#36 出港前のレイスの特訓再びとファングの思惑
お待たせしました。第36話公開です。海底遺跡の依頼も終わり、レン君達は新たな国に行く前にピクニックするみたいですね(。>ω<。)
五人は海底遺跡の疲れを取るため数日近くの喫茶店や宿で過ごした後、アクトが棲んでいた遺跡の近くの森でつかの間のピクニックを楽しんでいた。
「今日で、僕達が住んでいた大陸とは一旦お別れだね」
「そうね、まさか海を渡るなんて想像しなかったわ。それに宿代が勿体ないわ。何で出航日が二週間おきしかないのよ」
レン達は二週間程度の滞在予定だが、船の出航日と合わず数日分の宿代を損していた。
「アリス、定期船に八つ当たりしても意味ないだろう? 定期船はもともと出航日が決められて出しているんだから」
「それはそうだけど、かなりの大損なのよ」
「ならまた、ギルドの依頼で稼げば良いだろう?」
「それは分かっているけど、レン君に危険な事をさせたくないから、その辺は複雑だわ」
「アリス、何で毎回僕の事を棚に上げるの?」
「えっ、そんなの簡単でしょう。レン君を失いたくないから」
「はぁ、またそれなの、他に答えはないんですか?」
定期船や宿代で若干揉めていたが、レンは敷物の上に寝転がり、精霊達を呼んでいた。
「エレント、アクト、アルトニス、今日はピクニックだから自由に遊んできたら、僕はお昼まで昼寝してるから」
【レン様、相変わらずお昼寝好きですね。レン様のお言葉に甘えて楽しみますわ】
【アルトニス、俺と勝負しないか】
【良いよ、僕に勝てるのアクト】
「アクト、アルトニス、空を飛ぶ時は姿を消してよね」
【分かってるよ。お前に迷惑は掛けないよ】
【大丈夫です、ついアクトと遊べて興奮しているだけですから】
【私は、四人と遊んだり、お喋りしてますわ。アクトとアルトニスはくれぐれも気をつけて下さいね】
アクトとアルトニスは姿を消して、楽しそうに空中でスピード勝負をして遊んでいて、エレントは姿を晒してファング、レオス、レイスの傍に行き、剣技などの相手をしていた。
「相変わらず、元気よね、レン君の精霊達。でも不思議だよ、姿を見せると普通に精霊達と触れるんだから」
「そうだね、普通は精霊と触れないんだよね」
最近、レン達は精霊達と触れる事を初めて知ったので何で触れるのか考えていた。
「当たり前よ、精霊は幽霊みたいに透けているのが普通なんだから、普通は触れないし、通常の攻撃ではやられないわよ」
【へぇ、意外と精霊について詳しいんだな】
「えっアクト、アルトニスと遊んでいたんじゃないの?」
【えっ、僕ならここにいるよレンさん】
アクトとアルトニスは姿を現して、奥から普通歩いてきた。
【初めて地面を歩くから、変な感じだぜ】
【そうだねアクト、僕も地面を歩くの初めてだよ】
アクトとアルトニスは地面の感触を確かめながら、一歩ずつ足を動かしていた。
「えっ、アクトさんとアルトニスさん、普通に人間の姿なんですけど?」
【いや、姿を見せていた時も人間の姿だったと思うよ。ずっと空を飛んでいたから、違和感があるのかな?】
【アリスさんが驚くのも無理ないですよ、アクトは意外とイケメンですからね】
【お前も同じだと思うけどなぁ。まぁ精霊は契約者の姿を写すから、契約者の命令で姿を自在に変えられるけど、俺達は本来の姿だぜ】
アリスは改めて、アクトとアルトニスをまじまじと見ながら体を触っていた。
【アリスさん、そんなに僕とアクトの体を触って何かあるんですか?】
【触っても何もないと思うけど、少しくすぐったいよアリス】
「何で普通に精霊に触れるの? しかも、ちゃんと人間みたいに触った所を感じているし」
【それは、レンさんに秘密があるんだよ】
「えっ、僕に秘密があるの?」
アルトニスが突然、レンに秘密があると言っていたので、寝転がっていたレンが起き上がっていた。
【簡単に言えばレンさんの魔力と僕達のマナを混ぜる事で実体化出来るんだけど、レンさんは精霊依も出来るよね】
【お前は気付いてないけど、精霊依をした時にレンの体の細胞が俺達の体内に一部吸収されているから、レンの細胞をもとに体を形成しているんだ。つまり俺達はレンの細胞から生まれたんだぜ!】
【そうだよ、つまりは僕達はレンさん家族なんだよね。レンさんの細胞を吸収した事で人間らしくなったでしょう? まぁ体の中身を調べられたら人間じゃないけど、僕達はレンさんの細胞を吸収したからずっと実体化でいられるよ。勿論、本来の精霊の姿になれるよ、見てよレンさん!】
【アルトニスの言うとおりだぜ。普通の精霊は長く実体化出来ないけど、お前の細胞を吸収した事でずっと実体化でいられるんだぜ、こんな夢みたいな事ないだろう? 完全に人間と共存出来るんだぜ】
アルトニスは実体化と普通の姿を交互に見せて、レンとアリスを驚かせていたが、レンは暗い表情になっていた。
「いや、アクトとアルトニスは何を言ってるの? 意味が分からないんだけど、僕の細胞を吸収したとかあり得ないよ。それじゃ僕は人間でなくなっているよね」
【いや、お前はれっきとした人間だから安心しろ。さっきも言ったけどお前の細胞をちょっと、もらっただけでその細胞を俺達のマナでレンの細胞を増殖させて体を作っただけだぜ】
「それって完全に人体実験に近いよね。はぁ、とりあえず僕の体に変化はないことは分かったから、くれぐれも精霊だとバレないようにしてね」
色々と問題があるけど、レンは聞かなかった事で処理していた。
「レン君は優しいわね。普通なら大問題だと思うけど」
「ならアリスが、変わりにやってよ。面倒くさい事に巻き込まれたくないし」
レンはこういった事になると大抵、何かに巻き込まれる傾向にあるので、早く話を逸らそうとしていた。
「私も面倒くさい事は嫌だわ。まぁレン君が聞かなかった事にするのは正解だと思うわよ。それにしても、本当に人間しか見えないよね」
「そうだね、学園で言えば高等部の先輩と遊んでいる感じなんだけど現実は全然立場が違うよね」
「確かに精霊達が子供みたいに色々と興味示して、あっちこっち見たり、ファングやレイスに木の実を持っていき色々聞いてから大丈夫そうな木の実だけ口に入れて確かめているしね」
精霊達の姿は高校生くらいの身長なのに、何故か子供みたいに無邪気になって動き回っているので不思議な光景を目にしていた。
【なぁレン、これファングとレイスに聞いて持って来たんだ。食べてくれよ】
「えっ、アクトこれ僕に食べさせる為に聞いていたの?」
【そうだよ、僕達が見つけた木の実だよ。さっき二人に聞いて味も確認したから大丈夫だよ】
「はぁ、アルトニスまで、分かったからそんな目で見ないで」
アクトとアルトニスに勧められて、木の実を口に入れて味わいながら食べていた。
意外と美味しいね、しかもアクトとアルトニスと一緒に食べて何故か嬉しそうな表情で僕を見るからつらいよ。
レンが木の実を食べたのを確認すると、アクトとアルトニスは嬉しそうな表情をして、自分達も木の実を食べ始めていた。
【やっぱり、お前と一緒に食べると凄く美味しく感じるぜ】
【そうだね、やっぱりレンさんと一緒に食べているからかな?】
アクトとアルトニスは木の実を味わいながらほとんど二人が食べていた。
どんだけ食べるのこの二人は、僕のために持って来たんじゃないの?
