#193 ユース村で一時の休息!(前編)
お待たせしました。第193話公開です。
レン達は、無事に古い塔に閉じ込められていた先生達の救出を終えて、レオスの転移魔法でユース村の近辺に移動をしていた。
「ポワン、バシュン・・・・・・ふう、無事にユース村の近辺に移動が出来たのかなぁ?」
レン達はレオスの魔法で、ユース村の近辺に来ているハズだが、周辺は木々が生い茂り、町並みを目視で確認することが出来なかった。
【おう、レンが言った通りに来たなぁ。遅いから心配したぜ!】
レンの命令で先にユース村の近辺に来ていた精霊四人は、無事にレンの姿を確認出来て、ホッとした様子を見せていた。
「アクト、お前らがいると言うことはユース村の近辺に入るってことで良いんだよなぁ?」
【あぁ、そうだぜ、ファング。レンに言われた通り、結界を張っているから外部からは見えないぜ!】
【それよりも、レン君? 何だか一人だけメンバーが足りない気がするんだけど? ゼロ君はどうしたの?】
アルトニスは回りを見渡してもゼロの姿が見えないため、レンに確認したが何故か困った表情をしていた。
「アルトニス、ゼロはちょっと用事で単独行動を頼んだから気にしなくて良いよ!」
【えっ、そうなの? なら問題ないか・・・・・・アクト、そろそろ結界を解除して良いんじゃあないの?】
【そうだなぁ、解除しても大丈夫そうだなぁ!】
周りに人が居ないことを上空から確認すると、精霊四人は周囲に張っていた結界を解除していた。
「結界を解いたら、外は夜だったんだね。結界の中だと、外の景色が良く分からないね!」
精霊の結界を解く前は、周りの景色を目視でしか判断出来なかったので、外の様子を見たレン達は、かなりの時間が過ぎていることに驚いていた。
「まぁ、仕方ないだろう。ずっと外の様子が分からない場所に居たんだし、実際はどの位の時間を、あそこの塔で消費したか分からないしなぁ。その点はユース村で確認するんだろう、ベリッド先生?」
「あぁ、そうだなぁ、ファング・ドレイク。一応、ユース村で体勢を立て直す予定だから、どの位の時間が経過したかもそこに行けば分かるだろう! とりあえず、今日はユース村の宿で休もうぜ! レン・フォワード、ユース村までの案内を頼めるか?」
「はい、問題ありませんよ、ベリッド先生。アクト、ユース村の案内を宜しくね」
【あぁ、任せておけ、俺達四人がしっかりとユース村に案内するぜ!】
レン達はとりあえずユース村で体と休めるため、深い森の中を精霊四人に案内されながら歩き出すと、遠くの方から聞き慣れた声が聞こえていた。
「さ、ま・・・・・・レ、ン、さ、ま・・・・・・!」
「うん? 何か変な声が聞こえるぞ?」
ファングは遠くから聞こえる声に反応したので、耳が良いレオスが不敵な笑みでファングに注意をしていた。
「うん? 多分、気のせいだよ、ファングお兄ちゃん? レンお兄ちゃんも聞かなくて良いからね!」
「えっ・・・・・・うん、分かったけど、あの声はどう見てもゼロだよね?」
ゼロの声は段々とレン達がいる方に近付いているが、レン達はゼロに構っていられないので、足早にユース村に向かっていた。
「ぜっは、はぁ、はぁ、はぁ、酷いっすよ、レオス! 俺っちだけ、違う場所に飛ばすなんて!」
ゼロは何とかレン達の所に合流出来たが、あまりにも遠い場所に飛ばされていたので、ゼロがカンカンに怒りながらレオスに怒鳴りつけていた。
「あれ、意外と早かったね? もう少し遠い場所に飛ばせばよかったかなぁ?」
「レオス! 君って人は本当に俺っちが嫌いみたいですね! レン様、ユース村で数日くらい泊まるんですよね?」
「えっ、そうだけど?」
ゼロはユース村の宿で何かしようと企んでいるので、レンは少し心配になりながら答えていた。
「なら、こいつと一緒の部屋にして下さい!」
「はぁ、何で変態ゼロと一緒に泊まるんだよ。見るだけで反吐が出るんだけど!」
