#91 魔道列車に乗って見よう!
お待たせしました。第91話公開です。いよいよカルベル王国に向けて出発するけど、いつものように朝からグダグダが始まっているみたいですね(。ノωノ)
いよいよカルベル王国の出発の日を迎え、レンは荷物の最終確認をしていた。
「レオス、荷物の忘れ物ないよね。暫く戻って来ないから、ちゃんと確認してよ」
「うん、分かっているよ」
レンとレオスが荷物を確認している中、ファングは二人の様子を見ていた。
「レン、何時まで荷物の確認しているんだよ。そろそろ行く時間だぞ」
「ファングは、良いよね。荷物少なくて」
「いや、レンの方が異常だろう。本とか必要なのか?」
ファングの荷物は軽い着替え程度の服に対して、レンとレオスは教材類も持って行こうとしていた。
「だからバカだってアリスに言われるんだよ。先生が言っていたでしょう。カルベル王国に行っても授業をやるって、もし座学の授業が来たらどうするの?」
ファングは、二日前に言われた事を既に忘れていた。
「うっ、それは‥‥‥俺はカイトに‥‥‥」
「へぇ、ファングは良いよねカイトがいるから、カイト、ファングに教えないでー」
レンは冷たい目で言うと、ファングが慌てていた。
「レン、ちょっと待って許して、それだけは勘弁して」
「うるさいな、少しは自分で考えろ。だからアリスに実践しか取り柄がないと言われるんだよ」
「グッフ、レン、俺が自覚していること言わないで」
ファングはレンに色々言われて、精神喪失しそうになっていた。
「まぁ良いけど、レオス、荷物の確認終わった」
「うん終わったよ。レンお兄ちゃん」
「なら、荷物よろしくファング」
荷物の確認が終わると、ファングに荷物を渡していた。
「レン、何で俺に荷物を渡すんだ?」
レンとレオスから荷物を渡されて、ファングは嫌な予感がしていた。
「うん? フォレストの中に入れて運ぶのでしょう?」
「いや、俺荷物運びじゃないし、それにフォレストを便利な道具としか見てないだろう」
「見てないけど何か? なら契約破棄する?」
レンが軽く言って来るので、ファングは呆れた様子で、荷物を掴むと、フォレストの空間に入れていた。
「お前は都合良すぎだよ。はぁ、お腹が重い」
ファングはお腹を触って、辛そうな表情をレンに見せていた。
「ファング、態とらしい態度しないでよ」
「いや、二人分の荷物を入れているんだぞ」
「へぇ、自分の荷物はフォレストの空間に入れたのにねぇ。入れなければ普通に、手で運ぶよ」
レンに言われると、ファングは声を詰まらせていた。
「うっ、別に俺の能力何だから良いだろう」
「へぇ、カイトとクライブは良く我慢しているね」
「うっ、悪かったら、それ以上疑いの目で見ないでレン」
「だから、僕に近づいてくるな」
ファングがレンに泣きついて来るので、レンは嫌な表情をしていた。
「はぁ、ファングは何をしているんだ」
「多分、レン君に構って欲しいんだよ」
ファングの目を通して見ているカイトとクライブは、フォレストの中で呆れていた。
「そこまでして、マスターに構って欲しいのか?」
「ファングはレン君がいないとダメ人間だからね。それに最近レン君に構ってくれないから寂しいんだよ」
「いや半日くらい構ってくれないだけで、あそこまでやるか?」
最近のファングは、あまりレンに構ってくれないので、何とか振り向かせようと、躍起になっていた。
「仕方ないよファングだから。だけどやり過ぎてレン君の怒りを交ったら僕達にとばっちりが来るよ」
ファングの体はフォレストで形成されているので、三位一体しているカイトとクライブにも同じ、悲劇を味わうことになる。
「それだけは勘弁して欲しいな。マスターを怒らせると怖い事は分かっているから、何されるか分からないよ」
クライブはまだレンの罰を味わった事がないので、レンの罰がどう言う物なのか恐怖しかなかった。
「クライブ、いつか味わうから今から、色々想定した方が良いよ」
ファングの事だから、またレンの罰が来ると思っているカイトは、クライブにアドバイスしていた。
「カイト、怖い事を言うなよ」
「仕方ないよ。ファングだから必ずまたレン君の罰が来るよ。さぁレン君とレオス君の荷物を、いつもの所に運ぶよ」
「あぁ分かっているよ。はぁ、ファング頼むから、あまりマスターを刺激しないでくれ」
カイトとクライブは不安そうな表情を見せながら、レンが作り出した部屋に荷物を運んでいた。
