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【ゼルガストそして魔の森へ】

クエスト依頼出発日


エスクードの城門前にはリリア、竜太、カスティルの姿がある


昨夜竜太にカスティルと共に、留守番をするように言ったのだが、竜太は頑として聞き入れず、リリアの指示を必ず守るということで、クエストに同行する運びとなったようである


城や町の外には、危険な場所がたくさんあるので、リリアがライトアーマーと魔力型ダガーを購入して持たせてはみたが、恐ろしいほど武器が使いこなせない竜太であった


「早くしてくださいファリオさん。皆さん待っていますよ 」


「あ~ん。そんなこと言われても~ 」


遠くでエレーナに手を引かれて走ってくるファリオの姿が見える


「歩きで行くのか? 」


「そうよ。本来なら馬車とかで行けば早いんでしょうけど、それだと傭兵あたりを大量に雇わないと安全が確保出来ないから…… 」


自身が誘拐された際、馬車であれだけ賊がいたにも拘わらず、魔物の相手で壊滅状態に追い込まれたことを竜太は思い出した


「出発前に一つだけ~。私、たま~に居なくなると思いますけど、私が居なくなっても先に進んで下さいね~。必ずあとから追いつきますから~ 」


そう言って右手の人差し指をたててウィンクする彼女


「ということは実質的に、エレーナの面倒だけをみればいいのね 」


「そうですね~。それからリリアさん右手を出して貰えますか~ 」


ファリオに言われた通り、自身の右手を差し出すリリア


その手の薬指に彼女が、小さな指輪をそっと通す


銀で造られている、赤い宝石の付いた小さな指輪である


「まさか……呪いのアイテムとかじゃないでしょうね 」


じと目でファリオを見るリリア


「あはは違いますよ~。リリアさんは魔法について詳しくご存知ですか~ 」


「そうね……最低限度の知識なら 」


魔法とは本来、誰かの力を(借りるまたは行使)利用するものである


魔導士ギルドが発行している魔法は、その原理を理解したものを、簡易的に使用出来るよう簡素化されたものである


「それじゃ一般的な魔法。火炎弾(ファイアーボール)は誰の力を借りてるかご存知ですか~? 」


「この世界の神イフリートでしょ? 」


「ちょっと違いますね~。イフリートは神ではなくて魔物の類いに位置します~。この世界の神は(エレクシアーナ)というあまり知られていないマイナーな女神ですね~ 」


「んー!! 」


そのファリオの言葉に、今まで黙って聞いていたエレーナが声をあげる


なにやら少し怒っているようである



「どうかしたのエレーナ? 」


「あっいえ……後は目的地に向かいながら話した方が、いいかなって。お連れの方も待っているようですし…… 」


エレーナがカスティルの方へ視線を移す


「それもそうね。ごめんなさいカスティル 」


「いいえ。道中皆様お気をつけて下さい 」


一行は見送りに来ていたカスティルと別れ、エスクード城を後にする




【魔の森 】


魔物が支配する広大な森


かつて女神エレクシアーナと魔王ゼストラーダによって引き起こされた神魔戦争の舞台


女神エレクシアーナ率いる神軍が魔王軍を殲滅。ゼストラーダは女神によって滅ぼされ、以降凶悪な魔物が人々を襲わないよう森に結界を張る


今現在は結界の効力が弱まっているが、それでも上級と呼ばれる魔物は、一部を除き魔の森から出ることは出来ないのである


鬱蒼とした森の深淵にそびえ立つ巨大な建造物。辺りの荒廃した大地に、上手く溶け込んでいるその姿は、実に恐ろしくも見える。廃墟と化したその城は、グスマンと呼ばれる魔物の根城である


「いやぁ……助けて 」


城の玉座の間に少女の悲鳴が響き渡る……


「何時になったら人間界に出られるようになる。ジークよ 」


「もうしばらくお待ち下さいませグスマン様。なにぶんエレクシアーナの結界がことの他厄介なもので…… 」


ジークと呼ばれた魔物が頭を下げる


グスマンは彼を一瞥し、目の前で震えて泣いている少女を見つめる


「ひっ!! 」


少女から悲鳴が漏れる


グスマンの凶悪な容姿で凝視されれば、この人間の少女のように泣き叫ぶのも無理はない


「俺はあまり気が長い方ではないぞ。とりあえず今は、この女で遊んでおくが、出来るだけ早く準備を終わらせろ 」


言いながらもグスマンが、怯える少女の前で腕を軽く振るうと、少女の衣服が破れ辺りに舞い散る


「い……いや……た……助けて…… 」


恐怖で後ずさろうとする裸の少女を、片腕で抱き上げ肩に担ぐと、グスマンが玉座の間から出て行く


そこには頭を深々と下げたジークが1人取り残される


「本当に単細胞の馬鹿は面倒くさい。まぁいい。今のうちにせいぜいオモチャで楽しんでおくことだな。あーっはっはっはー 」


ジークの笑い声が、彼以外誰も居なくなった玉座の間に響き渡った……





エスクード城から出発したリリア達一行の工程は、特に障害もなく概ね順調そのものであった


たまに傭兵ギルドの戦士に警護されながら、移動している集団とすれ違うくらいである


街や村から街道を通り、よその土地へ民間人が移動しようとするとかなりの危険が伴う。その為、多少お金がかかっても、傭兵ギルドに依頼して警護をしてもらうのは、当たり前のことなのである


冒険者などはグループで行動するなどして、自らの安全を確保しなければならない


まぁ……リリアのように単独で行動している人や、お金がなくて傭兵を雇わずに行動してる人もいるが、そのせいで行方知れずになっている人は多い


「んご!! 」


リリアが制止の為に広げた腕を、避けきれず竜太が鼻を強打する


打ちつけたそこを押さえながら、リリアを見てみると街道沿いの林の中を警戒するように身構えている


「いるんでしょ……出てきなさいよ。ゴミ男 」


リリアの声に数人の傭兵らしき男が、身を隠していた木の陰から姿を現す


その集団の先頭に立っている人物。足には痛々しい包帯が巻かれており、この男には見覚えがあった。森で3人と出会った彼だ


「よぉ……お嬢ちゃん待ってたぜ。あんたに刺された足が、疼いてしょーがねーんだわ 」


「首を落としてあげた方が良かったのかもね。今更ながら後悔してるわ 」


「なんだとこのあばずれ。今回こっちにはこれだけの仲間がいる。あんたを捕まえてヒィヒィ言わせてやるよ。新しい女も増えたみたいだしな 」


言いながら嫌らしく舌なめずりする男。その彼に同調し、にやけた笑いを、周りの仲間達がみせる


「リリアさ~ん。さっきの神のお話し覚えていますか~ 」



……!? ……



彼女はいったい、いつ動いたのか?