「レオス、良い機会ですから、一緒に互いのことを知りましょうか! それに少しはその口の悪さを直してあげますよ!」
「ふーん、ゼロがそこまで言うのなら、一緒に泊まってあげるよ! だけど、僕はゼロの言いなりにならないし、ゼロは僕の下っ端に仕立ててあげるよ!」
「くっ、レン様の弟だからって、言って良い事と悪い事があるでしょう!」
レオスとゼロが泊まる前から激しい火花が散らしていたので、見ているレン達は苦笑いしていた。
「あの二人の喧嘩は相変わらずよねぇ?」
「まぁ、良いんじゃあないの? ゼロといる時のレオスは何だか楽しそうだし、問題を起こさなければ大丈夫だよ」
「全く、レン君は甘いし、天然なんだから・・・・・・」
「えっ、天然ってどう言う意味、アリス?」
「レン君は知らなくて良いわよ。ファング、今回はレン君と一緒に過ごしなさい。あんたは精神的にまだ本調子でないんだから、今回だけはレン君を争う部屋決めはしないわ!」
本当ならここでレンを争う部屋決めをジャンケンで決めるが、今回は皆で部屋決めをしないので、ファングがもう訳ない表情でアリス達に謝っていた。
「アリス、悪いな。俺のために気を遣わせて」
「別に良いわよ、あんたが立ち直ってくれないとレン君の足を引っ張るでしょう! それにファングはレン君の精霊なんだから、あんたがレン君を護らないと行けないでしょう!」
「あぁ、そうだなぁ。レイスも悪いな」
「大丈夫ですよ、ファングさんはレン師匠を支える大事な柱何ですか、しっかりと精神面を直して下さいよ。今回は特別なんですからね!」
「あぁ、分かったぜ、ありがとな皆! レン、ユース村に着いたし、一旦は管を仕舞って置くぜ。万が一見られるとマズいしなぁ」
「うん、分かったけど・・・・・・ずっとは僕の体に巻き付けて置かないからね?」
「あぁ、分かっているから、そんな顔するなよ!」
ファングは皆に感謝しながら一人一人頭を下げて回っていると、宿の手続きを終えた先生達が宿の入口辺りで声を掛けていた。
「オーイ、お前ら宿の手続きが終わったから、中に入って来い! 中で部屋のカギを渡すから」
「はい、今、行きます!」
レン達はベリッド先生に呼ばれて宿の中に入ると、各自の部屋のカギを渡されていた。
「お前ら、今回はヤケに素直にカギを受け取ったなぁ? 二人部屋だからもう少し喧嘩すると思ったんだが?」
「今回はファングに譲りましたよ。本当ならここでレン君を掛けてジャンケンをするんですが、ファングがアレなので今回は特別にレン君の傍に居させることにしました」
「あっ、そう言うことかぁ。ファング・ドレイク、皆にちゃんとお礼はしたんだろうなぁ!」
「あぁ、ちゃんとしたからそんな顔で俺を見ないでくれよ、ベリッド先生!」
ファングは皆に見られながら恥ずかしい思いで何度か頭を下げると、レン達は食事が出来るまで各自の部屋に移動して休むことにした。
「とりあえず、レン君。また食事の場で会いましょう」
「うん、分かったよ、アリス」
「ファングさん、あんまりレン師匠に迷惑掛けないで下さいよ」
「あぁ、分かっているから、そんな顔するなよ」
「それじゃあ、行きましょう、レイス。部屋に行ったら、色々と注意事項を伝えて置くわね」
「アッハハハ、別にアリスの着替えなどは覗きませんよ!」
「レイス、私はまだ言ってないわよ?」
「いやぁ、言わなくてもニアンスで分かりますよ!」
レンとファングがアリスとレイスを見送る中、反対側の部屋の入口では、レオスとゼロが激しい火花を散らす睨み合いをしていた。
「あのう、レオス? 何で君がカギの管理をするんですか?」
「そんなの決まっているでしょう? 変態ゼロを部屋に入れないためだよ?」
「レオス、そんなことしたら、レン様に迷惑が掛かりますよ?」
「いやぁ、掛からないよね? 外で寝れば大丈夫だし?」
「レン、あの二人は大丈夫なのか?」
「さぁ、僕に言われてもねぇ・・・・・・レオス、ゼロ、僕とファングは部屋で休むけど、あんまり通路で騒がないでよ。一般のお客さんが寝ているんだから!」