「いい加減に離れろ」
フォレストの中で不安にしている二人とは対照的に違い、表向きではレンとファングがじゃれ合っていた。
「レン、許してくれるのか」
ファングはさっき言った事を撤回していた。
「いや、僕が怒っている要素あったの?」
レンは怒る要素が見当たらなかった。
「あるだろう。契約破棄って言った」
契約破棄など、レンと離れる事を言われると、全て怒っているとファングは認識していた。
「はぁ、そうなの。ファングはそこまでダメになったんだね」
レンが残念そうにファングを見ていた。
「うるさい誰のせいだよ。俺はもうレンがいないとダメなんだよ」
「分かったから、僕に近づかないで」
ファングがまたレンに近づくので、必死に遠ざけていた。
「はぁ、レンにはやっぱり敵わないぜ。レン、行く前に後ろ向いてくれないか?」
「えっ、何で後ろ向くの?」
突然後ろを向くように言われたので、レンはポカンとしていた。
「ちょっとした保険だよ。俺が良いと言うまで、絶対に後ろを向くなよ。レオスも後ろを向いていろ」
「えっ、分かったけど、レンお兄ちゃんに変な事したら怒るよ」
「そんな事するかよ」
レンとレオスは訳も分からないまま、ファングに従っていると、レンの後ろでファングが呻いていた。
「ファング、一体何をしているの?」
「レン、絶対に後ろを向くな。うっ、おぇー、ゴッホゴッホ」
「ファング!」
レンの後ろから、ファングが何かをはき出しているのが分かった。
「良いから、後ろ向くな。おぇー」
「ベチョ! ベチョ!」
ファングの苦しむ声が響くため、レンはファングの声に耐えられず後ろを見ると、黒い細胞が床に落ちて動いていた。
「ファング、これって‥‥‥」
「レン、見るなって言っただろう。あぁそうだよ、あの時使った能力だよ」
「じゃあこれを僕の影に忍ばせるの?」
無人島で遭難した時に、遭難者に使った能力をレンに応用するのか、ファングに聞いていた。
「そうだよ。俺が他の奴を相手して、手が離せない時にカイトとクライブに操って貰うんだよ。なぁカイト、クライブ」
ファングが声を掛けると、黒い塊の細胞が二つに分離してカイトとクライブの姿に変化していた。
「ヤッホーレン君、凄いでしょう」
「へぇ、これがフォレストの能力かぁ。本体はファングの中にあるのに不思議だぜ」
カイトとクライブはそれぞれ、体を見て動かしたり驚いたりしていた。
「ファング、前と体が違うよ。闇の部分しか行動出来ないんじゃないの?」
カイトとクライブは本来の姿をしているので、レンはファングに聞いていた。
「あぁ、以前はそうだったけど、カイトとクライブの肉体が混ざった事で、更に能力が向上したよ。普通なら夜しか行動出来ないけど、今は一日中動けるぜ。しかもクライブの能力も備わっているから、体を完全にコピー出来るし、肌の色や服まで完璧に化けられるから凄いだろうレン」
「レン君、僕達頑張ったよ」
「マスター、凄いだろう、これが三人の力だ」
三人はレンに向かって自信満々に、フォレストの能力を自慢していた。
「はぁ、何か凄すぎて、何も言えないよ。本当に魔王だね」
「だから俺達は魔王じゃなくて、精霊フォレストだよ。レオスもずっと後ろを向かないで良いから何か言えよ」
ファングが急にレオスに振っていた。
「何で僕に振るの? ファングお兄ちゃんの問題でしょう」
「お前は俺に恥を欠かせるのか」
「ファング、僕達は所詮、化け物だからしたないよ」
「そうだよ、それが俺達の宿命だよファング」
カイトとクライブに言われて、ファングは落ち込んでいた。
「アハハッ、それじゃ行こうか、カイト、クライブよろしくね」
「うん、僕達はファングと併用しながら、レン君の影で見守っているよ」
「マスター、俺達が付いているから安心しなよ」
「お前ら、レンの中に入る前に確認するぜ」
「えっ、何をするの?」
カイトとクライブはレンの影に入ろうとした時、ファングに止められので、何をするのか不安だった。
「別にレンには迷惑を掛けないよ。ちょっと確認するだけだから、なぁカイト、クライブ」
ファングの目が光ると、カイトとクライブの分身体も同じ場所が光ると、突然無言になっていた。
「ファング、カイトとクライブに何をしたの?」
カイトとクライブの様子がおかしいので、慌ててファングに聞いていた。
「あぁ、今は俺に忠実に動く人形だよ。俺の中にいるカイトとクライブも同じ状態、まぁ簡単に言えば俺の信号が強制的に二人に流れて、操っていると考えて良いぜ」
