契約の儀式
今回は精霊様がメイン
父親や王、周りの人間が騒ぎ始める中、俺と王女そして精霊たちだけが何もしゃべらずお互いを見ていた。
「王女様、あなたは精霊、今あなたの周りに浮かんでいる方ですが、視えるのですよね?しかし声は聞こえない?」
とりあえず王女様からだな。精霊たちとの会話は後回しにしたほうがいいだろう。かなり厄介そうだし。
「そうだけど…あなたも見えるの?ほかの人は誰も視えてないみたいなの。みんな夢だっていうんだよ?ひどいでしょ??でも同じ人が見つかってよかった~。ね、お父様。やっぱり夢じゃないんだよ?」
話を振られた王様は答える余裕がないらしく口をパクパクさせるだけだった。が、何とか自我を取り戻したらしく俺のほうを向く。
「精霊・・・といったか?」
「ええ。精霊です。」
「しかしそれは…。」
「精霊だったら私にも視えるはず。」
王様が何かを言う前にサラさんが口をはさむ。
そういえば、エルフは精霊が視えるんだよな。同じ精霊の目持ちだし。どうして視えてないんだ?
『精霊さん?』
『上位精霊以上は精霊の目でも姿を表そうと思わない限りみえないわよ?つまりあなたがおかしいの。』
なるほど。しかしここまでの魔力なら気づきそうなものだが?まあ今はいいか。
「上位精霊以上は視えないらしいですがそれは?」
「・・・うそ?まさか上位精霊様がここにいるの?なんで?それにアレクたちはなんで視えるの?」
「王女様を気に入ったためにここにいらっしゃるようです。そのため王女様には視えるそうで。俺の場合はそういうスキルであると納得していただきたいです。」
「そんなスキル…まさか?」
サラさんが何かに気づいたらしいが俺の魔眼に気づいたか?
「アレク君、そのだね。君には精霊様のお声が聞こえているのかい?」
「ええ、王女様には聞こえていないようですが。」
「うん、何か言ってるのはわかるんだけど知らない言葉だから。」
精霊語か。ん?精霊語が聞こえている?俺でも魔力を耳にまとう必要があるのに?これは…精霊王の加護の効果か?説明に書いてあることがすべてじゃないとは思っていたが本当にそうらしいな。
「その言葉が聞こえるのもスキルなのかね?」
「…それはわかりません。」
加護だろうな、旅人の加護。しかし加護がついているなんて言ったらなんでわかったのかなんて騒ぎになるし。
「そうか。…精霊様がいるとするとなぜ姿を現さないのかわからないかな?」
王様の言い方からするとまだ信じ切れてはいないらしい。仕方ない、ずっと俺のことをにらんでいる方々と会話するか。
『精霊様方、そう睨まないでいただけますか?』
そんなに睨まれると、我慢できなくなる。ああ、闘りたい。
『おぬし何のスキルで我らが見えるのだ?』
精霊のうち一番背の大きい、といっても50センチ程度だが、精霊が何ともきれいな声を出す。
精霊は美女でなければならないという決まりでもあるのか?四大精霊全員がそれぞれ絶世の美女と呼べる代物だぞ?
