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精霊との対話~事情説明編~

今回は厄介ごとの香り

『それで?』


『な、なんで精霊語を話せるの?あなた、人間だよね?』


『俺は人間だ。精霊語はスキルだと思ってくれればいい。』


実際には旅人からの才能おくりものだが、まあそこまでは言わなくていいか。


『で?』


『そうね。ねえ、あなたにとって精霊って何?』


また難しい質問だな。精霊のことなんて考えてなかった。まさか会うことがあるとは。しかし精霊ね。強いのだろうな。


『闘ってみたいね。特に四大精霊。』


『え?』


精霊は呆けたような顔で俺を見つめる。


『闘いたい?力が欲しいとかじゃなくて??精霊と契約すればそれだけですごい力が手に入るよ?』


『そうだな。しかしそれは俺の性には合わない。俺にはこの体で闘うほうがあっているさ。』


『…。』


精霊は何も言わず俺の瞳を見つめている。その眼は今まで見てきたどんな目よりも深い目だった。まるで吸い込まれそうな目。そこでふと精霊は顔を俯かせる。


『そっかぁ。本気で言ってるんだ…。力を欲するわけでも強大な力を排除しようとするわけでもない。ただ単純に…。あはっ。』


そして精霊は顔をあげ盛大に笑い出した。


『あははっ。あはっ、あはははっ。そっか。えへへへへへ。』


ちょっと怖いな。盛大に笑っているのはわかるが怖い。


『いいなぁ~。あの娘もいいけどあなたもとってもいいなぁ~。あなたにならはなしてもいいかなぁ。』


やっとか。まあ、あの娘とか言ってたから大体は察しがつくんだがな。


『おう、さっさと話せ。』


『そうだね。ねえ、精霊が気に入った人に力を貸すって知ってる?』


『ああ。だけどそれはほとんどが…。』


下級精霊だろといいそうになるが思いとどまる。なんとなく下級精霊って蔑称って感じが…。


『優しいね、でも下級精霊は正式な名称だから大丈夫だよ?』


『…お前も心が読めるのか?』


どこぞの覚妖怪でもあるまいにそんな簡単に心が読めるもんなのか?


『読めないよ?けどあなたならそういうこと気にするかなと思っただけ。優しいね、あなた。』


『俺が…優しい?』


初めて言われたぞそんなん。今まで悪魔だとか救世主だとか裏切り者だとか言われたがな。


『うん。とっても優しいよ。ねぇ、私と契約しようよ?』


『契約はしないって言わなかったか?』


『別に契約したからって言って戦闘に駆り出さなくてもいいんだよ?話し相手にもなるよ?それに私は体大きくできるから彼女としても最適だよ?』


『何のためらいもなく言うなよ…。というか何?5歳児がそんなんでつられるわけないだろ?』


まさかこの世界5歳くらいからそういうことがあんのか?だとしたらめんどくさすぎる。


『体は5歳児かもしれないけど精神は違うでしょ?魂の感じからするともう二十年以上だよね?』


『っ!!流石は精霊だな。』


魂でわかるのか。すげえな。


『大体ただの5歳児がそんな態度だったら逆に怖いよ。』


ああ。そういや精霊相手には素でいってたな。


『いやいや、それでも流石だよ。』


『だったらご褒美に契約してよ。』


『それはだめだ。』


『え~。名前つけてほしかったのに~。』


『は!?そりゃ永久の誓いじゃねえか。お前正気か!?俺の心は清らかとは言えないはずだぞ。』


精霊に名前を付けるという行為。それは死という概念を持たぬ精霊にとってはまさに永遠に解けぬ呪縛。たとえこれからどのようなことがあろうともその名をくれた者を想いつづけるという誓い。精霊はこの誓いを特に気に入った心の清らかな者とかわす。今までこの誓いをした人間はただ一人。この国の初代国王が火の上級精霊とかわしたのみ。


『確かにあなたの魂は清らかとは言えないよ。荒れているといってもいい。』


でもね。と精霊は続ける。


『あなたの魂はとっても純粋でとってもきれいなんだよ。』


きれいな魂か。今まで俺は何人殺しただろう。いくつの命を奪っただろう。誰を不幸にしただろう。そして俺はそれを反省も後悔もしていない。これからも同じことをするだろう。そんな俺の魂がきれいだと?


『くだらないな。』


『そう。そうなんだね。』


精霊はそう言って少し顔を曇らせる。が。


『じゃあ、契約だけでもしようか。』


『話聞いてたか、お前?!』


だめだ。これ以上こいつのペースに合わせてるわけにはいない。


『私はこれでも風の上位精霊なんだから。契約したらきっといいことあるよ?』


何?こいつが上位精霊?


『上位精霊にも変な奴はいるんだな。』


『ひどくない!?もう少し驚くとかしてもいいんじゃない!?』


『いいからさっさとここにいる理由を話せ。』


『まったく。ふつう上位精霊なんて言ったら信仰の対象なのに。』


そう愚痴りながらも精霊は本題に入り始めた。


『今から大体5年くらい前かな。このお城に一人の女の子が現れたの。その女の子の魂は今までのだれよりも清らかでそれは今でも変わらない。そしてとても優しくて私たち精霊を大切にしてくれる。ただあの娘は私たちの姿は見えるけど声が聞こえない。』


『それ実体化すれば解決だろ?』


まあ、そんなに簡単じゃないだろうけど。


『そう。ふつうならそうなんだけどね。偉い精霊たちが誰が契約するかもめててね。実体化は禁止されてるの。抜け駆けは許さないって。』


精霊はそう言って遠い目をする。その目を見てなんとなくそのえらい精霊が誰かわかってしまう。


『まさかとは思うがそれって四大精霊じゃないよな?』


『大正解。火、水、土、風すべての大精霊様が契約したがってて。』


頭が痛い。仮にも神と敬われてるやつらが何やってやがる。


『それで?そのモテモテの女の子は誰だ?』


まぁ、なんとなくわかる。この城に5年前からいる女の子。それはつまり。


『この国の第一王女。サクラ・ア・ポリスだよ。』


想像通りだくそが!!これは面倒事の予感が…。はぁ。闘いはうれしいがこんな厄介ごとはいらねぇよ。

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