ファングは説明しながら、二人の分身をファングの意識で思い通りに動かしていた。
「じゃあカイトとクライブは、ファングになっているの?」
「まぁ、そう考えてくれると助かるかな。何なら試して見ろよ。そこのカイトとクライブの分身に」
ファングに言われて、レンは分身に疑心暗鬼しながら適当に言っていた。
「じゃあ、契約破棄しようかファング?」
レンが言った途端、カイトとクライブが凄い勢いで泣きついてきた。
「レン君、頼むから契約破棄しないで」
「マスター、契約破棄されたら俺死んじゃうよ」
ファングの心の本音が、カイトとクライブから出ていた。
「へぇ、ファングの本音がダダ漏れだね。ファング?」
「何でそこは制御しないんだよ」
ファングの本音を全てレンに言っているので、非常に恥ずかしかった。
「制御って、今はファング何でしょう? ファングが信号を送っているから無理でしょう?」
「うっ、まだ改良の余地がありそうだな」
ファングはカイトとクライブを見て、何かを考えていた。
「改良するのは構わないけど、あまり僕に迷惑掛けないでよ」
「大丈夫だよレン。命令系統をちょっと変更するだけだよ。まぁ、俺が命令しても、カイトとクライブの意識で動けるように改良するけど、命令系統の統括は全て俺になるようにするぜ」
「そう、後はファングに任せるよ」
レンはあまり乗り気じゃないが、ファングはやる気満々みたいで、カイトとクライブの命令を解除すると、早速命令系統を改造していた。
「ファング、もう行くのに何でフォレストになるの!」
「良いだろう。分身はもうお前の影に忍ばせたんだから。悪い所が見つかったらすぐに直すのが鉄則だろう」
フォレストの分身は既に、レンの影に溶け込んで身を潜めているが、本体の方は体を活発に動かして命令系統を改造していた。
「はぁ、それは分かったけど、カイトとクライブが苦しんでいるよ」
「レン、俺も苦しいんだけど」
「ファングは、苦しくないだろう。お前が俺とカイトの神経を繋ぎ直しているんだから」
「そうだよ。急にやるから、僕とクライブは準備出来てないんだよ」
「悪かったって、レンの為だから我慢してくれ」
カイトとクライブはファングに怒っていたが、レンの為だと分かると、我慢していた。
はぁ、何で僕の事になると、こんなに頑張るんだろう?
ファングやアリス、レイスなど、レンの回りにいる人は何故か、レンの為に命を張るので、レンは理解出来ないでいた。
「よし、これで俺が命令しても、お前らの意識で動けるぜ。ただし制約が掛かるけど、我慢しろよ」
「別に構わないよファング、これでレン君が護れるなら」
「そうだぜ、マスターさえ護れれば別に何しても文句は言わないよ」
「お前ら、悪いな。俺に気を遣ってくれて」
ファングはカイトとクライブに悪い事をしたと謝っていたが、二人は気にしてない様子だった。
「それじゃレン君、僕とクライブは本体と影から見ているね」
「マスター、安心して、任務を遂行しろよな。俺はカイトと同じで本体と影から見守っているぜ」
「うん、分かったよ。あっファング、フォレストの状態で待機してくれる」
カイトとクライブは精神の中に消えたが、ファングはフォレストの状態から人間の姿に戻る所をレンに止められていた。
「レン、何でファングの姿になっちゃあダメ何だ?」
レンに止められたので、ファングはレンに疑問符を付けていた。
「ファング、リオスとテオがいるでしょう。さっさと二人を中に入れてあげて、それと食料を入れて置いたから、ちゃんとカイトとクライブに頼んで食べさせてよ」
レンに言われるとファングは思い出したように、拒絶していた。
「レン、本当に二人を連れて行くのか?」
「仕方ないでしょう。誰が二人の面倒を見るの? じゃあファングは二人をどうするの?」
「うっ、それは‥‥‥カイトとクライブしかいないです。今、二人を入れるよ。ほらリオス、テオ、中に入れ」
ファングは双頭の黒竜の面倒を見てくれる人が思い付かず、レンに言われるまま、フォレストの体を横に広げて待っていた。
「リオス、テオ、カルベル王国にいる間は大人しくフォレストの中で過ごしてね」
レンはリオスとテオに頭を下げながら言っていた。
〈レン、頭を下げないでくれよ。俺と兄さんも分かっているから〉
〈そうだよ。僕とテオは自由に休めて、定期的にご飯が食べられるのなら文句言わないよ〉