「うん、分かっているよ、レンお兄ちゃん。ちょっとこの変態がうるさいだけだから! ゼロ、中でゆっくり話そうか?」
「プッキ、へぇまだそんなことを俺っちに言うんですか! 良いでしょう、中でゆっくりと話しましょう!」
レンとファングは二人を見ながら苦笑いすると、そのまま割り振られた部屋に入り、食事の時間が来るまで休むことにしていた。
「はぁ、やっと楽になれるよ。リオス、テオ、部屋の隣には一般のお客さんがいるから、あんまり部屋の中ではしゃいだり、大声を出しちゃあダメだからね!」
〈はい、分かったよ、レン君! うっわこのベット、フカフカだよ、テオも来なよ!〉
〈あっ、本当だぁ。フカフカで気持ち良く寝られそうだよ!〉
リオスとテオはファングが寝るはずのベットに乗ると、気持ち良さそうな表情を見せながら横になっていた。
「お前ら、普段はあんまり喋らないのに、レンと過ごす時は喋るんだなぁ!」
〈えっ、そうかなぁ? 言いたいことは普通に言っているけど、あんまり話すことがないからそう思うだけだよ?〉
リオスが首を傾げながらファングの方を見て話していたので、レンがファングに注意していた。
「ファング、この二人は僕の召喚獣であって、本来は僕が呼んだ時だけに現れるんだから、もし二人が帰還に従っていたら毎日話さないでしょう?」
リオスとテオは本来レンに呼ばれて、二人が暮らしている場所から転送と帰還を繰り返すが、リオスとテオはレンの帰還を拒絶しているので、仕方なくレンと一緒に暮らしていた。
「言われて見れば、この二人は召喚獣のルールである帰還を拒絶しているんだっけ? もうこの二人は帰還しなくても、俺達の暮らしに馴染んでるし、今さら帰還出来ないのが本音だろう?」
リオスとテオは人間達の生活に馴染み、最早レン達と変わらない生活になっていた。
「まぁ、今さら強制的には帰還はさせないよ。リオスとテオも今の生活が楽しいし、帰還した所で二人の生活が苦しくなるでしょう?」
「まぁ、確かに最初に会った時は人間不信だったからなぁ。リオス、テオ、レンと居られて楽しいか?」
〈うん、楽しいよ、ファング! 俺、レンの召喚獣に慣れて嬉しいよ!〉
〈それは僕も同じだよ。レン君に出会えて僕とテオは幸せ者だよ!〉
リオスとテオは嬉しそうな表情で二人に話すと、食事が出来るまでベットの上で気持ちよさそうにごろ寝していた。
「全く、さっきまであんなに元気だったのに、直ぐにベットの上で横になるんだから!」
「まぁ、良いんじゃあないの? リオスとテオだって意外と動いているんだから、彼らなりに疲れていると思うよ。それよりも、ファング、食事が出来るまでアレに触れて良いかなぁ?」
レンは窓際にあるカーテンを閉じて、周りから見えない状態に整えるとファングのアレを要求していた。
「お前なぁ、ここでやるのはマズいだろう?」
「大丈夫だよ。精霊四人がちゃんと見張っているから? ねぇ、アクト?」
【何で俺を見るかなぁ、レン?】
「何でって、アクトが精霊を束ねるリーダーだからでしょう?」
【はぁ、仕方ねぇ、ファング諦めろ!】
「アクト、始めから諦めているから大丈夫だぜ! レン、今から出すからしっかり受け取れよ!」
ファングは諦めた様子でレンの隣に座ると、周りを気にしながら不気味な管をお尻から伸ばしてレンの膝付近に置いていた。
「プニュプニュ・・・・・・はぁ、この触り心地が最高だね。でも、これがファングの汚い部分何て想像出来ないよ!」
「レン、さらっと気づくことを言うなよ! てか、この能力は本当に必要なのか? だんだん人間から離れているぜ?」
レンに言われている人間らしい姿からはどんどん掛け離れているので、ファングが新しい能力に疑問を感じ始めていた。
「確かに人間らしい姿からは遠ざかるけど、この能力を使えばファングも少しは戦いが楽になるでしょう? まぁ、ファングの罰に使うのが殆どだけど・・・・・・」