その場の誰にも気づかせないうちに、ファリオが傭兵の男達とリリアとの間にいつの間にか立っていた


「覚えてるけど今言われても…… 」


「そうですか~。なら見てて下さいね~ 」



……パチンッ……



ファリオが指を鳴らす


「うぉぉ… 」


男達の顔に動揺の色が走る


「てってめーなにしやがった 」


彼らは何かに縛りつけられ、上から圧をかけられたような感覚にとらわれて、身体を思うように動かせない


どうやらこれは重力干渉魔法のようだ


「リリアさ~ん。しっかり見てて下さいね~。 魔力増強(ブースト)


ファリオの言葉に辺りがざわめく。魔力の流れが彼女の内に向かい、魔法によって集められたそれが、辺りに満ち溢れてくるのがわかる


「女神の怒り(アークブラスト) 」


前にかざされた両手の辺りに、青い雷球のようなものが見える


その雷球を支点にして、辺り一面に稲妻がほとばしる



……バチバチ……



それはファリオの後方にいるリリア達にも、容赦なく襲いかかるが……



……!? ……



「結界…… 」


透明な結界のようなものに、リリア達は包まれていてそのすべてを弾き返す


荒れ狂う稲妻が収まり、辺りが静まると、4人の男がその場に倒れていた


「あら~1人逃げられてしまいました~。多分重力魔法解消した時ですね~ 」


特に気にもとめていない感じのファリオが呟く


「貴女……何者なの? 」


リリアは問わずにはいられなかった



ミューズ


エルグニストのほぼ中心にある宿場町


ゼルガスト、ラビアン、ムーンストン、エスクードの4つの街を結んだ、ほぼ中間に位置する為、交通の要所として他の町などに比べ圧倒的に発展している


エルグニストの4つの主要な街からの寄付金、利用者からの売り上げなどで莫大な利益をあげている。町レベルとは思えないしっかりとした街壁、ミューズには私設軍隊などあり冒険者や旅人、はたまた移動の際の休息の場所として非常に人気が高い





ミューズのとある宿屋の一室


「聞きたいんだけど……ファリオが使ったあの魔法。この世界の魔法ではないよね。いったい何の魔法なの? 」


「いいえ~。この世界に存在する魔法ですよ~ 」


リリアがそう言うのも無理もない。この世界の魔法は魔導士ギルドの学者により造られているのだが、一般的に市場に流通してあるものの中に、あのような魔法は存在しないのである


「魔導士ギルドの学者にも解析されていない古代魔法ってこと? 」


「確かに解析はされていないと思いますけど~。古代魔法では無いですね~。この世界に今も現存する者。神聖魔法の一種です~ 」


リリアの中で話が繋がる。確かファリオは言っていた。(マイナーな女神のことを……)


「なぁ……少し聞いてみたいんだが、古代魔法と現存する魔法ってどう違うんだ? 」


これまで黙って聞いていた竜太だったが、どうしても話しの内容が、理解できないので質問する


「古代魔法というのは現存しない、過去に何らかの原因で滅ぼされた者の力を具現化させる魔法。力の強い存在は滅びた後も、この世界に強い力というか痕跡を残しているの。それを魔導士ギルドの学者が解析して利用しているのが古代魔法。ただしこの古代魔法は力の源の存在が、この世界にすでに無い存在なので痕跡や世界に溢れている力が無くなった時点で使え無くなるの 」


「なるほど……で現存する方は? 」


リリアの説明に多少であるが、理解する竜太


「その他の魔法は存在が現存する魔法。この世界でも一般的な火炎(ファイア)や、火炎弾(ファイアーボール)などはイフリートという現存する者の力を借りているにすぎないわ。此方は対象の存在が滅びている訳でもないので、消えて使えなくなる……なんてことはないわよ 」


「魔法って結構面倒くさいのな。俺は魔導書みたいなの買ったら、すぐに使えるようになるのかと思ってたよ 」


「使えるわよ。魔導書は契約という形態をとっているんだけど、それさえすれば買ったその日から使えるようになっているわ。ただし、自分の魔力配列に合わない物や、魔法を本質的に理解出来なくて魔法自体が使えない人は、契約した所で使えないんだけどね…… 」


「そうですね~。リリアさんが今言ったように私が使った魔法は現存する者の魔法なんです~。で……話しを戻しますけど~。リリアさんにあげたあの指輪。あれは魔力精製の魔法装飾品(マジックアイテム)の一種なんです~。指輪をはめているだけで女神の力を借りることが出来ます~ 」


「へーこの指輪そんな効果があるのね 」


言われてまじまじと、その指輪を眺めるリリア


「もう1つある本来の効果は魔力を指輪自体が精製します~。女神の魔法は大量の魔力を消費します~。今のリリアさんの魔力量では使いこなせないと思います~。なのでその指輪が足りない魔力量を補ってくれると思いますよ~。使い終わったら約1日くらいで、また魔力が精製されます~ 」


「ありがとう。貴女のおかげでだいたいのことは理解できたわ。ただどうしてそこまで私にしてくれるの? 」


概ね理解はできたが、その点だけが不明なのである。クエスト成功の為ということも考えられるが、それにしては指輪にしろ、魔法にしろいろいろ手回しが良すぎるのである


ゼルガストまでの送迎のクエストにしては謎が多すぎなのである


「・・・ 」


「あの……リリアさん」


「どうかしたの? エレーナ」


ここまで黙っていたエレーナが口を挟む


「お腹すいたし……汗流したいし、ご飯とお風呂にしません? 」


ミューズに着いてすぐ宿をとり、話しを始めたリリア達一行


気がつけば辺りはオレンジ色に染まっていた


「そ……そうね。とりあえずご飯にしましょうか 」


「よっしゃー。やっとめしがくえるー 」


竜太の声とともに皆が一斉に、部屋から出ていくのであった



……翌朝……



リリアが目覚めたときには、ファリオの姿が見えなくなっていた


昨夜食事を一緒に終え、露天風呂(この宿の唯一の売りらしい)に一緒に入っていた時


「あ~。私あれしなくちゃいけないのわすれてた~。ごめ~んお風呂あがったら出かけて来るから先に出発しててね~ 」


とか言い残し出ていったそうだ(エレーナ談)