〈それと退屈しのぎに、レン達の本があれば充分だよ。それじゃレン、何かあったら呼んでな〉
リオスとテオは、レンと約束を交わすと、素直にフォレストの中に消えて行った。
「彼奴ら本当に素直だよな」
ファングの姿に戻ると、リオスとテオの事を話していた。
「そうだね。ファング、体の方は大丈夫?」
荷物や黒竜の二人をフォレストの中に入れてあるので、レンはファングを心配していた。
「あぁ、問題ないぜ。ちょっとお腹が重いくらいだけだから、移動などの不便さはないかな」
「そう、もし無理なら遠慮しないで言ってよ。フォレストの中から荷物を取り出すから」
「レン、お前は心配症だな、大丈夫だよ。カイトとクライブが常に体を見ているから、何か異常があれば報告するし、その場で気づかれないように、フォレストの体を改造するから安心しな。俺は少しでもレンの役に立ちたいんだよ」
ファングはレンに一度言われた事は、必ずやり遂げたいので、レンが急に変更しても、ファングは一度言われた事を曲げたくなかった。
「分かったよ、だけど無理だったらちゃんと言ってよ」
「あぁ約束するよレン、お前に二度隠し事はしないと誓っているから、もし無理だったら必ず言うよ」
「なら、行こうか。アリスとレイスが待っているから」
三人は部屋の確認をもう一度してから、戸締まりをすると、学生寮の外に移動していた。
「おはようレン君、ファング、レオス君」
「おはようございますレン師匠、ファング、レオスさん」
何時ものようにアリスとレイスが出迎えていた。
「おはよう、アリス、レイス」
「おはよう、アリスお姉ちゃん、レイスお兄ちゃん」
「おはようお前ら‥‥‥げっ、アリス何だよその荷物は」
レンとレオスがアリスとレイスに挨拶している中、ファングが大声を上げていた。
「相変わらず朝からうるさいわね。さっさとフォレストの中に入れて頂戴」
「待て、この荷物は何なんだ」
アリスが強引に荷物をフォレストの中に入れるように言ったが、ファングに止められていた。
「何って、服や教材があるだけよ。それと調理器具とリオスとテオ君の食費分かな、まぁレン君も入れると思うけど一応多めに持って行けば大丈夫でしょう。中に入れたら、必ず冷凍するように二人に言って置いてよ」
アリスはカルベル王国にいる間のリオスとテオの分も入れてあるので、かなりの荷物だった。
「アリス、ありがとう。これなら二人は喜ぶね」
「ちょっと待て、明らかに変だろうレン」
アリスの荷物を気にしてないレンを見て、ファングが慌てていた。
「何が変なのファング? ちゃんとリオスとテオの食材を用意してくれたんだよ。さぁ、ファングさっさと入れてね」
「レン、やめてくれ命令だけは、カイトとクライブも拒否して‥‥‥うぁ」
ファングはレンに命令されて、荷物をフォレストの中に入れていた。
「上手く服で隠しながら、荷物を入れて偉いわファング」
「‥‥‥」
ファングは命令されているため、無言で黙々とアリスとレイスの荷物を入れていた。
「酷いお前ら鬼だよ。うぇ、お腹が重い」
命令が終わるとファングはお腹を押さえていた。
「ファング、そんなに苦しいなら、レン君の部屋で待っていれば、カルベル王国に着いたら呼んであげるわよ。その方が一瞬で移動出来るしね」
ファングは精霊フォレストなので、レンが呼べば何処に行っても一瞬で現れる事が出来た。
「待つわけないだろう、俺は行くぜ。心臓さえ破壊されなければ、死ぬことは無いんだから、このくらい平気だぜ。それに待機したら、レンを護れないだろう」
ファングはどんな状態でも、レンの傍にいると言っていた。
「なら、頑張りなさい。あぁあー、ファングが待機すれば、もっとレン君と居られるのに」
「アリス、あからさまにワザと聞こえるように言うな。完全に俺で遊んでいるだろう」
「さぁ、レン君行きましょう。先生達が待っているわ」
「おい無視するなアリス!」
ファングは四人を引き止めようとしたが、完全に無視された為、お腹を押さえながら、ゆっくりと後ろを歩いていた。
「ファング、無理ならアリスの提案に乗れば」
辛そうなファングを見たレンは、近くに行って声を掛けていた。
「いや大丈夫だよ。今、カイトとクライブが中で色々整理しているから、集合場所に着く頃には元通りになっているぜ」
「なら良いんだけど、あまり無理しないでねファング」
「あぁ、分かったよ、悪いなレン。毎回心配掛けて、俺まだまだ精霊は未熟だな」