アクトとアルトニスはレンに木の実を差し出していたのに、ほとんど二人が食べていたので、レンは呆れながら二人が美味しそうに食べる様子を見ていた。
「しかし不思議よね。月光貝を食べていた時も感じていたけど、食べた物はどこに言ったの?」
アリスは二人の体を見つめながら、聞いていた。
【あんまり俺達をジロジロ見るなよ恥ずかしいだろう】
【アリスさん、それはね】
アルトニスが二人に説明をしていた。
「えっ、それじゃ食べた物は全て体内でマナに変換されるの?」
【そうだよ、この木の実も僕達のマナに変わるんだよ。まぁいくら食べても、満腹感にならないんだけどね。味覚くらいしか味わえないけど】
【だから俺達はレンとマナリンクすることで満腹感を味わっているんだぜ】
「えっ、そんな事しているの? 何も感じないけど」
【レンさんが感じる事はないよ。だって魔力を通してレンさんの神経に繋いでいるから、レンさんと共存している感じなんだよ。こうでもしないと食べた気分になれないからね。今は面倒くさくなってずっとレンさんとマナリンクして神経を繋いでいる状態だけどね】
【まぁ、お前が食べた物をちゃんと俺達が感じているから安心しろ。それにお前の体を常に監視出来るから、お前の体に何か異常やウイルスなどの感染をしてないかすぐに発見できるしな】
「いや、普通にやめてくれない。明らかに精霊達がやる事じゃないよね。何で僕の体を監視する必要があるの? 気持ち悪いよ」
明らかに精霊達がやる事ではないので、レンはアクトとアルトニスにやめるように言ったが応じてくれなかった。
どんだけ、僕の監視をするんだよ。しかも体まで調べるとか、あり得ないよ。普通の精霊は絶対にしないよね。
レンは嫌気が差したのか、再び寝転び、精霊達が言った事を忘れようと昼寝を始めようとしていた。
【レン、勝手にお前の体をマナで監視していた事は悪かったよ。だけどこれはお前の為になるんだから良いだろう】
「僕は別に気にしてないよ、変な事さえしなければ見なかった事にするから。ただ精霊がそこまでやる必要があるの?」
【必要はあるよ。レンさんが体調悪いと、僕達にも影響が出るから、特に僕達に流れる魔力量が減るとレンさんに連動して衰弱するんだよ】
【だからお前が病気や衰弱されると俺達のマナは基本的にお前に流して、体力維持や回復を補っているから、俺達に残るマナが少なくなるんだよ】
「えっ、それ本当なの?」
【本当ですわよレン様】
「エレントも二人の会話を聞いていたの?」
【途中から聞いていましたわよ】
ファング、レオス、レイスが休憩している間にレン達の会話を聞いてやってきてエレントが説明していた。
「それじゃ、本当なんだね。そう言う事は話してよね」
【悪かったよ。お前に言うと否定するから言いたくなかったんだよ】
「そうだね、普通は否定するよ。だけど隠す方が悪質だよ。その点は反省してよね。話してくれないと僕が精霊達を不信に思うよね」
【ごめんレンさん、僕達はこれから、隠さず話すから精霊界などに戻さないで】
「グェ、ちょっとアクト、アルトニス苦しいよ。君達は普通の高学年の生徒と変わらない大きさなんだから手加減してよね」
寝転がっている所にアクトとアルトニスが上から押し倒すように、レンを抱きしめていたのでかなり苦しそうな表情をしていた。
全くアクトとアルトニスは僕の事を心配し過ぎだよ。でも、体調を管理してくれるから、体調面は安心出来るかもね。
レンは内心では精霊達に感謝していた。それからレンは昼寝を始めて気持ち良さそうに寝ていた。
【本当に寝ちゃたね。可愛いよレンさんの寝顔】
【そうだな、ゆっくり寝かせてあげようぜ】
【レン様可愛いですわ】
精霊達がレンの寝顔を確認した後、アルトとアルトニスは三人の所に行き、エレントはアリスの傍にいた。
「エレントさんは精霊達と遊ばないんですか?」
【アリスさんもレン様の傍から動いてませんよね】
アリスはずっとレンの傍にいるので、エレントに見透かされていた。
「私はレン君の傍に付き添っているだけよ。別にレン君に変な事してないでしょう?」
【そうですわね、アリスさんはただレン様の傍に寄り添って見守っていますからね。アリスさんは三人と遊ばないんですか?】
「遊んだりするわよ。ただ今日は三人で剣の練習しているでしょう? 魔法の練習なら私がアドバイスして教えるよ」
【確かにアリスさんは魔法がメインですから、教える事がないですね】
「エレントさんは、二人と珍しく遊んでませんよね」
【毎日、遊んでいたから今日は息抜きですわ。アクトとアルトニスは仲が良いのでいつもくっついていますけどね】
アリスとエレントは楽しく会話をして時々レンの寝顔を見ながら、過ごしていた。
「レオス、レイス、もう少し剣をこんな感じに振るんだ。それじゃ剣の威力が落ちるぞ」
ファングが二人に実演をして剣捌きを見せていた。
「意外と難しいね、ファングお兄ちゃん、もう一回見せて」
「僕も、もう一度見せて欲しいです」
【俺も混ぜてくれよ】
【僕も入れて下さい】
「えっ、アクトとアルトニスはレンの所にいたんじゃないのか?」
【いたけど、レンさんが寝ちゃって】
アクトとアルトニスはレンが寝てしまったので三人と遊ぼうとしていた。
「はぁ、レンは一度言った事はやるから仕方ないか、良いぜ一緒にやろうぜ」
アクトとアルトニスも混ぜて練習をしていると突然アクトが、ファングに対戦をやろうと言ってきた。
「ちょっと待てアクト、まだあの時の事を覚えていたの」
【当たり前だろう? お前、遺跡の中で俺と戦ってみたいと言っていただろう?】
アクトと契約した後、ファングは一人だけ精霊と戦ってみたいと言っていたので、アクトはその発言を覚えていた。
【へぇ、ファングさんは精霊と戦ってみたいんですね。普通に精霊と戦って勝てる人はいませんよ】
「分かっているから冗談で言ったんだよ」
ファングは必死に精霊と戦いたくないと言っているがアクトが否定していた。
【そうかなぁ、お前は戦いたい表情をしていたぞ】
