S+A=I Another End
Another End
とあるアパート。
「……うわあああああああああああああ!!! 何てもの書いてるんだ僕は!!!」
そこでは銀髪の見た目美少女にしか見えない少年が暴れていた。
「じじじ、自分が主人公の物語を書くって、僕は何をやってるのさ!」
少年は読書の秋ということで、読書していたところふと、物語を思いつき書き始めた。
結果、何故か自分が主人公のラブコメを書くという黒歴史を創設してしまった。
「どどど、どうしよう」
そこは切り捨てるなり燃やすなりすればいいのだが、少年はそれが出来ずにいた。
「おーい、飯だぞー」
「はーい! ……とりあえず私物に挟んでおいて」
見た目はただのノート。私物に紛れさせれば、まずばれない。
少年はご飯を食べに部屋を出ようとするが、ふと足を止めた。
「……アヤヒメちゃん、か」
(……はっ!? 何を自分で作ったキャラにドキドキしてんのさ! ああもう、何か変な気持ち。……でも、なんだか落ち着くな)
ムズムズして、しかし何処か暖かいその気持ちに、少年は少し笑い、
「さて、ご飯だ!」
いつもの日常を進み始める。
窓の外から見える紅葉が一枚、風に吹かれて天高く飛んだ。
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とあるお屋敷。
「ふぇぇ!? わ、私は何を!?」
そこでは黒髪に獣の耳を生やした少女が悶えていた。
「お、お休み貰えたからって、何故自作小説……しかも自分がヒロインのラブコメなんて書いてるんですか!?」
何と無くで始め、書いてるうちに何故かはまり、書き終わる頃にはすでに夕暮れだった。
そして完成したのが、人様には決して見せることの出来ない禁断の書物と化していた。
「ど、どうしましょう……」
やりようなら幾らでもあった。というかただ捨てればいい。
だが、彼女は何故か、その物語を捨てることが出来なかった。
「と、兎に角誰かがくる前に隠さないと!」
そして彼女は私物を積まれた山まで行き、奥に押し込もうとして、ふとその物語を書いたノートを見た。
「……晶くん、か」
(はぅっ!? 何で私は自分で作った主人公にドキドキしてるんですか!? ああ、ううぅぅぅ〜〜…………)
顔を真っ赤にして悶える少女。
しかし、もう一度ノートを見る。すると、不思議と暖かい気持ちになれた。
少女は大きく深呼吸をしたあと、私物の奥に押し込んだところで一息付く。
「明日からも、頑張りましょう!」
少女の決意に呼応するかのように風が吹く。
「あれ? 窓なんか開けましたっけ?」
記憶に無い少女は窓へ近づくと、ふわっと何かが入り込んだ。
それは、天狗のうちわのような形をした、赤い葉っぱだった。