「おい、俺に聞こえるようにワザと言うなよ! まぁ、この能力は有り難く使わせて貰うが、基本的には尻の中に引っ込めて置くからなぁ! レン、食事の時間が出来るまで、悔いのないように触りまくれよ!」
「うん、分かったけど・・・・・・ちょっと意外かなぁ? 普段のファングならここで、僕の体に巻き付けると思ったんだけど?」
普段のファングならここで必ず抵抗するのに、今回だけはやけに素直過ぎるので、レンが意外そうな表情でファングを見ていた。
「レン、俺だって少しは成長しているんだよ! こんな管が無くても俺はお前を護れるんだからなぁ! 俺は有名貴族の剣士なんだぞ!」
「へぇ、今さら有名貴族を持ち出しても説得力ないけど? まぁ、ファングがそこまで言うなら、好きにすれば良いよ。この管は僕の指示通りに動くし、ファングも使いたくなったら、好きに使いなよ! ただし僕の制約があるから人間を取り込んでも、体内で消化出来ないけどね!」
レンはファングが出してくれた管を堪能した後、ファングが言われた通りにお尻の中に管を戻していた。
「レン、俺を人食いみたいに言うなよ。あれはお前が命じたから、仕方なくお前に従ったんだぜ! 俺は何も悪くないだろう?」
「確かに、あの塔では僕がやったけど・・・・・・これからはファングの意思で自由に使えるんだよ? 万が一、僕のことで無差別に人間を管に入れて、体内に取り込まないか心配だよ」
ファングはレンのことになると周りが見えず、ファングが敵だと認識した相手には容赦なく襲いかかるので、誤って人間を排泄管から取り込まないか心配だった。
「レン、俺はそこまで残忍で無いから心配するなよ! 俺の体は全部レンに管理されているんだから、そこまで悪さ出来ないだろう? 俺の体にはお前の制約があるんだぜ! さぁ、そろそろ食事の時間だし、この話はここで終わりなぁ! 気持ち悪い管も仕舞ったし、やっと本来の俺に戻ったぜ!」
ファングはこれ以上レンとの話を長引かせると自分が不利になるのが分かっているので、レンはファングを見ながら呆れた表情をしていた。
「全く、自分の話をされると直ぐに話を切り上げるんだから!」
「良いだろう別に・・・・・・お前と話すと話が拗れるんだよ。それにお前はもう俺の管を意のままに操れるんだから、それで良いだろう? 俺の視界に入る場所なら精霊印を発動させなくても、自由自在に管を出せるぜ! お前の動かす手の動きは常に、俺の目を通して気持ち悪い管に信号が行っているからなぁ!」
ファングはレンに否定したつもりが、逆に管を使って欲しいことを匂わすので、レンがため息を吐きながら指摘していた。
「ファング、遠回しに言っているけど、結局は僕に使って欲しいんでしょう?」
「うっ、そんな訳ないだろう、アッハハハハ・・・・・・。さっさと食事の所に行こうぜ!」
「全く、ファングは分かり易いんだから・・・・・・リオス、テオ、行くよ!」
〈うん、分かったよ、レン!〉
〈うーん、ようやくご飯か、テオ行こうか!〉
「アクト、君達はどうするの?」
レンとファングはこれから食事を取るが、精霊四人は食事を取らないので、待っている間に何をするのか聞いていた。
【レン! 俺達はこれから怪しい奴らがこの宿にいないか一人一人チェックするから、お前らはゆっくり食事して来いよ!】
【僕達は精霊だから、一人一人ゆっくり確認出来るんだよ! 僕達の姿は相手から見えないからね!】
【もちろん、周辺のパトロールも怠らないので安心して下さい!】
【レン、安心してゆっくり食事して来て良いよ。怪しい奴らを見つけたら直ぐに報告するから!】
レン達がゆっくり食事をしている間が、精霊四人に取っては活躍の場であるので、精霊四人はかなり気合いを入れて周辺のパトロールを始めようとしていた。
「レン、彼奴らの好きなようにさせて良いのか? この宿に泊まっている人を一人一人確認するとか言っているぜ?」
「まぁ、良いんじゃあないの? 本当はダメだけど、アクト達の姿は相手からは見えないから好きやらせておきなよ。折角やる気に満ち溢れているんだし!」
