まぁ、僕が原因で周囲に危害を加えたら、完全に終わりだよあぁ、死にたい。
レンは寝転がり、悪夢を消そうとしていると、黒い触手が現れて、レンを呑み込もうとしていた。
はぁ、僕を吸収しようとしているんだねファング。良いよ好きなだけ、魔力を吸いな。
死を覚悟して、ファングに吸収されると思い目を閉じて吸収されるのを待っていると、聞き慣れた声が響いていた。
「レン、勝手に俺をおいて死ぬなよ」
「えっ、なんでファングがいるの?」
目を開けると黒い物体はレンを包み込んだ状態でファングの姿に変化していた。
「悪い、こんな姿でレンを拘束させて、だけどお前の本音を聞きたいんだよ」
ファングは、醜い姿でレンを拘束させて、レンの本当の言葉を聞きたかった。
「はぁ、本音かぁ、まさかファングからそんな事を聞くのは意外だよ」
「レン、顔を背けないで、しっかり俺を見ろよ。俺は真剣に聞いているんだよ」
「じゃあ率直に聞くけど、なんでまた隠し事をしたの? 僕にもう隠し事はしないと言ったのに、直ぐ破ったよね」
「それは、レンに嫌われると思って」
ファングはレンの厳しい質問に声を詰まらせながら、素直に話していた。
「そうだね、ファングは精霊で化け物だから隠したい事はあるよね。だけど、もう僕の精霊になったんだから、隠す必要はないハズだよねファング」
「はい、その通りです」
「なら、もう良いよ。ファングの全てを見せてくれたから、もう隠し事はないよね」
「うっ、俺、俺は‥‥‥」
「ファング、ここでも泣くの? 体の外ではアクト達が大量の涙を見てビックリしているかもよ」
「そんなの関係ないよ、お前を吸収しなくて本当よかったよ」
ファングは暫く、レンを包み込んだ状態で泣いていた。
「それにしても、ファングの体内は凄いね。別空間だよ」
「レン、俺の体の中で喜ぶなよ」
レンを拘束からハズすと、自分の肉体の一部を変化させて、ファングの姿になると、レンの傍に近付いていった。
「へぇ、凄いね、本当にファングだよ。だけど全身真っ黒だよ」
「当たり前だ、黒い細胞を俺の姿に変えただけだから、本体は別にあるよ」
レンは黒いファングを触っていた。
「アハハッ、くすぐったいよレン」
「へぇ、ちゃんと神経はつながっているんだ」
「レン、体内で俺の分身で遊ぶのやめてくれないか」
ファングが注意するので、ファングの体を弄くり回していた。
「アハハッ、アハハッ、はぁはぁ、まじで死ぬ」
「精霊なのにだらしない」
「レンが俺の分身で遊ぶのが悪いんだろう。それよりも頼むから俺の体内から出て来てよレン」
ファングは体内から出るように促していたが、レンは無視して奥に進んでいた。
「レン、どこを歩いても同じだよ。どこに行こうとするの?」
「確かに、どこを見渡しても同じだけど、僕考えたんだよね」
「レン、何を考えたんだ。俺の体で何をしようとしているんだレン」
レンの閃きはいつも無茶ばかりなので、不安に思っていたが、ファングの予想は当たってしまった。
「ここに僕だけの空間を作ろうと思って、可能だよねファング」
「まさかレン、俺の体内を住み処にしようと考えてないだろな」
「えっ、考えているけど、何か問題でも? ここに空間を作れば、僕やアリス達を自由に運ぶ事が可能だよね」
ファングの体内は特殊な空間になっているので、ファングの体内に入れば、自由に移動出来ると考えていた。
「理屈は可能だけど、アリス達は無理だろう。それにマナを吸収出来るものは全て、俺が取り込んで最後は体内から排泄するんだぞ」
「えっ、大丈夫だよ。僕の命令には逆らえないんだよね。なら体の一部を僕専用の空間にすることは可能だよね」
「レン、お前、何を言っているんだやめろ、うぁー」
レンは強引に、命令をすると、体内にファングの悲鳴が響き、一部の細胞が変化しているのが分かった。
「うん、完璧に僕専用のエリアだね。他の細胞と作りが違うのが分かるよ」
「うっ、酷い。俺の体を改造するなんて」
「ファング、これは僕からの罰だから、しっかり反省してよ。さて、ファング僕を体内から出して」
ファングに命令すると、黒い触手がレンを包み込み、体の外に向かって移動すると、ファングの体内から放出されていた。
「うぇ、ゴホゴホ」