【折角だから戦ってみたら、今ならアクトにダメージや痛みを与えられるから、ただし僕達の皮膚を斬らないでね。皮膚の内側は精霊の体で透けているんだから】
「分かっているよ。さっき向こうで話していただろう? 普通にこっちにも聞こえていたよ。でもお前ら凄い事するよな、そこまで人間らしくなりたいのか?」
休憩中に五人の会話が三人の所にも聞こえていたので、精霊達の事情はなんとなく知っていた。
【当たり前だ、俺達は人間に憧れているんだぜ。人間になれば、自由に動き回れるし、美味しい物をたくさん食べれるだろう】
「確かにそうだけど、お前らは精霊だよな。完全に精霊の役目忘れてないか?」
【別に良いだろう、今はレンと契約して、レンを護るのが俺達の仕事なんだから、それよりも早くやろうぜ!】
【僕はレオスとレイスの特訓を見ているから、あまり過激な攻撃をしてファングさんを傷付けないようにね。レンさんに怒られるのは僕達なんだから】
【いや過激な攻撃はしないよ。軽くやる程度だから安心しろ。さぁ、何処からでも掛かってきな】
「フゥー、まさか精霊と戦うなんて想像しなかったぜ。アクト、お手柔らかにお願いします」
【あぁ、こいファング!】
ファングとアクトが真剣勝負を始めると、アルトニスはレオスとレイスを連れて、少し遠くの所で二人の特訓を見ながら時々アクトとファングの様子を見ていた。次第にお昼が近づくと、練習をやめて、レンのいる所に集まってお昼にしようとしていた。
「レン君、起きてそろそろお昼だよ」
「うーん、まだ眠い」
「レン、起きろよ。お前が起きないとお昼にならないだろう」
レンは眠たそうな表情をしていたが全員に見られていたので顔を赤くしている。
「何で皆、僕の方を見るの? もしかて僕の顔に何か付いている?」
「いや、お前の寝顔が可愛いと思って」
「なぁ、もしかて皆、僕の寝顔を見ていたの?」
皆に聞くと頷いていたので、レンは顔を隠して呻いていた。
「それよりも早く飯にしようぜ」
「そうですね、剣の練習をしてお腹ペコペコですよ」
「はいはい、それじゃ食べましょう」
アリスがお弁当を出すと、五人は一斉にお弁当の具材やおにぎりを掴み食べ始めていた。
「はい、これはエレント、アクト、アルトニスの分だから仲良く食べてね」
【レン、俺達は良いよ。お前が食べろよ。俺達は精霊なんだから食べなくても大丈夫だよ】
「全くそう言う所は律儀なんだから、僕がアリスに頼んで精霊達の分も作って貰ったの! 皆で食べた方が楽しいでしょう? それに人間に憧れているんなら素直に受け取ってよ。これは僕の命令だからきちんと食べてね」
【全くレンさんには敵いませんね。僕達を人間として見てくれるのはレンさん達だけですよ】
【だから言ったでしょう? レン様は優しいですから私達の願いを叶えてくれるんですよ】
【はぁ、そうだな。お前を試してみたけど、やっぱり俺達が思った通りになったよ。レンありがたく食べさせてもらうよ‥‥‥! 美味いなんだよこれ】
【アクト、レンさんが仲良く食べてねと言ったよね。何勝手に摘まみ食いしてるの?】
【アクト、独り占めしないで私にも下さいよね】
「ちょっと、喧嘩しないで仲良く食べてよ」
精霊達はレンの近くに座り、レンの手渡した料理を見つめて、料理を口の中に入れると口をモゴモゴと何回も動かして美味しそうに味わいながら食べていた。
こうして精霊達を見ると本当に普通の人間とほとんど変わらないな。
精霊達が普通の人間と差ほど変わらないので、周りから見たら先輩達とピクニックに来ているとしか見えなかった。レンは暫く精霊達の様子を見ながらお弁当を食べていた。
「フゥー食べたぜ! 午後はレンも遊ぶんだよな」
「そうだけど、早めに切り上げるよ。確か夜に出航だから、夕方前にはフォード王国の街中で買い物したいし」
「そうね。早めに切り上げて日用品などを買い揃えないと行けないしね」
「そうか、ならあんまり遊べないな」
「だから今日はレイス君の特訓をします」
「えっ、僕の特訓ですか、レン師匠何をするんですか」
レイスは若干不安を覚えていたが、一旦周りの片付けをしてから、レイスに説明していた。
「えっ、耐性の特訓をするんですか」
「そうだよ。前にトレントの粉を喰らった時に毒で死にそうになったでしょう? その時ピーンと来たんだよ。魔法に特殊な効果が含まれていたらレイスは魔法吸収が封じられて吸収出来なくなるでしょうだから今の内に特訓して、体に耐性を作るんだよ。万が一の時はアリスがいるから今の内にやっておこう」
「レン師匠が言うのならやりますけど、不安だらけですよ。万が一僕が死んだらどうするんですか?」
「大丈夫だよ。お前なら出来るよ。いつも過少に見ているから自身がないんだろう。今まで特訓してきた事を思い出せよレイス」
「ファングさんが言うのなら僕、頑張ります」
「レイス君、その意気よ、レン君に認めて貰えるように私もサポートするわ」
レイスが気合いを入れた後、上着を脱いでお腹を叩きながら魔法を撃つのを待っていた。
「レン師匠、早く魔法を撃って下さいよ」
「ちょっと待って、どの効果の魔法にするか決めるから待機してて」
「おい、レイスがかなり元気なんだけど」
「多分、お昼が足りなかったのかな?」
「それしか考えられないわ。でもたくさん食べていたよね」
「そうだね、レイスお兄ちゃん見ていたけど、精霊達と同じくらい食べていたと思うよ」
「レオスは魔法に毒や麻痺など効果を付ける事できるの?」
「出来るけど、そんなに効果を付ける魔法はないよ」
「アリスはどうなの?」
「あるけど、そんなに強力な効果はないわよ」
「レン師匠、まだですかコソコソ話さないで早くやりましょう」
「レイスもう少しだけ待って」
四人はコソコソと話していたが、レイスが急かしているので、仕方なくやることにした。
「それじゃ、始めるよレイス」
「はい、いつでも来て下さい」
「それじゃ、アクト後はよろしく」
【了解それじゃ行くよレイス、ドクミリアクア】
「えっ、レン師匠、精霊を使うんですか、グェ」
突然、アクトが魔法を撃って来たので、レイスは慌てて魔法を吸収していた。
