生存本能てツライね…
10/29変更
地球では学生の身分で社会に貢献できなかったが
↓
地球では何もなさずに死んでしまったが
やり残しもあるし
↓
やりたいこともあるし
うん。そろそろ考察もおわりにして新たな世界へと飛び出ようかねぇ。卵(仮)の硬さは?…ふむ。蒟蒻くらいかな。こんくらいであれば、よし。頭のとんがってるとこをぶっ刺して、卵の内面に足をつけて一気に貫く!っと、おお!すげえ!ぬるんっ。だって!なんだろう。この快感。全身が卵を抜けた時の爽快感?やべえ!今時の若者じゃないけど(いや、若者だったけどね?)、やべえしか言えねぇ!決して僕の語彙力が無くて理系に進んだとかなわけじゃないからね?うん。信じてもらえなさそうだけど…
なんてこと考えながら卵の殻(?)触ってたらどうやら僕の兄弟たちも孵化したみたいだった。うん。兄弟でも最初の挨拶は大事だよね?てことでご挨拶に伺おうではありませんか。
「Hay!そこのイカすイカボーイ!同じ兄弟同士仲良く…て、うおおお!?」(声は出てないので、あくまでそんな雰囲気を出してるだけ)
ヘイ!ブラザー!なにしてんの!?挨拶の為に近づいただけなのにいきなり襲ってきたよ!?あれ?もしかしてこれがイカ流の挨拶?僕がおかしいのかな?
そう思い少し距離を開けて卵の影から周りの様子を伺うと…うん。どうやら挨拶ではなく共食いぽいな。だって明らかにイカの足同士が絡まりあったり、相手の腹(イカの腹は頭の上にあるんよ)に噛み付いて臓物引っこ抜いて食ってたりすんのよ。
うわぁ、これもしかしてと思ってたけどあれか?さっきクジラ(仮)に食われてたイカ(仮)がマイマザーであり、そのマザーの統率がなくなって、出てきたイカベイビーズが互いをエサだと思って空腹を満たそうとしてるとか?まぁたしかに僕も腹は減ってるけどそこは理性で補ってるしね。たしかに美味そうなんだけどね?イカ。地球では好物だったし。
さて、これはちょーっとマズイかね?イカとはいえ兄弟なんだし、兄弟間で借金があってギスギスしてたり、1人の幼馴染を巡って血みどろの戦い「私のために争わないで!」というわけでもないのに兄弟間で争っても無意味じゃないか!
なんとかしてこの状況を打開せ…ねば…あ…
そーだよね。僕ってまだ卵の影にいたんだよね。そしたら当然そこから出てくるイカもいるわけだ。うん。大丈夫大丈夫。ぼ、僕はあ焦ってなどいなないない。うん。決して上を見上げたらちょうどそこから一匹の兄弟が出てきて僕のことを飢えた瞳で睨んでいたとしても僕は平静だ。「イカの数え方って生きてるときは匹で死んだら杯だったよな?」とか考えていても…アレ?ダメかもしれない。うん、そろそろ現実を見ようか。
と決意を決めたとこで襲いかかってくる兄弟。相手がたとえ地球では食いまくったイカであるとしてもここでは兄弟、という思いを捨てきれない僕はどうにか逃走を試みるが生まれてきたばかりでお互いの能力差なんて無いに等しい。せいぜい僕には理性があるくらいしか差がないのだが、ここは野生であり、相手は野性だ。むしろ獣の本能で襲ってくるので分が悪い
マズイな。兄弟とはいえ理性がないと話し合いなんて出来やしない。てことは戦って生き残るしかないが、獣に勝つのは難しいだろう。
だが、獣相手に人間なら戦い様がある。地球では特に何もなさずに死んでしまったがこの世界での新たなチャンスを逃すわけにはいかない。やりたいこともあるしな。…よし、そろそろ覚悟を決めよう。悪いが僕の為に…死んでくれ。
この野生のなかで相手を殺してでも生き残る覚悟を決めた僕は『それ』に向かって触腕を伸ばした。