「ファング、お疲れさま」
「酷いよ、レン」
【レン、無事だったか】
【レンさん、ファングさんに何もされなかった】
【レン様、無事ですか】
「うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
精霊三人は心配した様子だったので、ファングの体内で話していた事を説明すると、驚いていた。
【えっ、ファングの体内を住み処にしたの?】
「そうなんだよ、酷いよ。おかげで体の中がまだ変な感じだよ」
【まぁ、レンしか思いつかない発想だけど、俺は良い考えだと思うぜ】
「アクト、何を言って入るんだよ。これは完全に俺の体を悪用しているだろう」
【お前はそう捉えるけど、よく考えてみなよ、お前の体内にレンを居させた方が安全だろう? レンが指定した物以外は全てお前に取り込まれて吸収されるんだから、誰もレンに近付く奴はいないだろう?】
「あっ、確かに、それじゃレンはそこまで考えて、俺に頼んだのか」
アクトの説明で、ファングが納得していた。
いや、ただ楽に移動出来ると思ったり、野宿をするとき、魔物から護ってくれると考えただけだよ。ファングがバカだから簡単に納得するんだね。
ファングがあまり深く考えてないので、ホッとしていた。
「それじゃレン、今すぐ、俺の体内で寝なよ」
「その前にやることがあるから」
ファングはポカンとしながら、レンについて行くと、大量の木々が倒れていて、エレントの風で木々を斬って大量に並べていた。
「レン、まさかこれを俺の体内に入れるのか」
「そうだよ、僕のベッドと休憩用のテーブルを体内で組み立ててお願いファング」
「レン、やめろやめてくれ、うぁー」
【レンさん、鬼だね】
【仕方ないよ、ファングはレンにたくさん怒らせているから】
ファングは悲鳴を上げながら、大量の木々を取り込み、体内で適切な大きさに分解してから、特殊な粘液で組み立てていた。
「うぇ、ゴホゴホ、うぇ」
「凄いよファング、不要な木々が少量しか排泄してないから、ほとんどが僕の生活空間の品に変わったんだね」
「酷い、残酷過ぎるよ」
ファングはレンを怒らせると怖い事は知っていたが、まさかここまでされるとは思ってなかった。
「それじゃ、ファングの体内で寝るよ。エレント、アクト、アルトニスもおいでよ」
【いや、俺達は明日の食料を探してくるよ】
【ついでに周辺の確認もね】
【レン様は、ファングさんの中でゆっくり休んで下さい】
「お前ら、本当に働くよな」
「分かったよ、くれぐれも気をつけてよ」
【あぁ、任せておけ】
エレント、アクト、アルトニスは周辺の調査と食料探してに飛び立ち、レンはファングの体内で横になっていた。
「レン、寝心地はどうだ」
体内に作った木のベッドの感想を聞いていた。
「うん、凄く良いよ、てか僕の部屋を再現しているよ」
「当たり前だよ、この方が使い易いだろう。お前の家には世話になっているから、お前が使っている物や配置は頭に把握しているよ」
ファングの体内の一角には、レンと同じ部屋を再現した木の家具が並べられていた。
「ねぇ、ファング。人間の姿でそっちは生活してくれない」
「えっ、何を言っているんだ、そんな事をしたら、何が起こるか分からないんだぞ」
人間の姿になると、レンがいる空間が圧縮されると思っていた。
「いや、大丈夫だよ。ファングが人間の姿で口から排泄していた時、お腹などが変化してないから、空間の広さは変わらないで、排泄する穴が変化しているだけだって分かるから」
「はぁ、お前はそう言う細かい所を見ているから凄いよ。分かったよ、人間の姿になれば良いんでしょう‥‥‥これで良いだろう」
「良いだろうって言われも変わった様子が分からないよ」
「確かに、だけど人間の姿になると、めちゃくちゃ違和感があるぜ。この辺りに異物を感じるから、普通は異物を感知して排泄するのに、全然そんな雰囲気を感じないよ」
ファングは人間の姿に戻り、違和感がある部分を触りながら、レンと話していた。
「ごめん、ファングに違和感を残すつもりはなかったんだけど」
「謝るなよレン、少しすればなれるから、それよりも不思議だよ。レンが俺の中にいるなんて未だに信じられないよ」