「ごめんレイス、四人で話したんだけど決まらなかったから精霊達に聞いたらアクトとアルトニスがやると言っていたから、交互にくるとおもうよ」
「ちょっと急に撃たないで下さいよ。でも凄いこれが精霊の魔法なんだね。それにレン師匠の魔力を感じます、凄く美味しいですよ。だけど何か急に目眩が」
レイスは精霊の魔法を味わっていたが、毒効果があるので、倒れ込んでいた。
「アリス、レイスを頼むよ」
「分かってるわ、今解毒するねレイス君」
「アリスさん、ちょっと待って下さい。このくらい大丈夫ですよ。僕のお腹はまだ活発に毒に対抗してますから、解毒はしないで下さい。はぁ、凄いよ。精霊の魔力が僕の中に流れてくるよ」
「レイス大丈夫なのかぁ、アリスに反抗しているぞ」
「大丈夫なんじゃない、倒れているけど不気味な笑みでお腹を撫でるように触っているから」
レイスは毒効果の魔法を美味しそうに吸収した後、再び立ち上がるともっと毒効果の魔法を下さいよと言っていたのでアクトが魔法を撃つと再び倒れるが、嬉しそうな表情でお腹を撫でながら魔法を吸収していたので、少しずつ毒に対する耐性が出来始めていた。アリスは大丈夫だと判断したのかいつの間にか、レンの近くにいてレイスの魔法耐性の特訓を見守っていた。それから、アクトとアルトニスは麻痺、暗闇など、レイスにとって不利になる効果を撃ってもらい、レイスはその魔法を吸収して、体をふらつかせたり、倒れたりを繰り返しながら何故か嬉しそうに魔法をほうばっていた。
「はぁはぁ、レン師匠、僕凄いでしょう! あらゆる魔法耐性が付きましたよ。これで僕は不死身ですね」
「そうだね、魔法を吸収する意味ではそうだけど、剣で刺されたら死んでるよ」
レイスは仰向けで倒れて、話しているので若干心配していたが元気そうなので安心した。
「やるじゃないかレイス、ならこれで仕上げだな」
「えっ、ファングさん何をするんですか? あっファングさんの魔法が僕の中に流れてきます」
「レイス、お前は絶対にレンを護れよ。そして俺達を絶対に裏切るな。お前を誘惑する奴は躊躇わず殺せ。そしてお前が俺達を逆らった時、お前は俺達に攻撃出来ない。もし攻撃するような時は自ら死を選べ」
「えっ、ファングさん何を言って‥‥‥あれ頭がボーッとしてきた。ファングさん僕に何をしたんですか、これ普通の魔法じゃないですよね」
「ファング、レイスに何をしたの答えて」
「悪ぃ、レン。これ以上レイスが危険な存在になる前に、俺が管理させてもらうよ」
「ファングさん、何を言っているんですか、僕達は仲間ですよね。僕が仲間を裏切る事はしませんよ」
「確かにそうかも知れないけど、万が一があるだろう。レイスには悪いけど俺の刻印をお前の体に刻ませて貰うぜ」
「僕はファングさんを信頼していたのに‥‥‥」
「レイス、ファング魔法をやめてお願いだから」
「ダメだ、もう直ぐ終わるからそこで見ていろ」
レイスは気絶していたが、ファングはレイスのお腹に手を当てて魔法を発動させていて、魔法が終わるとレイスのお臍付近とファングの手のひらに同じ刻印が刻まれていた。
「悪いなレイス、これでお前は俺の操り人形だけど、いつも通りに過ごして構わないぜ」
「ファング、何でこんな酷い事をするの?」
「悪いなレン、殴りたければ好きなだけ殴って良いぜ」
「ファング!」
「どうした殴らないのか」
「殴れる分けないだろう。僕はファングの考えている事が分からなくなったよ」
レンはファングから離れて、奥の森に入って行ったのでレオスが慌てて付いて行っていた。
「はぁ、完全に怒らせたな。俺捨てられるのかな?」
「まさか、ファングがレイス君にあんな大胆な事するなんて見損なったわ、それに何で契約印の魔法を知っているの?」
「アリスか、契約印の事は俺の家にあった書物でこっそり会得していたんだよ。俺の家来を作る野望の時にな。それよりもお前だってレイスの能力を危惧していただろう?」
「そうかも知れないけど、レイスを操るなんてしないわよ。本当に何を企んでいるの?」
レイスに奴隷みたいな契約印を付けていたのでファングを問いただしていた。
「別に企んでいないよ。ただレンに纏わり付くゴミを消すためにレイスを僕のもとに置いただけだよ。僕の大切なレンを傷付ける奴は許さない。それにレイスは既に化け物になりつつあるから今の内に僕の手のひらに置いておけば安心だろう。レイスは僕の野望のために頑張ってくれないと困るからね」
「そう、分かったわ、レイス君の事は任せるけど、目覚めたら何て言うのかしら、レン君の方は私から説明するわ。それとファング、かなりやばい顔になっているからレン君が戻るまでにもとの状態にしなさいよね」
ファングは今にも敵を刈り取るような冷酷な表情をして、かなり殺気だっていた。アリスはファングから離れてレンのもとに走って行った。
「悪いなレイス、お前を護るにはこれしかなかったんだよ。万が一お前が敵になると強敵になり得るからその前に封じらせて貰うぜ」
「ファングさん、僕のためにしてくれたんですか?」
「レイス、何で起きているんだ、あの魔法は数時間寝ているはず」
レイスが目覚めていたでファングは驚いていた。
「僕はさっきの特訓で耐性が出来てますから、すぐに目覚めましたよ。それよりも、ファングさんは僕の為に契約したんでしょう。僕も薄々気付いていましたよ。いつか僕の力がレン師匠を傷付けるんじゃないかと、ファングさんに管理されてむしろ安心しましたよ。これで僕を悪用することが出来ませんから」
「お前はそれで良いのか、俺を信頼していたのに俺はそれをぶち壊したんだぜ」
「確かにそうかも知れませんね。だけどファングさんは僕を護るために契約したんでしょう。なら良いじゃないですかこれでレン師匠達を傷付けないなら、それに僕はファングさんの操り人形になったかも知れませんが、僕達が仲間なのは変わりませんよね」
「それはそうだが、お前は俺の制約が掛かるんだぜ本当に良いのか、今ならまだ解除出来るぜ」
レイスのお腹に契約印が刻まれているため、ファングが契約印を使って命令すれば、レイスはファングの命令に逆らえなくなるので、本当に契約印を受け入れるのか確認していた。
