雨乞いの磔
足元の下に大男が進み出た。
彼の手には、酒樽を思わせるほど大きなハンマー。
積まれた薪の前にある石の台座へ歩み寄ると、くわっと大きく振りかぶった。
ガツン!
台座に大地を震わす渾身の一撃。
大きな衝撃を受け私は一瞬意識が飛んだ。そして、見た。見たのだ。両手を広げたまま。
彼方に過ぎ去る台座がハンマーが大男が薪が人が人々が広場が屋根が街が城壁が枯れ畑が街道が荒れ野が水無し川が緑のない森が広い広い大地が私のいた場所が涙が涙が涙がぐんぐんぐんぐんぐんぐん……。
はっと、足の裏に温もりを覚えた。ぼっ、と火勢が強まる。
昇るのだな、と舞い上がる煤を追い天を仰いだ。どこまでも青く、雲一つなかった。
家族はきっと、隔離場所で涙を流し泣いている。
おしまい
ふらっと、瀨川です。
なんでこんな話を書いたのか定かではない感じの旧作品です。
気圧に少々の変化を加えるより人の思いで雨が降って欲しいものだなぁとかそんな思いで書いたはずではあります。
もしかしたら逆バンジージャンプとかそんな思いもあったのか?
謎です。