「はぁ、お前は本当に甘いよなぁ。まぁ、俺にも甘いけど、基本的に注意するが面倒くさいだけだろう?」
「別に面倒くさい訳でないけど、アクト達のやる気を阻害したくないでしょう?」
「うっ、それは一理あるが・・・・・・アクト、くれぐれもレンの迷惑になるようなことはするなよ!」
【あぁ、分かっているぜ、ファング。お前もレンに迷惑を掛けるなよ!】
「アクト、余計なお世話だよ!」
アクト達に注意する筈が逆にしっぺ返しを喰らったので、ファングは少し不機嫌になりながら、レンと一緒に食事をする場所に移動していた。
「レン君、こっち、こっちよ!」
「げっ、もう席を確保しているのかよ。アクト達で苛ついているのに・・・・・・はぁ、ここから逃げたい・・・・・・」
「アッハハハハ・・・・・・ファング、アリスが入るからって嫌そうにしないの! ほら、行くよ」
「うっ、アリスの所に行かないと駄目なのか、レン?」
レンとファングはアリスが確保した席に座ると、近くにある料理のメニューを手に取り、メニューを見ながらアリスとレイスに声を掛けていた。
「ねぇ、アリス?」
「うん? どうかしたの、レン君?」
「先生達は一旦ここに来たの?」
「いやぁ、まだ来てないわよ。私とレイスが席を取る時には既にガラガラだから、居れば直ぐに分かるわ!」
「じゃあ、まだ部屋で明日と言うか、今日のことを話しているかもなぁ!」
レン達が宿屋に着いた頃には夜の十一時を過ぎ、食事を取る頃には既に深夜の零時を回っていたので、レン達が頼める料理にも限りがあった。
「まぁ、仕方ないよ。ここに来るまでに色々とあったし、本当なら僕達はもう寝ている時間だからねぇ。アリス、とりあえず出せる料理を適当に頼もうよ! 待っていると時間が遅くなるし、先に頼んでも問題ないでしょう?」
「まぁ、レン君がそれで良いなら、頼みましょうか! 私が美味しそうな料理を適当に注文しておくわ!」
「アリスさん、適当に頼むのは良いですが、お金のことを考えて下さいよ!」
「大丈夫よ、レイス君! 私達は先生達を助けたのよ、多少多めに頼んでも問題ないでしょう?」
アリスとレイスが料理の注文内容で話をしていると、遠くからクラック先生が声を掛けてきた。
「アリス・ステイ、また勝手な解釈をしないで下さい!」
「ゲッ、クラック先生、いつの間にそこに立って居たんですか?」
「あなたが多少多めに頼んでも問題ないでしょうの辺りからよ。全く・・・・・・本来ならダメと言いたいですが、あなた達の活躍を考えるとダメと言えないでしょう? 今回は特別ですからね、そこのリオス君とテオ君は育ち盛りなんだから、ちゃんと食べさせてあげて下さいよ、レン・フォワード君?」
「えっと・・・・・・何で僕に振るんですか、クラック先生?」
急にリオスとテオの話をしてから、レンの意見を聞こうとするので、レンは困った表情でクラック先生の方を見ていた。
「何でって、リオス君とテオ君は成長期ですからね、それにこの先の成長が楽しみですから、ウッフフフ・・・・・・」
「クラック先生、食べ物で二人を釣るのはやめて下さい。リオスとテオがドン引きしていますよ!」
「あら、別に怖がらせるつもりはなかったのですが? アリス・ステイ、とりあえず料理を適当に頼んで下さいわ。ただし食べられる量にして下さいよ、お金のことは気にしなくも大丈夫ですので!」
「はい、分かりました。とりあえず美味しそうな料理を適当に頼みますね。すみませーん、注文したいのですが、大丈夫ですか?」
アリスが適当に料理を注文する中、レンはコップに注いである水を飲みながらゆったりと寛いでいた。
「ふぅ、それにしてもレオスとゼロは何をしているんだろう?」
いつも通りなら、レンが来るまでには全員が揃っていることが当たり前だったので、レンは二人のことを心配していた。
「まぁ、あの二人だから喧嘩して遅くなっているんじゃあないかぁ?」
「確かに、あの二人は何かと因縁が深いですからね。特にゼロはレオスに変態ゼロと変なあだ名を付けられていますし、あり得ます!」