「いえ、このままで良いですよ。これは僕に対する呪われたお腹の罰ですから、このお腹に刻まれた刻印がある限りレン師匠を傷付けることはないですからね。レン師匠には僕から話しますよ」
「本当にごめんなレイス」
ファングはレイスに酷い事をしてしまった罪悪感に満ちて泣いていた。
「ファングさん泣かないで下さいよ。僕はファングさんの道具でも構いませんよ。だってこうすればレン師匠を護れるんでしょう」
「お前、アリスとの会話を聞いていたのか」
「そうですよ、全て聞かせて貰いましたよ。僕はファングのコマ何でしょう。なら僕の対価も聞いて下さいよ。僕はファングさんと契約したんだから」
レイスが不気味な笑みで、ファングにおねだりしていたので、レイスもファング同様に裏の顔を露呈していた。
「何が望みなんだよ、どうせレンの事だろう」
「そんなのファングさんとアリスさんが考えているのと同じですよ。僕もレン師匠と一生いたいんですよ。その為にはもっと強くならないと行けませんからね」
レンの知らない所で次々と約束事をしているので、ますますファング、アリス、レオス、レイスの企みに謎が深まっていた。
「あぁ、分かったよ。俺も同じだしなぁ、エレント、アクト、アルトニス、この事はレンには言わないでくれよ」
精霊達はレイスを見ているように言われていたので、二人の会話を聞いていた。
【はいはい、分かったよ。見なかった事にするよ】
【レンさんに言ったら、かなり怒りそうだね】
【いや、怒るどころか、チームの解散危機ですわ】
ファングとレイスはレンに説明するために、森の奥に走って行った。
【しかし、彼奴ら本当にレンに執着し過ぎだな】
【そうだね、二人のあんな顔初めて見たよ。だけど、これでレンさんの戦力は健全になったね】
【レン様は大変かも知れませんが、レイスの不安要素がなくなったので、上手く和解すればかなりの戦力になりますね】
精霊達は二人の分析をしながら、レンのもとに走って行った。
はぁ、ファングの考えが分からないよ。レイスを管理する必要ないよね。確かに危険な存在になっているけど、ちゃんとコントロールしているから大丈夫だと思うのに?
レンは森の中で一人佇んでファングの事を考えていた。
「レンお兄ちゃん、やっと見つけた。勝手に行かないでよね。何かあったらどうするの?」
「レオスかぁ、ごめん勝手に離れて、こっちにおいで」
レオスはレンを心配して今にも泣きそうな表情をしていたので、レオスを抱きしめて、慰めていた。
「ねぇ、レオスはファングの事どう思う」
「えっ、僕はファングの考えていること分かるよ。僕も兄さんの事があったから何となく分かる」
「そう、レオスもレイスの力は危険だと思っているんだね」
「うん、レンお兄ちゃんには言い辛いけど、僕はファングに管理されてよかったと思うよ」
「どうしてそう思うの?」
「それは‥‥‥」
レンの威圧感が半端なくてなかなか言えなかったが遠くから女の子の声が聞こえてきた。
「それはファングが管理すれば、私達に危害が及ばないからよ」
「アリスまで僕を探しに来たの」
アリスが若干息を切らしながら、レンの傍にやってきた。
「レン君、何腑抜けた顔をしているの?」
「だって、ファングがあんな酷い事をする人何て思わなくて」
「大丈夫よレイスは多分受け入れているよ」
「何で本人に確認してないのに言い切れるのアリス」
「レン君、落ち着いてほらファングとレイスが来たわよ」
レンとアリスが話していると、遠くから二人が必死に走ってきて、レイスがレンの目の前に立ち、話し始めようとしていた。
「はぁはぁ、レン師匠、ファングさんを責めないで下さいお願いします」
「何でレイスが謝るの、悪いのはファングだよね。レイスはそれで良いの」
「僕は構いませんよ。むしろファングさんに管理されて安心しました。このお腹の刻印は僕に対する呪いの罰ですから、この力でレン師匠達を傷つけたくなかったからファングさんに契約されて僕の不安はなくなりましたよ」
「そうなんだ。ファングは何か言いたいことある?」
「レンには、悪い事をしたと思っているよ。何でも罰を受けるから、捨てるだけは許して」
「はぁ、分かったよ。どうせアリスとレオスはレイスがファングに契約されてよかったと思っているんでしょう。しかも本人自らファングと契約してよかったとか言う時点で既におかしいけどね、ファング」
さっきまで、レオスとアリスに質問していたので何となく答えが分かっていた。
「何だよ、レン、まさか‥‥‥それだけは嫌だ頼むからレン、俺を捨てないで」
ファングは捨てられる恐怖なのか、レンにしがみ付いて何とか捨てられる事を回避しようと説得していた。
「はぁ、そんな事しないよ。何で怯えているの? ファングはレイスと契約したんだから、しっかりレイスを管理してよね。それとレイスに命令しないで上手くコントロールすること、命令していいのは、僕の指示だけだよ。ちゃんと守れるファング?」
「うん、ちゃんと守るから、レイスもしっかりやれよ。いくらコントロールしろと言われても、命令出来ない以上はお前の自己管理なんだから」
「分かっているよ、ファングさん、僕の命はファングさんに預けたのに等しいからしっかり頑張るよ」
「上手くレン君にコントロールされているわね。何となく分かっていたけど、さすがレン君だわ。私ならこの二人を纏められないわ」
ファングとレイスがレンの一言で素直に従っているので、アリスは呆れていたが、もし自分の立場なら同じ事になっているだろうと思っていた。
「それよりもアリス、精霊達はどうしたの? 確かアリスの傍にいさせてレイスを見ていた筈なんだけど?」
「えっ、そうだったかしら‥‥‥?」
精霊達の事をすっかり忘れていたアリスはかなり焦っていた。
どうしよう、折角ファングと和解したのに、今度は私に飛び火しそうなんだけど。
折角ファングと和解したばかりなのに、再びレンの機嫌が悪くなり、場の雰囲気が再び緊張感になるのを何とか避けようと色々考えていたが、良い答えが見つからなかった。