レンに心配されているので、ファングは自分の惨めさに腹が立っていた。五人は集合場所の校庭に行くと、ベリット先生が荷物を抱えて待っていた。
「ベリット先生おはようございます」
「よぉ、来たなお前ら、準備は出来ているな。それよりも荷物はどうした」
軽装の姿で来ているので、ベリット先生が不信に思っていた。
「えっと、荷物はここに」
レンは言いにくそうに、ファングのお腹を指差していた。
「ファング、お前の体はどうなっているんだ」
ベリット先生が食い入るように、お腹を触って興味を示していた。
「アハハッ、ベリット先生あまり俺のお腹を触らないでくれますか? ベリット先生が興味示しても、荷物は入れないぜ」
レンの命令以外は入れるつもりは無かった。
「私が生徒にそんな事をするか、だがかなり便利そうだな。レン・フォワード君」
「アハハッ、そうですねベリット先生。あまり僕のファングに触らないでくれますか」
レンはベリット先生を交わそうとしたが、謝って言葉を滑らせていた。
「レン、今僕のファングとか言わなかったか?」
レンの言葉を聞いたファングが、目を輝かせながら見ていた。
しまった、つい口を滑らせた。めっちゃ見ているんだけど、何か嫌な予感しかしない。
ファングがずっと見ているので、レンに対して過剰にならないか心配だった。
「アハハッ、ファング気のせいだよ」
「そんな分けない。カイトも言っているぜ」
ファングが聞いている事は、体内にいる二人にも聞こえているので、否定することが出来なかった。
「だから言ってないよ。気のせいだよファング」
「レン、何で否定するんだ。俺はスゲー嬉しいのに、やっとレンの物になれたから」
ファングはレンに認められて、今にもレンに飛び付きたかった。
「あぁ、分かった否定しないよ。だからあまり過剰な行動だけはしないで」
レンが認めた途端、ファングは軽く涙を流して頷いていた。
「全くファングはレン君の事になると弱いわね。あれだけで普通涙を流すの?」
「うるさいアリス、やっとレンと同じ位置に立てたんだ。だからこれからもレンの為がこの命を尽くすぜ」
ファングはやっとレンと同じ位置に立てたので、改めてレンに誓っていた。
「アハハッ、お前ら本当に仲が良いな。ファング・ドレイク、お前はレンの精霊何だから、しっかりやれよ。それとレン・フォワード、ファングはお前の精霊何だから、あまり無茶な命令はするなよ」
ベリット先生に言われて、レンとファングは互いを見て言っていた。
「大丈夫だよ。レンは何があっても俺が護るし、別にレンの命令なら何でも受け入れるつもりだから、ベリット先生は心配するな」
「僕は嫌ですけど、ファングと契約してしまった以上、しっかりとファングを支えますよ」
レンはファングと契約したくなかったが、ファングの事情を知っているので、仕方なくファングを支えていた。
「レン、最初の方はかなり傷付くんだけど、お前と契約出来てスゲー嬉しいよありがとうレン」
ファングは改めて、レンに感謝していた。それから暫くすると、遠くから慌てて二人がやって来た。
「すみません、ファリブル先生が遅くなって申し訳ないわ」
「ガハハハ、朝は苦手でな、ついギリギリになってしまったわガハハハ」
ファリブルとクラック先生が、遅れてやって来た。
「おはようございます、ファリブル先生、クラック先生」
「おはよう皆さん、遅くなってすみませんね」
「ガハハハ、悪かったなお前ら。だが何故軽装なのだ? 荷物はどうした?」
ベリット先生と同じ事を聞かれていた。
「あぁ、その事ですか、ベリット先生に聞いて下さいアハハッ」
レンは先生達に説明するのが、面倒くさい様子だった。
「レン・フォワード、ファングの事を説明すれば簡単だろう。はぁ、全く私に言わせるとは、クラック先生、ファリブル先生、彼らの荷物はそこにありますよ」
ベリット先生はレンに変わって説明すると、二人も興味を示していた。
「やはり、ファング・ドレイクは実に興味深いわ。どうやって荷物を体に入れているのか気になるわ。ねぇ私の実験に付き合ってくれないかな?」
「アハハッ、遠慮します。俺はレンの精霊なので、レンの許可を取って下さい」
ファングはレンの許可を取って下さいと言うと、クラック先生は諦めた様子だった。
「あら、残念だわ。ファング・ドレイクの契約者に睨まれしまったわね」
ファングを実験しようとしていたので、レンは睨み付けていた。
「ガハハハ、クラック先生はすぐ実験したがるから、生徒達の間で非難するのも分かるな」