「あぁ、変態ゼロねぇ。まぁ、あの姿を見れば意味合いは間違ってないけど・・・・・・」
「大間違いですよ、レン様! 全ての元凶はコイツです!」
「ほら、噂をすれば登場だぜ、レン・・・・・・」
ゼロの話をしていると、突然大声でレオスのことを指差してレン達の話を否定するので、ゼロの話をしていた三人が嫌そうな表情を見せていた。
「あのう、変態ゼロ? レンお兄ちゃんが居る前で堂々と言わないでくれるかなぁ? 凄く恥ずかしいし、僕に指を指さないですくれるかなぁ、変態ゼロ?」
「何を言っているのか、俺っちには分からないのですが? 俺っちはレン様の認識の間違いを正しただけですよ? あなたのせいで俺っちの印象がドンドン悪くなるなっているでしょう!」
ゼロに対する皆の認識が、どんどんあの醜いドラゴンに変わっているので、変なあだ名を付けたレオスにゼロは怒り心頭だった。
「それは全部、君が悪いだけじゃあん? レンお兄ちゃんにありのままの姿を見せるんだから?」
「仕方ないでしょう! レン様に言われたら普通は断れないでしょう」
「お前ら、寝ている客の迷惑になるから外でやれよ! 苦情が来たらお前らのせいだからなぁ!」
ほとんどの客は既に各部屋で寝ているので、二人の騒ぎで宿を追い出されないか、レオスとゼロを除く全員が二人を見ながら睨みを効かせていた。
「すっ、すみません。つい、カッとなって・・・・・・」
「ごめん、僕もゼロのことで熱くなって・・・・・・」
二人はファングに注意されると、少し落ち込んだ様子で二人は向かい合う形で席に座っていた。
「全く、レンがいる前で熱くなるなよ。お前はチームの中で最年長なんだから、少しは見本になることをしろよ!」
「はぁ、それが出来るなら苦労していませんよ、ファング。俺っちにはレン様が必要なんです。レン様に捨てられたら、俺っちはどうやって生きて行くんですか、ファング!」
ゼロを仲間から外すことはないが、余りにも自分の生活のことを考えていたので、レンが頭を押さえながらゼロの話を聞いていた。
「お前、そんなことを考えていたのか? レンがお前を捨てるわけないだろう!」
「そんなの分からないでしょう! ファングだって必死にレン様に捨てられないように泣き付いていたでしょう!」
ゼロはレンに泣き付く姿のファングを見て、自分も同じことが起こり得ると思っていたので、レンはファングの方を見て睨み付けていた。
「あっ、あれは色々とレンの命令を無視した結果であって、別にレンはお前を捨てることはないぞ! そうだろう、レン・・・・・・!」
ファングが困った表情でレンに助けを求めるため、レンは嫌そうな表情でため息を漏らしていた。
「確かにゼロを捨てることはないけど、あの姿を見せるファングも悪いからね!」
「うっ、あれは反省しているから皆の前で言うなよ!」
「ゼロ!」
「はい、何でしょうか、レン様?」
「君がどう思っているか知らないけど? 僕がゼロを捨てることはないよ。だってゼロを保護するって先生達に言ってしまったからゼロの生活は最後まで僕が責任を取るよ。ただ、ゼロの印象付けやあだ名は別になるけど・・・・・・」
ゼロはレンの傍に居られることが分かると直ぐに安堵した様子を見せるが、やはり自分の印象やあだ名は直らないので余り嬉しくなかった。
「うっ、やっぱり俺っちの印象やレオスが名付けた変態ゼロは直らないんですか・・・・・・」
「直らないと言うか、皆の前で何度も見せたり、言ったりしているから無駄でしょう?」
「誰のせいで、変態ゼロになったんですか! 俺っちの印象はレン様に全てを見せる都合で仕方ないですが・・・・・・せめてその変態ゼロだけはやめて下さい、レオス。俺っちの名前はゼロ・フォード・ナツでゼロと呼んで下さいと、何度も言っているでしょう。ゼロが嫌ならナツって呼んで下さい!」
「嫌だね、ゼロはもともと変態癖があるから変態ゼロなんだよ!」