昨日聞けなかったことを、今日にでもリリアは聞くつもりでいたのだが、この場にいないものは仕方がない


出発前にファリオから事前に、自分が居なくなっても先に進んで欲しい……と言われていたので3人はミューズから一路ゼルガストへ向かい出発する


「ねぇ……エレーナ? 」


「なんですか?リリアさん 」


「あなたファリオのこと知ってるの? 」


以前から疑問に感じていたことを、リリアはエレーナに聞いてみる


「1度だけ随分昔にお会いしたことがあります。ただその時はほとんどお話しもしていないので、あまり詳しくないと言った方がいいんでしょうか 」


「でも彼女、あなたの保護をギルドに依頼したわよね。他に接点とかあったりするんじゃないの? 」


その程度の相手に大金を払ってまで保護依頼をする必要があるようには見えない


「うーん。私にはわかりません 」


「そう……それじゃゼルガストに到着して何かしてくれみたいなこと言われてたりする? 」


ファリオがエレーナに何かをさせようとしてることは、なんとなく想像できるのだが、それが何なのか現状の情報ではリリアには予測がつかなかった


「ゼルガストについてから教えてくれるって言ってました。私も本当によくわからなくて…… 」


リリアがエレーナを見つめる。彼女の青い瞳が揺れている。見た感じ、本当に聞かされていないのだろう


「あ!? 1つだけ言われてたことがあります 」


「何を言われたの? 」


「ファリオさんが、万が一居なくなったら、ゼルガストで待ってて下さいって 」


「でしょうね…… 」


リリアはどっと疲れる気がした





ミューズからゼルガストに向かっていた3人は、辺りが暗くなり始めたので街道から少し離れた場所。森の中で休息することにした


安全面から考えると何の障害もなく見通しの良い街道の近くより、姿が隠せるような場所の方が安全性が高いのだ


普段異世界ではあまり動いていないと言っていた竜太と、小さな身体のエレーナは緊張と疲れの為からか食事をとるとすぐに眠ってしまった



……パチッ……



燃やしている火がはぜ、くべている木の枝が音をたてる


焚き火の近くですやすや寝ている2人の顔に、オレンジ色の光が反射している


『結局エレーナは何も知らないみたいだし、ファリオが帰って来るまでわからずじまいか…… 』


缶詰めをスプーンですくって口に含む


考えてみるとエレーナ保護の依頼を受けてから、何か大きなことに巻き込まれていってるような気がしてならないリリアである


『何事もなければ良いんだけど…… 』


考えながら缶詰めをもう一口含む


暫くリリアが休まることはなさそうである



……!? ……



何かの気配を感じ、焚き火の明かりをとっさにリリアが消す


近くに置いてあった剣を掴むとそれを感じた方に、音を殺しながら忍び寄っていった


「ん!? 」


竜太が目を覚ます……


疲れていたのか、いつの間にか眠ってしまったようだ


辺りは真っ暗で焚き火をしていた火が、いつの間にか消えて煙が立ち上っている


闇に目がまだ慣れていないのだろうか、辺りは真っ暗で視界が悪い


手探りで辺りを触る……


何か柔らかい物が竜太に触れる


「う、うーん…… 」


エレーナの声が漏れる



……プニョン……



……プニュ……



……プニョン……



二度三度と触ってみる


「う、うーん… 」


エレーナの声がまた聞こえる



……!? ……



申し訳ない程度に膨らんだこれは、エレーナの胸だ


慌てて手を戻す竜太


「うーん…… 」


エレーナは寝ているようである


闇に目が多少なりと慣れてきたようで辺りを見回す


リリアの姿が見当たらない


竜太は立ち上がると、街道の方へ歩いていく


森から街道が見渡せる辺りまで竜太が来た時に、とんでもない状況を目の当たりにする


人が魔物に襲われている……


護衛らしき男が数人魔物と闘っていて、さらに少し離れたところには、巨大な魔物達に襲われてる女性の集団が……


辺りからは、子供のような悲鳴も聞こえてくる


「くっ…… 」


竜太はリリアが買ってくれていたダガーを引き抜き身構えると、その場へ駆け出そうとした



……ガシッ……



竜太を背後から何者かが抱きしめ口を塞ぐ


背中にあたる程よい大きな弾力のある右胸と堅い鉄のような感触……これはリリアだ


「今出ていっては駄目 」


リリアが竜太に聞こえるくらいの小さな声で耳打ちする


「けど…… 」


「あそこで女性を襲っているのはオーガの集団。男達が闘っているのもオーガね。みた感じ5匹ぐらいの集団なの、手に負えないわ 」


言いながらも竜太の口を、押さえていた手を外す


「あれ見てみろよ。子供も襲われてるんだぞ。ほっとける訳ないだろ 」


「あなたが行った所で何が出来るの? 何も出来ないでしょ! 」


リリアの言葉に、竜太の頭に血が上る


「目の前で困ってる奴がいるのにほっとけるかよ! 」


リリアの拘束を振りほどき、竜太は乱暴されている女性の元に走り出した


「あぁ……もう! 何で言うこと聞いてくれないのよ 」


リリアのヒステリックに近い言葉がもれた


「あーーー 」


竜太は感情を剥き出しにしてダガーを握りしめ、女性に馬乗り状態で乱暴しているオーガに向かって走り、 それをそのまま突き刺した



……ガァァァ……



刺されたダガーを引き抜き、その場に投げ捨てたオーガは立ち上がり、怒りの咆哮をあげる


「あ……… 」


身体が震えていうことを聞かない


走って突き刺したまでは感情的だった為良かったのだが、オーガの咆哮で我に帰った竜太は、恐怖のあまり動くことが出来ない



……ウガァァァ……



叫び声とともに右腕を竜太の腹部に叩き込む


「ぐはぁ 」


竜太の身体は宙に舞、飛ばされて地面に叩きつけられる


「ゴホッ 」


口から血が吐き出される


身体のあちこちが痛く、それでも震えが止まらないし、目から涙も零れている


この時彼の運が良かった点は、リリアが買ってくれていたライトアーマーが非常に高性能だったということ


通常即死レベルの強打もこのライトアーマーのおかげでこの程度ですんでいる


即死だったらここまで苦しまない可能性も、無きにしも非ずだが……


オーガがいつの間にか目の前で、仰向けに倒れている竜太を見下ろしていた



……グルァァァ……



振り上げられたオーガの太くて大きな腕が、竜太に振り下ろされる……!?



…ウゴォォアア…



ことは無かった


リリアの鋭い剣の一撃によって、オーガの右腕が切断されている


「本当に馬鹿なんだから…… 」


リリアはここに来るまでに、周りのオーガを一匹ずつ片付けていたのだ。その為、竜太のもとに来るのが遅そくなってしまったのである



……ゴォォォ……



腕を落とされ怒りに震えるオーガ


「うるさい! 女神の咆哮(アークウォーム)


辺りが、いや空間が揺らぎ白い白球がリリアのかざされた左手の辺りに収束し、オーガに向かって打ち出される。着弾と同時に光の柱状になり、光が収まると……オーガは跡形もなく消えていた



翌日、竜太が目覚めたのは、その日のお昼すぎくらいである


昨夜オーガに殺されかけたことは、多少記憶にあるが、どうしてここ(森の中)で寝ているのか、まったくわからなかった


辺りを見渡そうと顔を左右に向ける


「ぐっいてぇ…… 」


顔を動かすと身体全身に痛みがはしる。その痛みに耐えながらも周りを見るが、近くには誰もいないようである


丁度そこへどこかに行っていたのか、リリアが戻ってきた


「身体は大丈夫? 」


言いながらも、2本の木の間に布が取り付けられただけのシンプルな簡易ベッドのようなものを、竜太の身体の下に入れようとする


「ちょっと身体を動かすわよ 」


「ぐっ 」


「痛かった? ごめん。少しだけ我慢して 」


布の部分が竜太の背中辺りに敷かれる


「ここよ。悪いけど運んでくれる? 」


リリアの声に2人の男が、彼の元にやってきて簡易ベッドごと竜太を持ち上げ、そのまま森から街道へ運んでいく


「!? 」


街道に出た辺りで、人の上半身が無いものや子供の亡骸。裸の女性で胸辺りに大きな切り傷と、下半身の大事な所が裂けてる遺体などを目の当たりにする竜太


昨夜の惨劇なのだろう


竜太は街道に停めてあった馬車の荷台に乗せられ、男達が前に座り馬を走らせる


竜太は己の無力さに、涙が止まらなかった


そんな竜太を無言でリリアは、見つめているのであった





エルグニスト北部に位置する、城塞都市ゼルガスト


領主のメッキー・ゼルガストが、統治している城である


エルグニスト第1次モンスター討伐の際は、領主フランクスによって治められていたが、度重なる魔物の猛攻によって陥落、一時は廃墟と化す


それから暫く経ち、第2次モンスター討伐時、現領主メッキー・ゼルガスト率いる王国軍と、大陸随一と名高い【疾風の勇者】アイ・スタイリン率いるパーティーにより、城を魔物から奪回することに成功