「アリスどうしたの? 急に固まって何かあったの?」
「えっ、別に何もないよ」
「そう、なら良いけど、精霊達も来たみたいだね」
アリスと話していると、遠くから精霊達が走ってくるのが見えていた。
【レン、やっと見つけたぜ】
【レンさん大丈夫ですか】
【レン様、皆さんと和解したんですね】
「うん、全て解決したよ。ごめん君達をおいていって」
【何でお前がそんな顔するんだよ。前にも言ったけど俺達なら大丈夫だよ】
「フゥ、何とか回避出来たわ」
レンと精霊達が話している間、アリスは息を吐きながら安堵していた。
「いや、精霊達が来なかったら回避出来ないだろう、ってイテー」
「ファング、アリスどうかしたの?」
「何でもないよレン君。オホホホ」
アリスがファングに強いパンチを体にぶつけていたが、何事もなかったように振る舞っていた。
「そう、なら良いんだけど」
「アリス、お前何をするんだよ」
「それはこっちの台詞よ、今度余計な事を言ったらレン君にファングの本性バラすからね」
「うっ、それだけはやめて下さいアリス。レンに言ったら完全に仲間から外されるだろう」
ファングとアリスがコソコソと話しているが、またくだらない事で揉めていると思い無視していた。
「それじゃ、そろそろ戻って買い物に行こうか、精霊達はここでお終いね」
【あぁ、もう少しこの状態でいたかったけど、今日は楽しかったぜ】
【僕も色々と楽しめたから、満足だよ。また皆とピクニックやろうね】
【私も久しぶりに息抜き出来て楽しかったわ、それに皆とお弁当が食べられたのが一番の収穫だわ。それじゃレン様、私達は姿を消しますけど、常に傍にいるから安心して下さいね】
精霊達が笑顔で手を振ると、姿を消していたけど、やはりレンの所だけ不自然な風が靡いていた。
何で精霊がいますアピールをするんだよ。普通に不自然過ぎる風が吹いているんだけど? 僕の傍にいるんだから、僕の周辺を回らないで。
五人はピクニックを終えて、フォード王国の街中に向けて歩き始めるが、レンの所だけ風が靡くので、精霊達にやめるように言っていたが拒否されたので、レンは目障りな風と対抗しながら歩くしかなかった。
「さて、買い物だけど時間があまりないから、各自で回る事にしようか」
「それは構わないけど、レン君は一人だとダメよ」
「何でダメなの?」
「そんなのお前が買い物中に誘拐される可能性があるだろう」
「いや、ないと思うよ。治安が悪いなら分かるけど、君達も誘拐されるリスクあるよね」
「それはないわ。私達は強いから、直ぐに撃退しているわ」
「あっそうですか、何を言っても無駄だったよ」
一人でそれぞれ買い物をしようと提案したのに、何故かレンだけはダメだとキッパリ言われたので、レンは呆れていたが、四人は逆に燃えていた。
「誰がレンのボディガードをするんだ?」
「それは僕だね。僕はレンお兄ちゃんの弟だから」
「ダメよ、弟だからだと言って行かせる分けないでしょう」
「何でアリスお姉ちゃんが出てくるの? 普通だよね弟と兄が一緒に行動するの」
「それがダメなの? レオス君は私達がいないといつもレン君にベタ付くよね」
「それの何が悪いの? 僕とレンお兄ちゃんは兄弟なんだから当たり前でしょう?」
「はいはい、分かったからジャンケンで三、二で分かれようね」
アリスとレオスが喧嘩しそうなので、ジャンケンで決めることにした。
「何で毎回私が負けるの?」
アリスはなかなかレンと二人っきりになれないので、久しぶりにチャンスが来たと思っていたがジャンケンに負けて悔しかった。
「公正に決めたんだから、そんな顔するなよ」
「うるさい、ならファングが譲りなさいよ」
「嫌だね。折角レンと二人っきりになれるんだから誰が譲るかよ」
ファングはジャンケンでレンの付き添いに決まっていたが、アリスは不服そうな表情をしている。
「まぁまぁ、アリスさん、あまり喧嘩すると、またレン師匠の機嫌が悪くなりますよ」
「そうだよ。今回は正々堂々決めたから、アリスお姉ちゃんも我慢しなよ」
「うっ、そうね。レン君が怒ったら大変だわ」
「はぁ、何で僕の事を棚に上げると素直になるんだよ。しかもかなり僕の事警戒してるし」
レンの事を仲間で言い出すと何故か四人は素直に従っているので、レンは頭を痛めていたが喧嘩しないで済むのなら、仲間の間でレンの事を言うのは容認しようと考えていた。五人はフォード王国に着くと、集合場所を決めて、アリス、レオス、レイスと分かれて、レンはファングと一緒に街中を歩いていた。
「なぁ、レン。レイスの事は本当にごめんな」
「はぁ、またそれなの、もう解決したから良いでしょう。あまりぶり返さないでくれる。ファングが真剣に反省するなら許してあげると言ったよね」
解決したことを再びぶり返していたので、レンは呆れていたがファングが何か言いたそうなので、ファングの言い分を素直に聞いている。
「そうかも知れないけど、俺がやった事は重罪に等しいのに何で俺を怒らないんだ」
ファングはレンに怒られる恐怖なのか若干顔を下にして、レンの反応を待っていた。
「怒った所で何が変わるの? 変わらないよね、レイスはこれからどんどん化け物みたいな体になるし、いつか誰かがレイスを管理しようと考える人はいるよ。僕もファングに管理されてよかったと思うし、レイスは僕達の仲間だからね。もしファングが罪悪感に思っているのなら、ファングはレイスに怒られるのが罰だと僕は思うよ。なんならレイスにアリスの荷物を絶対に運んでと命令して、一度レイスに怒られると良いよ?」
「はぁ、やっぱりお前には敵わないな。こんな状況でも仲間を信頼しているのはお前だけだよ。普通の人なら直ぐに仲間を解散してるぜ。とりあえず俺はお前の命令には従うよ、これはレンから受ける俺の罰だしな。レイスに命じる、アリスの荷物を全て運べ」
ファングはレンに敵わないのか、素直に命令に従って、レイスが怒りそうな命令をしていた。