「だから、その呼び名を皆の前で言うなって、言っているだろう、レオス!」
「はぁ、あの二人はこの先もずっとあんな感じに喧嘩しそうね!」
「まぁ、良いんじゃあないのか? ゼロもだいぶ俺達のチームに馴染んできたし、ゼロも一人で詰まらなそうにするよりは、相手してくれる人が必要だろう? ただそれがレオスやそこに入るリオスとテオの目に止まっただけだよ!」
「確かに、リオスとテオ君から見ればライバル関係だから、ゼロを敵視するのは仕方ないわね」
「レン、お前はあんまり気にする必要はないからなぁ!」
「別に気にしてないよ、ファング。ただ、あんまり問題だけは起こして欲しくないのが本音だよ。僕がこんなに多くの契約を結んでいるのは多分僕くらいだからねぇ・・・・・・」
レンは契約を交わしている精霊や召喚獣などの数を見て、既に諦めモードになっていたので、話をしていたファングやアリスが気まずそうにしていた。
「レン、お前が契約のことをどう思っているか知らないけど、少なくともお前が不利に働くことはないからなぁ! 皆、レンのために頑張っているんだぜ!」
「それは知っているけど、僕だって一応、魔法騎士科の生徒であって、魔法騎士なんだよ! いつまでも皆に護られるのは嫌なんだよ!」
レンが一番気にしている部分を話して来たので、アリス達の表情は少し泳いでいた。
「そっ、それはレン君を大切にしているから、皆はレン君を護りたいと、心の中で強く感情が出てしまうのよ!」
「そうだぜ、アリスの言うとおりだぜ!」
「僕もそう思いますよ!」
「俺っちもアリスさんに同感ですよ。レン様を護りたい気持ちは人一倍あります!」
〈僕も皆の意見に賛成だよ〉
〈俺も兄さんと同じ意見だよ!〉
「僕もアリスお姉ちゃんと同じで、レンお兄ちゃんを大切にしたいよ!」
レンの仲間達がアリスの意見に全員賛同するので、クラック先生は苦笑いしながら、話の当事者であるレンを揶揄っていた。
「ウッフフフ、皆に愛されていますね、レン・フォワード君?」
「クラック先生、彼らは普通の人と少し違うので、愛されている表現はちょっと間違いますよ! むしろ、僕の話になるとここにいる全員が同じことしか言わなくなるので、聞くだけ無駄ですよ」
レンがクラック先生にアリス達のことを説明していると、遠くの方から声を掛ける男性が二人いた。
「ヨォ、お前ら相変わらず話で盛り上がっているなぁ!」
「ガッハハハ、俺らも混ぜてくれよ」
「全く、空気が読めない二人ですわね!」
折角レンの話で面白くなりそうになったのに、ベリッドとファブリル先生のせいで話が頓挫したので、クラック先生が睨むように視線を二人に向けていた。
「クラック、何でそんなに睨むんだ? 俺とファブリルが何かしたかぁ?」
「それは自分の心に手を当てて聞いたらどうですか? 全く、良いところだったのに残念ですわ!」
「ガハハハハ、それは悪かったなぁ、クラック。それよりも、飯は頼んだのか?」
「えぇ、頼んだわよ。作れる物を適当にアリス・ステイに選んで貰いましたわ!」
「そうか、仕方ないなぁ。まぁ、深夜を過ぎているから当然かぁ。お前ら今日は一日中、自由にユース村で体を休めろ! その間に俺達は情報収集をしておくからなぁ」
ベリッド先生から今後の予定を聞かされたレン達は、特に異論は無くむしろ自由行動を楽しみにしていた。
「えっ、今日は自由に過ごして良いんですか?」
「あぁ、そうだ。お前らの活躍ぶりを見れば当然の休暇だろう?」
「確かに・・・・・・ならお言葉に甘えて自由に過ごします」
「それと、食事は各自で取って下さいね。会計は学園の名を出せば後で支払いが楽になるので、必ず店員に伝えて下さい」
「はい、分かりました。クラック先生!」
「なら、食事を取ったら後のことは任せますね!」
レン達は明日の予定を膨らませながら宿で食事を取り、明日に備えて早く眠りについているのであった。
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