その功績を国王から認められ、そのまま城を領主として治めるようになり、現在に至る




リリア達を乗せた馬車は、そのゼルガストへと到着していた


到着してすぐに宿を長期間借りたリリアは、怪我を負った竜太を宿屋に寝かせ医者に見せた


思っていたほど悪くないそうで、2週間程度で回復するとのことであった


「本当に悪運が強いのね…… 」


笑いながら冗談混じりに皮肉を言うリリア


「悪かったよ。ちょっとこの世界をなめてた 」


「そうね。一言だけ言っておくわ。どう考えているのか知らないけど、戦闘で一撃でも致命傷を受けたら人間は死ぬの! 貴方、以前訳の分からない回復魔法がどうこう言ってたけど、これだけは覚えておいて 」


一度うつむき天を仰ぐ。美しい金色の髪が眼帯にかかって神秘的、でも何か儚げに見える


「魔法は万能じゃないし、人はほんの些細なことで死んでしまう弱い生き物なの。この世界で生きていくなら、それだけは絶対に忘れないでね 」


「言いたいことはよくわかる。でも目の前で困っている人がいたらほっとけないたろ! 」


「それがわかってないって言うの! 」


「えっ!? 」


「死ぬのよ。貴方、死ぬってことがどういうことかわかってる? 」


酷く悲しそうな表情を見せるリリア


「別に人助けが悪いとは言わない。けど……それで自分が死んでしまったら意味ないでしょ? 」


「・・・ 」


「私ね。小さい頃に戦争で両親を亡くしたの 」


「・・・ 」


「両親には借金があってね。マガイア家っていう貴族の家に、性奴隷として小さな頃に奉公に出たの 」


「・・・ 」


「その家でいろんな人に抱かれたわ。男親や息子、そこで働く使用人とか、その家にくるお客や奥さんとか娘にもね…… 」


「・・・ 」


「魔物の襲撃で捕らえられてからは、今度は魔物から犯され続けたわ。借金は魔物が銀行を破壊してくれたことでそれ自体が停止したから呪いで死ぬことは無かったの。その点だけは魔物に感謝だけど。あとこれは魔物が性行為で興奮した時にえぐりとられた傷…… 」


言ってリリアがつけている眼帯を外す


左右対象で目の色が違う


右は普通の黒に近い色だが、左目は赤いようだ


「義眼ってやつね。おかしいでしょ 」


外した眼帯を付け直すリリアだが、どこか悲しそうな表情をみせる


その者悲しげな表情を金色の長い髪が覆い隠す……


「このゼルガストで私は捕まっていたわ。ここの魔物が討伐された際に助け出されたの。魔物から解放されたのは良かったけど、それまでに奴らから犯され続けたことで、救出された時には死にかけて虫の息だったの 」


「・・・ 」


「治療費が凄かったわ。借金も跳ね上がり本当に地獄。それでも生きていかないといけないから今度は風俗で働いたの 」


「・・・ 」


リリアの過去が、竜太の想像を遥かにこえる壮絶なもので、彼は完全に言葉を失っていた


「それからモーリスと出会ってね。あ……私が今勤めるギルド長。酷い現状に同情してくれて16歳の時、無料でギルドにスカウトしてくれたの 」


「・・・」


「死にたくなかったからさらに借金増やして、魔法と魔力の込められたさっきの義眼つけたりしてね 」


「・・・ 」


「これだけのことがあっても、私は生き続けてきたの。私が生きてたからカスティルも助けてあげられたし、貴方もこうして助けてあげられるの。でもね、自分が死んでしまったら何も出来ないのよ…… 」