ーただの木の枝である。
それもとても細い小枝である。本来であればとても武器になりそうなモノではないがこの状況でなら武器になり得る。相手はまだ生まれたばかりで身体は柔らかく、腕の長さも枝よりも短い。気をつけるべきは多少尖っている頭(本来は外套膜の先というべきかもしれないが)くらいだろう。蒟蒻にどうにか突き刺さるくらいの硬さだが、僕の身体にも、当たれば傷くらいはつくだろう。
これでも地球では祖父の勧めで護身術程度には槍が使えたんだ。まぁ7人の使い魔で争う話の赤い槍を振り回す青い人に惹かれたのが決定打だけどね。
そんなわけでずっと追いかけてきたブラザーに向き合ったわけだが、相手も僕が敵対心を向けてきたことに気づいたのか動きが止まる。しかし、一瞬警戒しても所詮は飢えた獣。なんの躊躇もなくこちらに向かってくる。こちらも覚悟は決まっているので槍を構える。
槍での戦いは穂先で切る払うも多少はあるが、やはり基本は『突く』である。
よってイカなので勝手は少し違うが前へ進む!相手は躊躇なく頭から突っ込んでくるのでまっすぐにしか進めない。それに対して僕は元より狙いは横腹なので相手とぶつかる瞬間、少し身体をずらして相手のやや下から突く!
スッ
となんの抵抗もなく兄弟の腹を貫いた槍はどこか大事な器官を貫いたのか、兄弟はしばらくビクビクと震えていたが、すぐにその痙攣はとまりただの一杯の死骸となった。
ここで少しでも供養をしてやりたいが、こちらの様子をやはり飢えた瞳で睨んできている兄弟が多数いる。周りを眺めていると一匹のイカがすぐに襲いかかってきた…
・*・*・*・
しばらく経ったがどうやら飢えだけでなく、互いの闘争本能を刺激しあっていたようで多くの兄弟たちが襲いかかってきた。
そして、そんな兄弟たちを捌いてるうちに、見て取れる範囲には自分以外にはもう一匹しか兄弟は残っていなかった。
互いに、今までの戦いで傷も受けているが兄弟たちに噛み付いたときに食いちぎったりもしたので多少腹は満たされている。それでもいまだ興奮は収まりつかぬようでこちらを射殺すような瞳で睨みつけてくる。
…疲労はたまっているがここまできたらやりきって生き残るしかない。
こちらも生き残るために注意深く相手を見据える。
ここまで残っているということは確実に他の兄弟よりも強いはずだ。しかし、この槍の他に武器となりそうなものもない。泳いで逃げるのも相手を刺激する上に体力がもたないだろう。…いきなり波乱万丈な新生活だったがこれで最後だ。気を抜かず、全力で…
突く!
後手に回るわけにはいかないと、こちらから攻める。しかし、相手もここまで乗り越えてきた経験があるせいか泳ぎが素早くなかなか槍が当たらない。そのうえにどうやら他の兄弟よりも触腕が長いようで気をぬくと意外と速い足の一撃がとんでくる。
こちとら槍を使って『人間』の戦いはしてきけど、いまだにイカの足の動きは違和感があり上手く動かせないっていうのによお!
槍を上下左右に
突いて、払って、回して、突いて。
互いに最後の力を振り絞って相手を仕留めに腕を奮うが致命傷には至らない。
…このままじゃあ拉致があかない。一度下がって次の一撃で殺る!
相手も同じことを思ったか後ろに下がる。僕も後ろに下がり足を何本か使って海底に触れて、溜めを作る。姿勢の理想は青い人のゲイ○ルグを撃つ時だが流石に投げて当たる気はしないので全力で突きにいく…!
兄弟と同時に弾かれたように動き出し全力で槍を突き出す…!
結果、僕の槍は折れ、相手の触腕一本は引きちぎった。しかし、交差したところで互いに体力が切れて海底に沈んでいったのだった…。