「ファリブル先生、それはどう言う意味ですか? 私は解明されてない物を解明しようとしているだけですよ」
「確かに解明する事は良いが、強引にやるのは良くないぞ。それにしても、ファング・ドレイク、お前はやっぱり精霊何だな」
クラックとファリブル先生は、ファングを見ながら色々と話していた。
「なぁ、もう良いだろう。ジロジロ俺を見ないでくれよ」
先生達が何回もファングの体を触るので、レン達に助けを求めていた。
「先生、そろそろ行きませんか、ファングの事は貸しますからそれで良いでしょう」
レンが先生達に提案するとファングの顔が曇り始めた。
「レン、ちょっと待て、何で俺を貸すんだ。俺は絶対に嫌だぜ」
ファングは全力で拒否していた。
「ガハハハ、レン・フォワード、悪かった」
「そうですね、私も興味本位で暴走してしまったわ」
クラックとファリブル先生がレンとファングに謝っていた。
「はぁ、良かったぜ、人体実験されなくて。酷いよレン」
先生達に色々されなくて、ファングはホッと胸をなで下ろしていた。
「アハハッ、ごめんファング」
「まぁ、人体実験されなくてよかったけど、次やられそうになったら、レンの影に飛び込むぞ」
ファングは先生達にまた何かされそうになったら、フォレストの力を使って、レンの影に逃げ込もうと決意していた。
「さて、皆揃ったから、カルベル王国に向けて出発するぞ」
「カルベル王国の任務は以前説明した通りです」
「ガハハハ、お前ら気合い入れろ! 任務だからって、油断するなよ。ちゃんとカルベル王国に着いた授業があるからな」
「アハハッ、頑張りますけど、授業がねぇ」
先生達は五人に気合いを注入していたが、カルベル王国に行っても授業があるので、五人は重しになっていた。五人は先生達の後を付いて行きながら、リノワール王国の魔道列車乗り場を目指していた。
「レン君、いよいよ魔道列車に乗れるわね」
アリスは魔道列車にウキウキしていた。
「そうだね。僕はてっきり、極秘でカルベル王国に入ると思ったよ」
重要な任務なので、相手側に分からないようにカルベル王国に入ると思っていたが、普通に正規のルートで行くので不思議な感じがした。
「あぁ、俺も極秘で入ると思ったんだけど、何で人が多いルートで行くんだ?」
「俺様も不思議に思いますね。わざわざ正規のルートで行く意味があるんでしょうか? 俺様達の存在が分かってしまいますよ」
ファングとレイスも疑問に思っていると、ベリット先生が答えてくれた。
「そんなの簡単だろう。カルベル王国は山を超えた先にあるんだぞ! そこを単独で行動して、見つかれば不審に思われるし、強硬派が占領されている可能性は否めない。だから人混みに混ざってカルベル王国に潜入するんだ」
ベリット先生の説明を聞いて、納得していた。
「成る程な、その考えなら確かに正規のルートで行った方が良いな」
「そうだね。ファングちょっと良い?」
レンに呼ばれて、ファングは首を傾げていた。
「どうしたレン?」
「ファング、何これ?」
「何って‥‥‥今直します。カイト、クライブ何をしているんだ」
レンが影を指差すと、影が不自然に動いていたので、ファングは、フォレストの中にいる二人に注意していた。
「アハハッ、久しぶりに外の様子を見たかったから」
「ファング、怒るなよ。別に先生達にバレなければ良いだろう」
「そう言う場合じゃないだろう。明らかに影の動きじゃないだろう。ちゃんとレンの動きをしろ」
ファングが注意すると、カイトとクライブは不満を漏らしていた。
「本当ファングは堅いんだから」
「別に軽く見るくらい、良いと思うんだけど」
「へぇ、レンが怒っているのに、お前ら罰受けたいのか?」
レンは平常心を保っていたが、ファングはレンの不気味さを感じて、慌てていた。
「うっ、それ本当なのファング」
「マジなのかファング」
カイトとクライブは中で顔色を曇らせながら、ガクガクと震え始め、その様子がファングのお腹に伝わり、若干震えていた。
「お前、周りにバレるだろう。俺の体はお前でフォレスト何だから、ガクガクさせたら俺の体に現れるだろう」
フォレストは三位一体なので、一人が別行動をすれば、支配している体に直接影響を及ぼしていた。
「ごめんファング、レン君の罰が怖くて」
「なぁ、大人しくするから、マスターに謝ってくれないか」
「分かったから、ちゃんと反省しろ。大人しくしていれば、レンは周りを見ながら、大丈夫な所は自由にさせてくれるハズだよ」
