第十一話 暗黒騎士VSヨシカワ先輩
就寝前、高見は押し入れから高校一年生の時にいった修学旅行の写真を取り出した。何枚もある写真のなかから、中島が一番大きく写っているものを探して手にとる。
眩しい笑顔の中島がピースをして写っている。
中島さん………。
高見は写真を顔の数センチのところまで近づけていたことに気づき慌てて離した。
俺の馬鹿野郎、こんな気持ちの悪いことをしていたら中島さんに嫌われてしまう。今日は夢で中島さんとデートをするんだからしっかりしないと。
気持ちの悪い叱咤を自分にした後、好きな人の写真を枕の下に置くとその人が夢に出てくるという都市伝説を信じて、高見は写真を枕の下に置いた。口臭をチャックし、電気を消して布団のなかへ体を滑りこませる。「中島さん………」と呟いた後、高見は深い眠りについた。
爆発音とともに高見の意識は覚醒した。自分が宙に浮いていることに気づく。体は落下し地面に叩きつけられた。激しい音を立てたが痛みはほとんどなかった。
辺りには消炎が立ち上り、黒い雲が空を覆っている。遠くから怒声が聞こえてきた。
まさか戦場でデートなのか?。高見は中島の姿を探した。
複数の足音が近づいてくる。危険な気配を察知し、高見は傍にあった岩の陰に体を隠した。
「やったんですかヨシカワ先輩」
声変わりしかけの声が聞こえてきた。
「いやまだだ、経験値がはいっていねぇ」
岩陰から覗くとタクミたちと、バズーカ砲を携えた不良風の男がいた。男の逆立った髪が風でなびいている。
「ヨシカワ先輩、お願いしますよ」タクミが怯えた目で辺りを見回している。
高見はタクミたちから目を離さずに自分の体に触れた。硬い感触が手に伝わってきた。腕を見れば黒い鎧に包まれている。
またアホな夢を見ているようだな。高見は肩を落とした。中島さんを思う気持ちが足りなかったのかもしれない。
「近くにいることはわかっているんだ、この辺りで隠れることができる場所といえばあそこにしかないな」
ヨシカワの視線が岩場に向けられる。
「隠れているケツに、おれのダブルクラッカーをくらわせてやるぜ」
背負っていたもう一本のバズーカ砲を肩に担いだ。二つの黒い穴が高見のいる位置から僅かに離れた場所を狙っている。
あんなものをくらったら、寝覚めが悪いなんていうレベルじゃなさそうだ。両手を挙げて出て行きたかったが、許してくれそうな雰囲気ではない。高見がどうしようか迷っていると砲撃がはじまった。二本の筒から砲弾が連射される。爆炎が高見の体を呑み込んだ。暖かい熱に包まれる。
結構大丈夫そうだな。高見は体を起こし、燃える景色を見渡した。無数の砕けた岩がぶつかってくる。蚊が刺したていどの痛みがあり少しだけ高見を苛立たせた。
しばらくすると砲撃はやみ、視界は土煙で覆われた。
「ヒャッホウ、パーティー会場は粉々だぜ」ヨシカワの奇声が聞こえてくる。
風が吹き土煙が流されていく。崩れた岩場に無傷で立つ高見の姿が現れると「そんな馬鹿な」とヨシカワが呻いた。
「そのバズーカ砲、虫除けにはつかえそうだな」高見はどや顔でいった。
ヨシカワたちは茫然としている。言葉が通じないことを思い出し高見は落胆した。
せっかくいい台詞を思いついたのに。
「おれのダブルクラッカーをくらって死なねぇってことは、こいつチートモンスターだな、おめぇら知ってて黙っていたのか」
ヨシカワの鋭い視線がタクミたちに向けられる。
「え、いや、その………」
ばつが悪そうに顔を伏せた。それを見たヨシカワは舌打ちをした。
「まぁいい、おれも低ランク時代、チートモンスターに何度か殺されたからな、こいつでその借りを返させてもらうか」
バズーカ砲を地面に捨てると、腰に差していた刀の柄に手をかけた。ヨシカワの全身から殺気が漲った。人を何人も斬り殺したことがあるよな目で高見を睨んでいる。
こいつはなにか、やばそうだ。高見は背筋に冷たいものが走るのを感じた。恐怖が内から膨れあがり、膝から崩れ落ちそうになったが、足を踏ん張りなんとか堪える。
人の夢に巣くう害虫どもを好き勝手させてたまるか。ヨシカワの殺気を追い払うため、高見は闘争心を燃やした。
俺にはタクミの顔を一撃で吹き飛ばした拳と、バズーカ砲の砲弾にも耐えた鎧がある、殺人不良ごときに負けるわけがない。自信を高めてから高見はいった。
「こいよヨシカワ、返り討ちにしてやる」
指を鳴らし凶暴な音を奏でた。