「そうだったのか 」


リリアが森で竜太を必死に止めようとしていたことが、少しだけ理解できた


「それから私暫く出かけて来るから。宿屋の娘さんに、貴方の身の回りのお世話をお願いしてるから 」


「どこへ行くんだ? 」


「内緒。ファリオが来たら出かけたって伝えてね 」


リリアが部屋から出て行く


部屋に残された竜太の目には、涙が流れた跡があった




魔の森の入り口にあたるぐらいの場所


そこの岩場にある洞窟に、賊の根城があった


ゼルガストの王国軍は屈強な精鋭を備えている為、迂闊にゼルガスト近辺の王国内に根城を構えると、すぐに制圧されてしまうからである


この根城の賊はエルグニスト王国全土に活動範囲を持ち、先刻馬車で誘拐事件を引き起こしたのも、この賊の仕業である


根城の一室にリリアに足を刺され、ファリオに仲間を蹴散らされた、あの男の姿があった


「とりあえず、あの化け物の女は置いといて、あの糞お嬢ちゃんを痛い目にあわせないとな。その為の餌も蒔いたしな 」


男はそう言うと、目の前の大きな柱にロープで括り付けてある少女の胸の辺りを撫でる


「んー!! 」


「あん? 嫌だったか? 」


言いながらも執拗に少女の胸や脚を、撫で回すのを辞めることはしない


「んーんー 」


「心配するな。お前さんはあのお嬢ちゃんを喰ってから相手にしてやるからな。アーハッハッハー 」


男の笑い声がけたたましく響き渡った





魔の森中心部の外れ


この辺りになると森とは呼べず、荒廃した大地になっている


人類不当とまで呼ばれた、魔の森中心部に人間が来るのは、正式的には初めてになるだろう


この度の遠征も一部ギルド上層部と、その他数人にしか証されていないため、非公式扱いになるのだが……


それでなくても王国などに情報が漏れてしまうと、魔の森深層部まで遠征とか自殺行為の馬鹿げたことを、やりかねないからである


今回魔の森へ来たのは、とある魔物の抹殺の為で最重要クエストにあたる


レスクード大陸全土から招集されており、ギルドの中でも口の固い腕利きのメンバーが、この編成隊に集められていた


非常に危険なクエストなので、死ぬ覚悟があるものが特に選抜されている


本来、普通のクエストは任務失敗だと報酬は無しなのだが、このクエストに関して言えば、死んでも身内に驚愕の報酬が支払われるようになっている


それほど優遇しないといけないほどの、危険なクエストで普通にやると人が集まらない恐ろしいものなのである


「ミリィさん。ギルドメンバーSRクラス以外全滅しました 」


彼女はギルドの通信係の女性である


「そうですか。他の方々はどうするのですか? 」


銀色の髪が辺りの荒廃にあわないほどに浮いている


特殊な鎧を身に纏い、スラリと伸びた素足が艶めかしい


「このままついていくそうです。私もギルドに報告してともに行きます 」



……ポンッ……




ドラゴンのミニチュア盤みたいな精霊が、彼女の召喚に応じてあらわれる


「みーちゃん。本部に現状報告お願いね 」


通信係の女性は、ミリィに頭を下げると遠くにいる仲間の方へと走っていった


「どんな感じかな~。こっちの状況~ 」


その声に反応したミリィが頭を下げる


「あ~そういうのいいから~。現状だけ知りたいんですけど~ 」


「はっ! 連れて来たギルドメンバーはSRクラス以外全滅したそうです。最悪の場合、奴は私が始末します 」


言って頭を下げるミリィ。これは癖なのだろう


「とりあえず~そっちはそっちのメンバーで頑張ってね~。多少手伝ってあげてもいいけど~。ここの事は、この世界の住人に任せておいた方がいいわよ~ 」


「了解しました。わざわざご足労いただきありがとうございます 」


三度頭を下げるミリィ


彼女が顔をあげると、その存在はいなくなっていた


「よーし。そろそろ動くぞ 」


ミリィの声が遠く離れた場所にいる、ギルドメンバーに響くのであった




魔の森入り口にある賊の根城が、見える岩場の影


そこにリリアの姿があった


『お嬢ちゃん。覚えてるか? お前さんに足を刺された傭兵様だよ。お前さんの連れのまな板で胸のない娘は預かった。返して欲しければ下に描かれてる場所にこい! あの化け物みたいな女はぜぇーたい連れてくるんじゃねーぞ。追伸……暫くは待ってやるが早くこないとこのペタンコ胸女喰うからな 』