「そうだね、僕もファングの中にいるのが不思議だよ。だけど、ファングの中は広い空間になっているから、ここがファングの体の中なんて想像出来ないよ」
「アハハッ、確かに、俺はもう人間じゃないんだな。この姿は偽りに近いし」
ファングは人間ではなくなっていたので、人間らしく生きられるか不安だった。
「ファングは人間だよ、だってファングは精霊と違う所を持っているでしょう。違うのファング?」
「はぁ、お前だけだよ。俺をそう言うふうに言うのは、だけどスゲー嬉しいよ」
ファングの事を未だに人間として見てくれているので、レンを大切にしようと決心していた。
「なぁ、レン。お前の所に行っても良いか」
「えっ、別に良いけど、どうやって来るの? それに周りからファングを変な目で見られない」
「大丈夫だよ。本当にレンは心配性だな。俺の体は外からだとちゃんと寝ているようにするから安心しろ、少し横になったらお前の所に行くから待っていろ」
ファングは体を横にすると、目を閉じて精神を通して、レンのいる場所に向かっていた。
はぁ、わざわざ来なくて良いのに、折角ゆっくり寝られると思ったのに寂しいのかな。
一人で寝るために、自分専用の安らぎの場所を作ったのに、ファングが来るから全く意味がなかった。
はぁ、来たみたいだね。
体内にある細胞の一部がメキメキと音を立てて、ファングの姿に変化していた。
「レン、ベッドの感じはどうだ」
「それさっき言ったよね」
「確かに言ったけど、俺の目で確認したかったんだよ。ここは俺の体の中なんだから」
ファングは体内に作り上げた木の家具を一つ一つ確かめて、不便さがないか確認していた。
「うん、問題ないな。なぁレンの所に行って構わないか」
「えっ、別に構わないよ」
レンが許可すると、ファングはレンを抱きしめて、レンを取り込んでいた。
「ファング、ちょっと離れて」
ファングの体は一旦黒い液状に変化させて、レンを包み込むと、再び、ファングの姿に変化していた。
「悪いレン、この状態で居させてよ」
「はぁ、もうどうしたの、何か僕に言いたいの」
ファングの肉体に取り込まれて、身動きが出来なかったので、何か悩みがあるのか確認していた。
「俺、お前に迷惑ばかりかけて、本当に悪かったよ。お前だけだよ、俺を許してくれるのは、だからレン俺を捨てないで」
「僕は捨てないよ。もう何回も言っているよね」
「確かに、お前には何回も言われたけど、俺は何回もお前の約束を破ったんだよ。そんな俺をまだ許してくれるのはレンだけだよ」
「そうだね、普通は許してないよね。だけど、ファングは必死に自分を変えようと努力しているのは知っているんだから、そんな顔をしないの。だからファング離れてよ」
ファングはレンの言葉が嬉しかったのか、レンを取り込んだまま離れようとしなかった。
「なぁレン、俺凄く嬉しいよ。やっぱりお前と契約してよかった。だからレン、俺の体や力を好きに使って良いから、俺を捨てないで、俺はお前がいないと何も出来ないし、生きて生けないんだよ」
ファングはレンの温もりを感じながら、眠ってしまった。
「はぁ、なんで寝るかな、これじゃ動けないよ」
「レン‥‥‥俺を好きに使って良いから‥‥‥捨てないで」
「全く、寝言まで、僕の事を言うんだから、はぁ、今日はこの状態で寝るしかないかな。ファング、お休み、僕はずっと傍にいるから、ちゃんと僕の力を使って寝なよ」
ファングに軽く命令すると、気持ち良さそうに寝ているのが分かった。
しかし、ファングの体の中は凄いよ。寝ている間もあっちこっちで細胞が活発に動いているから、多分異物が入ると直ぐに取り込む体制になっているんだね。
ファングに拘束されて、身動きが取れないが、周りから細胞が活発に動いている音が響いている。しかしレンの作った一角には、音を遮断する特殊な黒い霧状のカーテンで遮っているのでレンの所には音が聞こえていなかった。
これだと僕の所にはアリ以前に塵も通さないね。完全に悪者がやる手法だな。
ファングの体内にいる限り、レンに危害を与えることは不可能に近かった。
さて僕も寝ようかな、お休みファング。
レンはファングに護られながら、二人仲良く気持ち良さそうに寝ているのだった。
次回更新は明日です。暖かくお待ち下さいm(_ _)m