『魔眼ですね、知っているスキルですか?』
『魔眼か。道理で見えるはずじゃな。魔力の流れも視えておるな?』
今度は一番ちっこいのか。
『はい、それと精霊語ですが…。』
『加護でしょう?わかっているわ。それ以外ありえないもの。』
二番目にでかいのか。そういえばこいつらがそれぞれ自然を司っているんだよな。どれがどれだ?…安易に髪の色か?…そうみたいだな。魔力の色が一緒だ。しかしなんて純粋な魔力。恐ろしい威力だろうな。
『でもおかしいね?あなた魂が年を取りすぎてる。数十年生きているよね?でも器はせいぜい6年。なのに器に魂がよくなじんでる。なんでかな~?』
二番目に小さいの。こいつもそれを突っ込むか。しかし、体になじんでいる?まあ、神以上のあいつの仕業だしな。当たり前といえば当たり前か。
『それは秘密です。それより精霊様方。いい加減姿を現していただけませんか?そしてさっさと王女様と契約する方を決めてください。迷惑なんだよくそが!!…と風の上位精霊が。』
『言ってないよ!!あ、四大精霊様すみません。言ってないです。本当にすみませんです。』
『少年よ。我らが四大精霊だと知ってそのような態度なのか?言葉遣いのことではないぞ、今の貴様の心持ちだ。』
俺の心持ちってのはこの血が騒いでいることだよな。まあ仕方ないか。
『申し訳ありません。こういう性分ですのでこればかりは。いや、ここで闘る気はないですよ?』
『そうか。おぬしも面白いの。』
『それはそうと早くお姿を現していただけませんか?』
『私もそうしたいのだがな?こやつらがそれを許さんのだ。』
『何を言ってるのサラマンダー。あの娘とは私が契約するんだから。』
『馬鹿を言うな。ウンディーネにあの娘はもったいない。』
『それはあなたもだけどね~ノーム?やっぱりシルフが一番じゃないかな~。』
・・・名前がおかしいぞ?背の大きい順からノーム、ウンディーネ、シルフ、サラマンダー。そこはいい。問題は、司る属性だ。地球と、まったく同じだぞ?ノームが土。ウンディーネが水、シルフが風、サラマンダーが火。偶然か?それとも訳され方の問題か?異世界のはずだが名前が一緒になるなんてあるか?・・・名前?そもそもなぜ名前が?
『精霊には名前がないんじゃないのか?』
『ああ~わたしたちは特別かな~。世界に名前を送られているんですよね~。』
名づけ親が世界?どういうことだ?…今度旅人にあったら聞いておくか。今はまだやるべきこともあるし。
『契約に関しては俺に考えがあるんだ。だから四人で同時に姿を現してくれないか?』
『…考え?どのようなものだ?』
『…全員で王女と契約すればいい。』
『ええ~。独占したい~。』
『いや、一理あるか。』
シルフのわがままを遮ってノームが賛成する。
『考えてみればこのまま膠着するよりはましだな。』
サラマンダ―も賛成か。これは決まったかな。
『シルフも考えてみなさい。このままじゃ契約できないわよ。』
『う~仕方ないか。』
どうやら決まったようだな。
『それでは姿を現してくださいね。』
俺の言葉を聞き精霊たちの雰囲気が変わり威圧感がより実体を伴う。
「久々に実体化したが…ふむ。相変わらずじゃな。」
精霊語じゃなく人間の言葉か。
「ほ、本当に精霊様が!!」
「なんと神々しい…。」
「この感じ・・・まさか!?」
貴族たちのざわめきに混じってサラさんの驚きの声が届く。
ばれたか?
「あ~声がわかる~。やったぁ。」
王女様は無邪気に喜んでいるが王様と王妃様は顔が引きつってるぞ。
「うむうむ。のう、サクラ。我らと契約せぬか?」
「契約って?」
「友達になろうってことだよ~。」
「ほんと?なるなる。」
「じゃあ手を出して私たちの手の上におきなさい。」
「はい。」
王女が精霊たちの手の上に自分の手を置くと魔力が部屋一面に充満する。
「我ら精霊は、」
「世界に名づけられたこの名において、」
「契約者との永遠の契約を望む。」
「というわけで名前を教えておくれ?」
「はい。サクラだよ。」
「ではサクラよ。汝、我らと友情の元契約すると誓うか?」
「んー友達になるよ。」
「では、我が名、サラマンダーを送ろう。」
「ウンディーネの名を送ります」
「シルフの名前をあげる。」
「ノームの名を差し上げよう。」
名前の交換が終わると精霊たちと王女が輝きだし、魔力が集中する。そして輝きが終わるとそこには満足そうな精霊たちと、笑顔の王女が残った。
「…やっぱり。四大精霊。」
「何!!?四大精霊だと!!?」
「えへえ。これで友達だね。」
大喜びの王女とは対照的に国王は驚愕し、サラさんは呆然としている。周りの貴族?腰を抜かしてるよ。
『ま、これで一件落着かな?』
『王様たち困ってるけど・・・。』
そこまでは俺の知ったことじゃないよな。…俺はもう知らないよ。