「これで良いだろうレン。俺の手のひらの刻印が光っている間はレイスは俺の操り人形みたいに動いているはずだぜ。多分アリスはレイスの違和感を感じて、レイスのお腹の刻印を確認するかもな。俺が発動している間はレイスのお腹に刻まれた刻印が弱く光っているはずだし、服をめくらない限り光が漏れる事はないから、他の人から不審に見られる事はないよ」
「そう、なら良いけど、操り人形が気になるけど、レイスは大丈夫なんだよね」
「あぁ大丈夫だよ。お前が危惧している、記憶などはハッキリしてるから安心しろ。ただ体が逆らえなくなっているだけで、自分の意思に反して行動するから、レイスは自分の身に何が起きているのか把握するまで時間が掛かるかもな。レイスには悪いと思ったよ見えにくい場所に刻印を付けてしまって。まぁ相手から見られない分、レイスが敵と戦っているときは遠隔で命令出来るし、まさかレイスが操られているなんて相手は気付かないだろう。その点だけはメリットだけど、それ意外はレイスに悪いことしたな」
「そう、なら安心だけど、ちゃんとファングも反省してよね」
ファングの説明を聞いて安心していたが、若干レイスに悪いことをしたなと反省していた。
「分かってるよ。何回も言わなくてもお前の声は俺の中に突き刺さっているよ。お前の刺さった声は俺の体から抜けないから何回も言うと胸が苦しいんだよ」
「そうなのならファング嫌い、ファング捨てるよ」
「グェ、グフ、レン今の本気じゃないよな。俺を捨てたり、嫌いなったりしないよね」
レンは冗談のつもりでファングに色々言うと、ファングは誰かに攻撃されたのか、かなり息が荒くなっていた。
「はぁ、効果覿面だね。ファングを躾けるには最適かも!」
「なぁ、レン、今のは冗談で言ったんだよな答えてよレン」
「あぁ、うるさいよファング、周りに人がいるんだから離れて」
ファングが泣き付くように、レンにしがみ付いて確認して来るので、ファングを引き離して、先に歩いていった。
「ちょっと待ってレン、今の冗談なんだよな、お前が答えてくれないと俺は‥‥‥」
ファングを引き離して先に行ったので、悪いことをしなとファングを連れ戻しに振り返ると、ファングが暗い表情でふらつきながらレンの後ろを付いてきていた。
何で屍みたいにふらつきながら歩くの? しかも死にそうな表情してるし。冗談で言ったのに何で真に受けているんだよ。
冗談で言ったつもりが何故か真に受けていて、ふらつきながら独り言をブツブツと言っているので見かねたレンは急いで冗談だよと言うとファングは直ぐに息を吹き返しいたのでレンはファングの変わりように呆れていた。
はぁ、完全に僕がファングを操っているみたいだよね。何で僕の一言でコロコロと態度を変えるんだよ!
二人は街中を歩き、レンはお店の外から覗き込み入るお店を物色していた。
「なぁレン、お店の外で覗いているだけでお店に入らないのか」
ずっと、お店の外から店内を覗いて移動しているので、ファングが心配して声を掛けていた。
「えっ、入るけど。僕が探している品がないからこうして歩き巡っているんでしょう? ファングこそ何か買わないの?」
「俺は別に買う物ないし、それにお前だけ入れば十分だから、他は要らないよ」
「いや、僕はファングの物じゃないよ」
レンはお店をくまなく探しているとようやく目的のお店に来たのでお店の中に入って品物を見ていた。
海でバカンスするとか言っていたから、海パンを買わないとね。あと日焼け止めなどの日用品を買わないと。あっ、レオスの海パンどうしようか?
次行く所でバカンスを予定しているので、海に入る為の道具や日用品を見て回っていたが、肝心の弟のレオスの分をどうしようか悩んでいたが、レオスを紋章を使って呼び寄せる事にしていた。
アリスには悪いけど、レオスの海パンを買わないと怒られるから許して。
アリスに悪いことをしたなと思いながら、日用品を再び見てるとお店の扉が開き、勢いよいレンに向かって抱き付いていた。
「レンお兄ちゃん、見つけた」
レオスは耳と鼻をピクピク動かして、レンの体に顔を擦りつけていた。
「何でレオスがいるんだ?」
「僕が呼んだの、アリスに悪いことしたよ。レオス、来るの速かったけど、魔法とか使ってないよね」
「うん、大丈夫だよ。アリスが近くで買い物してるから、多分もう直ぐ来るよ」
「そうじゃあだいたい買い物は済んでいるんだね」
「うん、そうだよ。ただレイスの様子がちょっと変なんだよ。突然、アリスの荷物を持ち始めて、アリスは拒否しているのに強引に奪うんだよ」
三人が話しているとお店の扉が開きアリスとレイスがやってきた。
「レオス君、ここに居たんだね? 急に飛び出すから焦ったでしょう?」
「ごめんアリスお姉ちゃん」
レオスが急にお店を飛びして別のお店に行ったのでアリスが息を切らしながらレオスに注意していた。
「アリス、僕が呼んだんだよ。レオスに怒らないで、悪いのは僕だから」
「えっ、レン君。まさかさっき飛び出した原因はレン君なの」
目の前にレンがいたので、焦って飛び出したアリスはレンの姿を見て安堵していた。
「そうだレン君。レイス君が変なんだよ。私の荷物を強引に奪うんだよ。何か言ってよ」
「えっ、僕が言うの? ねぇ、レイスその荷物を僕に持たせて」
レイスに命令した本人なのでアリスに言うのが辛かった。
「レン師匠、渡したいのですが、さっきからおかしいんですよ。僕はアリスさんのプライバシーがあるからあまり荷物を持ちたくないのに体が言うこと効かないよですよ。ついアリスさんの荷物を見ると奪いたくなるんですよ。僕はおかしな病気に掛かっているのでしょうか?」
アリスから買った荷物を奪ったのか大量の荷物を抱えて、アリスの後ろに立っていた。
「いや、掛かってないよ。ちょっとレイスのお腹を見ても良い?」
「えっ良いですけど、僕のお腹に何があるんですか?」
「レン君、レイス君のお腹に原因があるの」
レンは荷物を抱えているレイスに荷物を持ったまま腕を上げてと、言ってから上半身の服を捲るとお腹の刻印が弱く光っていた。
「やっぱり、ファングが言ったとおりに刻印が光っているよ」
「当たり前だろう。俺が嘘を言うかよ。だけど、ちゃんと機能しているみたいよかったよ」