「そうだな。マスターはちゃんと俺達を見てくれるからな」
「ファング、レン君にちゃんと謝ってくれるかな」
「はぁ、分かったから、何回も言うな。それとガクガクを止めろ」
ファングはカイトとクライブの会話が終わると、頭を掻きながら、レンに謝っていた。
「ごめんレン、カイトとクライブは悪気はないんだ。久しぶりに外の様子を見たかっただけなんだよ」
ファングはレンの罰を覚悟しながら、謝っていた。
「ファング、頭を上げて、それとクライブは言わない約束だよ。先生達に見つかったらどうするの? 二人の事は分かったから、次ちゃんとすれば怒らないよ。それに影も、元に戻ったみたいだしね」
影を見るとレンと同じ動きをしていたので、カイトとクライブが反省しているのが分かった。
「そうか、本当に悪かったな。二人は悪気はないんだ」
ファングの方もお腹の震えが消えていたので、ホッとしていたが、改めてレンに謝っていた。
「ファング、最近謝り方過剰になってない?」
「うるさいアリス、いちいち二人の中に割ってくるな。俺がどんだけレンに怒られているか知っているだろう」
アリスが割り込んで来た途端、ファングがアリスに当たっていた。
「いや、ファングがレン君に怒る事をしているからでしょう」
「そうですね、ファングが勝手に自滅しているだけですね」
「グッフ、レイス、お前までそれを言うのか」
レイスにも言われて、ファングは立ち直れなかった。
「だって、ファングはレン師匠の言った事を守っていれば良いのに、ファングはレン師匠に良いところを見せようとして、失敗してますからね」
「グッフ、それ以上言わないで、別にあの時は力を手に入れようとして、レンに怒られたけど」
過去の事をレイスに言われて、ファングの精神はかなり傷ついていた。
「お前ら、何をしている、早く来い」
足を止めている五人を見て、ベリット先生が声を掛けていた。
「はーい今行きます」
「ほら、ファングに構っていたら、怒られたでしょう。行くわよ」
「何で俺のせいなんだ」
「ファング、早く行きますよ、レン師匠に命令して貰いますか」
「何で俺に命令する必要があるんだ。ちゃんと歩けるよ」
五人はリノワール王国の街中を歩き進めると、ようやく魔道列車が通る駅に来ていた。
「うぁーこれが魔道列車が通る駅かぁ」
レンは駅のホームを見渡すと、懐かしい気持ちになっていた。
「レン君、どうかしたの? 驚いた後、ボーッとして?」
レンが立ち止まっているので、アリスが声を掛けていた。
「えっ、何でもないよ。駅のホームを見て凄いなと思って」
「まぁ、レンはいつも歩きだし、こう言う所初めてだろう」
レンは今までずっと移動手段は徒歩なので、ファングは駅の物珍しさに、ついて行けてないんだろうと感じていた。
「そっかぁ、言われて見ればそうよね。私達見たいな貴族以外はあまり乗る機会ないかな?」
「いやアリスさん、平民も普通に乗りますよ」
アリスは貴族しか乗れないと言っているが、普通に平民の人もホームの中に並んでいた。
「僕もレンお兄ちゃんと同じで初めて乗るよ」
「なら、先生達がチケットを取りに行く間、少し周りを見るか」
「えっ、ファングお兄ちゃんがついてくれるの?」
「あぁ、別にレンとそれ程距離は取らないから、良いぜ」
四人が話している中、レンは転生前の過去を思い出していた。
なんか懐かしいな。転生前は休みの日に電車や新幹線を使って、色んな所に行ったなぁ。特にイベントなど。
レンは転生前の事を思い返しながら、かつての友達も思い出していた。
九条と朝霧は今頃、元気にしているかな。特に朝霧は多分、俺の事で悲しんでいるよな。まぁ、今は大学生かな。九条も俺を恨んでいるよな。
レンは水崎レン時代の事に若干、未練を感じていた。
今頃、二人は元気にしているかな九条、朝霧。俺は今、転生して新しいライフスタイルで生きているから、俺の事は心配しないで大丈夫だよ。
レンは過去の友達の事を気に掛けながら、今の生活を楽しんでいる事を、二人に伝えられれば良いなと思いながら胸の中で呟いていた。
「オーイ、レン。さっきからずっとボーッとしているぜ。何か悩みでもあるのか?」
レオスと一緒に、周囲を見渡していたファングが、レンの異変に気付き声を掛けていた。
「えっ、何でもないよ。なんか罰当たりな場所に来たなと思って」
レンは適当に誤魔化していた。