とか書かれた手紙が、竜太をオーガから助けて戻った時に、鞄の中に入れられてエレーナの姿が消えていたのだ


すぐにエレーナ回収に行きたかったが、竜太をあのままあそこに放置しておく訳にもいかず、ゼルガストで竜太の運搬に人を雇い入れ宿屋に先に送り届けたのだ


「しかしあの男はエレーナの胸を、まな板だのペタンコ胸だの断崖絶壁だの男より貧弱とか酷いことを言うわね 」


そこまで言われているとは思わないが……


とりあえずエレーナを回収に来たのである


入り口を見ていたリリアは、少し警戒感が強くなっていた


『賊の出入りが意外とあるわね。ことのほか規模の大きなアジトみたいね 』


そこそこの規模がありそうなこの根城


正面から突入してもろくなことにならないのは、火を見るより明らかである


しかしこのままでは、いつまでたってもエレーナを回収出来ない。それどころか痺れを切らしたあの男が、エレーナに何をしでかすかわからないのである


「ねぇおねぇちゃん 」


「!? 」


声はリリアの隣でいきなり聞こえる


「中に入りたいの? 」


気配を殺して近づいたとかそういうレベルではなく、いきなりそこにいた少年


「あなた何者? 」


とっさに少年から距離をとり、剣に手をかけ、鋭い視線を少年に向けるリリア


「それより中に入りたいんじゃないの? 」


「そうね。なるべく気づかれないように侵入したいわ 」


答えながらも手は剣にかけたままのリリア


『嫌な汗が出る。この少年得体が知れない 』


「じゃあ別にあるもう1つの入り口から入ったら見つかりにくいよ 」


リリアの緊張を感じてはいるのだろうが、特に気にした様子も見せない少年


『この少年得体が知れないけど、他に方法も思いつかない 』


「大丈夫だよ。悟られず中に入り込めるから 」


言って少年はそそくさと別の入り口に向かって歩いていく


剣を握っていたリリアの手のひらに、びっしりとわいた大量の汗は、すぐにひきそうにはなかった




ゼルガストの宿屋に、遅れながらもファリオが戻ってきていた


「あらら竜太さ~ん。怪我大丈夫ですか~。あとエレーナさんとリリアさんはどこに行ったんですか~ 」


戻ってくるなり竜太を質問責めにするファリオ


「怪我はたいしたことないみたいだ。リリアのおかげでね。あとリリアとエレーナはどこに行ってるのかわからないよ 」


竜太自身も怪我の後、まったく姿を見ていないエレーナのことが心配であった


「そうですか~。何か言ってたこととか、変わったこととかありませんでした? 」


「うーん。そういえば怪我した日の翌日には、エレーナの姿が無かった気がする 」


「そうですか~。ちょ~っとリリアさんの荷物を…… 」


そう言うとファリオは部屋の隅に置いてある、リリアの鞄を漁り始める


「駄目だよ。勝手に漁ったら怒られるぞ 」


竜太の制止も虚しくファリオはその中から1枚の手紙のような物を取り出し一瞥


そのまま鞄の中にしまい込み、もと置いてあった場所にそれを戻した


「何かわかったの? 」


「いいえ~。特になにもありませんでした~ 」


「竜太さん。お風呂の準備出来ましたので、身体拭きましょう 」


リリアに身の回りの世話を頼まれていた宿屋の娘が、お湯の入った桶を持って部屋に入ってくる


「竜太さんお風呂ですか~。それじゃ私が大事な場所を、じっくりと見ててあげます~ 」


少し興奮気味にファリオが言う


「勘弁してくれよ 」


「それは残念です~。仕方ないので私は部屋に戻ってますね~ 」


「ありがとな 」


竜太の部屋から出たファリオは、自分の部屋を素通りし宿屋の外へと出て行くのであった





あれから少年に言われるがまま、別の入り口から潜入したリリア


誰にも見つかることなく上手くアジトに潜入したリリアと少年の2人は、宝物庫らしき所にたどり着いていた


部屋の中には大量の宝石や貴金属、高級感のある洋服などが、所狭しと置かれており、大半がここの賊が盗んだり、強奪してきたものなのだろう


「おねぇちゃん。これ高そうだね 」


その辺に転がっていた王冠を頭に被って遊んでいる少年


さらにこれまたその辺に置いてある宝石箱を、少年は手に取り上に放り投げて遊んでいる


「見つかるから大人しくしててよ 」


出会った当初は得体の知れない警戒すべき人物であったが、やってる行動が普通の子供そのものなので、当初より警戒心も薄れてきていた


「おねぇちゃん。この箱変な音がするよ 」


「変な音? 」


言われてリリアが宝石箱を、少年から受け取る


蓋をあけてみても中に何も入っていない。それを振ってみる



……コトコト……



中で何かが動く音がする


「何の音かな? 」


リリアは剣でその宝石箱を壊してみる



……コロコロ……



箱を壊すと中から青い宝石が出てくる


鮮やかに淡い色をした宝石は、どことなく神秘的で何かを思い出しそうになる


「おねぇちゃん。それ何か役にたちそうだから持ってたら? 」


少年に言われ再び宝石を見る。この色合いどこかでみたような気がする……


「そうね。何かが思い出せそうなんだけど…… 」


リリアはその宝石を手にすると、エレーナを捜しに宝物庫のような部屋を出た


部屋から出たリリアは運悪く賊の1人に見つかってしまう


この時、さっきまで一緒だった少年が見当たらなくなっていてリリアも凄く焦ったが、それよりこの状況をなんとかするのが先決であった


「侵入者がいるぞー 」


「あっちにいたぞー 」


アジトが慌ただしくなっていた





……遡ること少し前……


傭兵の男は、まだエレーナと一緒の部屋にいた


リリアに仕返しするためにエレーナを攫ってきたのだが、当の本人がなかなかやって来ないことに少し苛立ちを感じていた


「来ねーじゃねーか。あの嬢ちゃん 」


「んーんんー 」


「あん? 何か言いてぇーのか? 」


男がエレーナの口に巻いてたタオルを少しずらす


「本当にあなたって最低な人ですね。リリアさんに必要以上にご執心なのは惚れたとかじゃないですか? 」


「ねーよ。そんなこと 」


「もし惚れたとしても絶対あなたみたいな人は、相手にもされな……んー。んんー 」


ムカついた男がエレーナが喋れないように再びタオルを口もとに戻す


「このペタンコ胸が! 」


「んー!んー! 」


エレーナが胸のことを言われ怒っているようだ


またエレーナのタオルをずらす


「誰がペタンコ胸よ! この変態男! 」


「変態だとこのまな板女! 」


エレーナの言葉が男の逆鱗に触れたらしい。再びタオルを口もとに当てられる


「俺が変態って言うんならそうしてやるよー 」


男がエレーナの服をはだけさせ無いちちを触る


「んー!んんー! 」


悲しいかなほとんど凹凸の無い胸を哀れむ男の表情にさらに激怒するエレーナ


「クッソーこんなまな板触ってもなんの興奮もしねー 」


言って男がエレーナのスカートの中に手を入れ、下着を脚の途中まで下げる


「んー! 」


その時アジトが騒がしくなった


リリアの潜入が見つかったのだ


「やっと来やがった」


男はドアの入り口にいる仲間に、エレーナを見張るように指示し、部屋から出ていく


その男が出て行ったあとにさっきリリアとはぐれた少年がやってくる


部屋には男の変わりにエレーナを見張ってる賊が1人


「ねぇおじさん。その女の子放してあげてよ 」


「何だこの餓鬼。どこから入ってきた。寝ぼけたこと言ってると殺すぞ! 」


威嚇の為に見張りの男が剣を抜く


「貴方私を殺せるのですか? 」


「な!? 」


見張りの男はいつ自分がやられたのかわからなかった


ただ気がついたら地面に這いつくばって気を失っていた


少年はエレーナを解放するのであった




リリアは懸命に走っていた……


相手にしても良いのだが、流石に数が多すぎる


賊の声に追われて、無我夢中で逃げた先にあの男がいた


「待ってたぞ。お嬢ちゃん 」


男が嬉しそうに笑う


「エレーナはどこ? 返しなさい 」


「人質を返す馬鹿はいないだろ 」


男は嬉しそうにリリアに近づいてくる


「私が何もしなければエレーナを返してくれるの? 」


「あぁ約束してやる 」


「わかったわ 」


男の言葉にエレーナが武器を捨て、ライトアーマーを外す


「お嬢ちゃん。いつになく素直だな 」


男がリリアの胸を鷲掴みにする


「…… 」


「あんなペタンコ胸よりやっぱりこれくらいの方が、さわり心地は最高だな 」


男は満足そうにリリアの胸を、服の上から堪能する


「火事だー 」


「あちこちで燃えてるぞー 」


「急いで消化しろー 」


アジト内の男達が叫んでいる


「チッ! これからがお楽しみって所で 」


男はリリアの胸に後ろ髪を惹かれながらも部屋から出ていく


「あっ待ちなさいよ。エレーナを…… 」


リリアが言う前に男が走り去ってしまった


ライトアーマーと武器を回収したリリアのもとへエレーナがやってくる


「リリアさん。早く逃げましょう 」


「エレーナ! 」




「お二人とも大丈夫でしたか~ 」


2人がアジトから出てくると、入り口にはファリオが待っていた


「火事らしいの急いで逃げないと 」


「大丈夫ですよ~。それ私が流したデマですから~ 」


ファリオがニッコリ微笑む


おっとり系だと思っていたが、いろいろ動きまわるタイプなんだと、改めてリリアはファリオの見方が変わる


3人は竜太の待つゼルガストに向うのであった




リリアのお預けをくらった傭兵の男が逃げ出した先で悪態をついていた


「チッ! 火なんかでてねーじゃねーか 」


男が右手を叩くように振ると誰かに手があたる


見た目は執事のようた格好をしているが、中年のおじさんがそこに立っている


『この男……女神の匂いがする。グスマンもいい加減うるさいし、この男で手を打っておくとするか 』


「なんだお前? 」


何も言わずに立ち尽くすジークに、虫の居所が悪い男がくってかかる


ジークが手を男の喉元に伸ばし首を掴む


「がはっ 」


首を絞められ、もがき苦しむ男がジタバタして何とか逃れようとする


パッっと死にそうになる寸前でジークが手を離す


「ガッ……ゲホ……ウッ 」


死にそうになる男を気絶させジークは男を回収するのであった




魔の森の中腹辺りに存在してある民家


昔ながらの田舎の廃屋を想い出させるような一軒の家が、魔物の巣窟であるこの場所に存在してある


この家の所有者はアスカ・ミストラーナという若い女性である


世捨て人のようにこの危険な魔の森で暮らしている彼女は、普段は魔法の研究に勤しんでいる


実は極秘扱いになるが魔導士ギルドの学者が、解析して世に送り出している、現在ある魔法のほとんどは彼女によってもたらされたものである


魔導士ギルドの学者からは大賢者と呼ばれ、彼女の講義を受けた多くの愛弟子がいろいろな分野で日々活動している


彼女の講義を受けたがる学者は後を絶たないが、あまり乗り気ではないらしく現在は2~3年に1度4王国を回って講義するぐらいに留めているようだ


また各4王国から永久的に宮廷魔導士長の役職(魔導士機関最高顧問)を与えられているが、王城に行くことはほとんど無い


基本的なスタンスとしては、自由気ままに面白おかしく生活する。をもっとうにしているらしい


実はこのアスカ何年たっても見た目が変わっていないのである


面識のある学者からは


「不老不死の魔法を習得している 」


とか


「世に未だ出ていない魔法により、転生を繰り返している 」


などの伝説的な存在として噂も絶えない


本人曰わく「永遠の二十歳 」


らしいのだが……


そんな人もめったに通わないアスカの家に、今日は珍しく来訪者が来ていた


「そうか。エレクシアーナと光の魔石は揃ったのだな 」


夕焼けを思い起こせる美しいオレンジ色に染まる、アスカの長い髪が左右に揺れている


「幾つか不穏な動きは見受けられますが、さほど問題はないかと 」



……コンコン……



部屋のドアがノックされ、1人のメイド(侍女)姿の女性がプレートを持って入ってくる


女性がアスカとテーブルを挟み向かいに座っている男性の前にコーヒーを置く


置かれたコーヒーからは湯気が立ち上り、辺りに良い匂いを漂わせる


コーヒーを置き終わった女性はプレートをスカートの辺りにあててアスカの左後ろに行き直立不動する


「飲みなさいな。別に眠り薬とかは入れさせていないからさ 」


笑いながら言うアスカに男性は飲み物を一口、口に含む。


口当たりも良く、鼻に香りが抜けていく……


「どうだい? 私の魔導栽培した珈琲。自慢の一品なんだよこれが 」


子供のようにオレンジ色の瞳を輝かせ、木で出来たテーブルを両手で叩きながら、嬉しそうにアスカが男に語る


「そうですね。あの竜太さんの[次元]にあった珈琲より美味しいと思いますよ 」


「そうだろう。私も頑張って造ったかいがあったな 」


よほど嬉しかったのか、アスカがさらに上機嫌になる


「そうそう話は変わるが、君の仕事は順調かい? 」


急に真面目な顔つきに戻り、アスカが男に問う


「はい。今のところは概ね順調だとおもわれます。ただ管理の数が多すぎる為、私の直属で動ける者が15人しか居ないのが悩みの種です。もし無理と言ったら昔みたいに戻りたいですか? 」