「まさか、レン君がファングを使ってレイス君に命令したの?」
「そうだよ。僕がレイスの怒る命令をして一度レイスからファングに怒られたらとファングに言ったんだよ。まぁ、上手く機能するかも確認していたから大丈夫だね。安心したよ」
「レン師匠、酷いですよ。僕に命令するなんて、てっきり病気かと思いましたよ。それにこのくらいで僕は怒りませよ。だって命令出来るのレン師匠だけですよね? レン師匠に逆らってファングが命令したら殴りますけどファングは絶対にレン師匠に逆らえないですよね」
「レイス、俺が命令出来ないからって良い度胸だな」
「ファング、レイス、うるさい。喧嘩するのならお店の外でやって」
二人が喧嘩し始めたので、レンは少し怒っていた。
「レン、ごめん。ついカーッとなって、もう言わないから許して」
「レン師匠、すみません。喧嘩しないから許して下さい」
「本当、二人はレン君の操り人形だわね」
「アリス、俺とレイスは操り人形じゃないよ。ただレンに逆らえないだけだよ」
「いや、同じ意味だと思うよ。ファング、レイスの命令解除しておいて、ちゃんと機能してるの分かったから、早く買い物をしよう」
「あぁ、分かったよ。レイス悪かったな今解除してやるよ」
「いえ大丈夫ですよ。レン師匠から与えられた罰だと思えば楽ですから」
若干お店内で喧嘩があったけど、五人は日用品を見たり水着の試着をして色々と必要な物を買い揃えていた。
「アリス、買い物はこれくらいで十分なの? 向こうに行くと値段が高いらしいよ」
次行くレイン王国は物価などが高い為、値段が比較的普通のフォード王国で買い物を済ませようとしていた。
「大丈夫よ。十分揃えたから、後はレイン王国に行って考えれば良いでしょう」
五人は買い物を終えると、港に向かって歩き、暫くすると港に定期船が来ていた。
「それじゃ、私は手続きするからちょっと待ってね」
アリスは定期船のチケットを取りに受付に向かい、四人はアリスが戻って来るのを待っていた。
「いよいよ、新しい冒険だね。レイス、凄い荷物持たされてるね」
「アハハッ、大丈夫ですよ。ちょっと荷物が多いですけど。それよりも僕も楽しみですよ。まさか海を渡るなんてまだ先の事だと思っていましたから」
「そうだよな、普通はこの大陸で夏季休暇を過ごすのが普通だぜ」
「そうね。レンだから出来る事なんだけど」
「アリス、手続き終わったの?」
「終わったわよ、はい、レン君とレオス君の相部屋ね。本当は私と寝たかったけど、レオス君が可哀相だから一緒したわ」
「ありがとうアリスお姉ちゃん大好き!」
「たまたまよ、くれぐれもレン君に変な事しないでよね」
五人はチケットを受け取ると、定期船に乗り込み各部屋に来ていた。
「それじゃ、また夕食の時にテラスで集合ね」
アリス、ファング、レイスに挨拶すると、レンとレオスは部屋に入って行った。
「うぁ、レンお兄ちゃん、ベットがフカフカだよ」
レオスはベットに飛び込み、ベットの感触を確かめていた。
「そうだね、エレント、アクト、アルトニス出て来て良いよ」
部屋に鍵を掛けたので、誰にも見られないと思い、精霊達を呼んでいた。
【へぇ、お前は暫くここで休むのか】
【なんか狭いですね】
「仕方ないよ、船の中だし」
【それじゃ、私の魔法で早く着くようにしますか?】
「良いけど、バレないようにね」
【わかりましわ、弱い追い風を靡かせておきますわ】
「ありがとうエレント、三日程度船に揺られるてつまらないけど大丈夫?」
三日程度、船の中で過ごすので、精霊達が自由に動き回れる場所がなかった。
【大丈夫だよ。どこに行こうが、お前の傍にいるだけだし】
【そうだよ、僕達はレンさんに付いて行くだけだから、自由に飛び回れるだけで十分だよ】
【それに私達はレン様と一緒に寝れますからね】
「えっ、僕と一緒に寝るつもりなの、アクトとアルトニスは水と火だから濡れたり、燃えたりしない?」
精霊達が一緒のベットで寝たいと言って来たので、大丈夫なのか確認している。
【濡れたり、燃えたりしないよ。俺達を何だと思っているんだよ】
【レンさん酷いですよ。確かに精霊が触ると濡れたり、燃えたりするかも知れませんが僕達は普通の精霊とは違うんですよ。それくらいの事はコントロールできますよ】
精霊達が大丈夫だと言っていたので、ベットに寝るのを許可していたが、レンから少し離れて寝てねと言ったが精霊達は喜んで飛び回っているので話を聞いているか不安だった。それからレンとレオスは三人に呼ばれたので、精霊達に食事から戻ってくるまで姿を消して過ごしてと言うと、レンの傍にいたいと精霊達が言ったので、レンは精霊達を引き連れて、食事を始めていた。やがて食事をしてると船が動き始めたので、五人は一旦食事を止めて、船のテラスから外の様子を精霊達と一緒に見ていた。
「いよいよ、新しい島に行くんだね」
「あぁ、どんな冒険が待っているんだろうな?」
「そんなの行って見ないと分からないでしょう? だけ凄く楽しみだわ」
「僕も楽しみですよ。早く新しい国を見てみたいですよ」
「僕と兄さんも凄く楽しみでワクワクしているよ」
【俺達が棲んでいた大陸があっという間に小さくなったな】
【そうですわね、暫く離れると寂しいですわ】
【エレント、アクト、僕もあの大陸に棲んでいるんだからね】
【そうだったな、今後はレンに紹介しろよ】
【分かってるよ、一度招待して恩返しするつもりだから、それよりも次行く所、楽しみだね】
【そうだな】
五人と精霊達は新たな国を想像しながら、レイン王国へ向けて出発した。だがこの先に待ち受けている新たな敵や海底遺跡で見た壁画など、新たな危機が五人に少しずつ迫っているなど知るよしもなかった。
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次回更新後、更新スピードが月2程度になるかも知れませんが温かく読んで下さいm(_ _)m作者が忙しくなければ引き続き、同じペースの更新スピードになりますm(__)m