「まぁ、お前にはあまり乗ることはないか。レン、もし悩みがあるなら必ず言えよ。俺がお前に隠し事しないように、お前も包み隠さず俺に言ってくれよな」
ファングは包み隠さず言えと、言っていたがレンは転生者で記憶も引き継いでいるので、前の世界の事を話せなかった。
ごめんファング、これだけは話せないよ。はぁ僕はファングに包み隠さず言ってと言ったけど、これじゃファングやアリス達を騙しているな。でもごめん、これだけは言えない、僕が二十代後半で別世界から来たなんて。だけど話す時が来たら必ず話すよ。その時は四人の表情が怖いけど仕方ないよね。
レンは罪悪感があったが、転生前の事は四人に話す事が出なかった。
「大丈夫だよファング、何かあったら必ずファングに相談するよ」
「そうか、なら良いけど、何かあったら必ず言えよ。俺はレンのパートナー何だから」
ファングはレンを心配そうに見ているので、レンはますます罪悪感になっていたが、レンはファングを騙す形で笑顔で返していた。
「うん、ありがとうファング」
「お前ら、ここに居たのか、ほらホームに入るチケットだ。目的地の駅に着くまで大切に持っていろよ」
ファングと話していると、先生達がチケットを取って戻って来た。五人は先生達から渡されたチケットを手にすると、駅のホームの中に入っていた。
「へぇ、かなり人が居るわね」
アリスはホームに並んでいる人達を見ていた。
「当たり前だろう、村や国などを繋いでいるんだから、たくさん居るのは当然だろう」
ファングはアリスを見て額に手を当てていた。暫くすると、駅のアナウンスが入り、やがて魔道列車がやって来た。
「へぇ、これが魔道列車かぁ」
レンは魔道列車を見て、目をキラキラさせていた。
「お前ら、見てないでさっさと乗れ、置いて行かれるぞ」
「はーい、今乗ります。ファング、なんかワクワクするね」
「そうだなレン、お前は俺の隣に座れよ」
「ファング、レン君の独り占めは許さないわよ」
「はぁ、相変わらず修羅場ですね」
「足を止めないで早く乗ろう」
五人は魔道列車に乗ると、向かい合った席を見つけて座っていた。
「レイス君ごめんね」
レイスは先生達と一緒の席に座っていた。
「アハハッ、別に大丈夫ですよ。だってすぐ横じゃないですか、レン師匠と離れていたら、ファングの上に座る予定でしたよ」
「レイス、冗談が上手いな」
ファングはレイスを見て、苦笑いしながら睨み付けていた。
「ファング、あまりレン師匠にくっつかないでくれますか?」
「はぁ、列車に乗るまで喧嘩しないでくれるかな?」
レンは窓越しでため息を吐いていた。
「お前ら、そろそろ列車が動くから、あまり騒ぐなよ」
ベリット先生が五人に注意していたが、レンは難しいと言った。
「はい、分かりましたけど、アリスとファングは喧嘩しそうです」
「レン君、酷いわ。喧嘩の原因はファングよ」
「何だと、喧嘩を仕掛けて来るのはアリスだぞ」
言った傍から喧嘩が始まっていた。
「お前ら、言った傍で喧嘩するな。はぁ、うるさくしない程度に頼むな。後は回りに迷惑を掛けるな」
先生達は頭を押さえていたが、アリスとファングは先生を無視していた。
「アリス、ファングいい加減にしてくれるかな?」
アリスとファングは、喧嘩の原因で言い争っているので、レンが切れていた。
「レン君、ごめん」
「悪い、ついカッとなってしまって」
「はぁ、あまり喧嘩しないでよ」
「何かレン・フォワードが言った途端喧嘩をやめたな」
「アハハッ、ベリット先生、レン師匠は俺様達のリーダーなので、二人は逆らえませんよ」
レンが言った瞬間、二人の喧嘩が止まったので、先生達が驚いていた。
「間もなく、カルベル王国方面に向けて出発します。扉付近にいる方は閉まるドアに注意して下さい」
やがて魔道列車からアナウンスが入り、いよいよカルベル王国に向けて出発しようとしていた。
「いよいよ、魔道列車が走るんだね」
「そうだな。カルベル王国まで、かなり時間が掛かるけど、ずっと座っているから楽だな」
「カルベル王国かぁ、どんな所かしら」
「俺様も楽しみですよ」
「あっ、走り出したよ。レンお兄ちゃん」
暫くすると、魔道列車内の扉が締まり、カルベル王国に向けて五人は出発した。だがレン達を乗せた魔道列車は、地獄の一歩に繋がっている事など、魔道列車を楽しんで過ごしている五人にはまだ知るよしもなかったのであった。
次回更新は未定です。温かくお待ち下さいm(_ _)m