少し寂しそうな表情を男性が見せる


「私がか? ぜぇっーたいに、い・や・だ。戻るくらいなら君に任せて逃げ出したりはしないさ 」


言ってニッコリ微笑みを見せるアスカ


「もう行くのかい? 」


男が立ち上がったのをみてアスカも立ち上る


「そろそろ戻らないと。いろいろ準備もありますし、今日はご連絡に伺っただけですから 」


「そうか泊まっていけばいいのに。今日はたっぷりサービスするつもりでいたのだかなこんな風に 」


そう言いながら、後ろに立っている侍女の唇にキスをするアスカ


「それはご遠慮します。あと彼女らが訪ねて来ると思いますのでお手柔らかに 」


そう言って男は入り口の扉から出ていく


「さて私も仕事に戻るかな 」


「あんっ! 」


侍女の胸に軽く触り、アスカも仕事場に向かうのであった




エルグニスト ゼルガスト魔導士ギルド支部。その入り口の扉の前にリリアの姿があった


盗賊のアジトの一件が無事片づきゼルガストまでのエレーナの護衛クエスト終了の報告をしにきたのである


多少トラブルはあったものの、この程度のクエストで70万クレジットは本当に破格で正直いうと、もう少し何かあるのかとリリアは想像していたのだが


ギルド支部から魔導銀行へ行き、報酬を確認するとギルドから既に支払われていた


いつもより多めに借金の元本を減らすため、今回の100万クレジットのうち半分ほど返済に充て、竜太の口座とカスティルの口座にそれぞれ10万クレジットずつ振り込むことにしたリリアである


「そういえばファリオが話しがあるって言ってたわね 」


盗賊の一件以降。ファリオが、いろいろ忙しいようで話しも出来ていなかったのだが、今日の話しでいろいろわかるのかもしれない


右手の指輪を見る


赤く輝いていた宝石が、淡い青い色に変化していた


「何これ? 」


吸い込まれそうなこの色はやはりどこかで見たことのある感じの物であった


「指輪のことも聞かないとね 」


リリアはそう思うと竜太達のいる宿屋に向かうのであった




宿屋の竜太が寝ている部屋には、すでにファリオの姿がある


竜太とエレーナ、それといつも竜太の面倒を献身的に見てくれていた宿屋の娘ミラルカがその場にいる


「リリアさんは居ないんですか~? 」


「リリアはギルドに行ってる。もうすぐ帰って来るんじゃないかな 」


答える竜太の横でミラルカが、今日も献身的に身の回りのお世話をしている


「ミラルカさんっていつも竜太さんのお手伝いしてますよね。何か私の知らないうちに凄くいい感じになってるような気がします 」



……カァッ……



エレーナの言葉に顔を赤くして俯くミラルカ


割といい感じなのかもしれない


「ごめんなさい。待たせたわね 」


そこへリリアが帰って来る


「リリアさんも戻って来たことだし~、いろいろ説明しないといけないですね~ 」


「そうね。とりあえず聞きたいことはクエストと指輪、あとは女神についてのことが聞きたいわ 」


「う~ん。それじゃ順を追って話しますね~ 」


ファリオがそう言って手短にあった椅子に座る。どうやら本格的に長い話になりそうだ


エレーナとリリアの2人もファリオに習って椅子に腰を下ろす




今から昔、それはとんでもなく過去の出来事


当時の民は女神(エレクシアーナ・フルール・ルワーノ)を信仰し崇め、日々生活を営んでいた


そんな頃、魔の森に強力な力を持った魔物が生まれる。名をゼストラーダ・ブルクスター


力が強いだけの魔物なら強い者通しがつぶし合って終わるだけの存在になり得るが、このゼストラーダは違った


強さに加え、知能、統率力にも秀でていた


仲間を集め、瞬く間に魔の森を統合。人間界へと進出を始めるのである


……魔物と人間……


その力の差は歴然で瞬く間に北方、東方、西方と制圧し残す所は南方のみとなってしまった


人々は憂い、嘆き、悲しみ、絶望した


そこに女神の軍勢が顕現する


天使と呼ばれる神の使徒を率い、北方、東方、西方の人間界を奪還


そのまま魔の森に進行し、多数の魔物を蹴散らした


この際、魔王と呼ばれたゼストラーダは女神エレクシアーナによって滅ぼされた


人間界に二度と悪さが出来ないよう女神は、魔の森に結界を張り魔物の行き来を封じ込めた


それから時代は過ぎ、女神の存在を知る者は居なくなった


神は信仰により神力を高めていたため、時代の経過とともに魔の森に張った結界も衰えることとなる


現在では中級と呼ばれる程度の力しか持たない魔物は、結界の影響を受けないほど女神の神力は低下している


「……っていう感じなんですけど~。ここまでは理解していただけましたか~? 」


「そこまでは理解したけど、まだ話しは終わりじゃないんでしょ? 」


「いいえ~終わりです~。簡単に言うと今のままなら近いうちに女神の結界が無くなり人間界が滅びます~ってお話しですよ~ 」


ファリオの言葉に絶句する一同


どうやらこの世界は、今とんでもない状況にあるようだ


「1つ質問なんだが、ファリオは何でそんなに詳しいんだ? 聞いてたらリリアよりかなり詳しいみたいなんだが、あんたが女神とかいうオチか? 」


竜太の問にリリアの疑問も沸き起こる。ファリオとはいったい何者なのだろうかと……


「女神ではないですね~。ぶっちゃけていったら竜太さんと同じように異世界人という位置づけでしょうか~ 」


「!? 」


予想外の答えに一同が絶句する


「それなら俺がもとの世界に帰る方法とかも知ってるのか? 」


興奮気味に話す竜太


「そうですね~。それじゃ簡単に異世界転移についてお話ししましょうか~ 」


一呼吸置いてファリオが語る


この世界と違う次元


異世界と呼ばれるもの


異世界からこの世界にやってくる者には、二通りの人が存在する


1つ目は管理者によって強制的に飛ばされる者


これら管理者により強制的に飛ばされた者は、何らかの理由により飛ばされることになる


次元に関するレベルの悪さをしたり、管理者がその次元の為に飛ばしたりなど


こちらの場合は管理者が保持する特別権限により、次元移動させているので大抵の場合は最終的に元に戻されることとなる


次は2つ目の勝手に次元を飛んでくる者


こちらは管理者の権限ではなく偶然に次元を飛んでくる


その次元移動の行為自体が、必要性が皆無な為、管理者が何かをすることは無い


竜太が住んでいた日本でも行方不明者がいたりするが、その何割かは次元移動をしていると思われる


竜太の場合は2つ目にあたるため、この世界に骨を埋める。もしくは確率は非常に低いがさらに次元に迷い込んで別次元へ行く。この場合帰るどころかさらに別次元へ飛ばされる可能性が高い


余談ではあるが、1つ目にしろ2つ目にしろ誰かが次元を渡ることにより、別の誰かがその次元へ移動することになる


「えーと。それってもしかしなくても…… 」


「はい~。竜太さんはこの世界で骨を埋めることになりますね~ 」


「まじかー 」


竜太の絶叫が部屋にこだました


「その管理者ってこの次元? だったかしら? には居ないの。結界無くなるくらいの状況なのに 」


発狂する竜太をよそにリリアが問う


「勿論いますよ~。次元管理官のミリィさんって方~。でも今は忙しいみたいですよ~。その為に私がお手伝いしてるんです~ 」


「貴女も次元管理官なの? 」


「私ですか~。小間使いみたいなものですよ~。そうそう竜太さんみたいな飛ばされて来た方が、言葉に困らないのも管理官さんのおかげですよ~ 」


言いながらベッドの上で拗ねてる竜太の頭を撫でるファリオ


「ということは結界の維持が貴女の目的で、それに私やエレーナが関係してるってこと? 」


「私ですか? 」


「多分ね。そうじゃないとここまで貴女を連れて来た意味がないから 」


リリアの言葉にファリオが微笑む


「ま~そんな所でしょうか~。で本題に入りますね~。エレーナさんを連れて魔の森の大賢者アスカ・ミストラーナさんに会いに行ってもらえませんか~? 報酬は300万クレジットお支払いします~ 」


「ま……魔の森 」


ファリオの提案にリリアの言葉が詰まる。魔の森は魔物の巣窟である


「行きたくない場合は辞退してもいいですよ~。急がせるのもあれなので2~3日中にお返事お願いしますね~ 」


ファリオは椅子から立ちあがるとドアの方へ歩いていき、1度振り返る


「今日のお話しは他言無用でお願いしますね~。ミラルカさんもね~ 」


そう一言だけ告げると、部屋から出て行った




次の目的は魔の森


下手をすれば死んでしまうかもしれない


そんな重圧からなのか、リリアは酒場へと来ていた


基本的に無駄使いを避ける傾向にあるリリアは、お酒はあまり飲まない


「魔の森か…… 」


クエストの金額的にも悪くない


しかし魔の森である


先日の盗賊のアジトがあったような場所とは違う。さらに奥地、結界の中であろうからリリアが普段出会うものより数倍力を持った魔物もいるだろう


つがれているお酒を一口


「隣……良いですか? 」


言ってリリアの横の席に座ったのはエレーナ


「私はお水ください 」


カウンター席の中にいるマスターが、エレーナの前に水の入ったコップを置く


「エレーナはどうするの? 」


「私ですか? 勿論行きますよ 」


コップのお水を両手に持ちグビグビ水を飲むエレーナ


「何の為に? 」


この少女はリリアのようにクエストの依頼料があるわけでもない


「そうですね。このまま何もしなくてもいずれ結界が消えて恐ろしい魔物がたくさん出てきますよね。そしたら皆……。結局遅いか早いかの違いだけですもん 」


「そう貴女は偉いのね 」


エレーナの綺麗な赤い髪を優しく撫で続けるリリアであった




「竜太さんは一緒にいかれるんですか? 」


「もちろん行くよ。来るなって言われてもついていく! 」


「でも危ないですよ。今回だってこんな酷い怪我までしてるのに 」


ミラルカは目に涙を浮かべていた


「大丈夫だって。そりゃ確かに恐ろしい魔物もいるだろうけど、この間の件で俺的にレベルアップしたから 」


竜太が力こぶを作ってニッコリ笑ってみせる


「ぷよぷよしてるじゃないですか! 」


そのこぶをミラルカが指で押さえると簡単に凹む


「世の中一朝一夕にはいかないからな 」


「あれだけの怪我からやっとここまで回復したんですよ。世の中には他にお強い方たくさんいるじゃないですか! 竜太さんが行かなくてもその強い方に任せておけば 」


ミラルカの頬に流れる涙。そっと竜太がそれを拭う


「多分ね。リリアやエレーナは行くと思う。いや間違いなく行くな。俺役にたたないけどほっとけないから 」



……トンッ……



その言葉にミラルカが、竜太の胸に顔をうずめてきた


竜太がミラルカの茶色の頭の上に手を置きそっと撫でる


「それじゃ1つだけ約束してくれますか? 」


ミラルカが上目づかいで竜太を見る


「必ず生きて戻ってきて下さい 」


言って目を閉じる


ピンク色に染まった可愛らしい唇


「あぁ……約束する 」


そっと唇を重ねた




翌日リリアは、朝から買い出しに出かけていた


昨夜のエレーナの話しを聞き、行く覚悟を決めたからだ


魔の森に行くのに今の装備では心許ない


しかし武器屋、道具屋、防具屋、魔導書店とゼルガストにあるお店を覗いてみたが、所持してる物より見劣りするものしか売っていなかったのである


お店回りのついでに何気なく露天商を覗く


いろんな物が売ってあるが、今のリリアに必要な物はない


あきらめかけて帰ろとした時、あの少年が広場で物を売っていた


「おねぇちゃん。いらっしゃい 」


「あら? あなたあの時の 」


言って気づく。かなり本格的な武器、防具が置いてある


「おねぇちゃん。何か買ってよ。売れないとご飯食べれないから 」


「そうねぇ……この防具とこの武器は幾らなの? 」

年季の入った一振りの剣と強度のわりかしありそうな防具


「1つ500であわせて1000クレジットでいいよ 」


なんだろう安すぎる1000クレジットじゃ普通の剣1本も買えないのに


「本当にその値段でいいの? 多分もう少し高くしても売れるわよ 」


「誰も買ってくれないし、その値段でいいよ 」


「そう 」


リリアは鞄を漁り中からお金の入った袋を取り出す


「じゃこれでお願い 」


少年の手のひらの上に10000クレジットの硬貨をのせる


「いいの? おねぇちゃん 」


無言で頷くリリア


「ありがとう。おねぇちゃん 」


少年がリリアに剣と防具を手渡す


「頑張ってね」


商品を受け取ったリリアは、広場を後にした




その日のうちに買い物や借金の前払いなどをすべて済ませ、リリアは宿屋の自室で広場の少年から購入した剣と防具を手入れしていた


「お買い物してきたんですかリリアさん 」


一緒に寝泊まりしているエレーナ


もの珍しいのか剣をじっと見つめている


「魔の森で使えそうだったから買ってきたの 」


「リリアさん。行くの決めたんですね 」


嬉しそうにエレーナがリリアに抱きつく


「借金返済しなきゃいけないしね 」


手に持った武器がエレーナにあたらないように片づける


「私リリアさんと一緒に寝たいです 」


エレーナがリリアから離れて彼女のベッドに潜り込む


「いいわよ。それじゃ寝ましょうか 」


明かりを消し、エレーナの待つベッドへリリアが向かうのであった



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